【投稿】ガトランティス戦争開戦までのガミラス―ガミラス第二帝国― 『宇宙戦艦ヤマト2199』ガミラス考察補論集1 小説~ガトランティス戦争編~

 T.Nさんの補論「イスカンダルの王権とデスラーの人物像について」の一部を構成する思考実験小説を以下に公開する。

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『宇宙戦艦ヤマト2199』 ガミラス考察補論集1

思考実験としての続編小説~ガトランティス戦争編~

――デスラーズ・ウォーから本編までのあらすじ――
 ヒス・ディッツ政権のガミラスが内乱に陥った好機を捉え、ガトランティスが小マゼランに侵攻。小マゼラン方面軍は全滅し、小マゼランはガトランティスの手に落ちた。そしてついに大マゼランにガトランティスの大軍が侵攻し、帝国の各地が劫略と奴隷狩りの惨劇を迎える。軍事力の崩壊したヒス・ディッツ政権には為すすべがなく、帝国は滅亡の危機を迎える。
 そこへデスラーが銀河系方面軍を率いて潜伏先の銀河系より舞い戻り、ガミラス全軍に自身の生存を訴えた。将兵達は帝国滅亡の危機を前にして建国の英雄に全てを賭ける事を決意、全軍がデスラーの元に寝返る。ガミラス全軍を糾合したデスラーはガトランティス軍を巧妙な罠にかけて撃滅し、指揮官のバルゼーを敗死させる。続く掃討戦でデスラーはガトランティス軍を大マゼランから一掃し、帝国各地で奴隷として連れ去られようとしていた臣民を救出した。
 こうして大マゼランは危機を脱し、ヒス・ディッツ政権はデスラーに滅ぼされてしまう。その後デスラーは小マゼラン奪回の兵を出すが、ガトランティスは小マゼランを「無人の野」にして銀河系に移動した後だった。小マゼランをも帝国の手に取り戻したデスラーは「大小マゼラン諸種族の推戴を受ける」という形式で「大小マゼラン諸種族の第一人者としての総統」に就任、ガミラス第二帝国を建国したのだった。


1. ガトランティス戦争開戦までのガミラス――ガミラス第二帝国――

 ――ヤマトのバレラス襲撃から7年後――

 ガトランティスが大マゼランに侵攻し、デスラーにより撃退されてから5年以上の歳月が流れた。ガミラスとガトランティスの両帝国にとってこの5年間というものはまさに、両国が自らの支配体制を固め、それぞれが甚大な損害を被った戦力を再建し次の戦争を行うための準備期間でもあった。

 デスラー率いるガミラス軍は大マゼランの会戦において、ガトランティスの大マゼラン攻略軍を全滅させ大マゼランから彼らを叩き出すのに成功したものの、それまでにガミラスが失った戦力は極めて膨大なものだった。
 ガミラスが保有していた戦力のうち、戦略予備と位置づけられていた基幹艦隊1万隻余はガトランティス軍侵攻以前にヤマトにより3000隻を残して全滅した。小マゼラン方面軍2万隻弱はガトランティス軍により殲滅された上、大小マゼランのガミラス地上軍も侵攻したガトランティス軍に軒並みなぎ倒されてしまった。デスラーが銀河系方面軍の、地上部隊も含めた文字通りの全軍を率いて大マゼランに戻って来た時には、ガミラス帝星を除く殆どのガミラス領有人惑星がガトランティス軍の劫略と奴隷狩りを受ける惨状となっていたのだった。
 デスラーはガミラス帝星のあるサレザー恒星系に逼塞を余儀なくされていたガミラス軍航宙艦隊に自身の生存を訴え、巧みな弁舌で将兵を味方につけた。そして彼は自ら率いる銀河系方面軍1万隻と小マゼラン方面軍の残余5000隻、そして基幹艦隊3000隻を糾合し、ガトランティス軍に勝利した。続く掃討戦でデスラーはガトランティス軍を大マゼランから叩き出し、何ヶ月かの準備の後に小マゼラン奪回の兵を挙げ、小マゼランをも帝国の手に取り戻した。小マゼランでの抵抗は殆どなかった。ガトランティスは小マゼランの資源と人間を洗いざらい接収して「無人の野」とした後、銀河系へと移動していたのである。こうして、デスラーは大小マゼランを帝国の手に取り戻す事に成功した。
 しかし、帝国に復権したデスラーの手元に戦力として残されたのはおよそ1万5千隻の艦艇と銀河系方面軍の地上部隊、そして大マゼランの地上部隊の僅かな生き残りのみであった。デスラーはヤマトのバレラス襲撃以前の半数以下にまで激減してしまった戦力を元に、自らの帝国を再び大小マゼランに築き上げていったのだった。

