『日本のいちばん長い日』は宮城事件を描き切ったか?

日本のいちばん長い日 豪華版(3枚組) [Blu-ray] 本作の題"日本のいちばん長い日"とは、1945年8月14日から15日にかけての一昼夜を指している。
 8月15日は「終戦の日」と呼ばれることが多い。
 だが、戦争は本当にこの日に終わったのだろうか。

 1945年8月10日には、社団法人同盟通信社がポツダム宣言(日本への降伏要求)の受諾を海外に向けて報道していた。大日本帝国政府は、条件さえ整えば受諾する意思があることを連合国に伝えていたからだ。翌日、連合国は勝利を祝ったという。NHKのアナウンサーだった近藤富枝氏は、海外の短波放送を聴いて13日に終戦を知った。[*1]

 大多数の国民はそんなことを知る由もない。朝日新聞は、日本が敗戦することを8月10日には掴んでいながら、ポツダム宣言を受諾するまさに8月14日においてもなお、その社説で「一億の信念の凝り固まった火の玉は消すことはできない。」と主張し、最後の最後まで国民を鼓舞し続けた。[*2]
 14日夜のラジオで、翌日正午に重大放送があると告知されても、「まさか戦争の終わりを告げる放送とは思いませんでした」と半藤一利氏は振り返る。[*3]

 天皇みずから「終戦の詔書」を読み上げてポツダム宣言の受け入れを国民に伝えた、いわゆる玉音放送(ぎょくいんほうそう)が行われた8月15日を終戦の日と受け止める国民は多いだろう。
 他方、8月15日以降も戦闘は続いていた。8月9日に参戦したソビエト連邦は南樺太に進撃、その攻撃は日本がポツダム宣言を受諾しても止まず、日本から停戦のための軍使を何度送っても殺された。
 大日本帝国が降伏文書に調印したのはようやく9月2日である。米国はこの日を対日戦勝記念日としている。中華民国は翌3日を戦勝記念日とし、戦後成立した中華人民共和国も9月3日を抗日戦争記念日にした。

 第二次世界大戦はだいたい1945年8月の中旬から9月にかけて終結したのだが、ある一日をもって「終戦した日」と云い切るのは難しい
 20世紀の歴史を知る私たちですら終戦した日を特定できないのだから、当時の人たちが戦争がいつ終わるのか判るはずもない。1937年の盧溝橋事件をきっかけに8年も続けてきた戦争なのだ。しかも、ささいな発砲に端を発した日中両軍のつばぜり合い程度のはずだった盧溝橋事件が、アジア・太平洋全域を巻き込んだ全面戦争に発展するなんて、日本人も中国人も、軍人も政治家も誰も予想し得なかったに違いない。そんな意外なことが8年も続いて、九つもの内閣が戦争を終息できない状況で、1945年8月には戦争が終わると確信できた人がいるはずもない。

 それこそが、原田眞人監督の映画『日本のいちばん長い日』を観るときに肝に銘じておくべきことだ。
 現代の私たちは、1945年8月に戦争が終わったことを知っている。8月15日正午に玉音放送が流れたことも知っている。結果を知っているから、映画を観ていても、つい戦争終結まであと何ヶ月、あと何日、あと何時間と数えてしまうが、当時、渦中にいた人々には明日なにが起こるかも判らなかったばすだ。
 今日の努力が、明日の目論見が、役に立つかどうか見当もつかない。それでも踏ん張って力を尽くし、歴史を動かさんとする。そんな人間ドラマが『日本のいちばん長い日』だ。


決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫) ■2015年に即した『日本のいちばん長い日』

 「逆境を生き抜く主人公が僕の作品のテーマ。」
 『駆け込み女と駆け出し男』公開時に原田眞人監督はそう語ったが[*4]、これはそっくりそのまま『日本のいちばん長い日』にも当てはまる。なにしろ逆境も逆境、いま国が滅びようとしているのだ。その状況下で、内閣総理大臣鈴木貫太郎が、陸軍大臣阿南惟幾(あなみ これちか)が、国の存続に全力を挙げる。

