『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 がんばれキング!

残念ながら、ゴジラ、ラドン、モスラのようなズバ抜けた魅力を持つスター怪獣を次々に生み出せるものではない。
東宝怪獣映画で怪獣が単独主演した作品には、他にも『大怪獣バラン』(1958年)があるけれど、バランは、まぁ何というか、子供が絵に描きたくなるようなスター性に欠けていたように思う。
1964年には初の宇宙怪獣、その名も『宇宙大怪獣ドゴラ』が銀幕に登場した。着ぐるみでは表現できない不定形生物への挑戦等、たいへん意欲的な作品だったが、怪獣映画なのにストーリーの多くを宝石強盗の話が占めたり、肝心なドゴラが断片的にしか登場しなかったりと、これまた怪獣映画好きには満たされないものが残る作品だった。
そこで打ち出された新機軸が対戦ものだ。ゴジラが無名のアンギラスと戦うのとはわけが違う。米国モンスターの代表キングコングと日本のモンスターの代表ゴジラ、東西のスター怪獣が同じ映画で共演し、どちらが強いか競い合う。『キングコング対ゴジラ』はとてつもなく贅沢な、驚くべき企画だった。狙いは当たって、1962年に初公開されたこの映画は、日本怪獣映画史上最大の動員数を誇っている。
続いて東宝は国内の二大スター、ゴジラとモスラが対戦する『モスラ対ゴジラ』(1964年)を放った。まるで三船敏郎とアラン・ドロンが共演した『レッド・サン』を発表したかと思えば、三船敏郎と勝新太郎の共演作『座頭市と用心棒』を放つようなものだ(いや、公開順では『レッド・サン』より『座頭市と用心棒』が先だけど)。
ここまでゴジラは悪役だった。人間と交流し、ある程度人間と意思の疎通もできるキングコングやモスラは、人間の味方のいいヤツだ。一方、暴れまわり破壊するだけのゴジラは、プロレスでいえば悪役レスラー。とうぜん、勝負はいつもゴジラの負けである。
『キングコング対ゴジラ』は引き分けと云われているが、キングコングだけ悠然と泳ぎ去り、ゴジラは水没したまま行方知れずなのだから、(ゴジラは水中を潜行したのかもしれないが)印象としてはキングコングの勝利であろう。
2014年のアメリカ映画『GODZILLA ゴジラ』は、ゴジラ第一作からこのあたりまでのゴジラ映画をよく研究して作られていたと思う。日本のゴジラ映画が持つ原水爆のメタファーや、ゴジラは苦戦する側であることを、米国人の知る『怪獣王ゴジラ』のイメージと矛盾しないように混合したのは見事であった(詳しくは「『GODZILLA ゴジラ』 渡辺謙しか口にできないこと」を参照されたい)。
さて、キングコングとゴジラの対戦カード、モスラとゴジラの対戦カードで観客動員を図った東宝だが、もういけない。あと対戦させるのはラドンくらいしか残っていないが、ゴジラとラドンではプロレスができないし、ラドンのカードを切ってしまったら後には何も残らない。
――と東宝の制作陣が考えたかどうかはともかく、ここで画期的な手が考案される。『モスラ対ゴジラ』の同年に『宇宙大怪獣ドゴラ』を放った後、前代未聞の大怪獣を誕生させたのだ。タイトル・ロールになってきたスター怪獣のいずれをもしのぎ、それどころかゴジラ、ラドン、モスラの全スター怪獣が総力戦を挑まなければ敵わないほどの史上最強の大怪獣、キングギドラの登場だ。

『三大怪獣 地球最大の決戦』のキングギドラは、ゴジラやラドンが身長50メートルなのに倍の100メートルの大きさ。黄金に輝く体に巨大な翼、サタンが三つの顔を持つように龍のごとき首が三つもある、神話伝説の集合体のような姿。
地球怪獣の武器で一番飛距離が長いのはゴジラの白熱光線だろうが、キングギドラは三つの首のすべてから引力光線を吐くことができる。すなわち、ゴジラとラドンとモスラの三匹を同時に相手にしても、引力光線で対抗できる。キングギドラの前ではゴジラもラドンもモスラも雑魚でしかない。五千年前に一匹だけで高度な金星文明を滅ぼしたといわれるキングギドラは、宇宙最強の怪獣なのだ。
『三大怪獣 地球最大の決戦』でのゴジラとラドンの対戦を見ればこの二匹の力はほぼ互角と判るし、『モスラ対ゴジラ』でモスラはゴジラに勝っている。だからゴジラ、ラドン、モスラの三大怪獣が揃えばゴジラ三匹以上の戦力ともいえるけれど、それでもこの映画でキングギドラを撃退するにはスター怪獣三匹が同時に死力を尽くさねばならなかった。
しかも、そうまでしてもキングギドラを倒すことはできず、三大怪獣たちは王者キングギドラが地球に嫌気がさして宇宙に帰っていくの見送るのがやっとだった。
ああ、なんてかっこいいんだ、キングギドラ。お前こそは怪獣映画史上最高の存在だ。
続く1965年の『怪獣大戦争』でも、キングギドラはゴジラとラドンを相手に暴れまくった。