 ヤマトがバレラスを襲撃して以来流れた7年という歳月は、ガミラス帝国の歴史をそれ以前とそれ以後に分けて記述するほどの重大な変化を大小マゼラン世界にもたらした。中でも、ガトランティスの大小マゼラン侵攻が帝国に与えた影響はとりわけ大きなものだっただろう。大小マゼラン世界の政治秩序が文字通りひっくり返ってしまったからである。
 これまでガミラスが大小マゼラン世界で喧伝してきたイスカンダル主義――イスカンダルを『宇宙の救済者』として奉じようとする考え方――と、ガミラス帝国以前より大小マゼラン世界のそこかしこで存在してきた救済者としてのイスカンダルへの信望は、ガトランティス軍の劫略と奴隷狩りにイスカンダルが何一つ行動を起こせなかった事から大きく失われてしまった。
 反対に、ガトランティス軍を撃退し大マゼラン諸惑星の住民をガトランティスの奴隷船から救い出したデスラーは、「大小マゼラン、ひいては宇宙の救済者」という声望を大小マゼラン世界で獲得するに至った。
 遥かな昔よりガミラスはイスカンダルを「文明をもたらし、宇宙を救済に導く」存在として崇拝し、至高の存在として奉じてきたのだが、両者の大小マゼランにおける立場は今や完全に逆転したのだった。

 大小マゼランを帝国の手に取り戻し、その支配者の座に再び収まったデスラーは「大小マゼラン諸種族の推戴を受ける」という形式で「大小マゼラン諸種族の第一人者としての総統」に就任した。
 デスラーがガミラスに復権して以降の帝国をガミラス第二帝国と呼ぶなら(あくまで便宜上の呼称であり、正式な国号はあくまでガミラス帝国である)、ガミラス第二帝国はそれまでの純血ガミラス人のみが多種族を強圧的に支配する帝国から多種族が統治に参画する「大小マゼラン諸種族の世界帝国」へと変貌を遂げつつあった。
 デスラーは帝国各地を精力的に巡回して各惑星社会のガミラス化を促し、ガミラス的な生活様式を普及させ――ガミラスの「同化政策」の骨子だった――、帝国全体の何千という臣民(純血ガミラス人、二等臣民を問わず)を帝国の支配エリートである名誉ガミラス臣民に登用し、さらにそれを遥かに上回る数の二等臣民に一等臣民権を授与した。こういったことの全ては実のところ、ガミラスが大小マゼランを統一した直後からデスラーによって手が付けられていたのだが、ガトランティスの大小マゼラン侵攻はそれらを一気に促進する契機となったのである。

 大マゼランの会戦でガトランティス軍を破り、大マゼラン各地で掃討戦を行う過程でデスラーはガトランティスの奴隷船から助け出した諸惑星の臣民達――これには二等臣民だけではなく純血ガミラス人移民も含まれていた――の前で、自分こそが大小マゼラン全ての民の生活を守る存在である事を訴え、ヒス・ディッツ政権に身分降格された名誉ガミラス臣民や一等臣民を復位させ、同政権に対し反旗を翻した二等臣民の多くを赦し有用な者を名誉ガミラス臣民や一等臣民に登用し、純血ガミラス人移民が移民先で得た資産をあらためて安堵していった。
 そして、デスラーは登用した名誉ガミラス臣民や一等臣民に土地や資産を与え、大規模な植民を開始した。かつてガミラス帝星の純血ガミラス人に対して行ったのと同じ施策である。そのための土地や資産は十分に存在した。ガトランティス軍により無人の地となった惑星や土地が数多くあったからである(特に小マゼランがそうだった)。
 ガトランティス軍に焼き払われた惑星には環境改造プラント(ガミラス軍が太陽系の冥王星に設置したのと同種類の施設で、惑星の環境をごく短期間で作りかえることができた)を設置して環境の再生に着手し、登用した者達に将来与える土地を確保した他、各地に調査担当者を派遣して無人となった土地の権利関係を正確に調査した上で区画を整理して、それらを個人に割り当てていった。