 何かを成し遂げようと頑張る物語は数多い。往々にして、完遂すること、目的を達成することの喜びと素晴らしさが謳われる。私たちを取り巻くのは、はじめたら最後までやり通すことを称賛する価値観だ。
 ところが本作が描くのは、やめることだ。途中でやめるのは、実は成し遂げるより難しいかもしれない。間違いを認めたことになるから、はじめた人の責任が問われるし、これまでの犠牲を無にすることにもなる。続行したほうが利益(や誇りや満足感)を得る人間もいるだろう。現在、1990年頃は10%もなかった国債依存度を40%にして、返す当てもないまま国債残高を増やし続けているのは、その金に依存する人がいるからだ。まるで物資もないのに戦線を拡大し続けた大日本帝国軍である。
 本作が胸を打つのは、「途中でやめる」という偉業に挑んだ人々の真摯な姿を描くからだ。

 もちろん、最後までやり通そうとする人もいる。ここで云う「最後まで」とは、最後の一兵まで戦うこと、国民二千万人が特攻してでも戦争を続けることだ。日頃は美談として語られる「最後までやり抜くこと」が、実はとんでもなく恐ろしい発想であることを、本作は教えてくれる。

 しかも、これは国民が望んではじめた戦争だ。日清戦争に勝利した経験から、国民は中華民国にも勝てると思っていた。期待どおりに中華民国の首都南京は陥落したから、国民は提灯行列でお祝いした。デパートは戦勝セールで賑わったという。真珠湾を攻撃して米国と開戦したときは、首相官邸に激励の声や電話が殺到し、電話回線がパンクしそうなほどだった。
 本作には強硬に戦争継続を主張する人物として元首相の東條英機が登場するが、彼とて首相就任時は日米開戦を回避しようとしたのだ。しかし戦争回避の努力をしようとすると国民から抗議の手紙が来て、開戦すると「よくやってくれた」「東條さんは英雄だ」と称賛されたそうだから、気持ちが戦争に傾くのはとうぜんだろう。

 その戦争を終わらせようというのだから難事業だ。
 戦争を終わらせる。本作の鈴木貫太郎首相はその決意を滲ませるが、それは手段であって目的ではない。鈴木首相はじめ閣僚、軍人たちの目的は国を存続させることだった。
 その思いは同じでも、国を存続させるために戦争を終わらせようと考える人もいれば、国を存続させるために戦争を続けようと考える人もいた。その両者を人間性まで含めてきっちり描いたことが、本作に深みを与えている。

 大臣たちは国体護持と口にするが、では国体とは何かというと曖昧だ。
 本作の公式サイトには、国体護持が「天皇制の核心である、天皇の国法上の地位・権威を守ること」と解説されているけれど、劇中では国体護持のために連合国に提示する条件すらまとまらず、何をもって国体護持とするか今さら議論している様が描かれる。統一した見解がないものを守るために会議は長引き、そのあいだにも多くの国民が死んでいた。

 本作は、決められない日本人を描いた映画としても印象的だ。延々会議を続けても、いっこうに結論が出ない。
 厚切りジェイソンの名でお笑い芸人としても活躍するIT企業の役員ジェイソン・ダニエルソン氏が「スピード感で日本は惨敗」「ムダな会議が多すぎる」と指摘するように、延々と会議を続けるのは日本の組織にありがちな光景だ。特に戦前の帝国政府は省という独立した組織の寄せ集めでしかなく、内閣は省の代弁者たる大臣が省益を主張する場だった。一つの組織というよりも、利害の異なる国々が参加する国際会議に近い(この構造は今もたいして変わらない)。そんな会議で話がまとまるはずがない。
 原田監督の作品らしく英語のクレジットが併記された本作は、外国でも上映する気満々だ。ポツダム宣言は7月26日に出されていたのに、帝国政府は何をしていたのか。本作は、決められない日本の実態を外国人にも判りやすく伝えるだろう。