『三大怪獣 地球最大の決戦』では、ゴジラ、ラドン、モスラの三大怪獣が勢揃いしてようやくキングギドラを撃退できたのだから、ゴジラとラドンだけで敵うわけがない。キングギドラはゴジラ、ラドンとともに海へ転落したあと、海面に浮上できないゴジラとラドンを尻目に悠然と宇宙へ去っていった。
その後もキングギドラは、地球侵略を企む宇宙人の助っ人として『怪獣総進撃』(1968年)や『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972年)にも登場するが、とにかく強い強い。地球の怪獣たちが協力し、集団で袋叩きにしなければ、どうにも対抗できない相手だった。
マーベル・シネマティック・ユニバースの「インフィニティ・サーガ」に例えれば、キングギドラはちょうどサノスのポジションだ。スーパーヒーローたちが束になって挑むことでようやくどうにか対抗できる、最強の敵なのだ。


平成ゴジラの敵として昭和ゴジラシリーズからカムバックした初めての怪獣がキングギドラなのは、その人気からしてとうぜんのことだ。けれども、そのカムバック作『ゴジラvsキングギドラ』(1991年(平成3年))は、あろうことかキングギドラをゴジラと1対1で戦わせてしまった。しかも、この映画のキングギドラはなんとゴジラに負けてしまう。
ゴジラシリーズが『メカゴジラの逆襲』(1975年)でいったん中断した後、1984年に再開されるまでのあいだに、ゴジラ復活を願う声の高まりとともにゴジラの神格化が進んでいたのでもあろうが、曲がりなりにもキングギドラを名乗る怪獣をたかがゴジラ一匹ごときに敗北させてしまうとは、キングギドラの何たるかを見失った大失策であったと思う。
ここからキングギドラは転落の道を歩む。
『モスラ3 キングギドラ来襲』(1998年)では、サブタイトルに名を残すほどの大物として扱われながら、劇中では白亜紀の幼体の頃にモスラ一匹に敗北した上、成長した現代においても強化型モスラ(鎧モスラ)に敗北する。
さらに2001年公開の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』では、バラゴン、モスラと一緒になってゴジラ一匹を倒そうとする始末。
当初の予定どおりバラゴン、アンギラス、バランの三匹がゴジラと戦うのであればバランスが取れていたと思うが、人気怪獣のネームバリューをたのんだ会社の判断により登場怪獣が差し換えられ、ゴジラより強いはずのモスラとキングギドラがゴジラに手こずる映画になってしまった。
映画そのものは滅法面白かったけれど、登場怪獣の選択は(作品の質の面では)判断ミスといえよう。
キングギドラは人気があるから1996年版『モスラ』のデスギドラや『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)のカイザーギドラといった亜種も考案されたが、いずれもモスラ一匹、ゴジラ一匹に倒される体たらく。
アニメーション映画『GODZILLA 星を喰う者』(2018年)のギドラも、ゴジラ一匹に撃退されてしまう。

1. タイトル・ロールの怪獣が中心の映画:『ゴジラ』『キング・コング』『空の大怪獣ラドン』等
2. スター怪獣同士が対戦するもの:『キングコング対ゴジラ』『モスラ対ゴジラ』等
3. スター怪獣が他の怪獣をやっつけるもの:ゴジラvsシリーズ等
キングギドラは、分類2のスター怪獣同士が対戦する映画に、スター怪獣をしのぐ大スターとして乱入した真打のはずだった。なのに、平成以降はゴジラやモスラといったスター怪獣にやっつけられる分類3の怪獣に堕してしまった。
あの最高に強くて最高にかっこいい、怪獣の王たるキングギドラを、東宝は敵役の中の単なる一匹にしてしまったのである。
アメリカ映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の制作が報じられたとき、私はとても不安だった。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』にはラドンもモスラもキングギドラも出るという。ゴジラよりもラドンよりもモスラよりも圧倒的に強いはずのキングギドラは、そのキングとしての尊厳を守れるのだろうか。
そもそも米国ではゴジラが「怪獣王ゴジラ(Godzilla, King of the Monsters!)」と呼ばれる一方で、キングギドラは単にギドラ(Ghidrah)と呼ばれる。キングギドラ様の「キング」を外すとはとんでもない失礼だが、「キング」の称号はすでにゴジラに捧げていたのである。
結論からいえば、不安は的中してしまった。