 植民計画で土地政策と並行して行われたのが、登用した名誉ガミラス臣民や一等臣民への職の提供である。デスラーは同化政策の一環で有人諸星系の宇宙や地上に以前から建設されていた生産施設(工場だけではなく、農場プラントも含まれる)を再稼動させ、戦争により荒廃した諸惑星に物資や物品を供給し、その生産や販売の仕事を彼らに任せた。
 ガミラスが建設したこれらの生産施設は、元々ガミラスの技術で作られた製品を大量に惑星社会に供給し、 ガミラス的な生活様式を普及させ惑星社会のガミラス化を促すためのものだった。ガトランティス軍はこれらの施設をガミラス帝星よりも優先して狙い、無傷で接収しようとしたが、大マゼランの会戦で敗れたガトランティス軍があっという間に一掃された結果、デスラーに殆ど破壊されることなく奪い返される事となっていたのである。
 ガミラス製品の大量の供給とそれらを使用した地上の復興計画は、ガミラス的な生活様式の急速な普及を促した。これまで緩慢な速度で進んでいた諸惑星のガミラス化が、ガトランティスの侵攻によって結果的に一気に促進されるようになったのだった。

 デスラーがガトランティス軍を破った直後から行った一連の施策は、かつてデスラーの叔父やデスラー本人に征服されたガミラス帝星の公国の民――ガミラス帝国は元々、ガミラス帝星に存在したガミラス大公国を構成する複数の公国のうち、デスラーの叔父が治めるデスラー公国が他の公国を征服することで形成された――や二等臣民といった、帝国の支配する人々のうち不満を爆発させる可能性のある階層を選び出して、彼らに自身と家族の暮らしを支える手段を与えるものだった。ガミラスの大小マゼラン統一以来デスラーにより行われていたこれらの施策(植民と登用、職の提供)は、戦争の勝利によりはるかに行動の自由を得た今、その活動をよりいっそう大規模に再開されたのだった。政治的に彼はこれによって利益を得て、数多くの人々に恩を着せたと同時に、裕福な市民の数を大小マゼラン全体で大きく増やしたのである。
 その結果、ガミラス第二帝国に非常に重要な成果がもたらされた。大小マゼラン諸種族の中にガミラスやデスラーに対する忠誠心と感謝の気持ちが育まれたことである。少なくない人々が、自分たちが帝国の犠牲者ではなく、受益者だという意識を持つようになっていった。彼らは帝国という共同体の一員となったのである。彼らにとってデスラーは、紛れもない「救済者」であった。

 ガミラス第二帝国において、デスラーへの支持は今や大小マゼラン世界全体に広まっていた。彼が「大小マゼラン諸種族の第一人者としての総統」に就任することができたのも、大小マゼラン諸種族の間で広く見られるようになった支持のおかげだった。
 これはそれまで、ガトランティス侵攻以前のガミラス帝国におけるデスラーの支持基盤が叔父のデスラー大公から受け継いだデスラー公国に限られていたのと比べると格段の変化といえた。彼の権力基盤は非常に強固なものとなっていったのである。

 デスラーはこうした大小マゼラン諸種族や登用した臣民、純血ガミラス人移民達――元々はデスラーとその叔父に滅ぼされた公国の民であり、潜在的危険分子として追放同然の移民となり、土地や資産・職の提供を受け、ガトランティス軍による惨禍から救われた結果デスラーを支持するようになっていた――の支持を背景に、ガミラスの軍事力の再建と更なる増強を推し進めていった。
 この「大軍拡」においてデスラーが行った軍制改革のうち、特筆されるものに「支援軍の創設」がある。彼はヤマトとガトランティスにより半壊状態となったガミラス軍を再建するため、二等臣民を大規模に戦力化した「支援軍」を創設した。
 支援軍は以下のような仕組みを持つものだった。

・反乱の可能性を抑えるため、一つの部隊に複数の種族の兵士を混合した混成部隊にする。このようにすれば、例えばザルツ人やオルタリア人等の異種族同士は利害が必ずしも一致しないため、1つの種族だけで構成される部隊に比べて一部の反乱がたちまち全体に波及する危険性をかなり抑えられる。