 各省に共通する認識はただ一点、天皇を戴くということだった。
 その一点にかけるしかないまでに追いつめられる鈴木首相と、その一点を巡る攻防戦が本作の見どころであり、特徴でもある。


日本のいちばん長い日 [東宝DVD名作セレクション]■岡本喜八監督版(1967年版)『日本のいちばん長い日』との二つの違い

 半藤一利氏が(大宅壮一名義で)著した1965年の『日本のいちばん長い日――運命の八月十五日』は、すでに1967年に岡本喜八監督により映画化されている。
 岡本版と比較した本作の特徴と意義は、大きく二つあると思う。

 岡本版は宮城(きゅうじょう)事件――終戦反対派の将校による8月14日のクーデターを中心に描いたが、本作は4月の鈴木内閣の組閣から説き起こし、8月15日に向けた動きをじっくりと描き出す。
 観客も作り手もその多くが戦争を経験しており、記憶が鮮明だった1967年当時であれば、あの日、国民の知らないところで何があったかを描くだけで充分だろうが、戦争経験者がほとんどいない現在、当時の状況やどのように対立が生じたかを丁寧に描かなければ、争点が観客に伝わるまい。

 そのため、本作は半藤一利氏の『日本のいちばん長い日 決定版』を原作にするだけでなく、同氏の『聖断 天皇と鈴木貫太郎』、角田房子氏の『一死、大罪を謝す 陸軍大臣阿南惟幾』、宮内庁が2014年に発表した『昭和天皇実録』も取り入れたという。
 『日本のいちばん長い日』という題名の意味は若干薄れたが、一日の事件だけでなく、戦争をやめるという大事業そのものが題材になった。この大事業がいかに行われたかを現代の私たちに判りやすく伝える作品になった。戦争終結といえば8月が当たり前、ではないのだ。多くの人の努力と深謀遠慮が、ようやく実を結んだのがこのときだったのだ。

 もう一つの特徴は、重要な人物として昭和天皇を登場させたことだ。歴史上の位置づけからすればとうぜんなのだが、なんと昭和天皇の姿や声をはっきりと描く日本映画は本作が初めてだという。
 これまでの日本映画は、天皇に会いに行くショットと退室するショットの積み重ねで天皇の存在を示唆したり、背中越しの映像を見せるだけで、おっかなびっくりの扱いだった。「宣戦の詔書」も「終戦の詔書」も昭和天皇の名で出されたのに、歴史の当事者がこのようにしか描かれないのは、考えてみればおかしなことだ。

 こと終戦に至る道のりには、昭和天皇の言動を明確にしなければ描けないものがある。これまでの映画では天皇を取り巻く閣僚や軍人たちの描写から匂わせるだけだったものを、本作がズバリと提示したことに感心した。奈良橋陽子氏が制作した『終戦のエンペラー』では片岡孝太郎さんが昭和天皇を演じたが、こちらの映画は日米合作ということになっているし、出番もさして多くなかった。本木雅弘さんが全編出ずっぱりで昭和天皇を演じたのは特筆すべきことなのだ。
 吃音に悩むジョージ6世を描いた『英国王のスピーチ』や酒を飲んで管を巻くエリザベス女王を描いた『ミニオンズ』に比べればまだ慎重なアプローチだが、本作が良い意味での突破口になればと思う。


 驚くべきは原田眞人監督の腕前だ。
 みずから「自分の最高傑作と思う『駆込み女』の後、また次の最高傑作を作ることができた」[*4]と云うように、『駆け込み女と駆け出し男』を発表したばかりの監督がもう本作と、傑作を立て続けに連発するのだから恐れ入る。しかも『わが母の記』で小津安二郎を彷彿とさせ、『駆け込み女と駆け出し男』で小津安二郎プラス『赤ひげ』の黒澤明等を彷彿とさせた原田監督は、本作でさらなる高みに昇った。
 本作の前半では小津安二郎の特徴とされるロー・ポジションからのアングルを多用し、子供が歴史を垣間見るように大人たちの言動を捉えている。後半になると階段から見下ろすショットが増え、同時多発的に進行する事態を俯瞰するようになる。小津安二郎の静謐な画作りから黒澤的ダイナミズムへの転換が実に見事だ。