2014年の『GODZILLA ゴジラ』が昭和ゴジラシリーズに通じる雰囲気を醸し出していたのに対し、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は平成以降のvsシリーズ色が強かった。ゴジラとラドンとモスラが出現してキングギドラと戦う点は『三大怪獣 地球最大の決戦』を、またキングギドラをモンスターゼロと呼んだり、怪獣たちを機械で操る設定は『怪獣大戦争』を下敷きにしているものの、ゴジラが『ゴジラvsデストロイア』のときのように全身真っ赤になったり、口から白熱光線を発するだけでなく全身から謎のパワーを放射して敵を倒したりと、すっかり平成ゴジラの趣きであった。
そしてキングギドラがラドンを打ち負かし、モスラを倒すのはとうぜんながら、平成以降のゴジラシリーズの例に漏れず、ゴジラ一匹に敗北してしまう。
なんということだろうか。
舞台を米国に移したハレの場で、あの負けてばかりの悪役レスラーだったゴジラに、天下のキングギドラが敗れたのだ。
キングギドラが大好きな私は悲しくてならない。
がんばれキングギドラ。くじけるなキングギドラ。お前が宇宙最強の怪獣であることは多くの人が知っている。「キング」の座を奪い返すまで、戦い続けろキングギドラ!

監督・原案・脚本/マイケル・ドハティ
原案・脚本・制作総指揮/ザック・シールズ 原案/マックス・ボレンスタイン
出演/カイル・チャンドラー ヴェラ・ファーミガ ミリー・ボビー・ブラウン 渡辺謙 チャン・ツィイー ブラッドリー・ウィットフォード サリー・ホーキンス チャールズ・ダンス トーマス・ミドルディッチ
日本公開/2019年5月31日
ジャンル/[アクション] [アドベンチャー] [SF]

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【theme : ゴジラシリーズ】
【genre : 映画】
tag : マイケル・ドハティカイル・チャンドラーヴェラ・ファーミガミリー・ボビー・ブラウン渡辺謙チャン・ツィイーブラッドリー・ウィットフォードサリー・ホーキンスチャールズ・ダンストーマス・ミドルディッチ
⇒comment
No title
吹き替え版では「キングギドラ」と呼ばれてました。
Re: No title
ばたぞーさん、コメントありがとうございます!
吹き替え版のスタッフはいい仕事してますね。終始「ギドラ」としか呼ばないアニゴジは寂しかったからなぁ(アニゴジも好きだけど)。
吹き替え版のスタッフはいい仕事してますね。終始「ギドラ」としか呼ばないアニゴジは寂しかったからなぁ(アニゴジも好きだけど)。
No title
アニメ版は仕方ない部分がありましたね。ギドラは異星人の言葉なのに、何で英語の「キング」が入ってるんだと突っ込まれてしまいますから。
この映画(と、アニメ版)はキングギドラ復権の第一歩というか、昭和のある時期からやたらと他人に操られて「三つも首があってお前に自分の意思はないのか」と思ってしまう怪獣が、対戦結果はともかく設定上は圧倒的だったので次に期待です。
なにより良かったのが、短い尺でも恐らく初対戦だったはずのラドンとモスラの一騎打ちが見られたことです。とにかくラドンのかっこよさが素晴らしい。監督が一番好きだというのも納得です。
この映画(と、アニメ版)はキングギドラ復権の第一歩というか、昭和のある時期からやたらと他人に操られて「三つも首があってお前に自分の意思はないのか」と思ってしまう怪獣が、対戦結果はともかく設定上は圧倒的だったので次に期待です。
なにより良かったのが、短い尺でも恐らく初対戦だったはずのラドンとモスラの一騎打ちが見られたことです。とにかくラドンのかっこよさが素晴らしい。監督が一番好きだというのも納得です。
Re: No title
未記入さん、こんにちは。
本作の、ギドラを操ろうとしたらギドラのあまりの強さのために操れない描写はいいですね。
『怪獣大戦争』以降のキングギドラは宇宙人等に操られてばかりでしたが、キングギドラほどの大怪獣が野放図に暴れると世界が滅んでしまいますから、それはそれで、操られることで力が制限されている感じでいいと思いましたが。
今後キングギドラが復権していくといいですね。
本作のラドンは『ゴジラvsメカゴジラ』のファイヤーラドンぽくて、監督のvsシリーズ好きが窺えます。
本作の、ギドラを操ろうとしたらギドラのあまりの強さのために操れない描写はいいですね。
『怪獣大戦争』以降のキングギドラは宇宙人等に操られてばかりでしたが、キングギドラほどの大怪獣が野放図に暴れると世界が滅んでしまいますから、それはそれで、操られることで力が制限されている感じでいいと思いましたが。
今後キングギドラが復権していくといいですね。
本作のラドンは『ゴジラvsメカゴジラ』のファイヤーラドンぽくて、監督のvsシリーズ好きが窺えます。
No title
薄っぺらい私は今作のキングギドラは強いしカッコいいしで大満足でした
(レビュー読むまで平成キングギドラが弱体化してそのストレスに気付いてませんでした...)