・従来の二等臣民の部隊は(ヴァルケ・シュルツが率いていた二等ガミラス旅団のように)規模が旅団程度に留まり、部隊数も多くなかった(そのためガトランティス軍の大小マゼラン侵攻以前には、諸惑星に駐留するガミラス地上軍に深刻な兵力不足を補う目的で大量の機械化兵が配備されていた)のに対し、支援軍は最大の部隊単位が師団に拡大され部隊数も大幅に拡充された。ガミラス軍の部隊単位としての軍及び軍団は、支援軍の師団と一等臣民の正規軍師団の混成部隊となった。

・旅団長と師団長は一等ガミラス臣民が務める。旅団長以上のポストは一等臣民が殆ど全てを占める軍団等の上級司令部との打ち合わせが増えるため、身分の違いによる軋轢が生じるのを回避するためにもそのような仕組みが取り入れられた。旧来の二等ガミラス旅団の旅団長は支援軍創設に伴い全員一等臣民に昇格する事となった。

・支援軍の将兵は一定年数(10年程度)の勤務で一等臣民に昇格でき、その子供にも一等臣民権が与えられる。ただし、旅団長になる者は一定年数が過ぎていなくても一等臣民に昇格する。

 一定の兵役期間を過ぎると一等臣民権が授与される支援軍は(古代ローマの支援軍と同様に)多種族をガミラス人として統合する装置となり、ガミラス第二帝国が「純血ガミラス人の帝国」から「大小マゼラン諸種族の帝国」へと変貌する後押しとなっていった(この事はイスカンダルにとって、イスカンダルが「純血ガミラス人の上位に立つ至高の存在」から帝国の支配する数多の星の一つに過ぎなくなる事を意味していた)。
 この支援軍とデスラーによる名誉ガミラス臣民・一等臣民への登用は、ガミラス第二帝国がもはや効力を失ったイスカンダル主義に代わり掲げるようになっていた「多種族の統合」という帝国の理念が、言葉だけではない実質を伴うものであるとして大小マゼラン諸種族に捉えられた。支援軍はガミラス軍が抱えていた深刻な兵員不足の問題を大きく改善し、ガトランティスとの戦争を開始する頃にはガミラス全軍のおよそ半数が、こうした支援軍で占められるようになっていたのだった。

 支援軍の創設と拡大に並行し、デスラーは一等臣民で構成される正規軍師団(殆どが純血ガミラス人で占められていた)の増強を断行した。ガミラス帝星において「大動員令」を発し、大勢の市民をガミラス軍、特に航宙艦隊に徴集したのである。この徴兵は、対象をバレラスの存在する「デスラー公国」だけではなく他の公国にも大きく拡大して実施された。
 その結果、少なくとも数字の上ではガミラス正規軍はヤマトのバレラス襲来以前の兵力水準を回復した(航宙艦隊の場合、数にして4万隻程)。これに支援軍を加えると、ガトランティス戦争直前のガミラス軍はヤマトのバレラス襲来以前に倍する戦力を造成し、さらにそれらを増強させる目処を立てていたのである(ガトランティス戦争直前のガミラス軍航宙艦隊はおよそ7万5千隻の戦闘艦艇を擁していた)。
 この大幅に膨れ上がった戦力をどのようにして帝国の安定に寄与し、信頼できる存在にするのか。その事が、ガトランティスとの戦争を控えたガミラス第二帝国の最後の課題となっていたのだった。

(「ガミラス第二帝国の戦争準備―ガデル・タランとヴェルテ・タラン―」につづく)

ヤマトメカニクス2199: 宇宙戦艦ヤマト2199モデリングアーカイヴス宇宙戦艦ヤマト2199』  [あ行][テレビ]
総監督・シリーズ構成/出渕裕  原作/西崎義展
チーフディレクター/榎本明広  キャラクターデザイン/結城信輝
音楽/宮川彬良、宮川泰
出演/山寺宏一 井上喜久子 菅生隆之 小野大輔 鈴村健一 桑島法子 大塚芳忠 麦人 千葉繁 田中理恵 久川綾
日本公開/2012年4月7日
ジャンル/[SF] [アドベンチャー] [戦争]
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