 しかもリアリズム溢れる画面は、差し挟まれる記録映像と何ら違和感がない。数多くの原田監督の作品に出演し、本作でも阿南陸相を演じた役所広司さんは「俳優たちの演技からリアリティーがこぼれ出る瞬間を選んで、ドキュメンタリー風に仕上げるのがうまい監督です」と語る。[*5]

 格調高く骨太で面白い。
 こんな映画はそうそう観られるものじゃない。


 とはいえ、本作が歴史の真実を描き切ったかといえば、どうやらそうでもなさそうだ。
 原作者半藤一利氏は、『日本のいちばん長い日』の出版から三年後のことを振り返る。[*3]
---
 「宮城事件」と呼ばれる14日深夜から15日未明の出来事は、当時、玉音放送の録音盤の奪取未遂事件として知られていました。当事者たちは、「あれはクーデターではない。天皇の放送を阻止し、もう一度御前会議をやってもらう計画だった」と言っていた。

 ところが調べていくと、実はクーデターでした。皇居を占拠し、鈴木貫太郎首相以下を監禁して内閣をひっくり返し、軍事政権を立てて徹底抗戦する計画だった。うまくいかず、それなら録音盤を奪おうと方針が変わったんです。

 実はまだ裏がありそうなんです。

 68年、この本が新国劇の芝居になり、招待されて見物に行った帰り道のこと。終戦当時の肩書で言うと、荒尾興功(おきかつ)・陸軍省軍事課長、井田正孝中佐ら事件の当事者たちも招待されていて、私が後ろにいるのに気づかず、「今度も出ませんでしたね。これは永遠に出ませんね」と話していた。食い下がったが聞き出せなかった。残念です。
---

 歴史の闇は深い。


[*1] 読売新聞 2015年8月13日
[*2] 安田将三・石橋孝太郎 (1995) 『朝日新聞の戦争責任……東スポもびっくり!の戦争記事を徹底検証』 太田出版
[*3] 読売新聞 2015年8月14日
[*4] 読売新聞 2015年5月8日夕刊
[*5] 読売新聞 2015年7月31日夕刊

日本のいちばん長い日 豪華版(3枚組) [Blu-ray]日本のいちばん長い日』  [な行]
監督・脚本/原田眞人
出演/役所広司 本木雅弘 山崎努 松坂桃李 堤真一 神野三鈴 大場泰正 キムラ緑子 小松和重 中村育二 山路和弘 中嶋しゅう 蓮佛美沙子 井之上隆志 木場勝己 戸田恵梨香 松山ケンイチ
日本公開/2015年8月8日
ジャンル/[戦争] [ドラマ]
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【theme : 戦争映画
【genre : 映画

tag : 原田眞人 役所広司 本木雅弘 山崎努 松坂桃李 堤真一 神野三鈴 大場泰正 キムラ緑子 小松和重

⇒comment

一抹の不安…

さすが、ナドレックさんの解説にはいつも深みがあり、先に読んでから観ればよかったといつも思ってしまいます。前作がお気に入りの私にとって、この新作はなぜか一抹の不安を感じてまだモヤモヤしています。確かに戦争を終わらせるために奮闘した人々を中心に描いていますが、昭和天皇をはじめ、すべての人々が美しく描かれすぎていて、これだけ人格者がいてくれたら、万が一戦争が起こっても大丈夫なんじゃないか、日本人には人格者がたくさんいるから心配することはないんじゃないか、とまで楽観視される危険性にモヤモヤしてしまう不安神経症の自分が頭をもたげてくるのです。ましてや、これが海外で上映されると、日本人は過去に回帰しつつあるのではないか、と疑心暗鬼されてしまうのではないか、とまで。原田真人監督の作品は好きなので、批判する気はさらさらないし、思いは伝わってくるのですが、いかんせん前作と比べて見てしまうと、1968年の空気感と2015年の空気感の違いが、反省と苦渋にまみれたヨレヨレの日本人と、自信を取り戻し優秀さを自覚し始めた日本人とが浮き彫りになってしまうのです。確かに阿南陸相の描き方は軍国主義者としての描かれ方が強い前作の方が危険度は高いのですが、役所さんが当時の陸相としてのリアル感が乏しいためか、軍人を美化して捉えられてしまいそうなんです、山本五十六さんの時はそうは思わなかったのに、不思議なんですよね。