ワイバーン型は平凡アレンジかもしれませんが空を飛びそう感が出てて
見たかったものがおっさんの歳になってようやく見れた感じです
にしてもゴジラは神か王のどちらかを返上すべきですね
2冠?なんてギミックは、プロレスラーとしてとっちらかりすぎです
(レビュー読むまで平成キングギドラが弱体化してそのストレスに気付いてませんでした...)
ワイバーン型は平凡アレンジかもしれませんが空を飛びそう感が出てて
見たかったものがおっさんの歳になってようやく見れた感じです
にしてもゴジラは神か王のどちらかを返上すべきですね
2冠?なんてギミックは、プロレスラーとしてとっちらかりすぎです
Re: No title
TGさん、こんにちは。
本作のギドラが大きな翼を広げた姿は、あたかも『ファンタジア』の「はげ山の一夜」に登場する黒い神チェルノボグを彷彿とさせ、なかなか迫力がありますね。
ですが、本作のギドラのデザインに関しては、複雑な思いを抱いています。
まさにワイバーンのような大きな翼が、キングギドラらしさを損なっていると思うからです。
ワイバーンを思わせるということは、要はコウモリのような翼を持っいるわけです。
ドラゴン(及びワイバーン)にしろ悪魔にしろ、コウモリのような翼を持つ怪物として描かれることが多いですが、現実にはいない怪物とはいえ、無から姿形を創造することは難しいですから、実在のいろんな生き物のパーツを組み合わせることになり、翼に関してはコウモリのそれを持ってくることになったのでしょう。
本作のデザイナーが同様のデザインにたどり着くのは、想定の範囲内といえます。
コウモリの翼は、前肢の指が伸び、指のあいだに被膜が発達して翼になったものです。翼と呼んではいますが、哺乳類である以上、私たちと同じ五本指ですし、前肢の関節も人間の腕と同じような形です。
他方、従来のゴジラシリーズに登場したキングギドラの翼は、コウモリのそれではありません。
従来のキングギドラの翼は胴体の両脇から骨のようなものが何本も放射状に伸び、そのあいだに被膜が張られた形です。骨のようなものは五本を上回る数であり、そのどこにも関節がありません。哺乳類の前肢とはまったく異なる形状なのです。
しいていえば、魚の胸ビレの構造に似ていなくもありません。
この、哺乳類では絶対にありえない翼こそキングギドラの特徴であり、しょせんは哺乳類の延長上で描かれたドラゴンやワイバーンや悪魔と決定的に異なる点だと、私は思っていたのです。
ですから、本作のギドラの形状には、正直云って抵抗があります。
本作のギドラの翼は、コウモリ型と従来のキングギドラ型との折衷案で、胴体の両脇から数本の肢が伸びた上で、一本目の肢が哺乳類の前肢のような関節を備え、さらに先端が指のように分岐するというものです。ですが、一本目の肢が巨大過ぎるために、全体の印象としてはコウモリの翼のように見えてしまいます。
うーん、これはキングギドラなのかな、キングギドラと云えるのかなと、私は悶々としながら鑑賞しておりました。
もちろん、あの巨体がトビウオの胸ビレごときもので飛ぶはずはないのですが、そこも含めて地球の生物とは異質な存在たるところかと思っていたのです。キングギドラは引力光線を吐けるので、空を飛ぶのも翼の力ばかりではないかもしれませんし。
本作のデザインのほうが空を飛びそう感が出ているのは確かですが……。
本作のギドラが大きな翼を広げた姿は、あたかも『ファンタジア』の「はげ山の一夜」に登場する黒い神チェルノボグを彷彿とさせ、なかなか迫力がありますね。
ですが、本作のギドラのデザインに関しては、複雑な思いを抱いています。
まさにワイバーンのような大きな翼が、キングギドラらしさを損なっていると思うからです。
ワイバーンを思わせるということは、要はコウモリのような翼を持っいるわけです。
ドラゴン(及びワイバーン)にしろ悪魔にしろ、コウモリのような翼を持つ怪物として描かれることが多いですが、現実にはいない怪物とはいえ、無から姿形を創造することは難しいですから、実在のいろんな生き物のパーツを組み合わせることになり、翼に関してはコウモリのそれを持ってくることになったのでしょう。
