『くちづけ』 エンドクレジットが短すぎる!

 エンドクレジットが短すぎる!
 どんなに泣いても今どきの延々と続くクレジットなら場内が明るくなる頃には泣き止むのに、本作はまだ泣いてるうちに映画が終わってしまう。どうりで前回の観客が泣きながら出てきたわけだ。
 丸の内TOEIは上映が終了してもしばらく明かりを点けずにいてくれたけど、それでも『くちづけ』には短すぎた。トイレに行くと誰も彼もが頬を拭っている。

 帰宅してからインターネットで『くちづけ』の予告編を見たら、また涙がこぼれてきた。よせばいいのに『くちづけ』の主題歌「グッド・バイ・マイ・ラブ」を聴くと、もう涙が止まらない。
 映画の基になった東京セレソンデラックスの舞台は観てないけれど、なるほど「舞台史上一番泣ける」と話題になるのももっともだ。
 かつて『歌姫』に号泣した私は、同じ宅間孝行作だから『くちづけ』にも泣いてしまうだろうと覚悟していたが、それでもこんなに涙が溢れるとは思わなかった。
 
 舞台『くちづけ』が韓国で上演されたのもよく判る。
 日本人はシャイなのか、あざとく泣かそうとはしない。日本にもこれでもかと泣かせようとする作品はあるものの、韓国映画のあの手この手の泣かせ方にはなかなか叶わない。
 でも『くちづけ』ならば、そんな韓国においても一歩も引けを取らないだろう。

 だからこそ、堤幸彦監督がオファーされたに違いない。
 堤幸彦監督はヒットメーカーとして知られるけれど、私が一番感心するのは徹底して素材を活かしていることだ。マンガが原作ならマンガらしく、実話の映画化ならあくまでリアルに、元ネタに合わせて変幻自在にタッチを変える。だから、どんな素材でも取り組むことができるのだろう。
 公式サイトによれば、映画『くちづけ』ではできるだけ舞台に近く撮ろうとしたという。もちろん土砂降りの雨が降ったり、カメラが動き回ったりと、映画ならではのことも盛り込んでるが、けっして作品世界を壊してはいない。
 堤監督は2010年の東京セレソンデラックスの公演を観ていたそうだし、舞台版の作・演出を務めた宅間孝行氏も「監督が作品を本当に愛してくれていたので根本的な方向性は同じでした」と語っている。

 登場人物が劇中で口ずさむ主題歌も、舞台版と同じ「グッド・バイ・マイ・ラブ」だ。
 なかにし礼作詞、平尾昌晃作曲のこの歌は、1974年にアン・ルイスさんが歌ってヒットした。以来、どれだけの歌手がカバーしたことだろう。
 本作では舞台版ののあのわに代わり熊谷育美さんがカバーしている。

  忘れないわ あなたの声
  優しい仕草 手のぬくもり
  忘れないわ くちづけの時
  そうよあなたの あなたの名前

  もちろんあなたの あなたの名前

 本作の題を含んだこの歌詞は、劇場を後にする観客の耳にいつまでも響き続けることだろう。
 この哀しい物語が現実の新聞記事に基いて創られたということに、胸が締めつけられる。


くちづけ [Blu-ray]くちづけ』  [か行]
監督/堤幸彦  原作・脚本/宅間孝行
出演/貫地谷しほり 竹中直人 宅間孝行 田畑智子 橋本愛 麻生祐未 平田満 嶋田久作 岡本麗 伊藤高史 谷川功 屋良学 尾畑美依奈 宮根誠司 万田祐介
日本公開/2013年5月25日
ジャンル/[ロマンス] [ドラマ]
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tag : 堤幸彦 貫地谷しほり 竹中直人 宅間孝行 田畑智子 橋本愛 麻生祐未 平田満 嶋田久作 岡本麗

⇒comment

見る前に

ナドレックさんのエンドが短すぎる!というのを見て行ったので、覚悟していったのですが、やはり短かったです。
もうぐちょぐちょのまんま、出てきました。
でも、すきっと気持ちのいい涙ではなく、なんともやりきれず、どうにかできないのか・・・という忸怩たる涙だったもんで、ちょっとあとを引きましたね~。
友達の自閉症の子や、障害児を持つ知り合いの親の顔などが思い浮かんで、どうにもやりきれませんでした。

Re: 見る前に

sakuraiさん、こんにちは。
そうですね。この映画は後を引きますね。
それこそが大事なことなのでしょう。

今回、記事本文ではなぜ泣くのかをできるだけ書かないようにしました。そこは観て感じて欲しかったので。
私の映画の感想は、既に観た人と語り合うことを主眼に書くことが多いのですが、今回は未見の人に足を運んで欲しいと思いながら書きました。
一人でも多くの方に観ていただきたいと思います。

泣かないためには…

泣ける映画は、嫌いではありませんが、この映画は、泣くことで終わらせたくない、そう感じる映画でした。今もこの日本の社会では、この映画の親娘のように悩みを抱えて暮らしておられる方々の存在があります。少しずつですが、そんな家族を取り巻く環境も、良い方向に変わってきているのかも知れません。けれども、当事者には泣いている場合ではない問題がまだ山ほど残されています。厄介者、ではなく、一番崇高な存在として、社会が対等以上に認め合えるには…。最近リバイバルされているドラマ、「アルジャーノンに花束を」にも共通する問題提起ですね。少し今の日本は、強くなろうとしすぎていて、余裕がなくなってくることが一番不安に思えてなりません。本当の強さとは、なんでしょうか。映画で、マコちゃんの父親がまわりに助けを求めていたなら…、当たり前のように助けを求めたり、それに答えたりできる強さを皆が持てる社会になるためには…。この悲劇が発信するメッセージが、ちゃんと届きますように、と泣いている場合ではない切実感でいっぱいになりました。

Re: 泣かないためには…

梅茶さん、こんにちは。
THE BLUE HEARTS は「弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく」と歌いました。
おっしゃるとおり、困っている人に手を差し伸べたり、助け合うには強さが必要です。
私たちは弱い者を見つけたら叩いてしまう弱さを警戒しなければいけませんね。
先日観た『予告犯』でも、悲劇的な結末に対する「助けを求めろよ!」という慟哭が印象的でした。助けを求めればなんとかなると思えば、人は助けを求めるでしょうが、そう思わせないところが、実際にそうならないところが私たちの社会にあるのでしょう。
本当の意味で強くありたいものです。
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