まあ、面白かった

ナドレックさん、ども。
 言及されておりませんが、ソクーロフ「太陽」が、面白かった記憶があり。
 あれは、かなりコミカルな昭和天皇であり、今回は、かなり二枚目ですね。
 実際の昭和天皇は、その中間辺りにいた、と拝察しますが、どんなものでしょう。
 しかし、桃井かおりは、ないでしょう(笑)。

 駆け込み女と、硬軟?合わせ技で、今年の監督賞は、決まりか。
 大集団を駆使した大作ものは、原田監督に決まり、という感じになってきましたね。
 最後のクレジットに、岡本真実、三船力也の名があり。
 岡本はどこに? 三船は、阿南の子供の役だったクレジット。
 ここらへんは恥ずかしいデヴュー作(笑)「さらば映画の友よ インディアンサマー」の、名残か(笑)。
 ただ役所では、どうにも自決するように見えず、最後の最後に裏切る気がして(笑)ここだけは、三船の使い回しが、アリだったのでは(笑)。
 実は、つい最近フィルムセンターで「ガンヘッド」を見ましたので、そのカラミで原田論をかこう、と色気を出したばかりに、まったく感想駄文をかける気がしません(笑)。
 これから、ナドレックさん絶賛の「ミッション・インポッシブル」を見に行く予定です。

Re: 一抹の不安…

梅茶さん、こんにちは。
返事のコメントを書いていたら、また長くなってしまいました。
別の記事にしましたので、ご笑覧いただければ幸いです。
http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-551.html

Re: まあ、面白かった

昔の映画さん、こんにちは。
『太陽』は未見なのですが、面白そうですね。
原田眞人監督は『太陽』の昭和天皇を観て「これは自分が撮らなくてはいけない」という気持ちになったそうですけど。
http://getnews.jp/archives/1092282

『駆込み女と駆出し男』と本作の連発には脱帽ですね。
原田論、期待しています。『おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ!』も取り上げてください:-)

No title

こんちは。

映画を見終わった後の概観なんで、正確じゃなかったらごめんなさい。私は岡本版の方がクーデターがどんどんオオ事に育ってく様が見えて好きです。そして、原田版の青年将校達は何でクーデターになっちゃったのか分からんけど流れでなっちゃったみたいに見えます。

三船敏郎が言う「海軍は負けても陸軍は負けてない」と言うのが陸軍自体でも信じたがってる言説なのではないか、と。だから、本土決戦で勇猛果敢な有史不敗の日本人神話はまた達成されるのではないか。青年将校達にしてみれば、彼等はまだ日本にいて、これからの戦いに備えている。勝ち負け以前に、まだ始まっていないんじゃないでしょうか? 彼等に取ってみれば、いよいよこれから自分達が戦って挽回しようというのに機会も与えられず降伏かよ。そんな気持ちだったんじゃないでしょうか。

戦争がいつ終わったのかなんて分からないという話で思いだしたのは小野田さんと横井さんです。あと、「1.2のアッホ」の監督も確かキャラ的にはそういう人だった気がする。凄いマンガたな、「1.2のアッホ」(変な脱線の仕方をしてしまった)