本作のデザイナーが同様のデザインにたどり着くのは、想定の範囲内といえます。
コウモリの翼は、前肢の指が伸び、指のあいだに被膜が発達して翼になったものです。翼と呼んではいますが、哺乳類である以上、私たちと同じ五本指ですし、前肢の関節も人間の腕と同じような形です。
他方、従来のゴジラシリーズに登場したキングギドラの翼は、コウモリのそれではありません。
従来のキングギドラの翼は胴体の両脇から骨のようなものが何本も放射状に伸び、そのあいだに被膜が張られた形です。骨のようなものは五本を上回る数であり、そのどこにも関節がありません。哺乳類の前肢とはまったく異なる形状なのです。
しいていえば、魚の胸ビレの構造に似ていなくもありません。
この、哺乳類では絶対にありえない翼こそキングギドラの特徴であり、しょせんは哺乳類の延長上で描かれたドラゴンやワイバーンや悪魔と決定的に異なる点だと、私は思っていたのです。
ですから、本作のギドラの形状には、正直云って抵抗があります。
本作のギドラの翼は、コウモリ型と従来のキングギドラ型との折衷案で、胴体の両脇から数本の肢が伸びた上で、一本目の肢が哺乳類の前肢のような関節を備え、さらに先端が指のように分岐するというものです。ですが、一本目の肢が巨大過ぎるために、全体の印象としてはコウモリの翼のように見えてしまいます。
うーん、これはキングギドラなのかな、キングギドラと云えるのかなと、私は悶々としながら鑑賞しておりました。
もちろん、あの巨体がトビウオの胸ビレごときもので飛ぶはずはないのですが、そこも含めて地球の生物とは異質な存在たるところかと思っていたのです。キングギドラは引力光線を吐けるので、空を飛ぶのも翼の力ばかりではないかもしれませんし。
本作のデザインのほうが空を飛びそう感が出ているのは確かですが……。
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トラックバックの反映にはしばらく時間がかかります。ご容赦ください。ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
日本が生んだ怪獣王ゴジラをハリウッドが映画化した「GODZILLA ゴジラ」(2014)のシリーズ第2作。前作から5年後の世界を舞台に、モスラ、ラドン、キングギドラなど続々と復活する神話時代の怪獣たちとゴジラが、世界の覇権をかけて戦いを繰り広げる。また、それによって引き起こされる世界の破滅を阻止しようと、未確認生物特務機関「モナーク」に属する人々が奮闘する姿を描く。「X-MEN:アポカリプス...
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」
楽しみにしすぎたせいもあるのか、ものたりない残念感。
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
『GODZILLA ゴジラ』から5年後の世界。 モスラ、ラドン、キングギドラら、単なる伝説にすぎないと思われていた怪獣たちが再び目覚め、世界の覇権をかけて争いを始めた。 全人類の存在すらもが危ぶまれる中、未確認生物特務機関モナークは、世界の破滅を阻止しようとするが…。 SF怪獣アクション。 ≪王(キング)の覚醒。≫
映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2D・日本語吹替版)」 感想と採点 ※ネタバレなし
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2D・日本語吹替版)』(公式)を『日本語字幕版』に続いて、本日、劇場鑑賞。
採点は、★★★★☆(最高5つ星で、4つ)。100点満点なら 80点にします。
【私の評価基準:映画用】
★★★★★ 傑作! これを待っていた。Blu-rayで永久保存確定。
★★★★☆ 秀作! 私が太鼓判を押せる作品...