Re: No title

ふじき78さん、こんにちは。

>三船敏郎が言う「海軍は負けても陸軍は負けてない」と言うのが陸軍自体でも信じたがってる言説なのではないか、(略)そんな気持ちだったんじゃないでしょうか。

まったくもってそのとおりだと思います。
地政学にはシーパワー国家(海洋国家)とランドパワー国家(大陸国家)という概念がありますね。海洋国家の代表といえば英米、大陸国家の代表は中露でありましょう。複雑な海岸線を持ち、多くの島で構成される日本は海洋国家になってもおかしくなかったでしょうが、鎖国しても平気な国民性や、海軍力や海運を必ずしも国家発展の柱とはしていないこと等から、海洋国家とは云えないと指摘されています。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/279273/071300005/
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44021
そんな日本には、最終的な勝敗は陸上戦力によって決せられるという考え方がありました。陸軍が存続している以上まだ負けてないと、陸軍将校たちは本気で思っていたに違いありません。現代の私たちには、1942年6月のミッドウェー海戦で負けてから大日本帝国は敗戦まっしぐらに見えますが、終戦時でも陸軍には数百万人の将兵が残っていたわけですからね。
だからこそ、陸軍がまだ戦えると考えていた1945年8月時点で戦争を終わらせるのは難事業だったことでしょう。

戦前の軍人には選挙権がなく、政治的見解を発表することも禁じられていたそうです。彼らにはクーデターを起こすくらいしか自分たちの考えを表明する手段がありませんでした。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150109/276012/
自分たちが選んだわけでもない政治家たちが戦争を終わらせる方向に動いていき、本格的な陸上決戦の機会さえ与えられない。岡本監督の1967年版『日本のいちばん長い日』からは、そんな陸軍将校たちの怒りが伝わってきます。
クーデターが成功すれば、本土上陸を企る連合軍の上空に雲霞のごとく特攻機が押し寄せて、雨あられと降り注ぐという悪夢のような光景が現実になったかもしれません。

1967年版では、まだ兵力があることを強調する陸軍将校を描いて戦争続行を訴える側のエネルギーにスポットを当てましたが、2015年版ではそれよりも兵士に持たせる武器が火縄銃だの鍬だの鋤だのしかない実情を描き、これで戦争を続行しようとする陸軍の狂気と戦争を終わらせる必要性にスポットを当てました。
そのアプローチの違いが面白いですね。どちらも面白い映画ですが、私には原田監督の演出術のほうが肌に合うようです。

1967年版では阿南陸相の私生活がまったく描かれませんが、2015年版では次男が戦死していることが語られます。次男の戦死は阿南惟幾を考える上で重要なエピソードだと思います。
戦争中、陸軍大将の息子たちは戦地といっても安全なところに配属されて守られていたそうです。死ぬのは貧乏人や下っ端なんですね。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150609/284058/
なのに阿南惟幾の次男惟晟(これあきら)は1943年11月20日に戦死します。その死の状況が明かされるのがラストとは、巧い作劇だなぁと思います。

ところで、

>有史不敗の日本人神話

1967年版の劇中、陸軍将校が「帝国陸軍は不敗だ」と云っていたように思いますが、対ソ戦争であるノモンハン事件は帝国陸軍の敗北なんですよね。張鼓峰事件も日本側から停戦を申し入れているので日本の勝ちとは云い難いし、帝国陸軍の創設以前には白村江の戦いや下関戦争で日本側は負けてます。文禄の役・慶長の役も日本の勝ちではないですね。
ノモンハン事件では生き残った将校を自決させたり、帰還兵に箝口令を敷いて、敗北を隠蔽しましたが、負け戦を隠蔽しちゃえばそりゃあ不敗ですよね。

『1・2のアッホ!!』って懐かしい。
そんな設定でしたか。残留日本兵が次々見つかる時代でしたね。

No title

こんちは。
「1.2のアッホ」のカントクは謎の人なのですが、コンタロウのデビュー作(か、赤塚賞入賞作)の「父、帰る」はカントクと同じ顔の爺さんがジャングルから現代日本に帰ってくるマンガでした。
Secret

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