『ローマ法王の休日』 映画が楽しめない、という人に

 【ネタバレ注意】

 ローマ法王は、かつてローマ帝国の首都だったローマの司教である。
 数あるキリスト教の教会の中でも、ローマ・カトリック教会はもっとも信徒が多く、その数は11億人以上と云われる。
 日本の教会では「ローマ教皇(きょうこう)」と表記するのだが、邦題はマスコミの慣例に従って「法王(ほうおう)」としている。

 それはともかく、『ローマ法王の休日』とは実に秀逸な邦題だ。上映の際にスクリーンに映し出された邦題は、「法王」の字が少しばかり小さくなっていた。
 公式サイトで述べているように、本作は法王版の『ローマの休日』なのだ。

 『ローマの休日』といえば、今でも多くの人がロマンチック・コメディの代表として挙げる名作だ。ローマ法王と『ローマの休日』を引っ掛けるだけで、本作が愉快な映画であることは伝わってくる。
 だが、本作は単に楽しいだけの映画ではない。コメディとしてだけでなく、もっと奥深いところで『ローマの休日』に繋がっているのだ。


 映画は法王の葬儀からはじまる。
 カトリックの総本山たるバチカンでは、世界中から集まった枢機卿がコンクラーヴェ(教皇選挙)を行い、新たな法王を選出しようとしている。
 ところが投票で選ばれたメルヴィルが、新法王として挨拶する直前に「無理だ」と云いはじめたから、さぁ大変!

 法王の選挙制度は長い歴史の中で形作られたものである。その手続で選ばれた法王は、多くの枢機卿から信任されただけでなく、神の意志によって選ばれたといえる。
 それはメルヴィルも充分に理解しており、だからこそ彼も法王の大役をきちんと果たしたいと願っている。
 ところが、どうしてもそれができない。
 だから、まずは本人も周りも心身の異常を疑った。
 けれど、医者に体を診てもらっても、精神科医に相談しても、サッパリ埒が明かない。
 事態が進展しないまま、時間ばかりが過ぎていく……。

 というのが映画の筋であり、そのまま1時間45分の映画は幕を閉じる。
 それじゃあ起承転結の転も結もないじゃないかと思われるだろうが、そのとおり。この映画には目立った転だの結だのはない。


 それよりも、こまごまとしたエピソードの積み重ねがジワジワと効いてくるのが魅力だろう。

 コンクラーヴェでは、枢機卿団の3分の2以上の票を得なければならない。有力視される枢機卿といえども3分の2以上を制することができず、投票は何度も繰り返される。
 そのたびに選出されなかった枢機卿はさぞかし悔しがっているだろうと思いきや、なんと誰も彼もが心の中で祈っているのは「神よ、私が選ばれませんように」ということだ。
 これには観客もついニヤニヤしてしまうことだろう。

 さらにおかしいのが、集まった枢機卿たちが睡眠薬や抗精神病薬に頼っていることだ。
 枢機卿といえば聖職者の中でも特に高位の人たちだ。司祭に悩みを相談する信徒からすれば、枢機卿は遥かな高みの存在だ。悩みに煩わされることなど、ないものと思いがちだ。
 その彼らが実は睡眠薬に頼らなければ眠ることもできないのだから、枢機卿のイメージを引っ繰り返すシーンである。

 そんな悩み多き枢機卿たちが、晴れ晴れとした表情を見せるのがバレーボールの試合だ。
 精神科医の発案で、枢機卿たちは地域ごとに分かれてバレーのリーグ戦を行う。その彼らの何と楽しげなことか。宗教の中心を担う人々が、宗教とは関係のないところで元気を取り戻すとはケッサクだ。
 しかも取り組むスポーツが他でもないバレーボールなのは、日本人も親しみを覚えるところだろう。なにしろイタリアは日本のアニメ『アタックNo.1』の影響で、バレーボールが盛んになった国だ。1969年に作られた『アタックNo.1』が時代遅れになると、後継作品を作ってまでアニメでバレーを振興している。

 おかしいのは、枢機卿のあいだを練り歩く精神科医も同様だ。
 彼は聖書を読むなり、ここに書かれているのは鬱病の症状だと叫び出す。よりによって枢機卿たちを前にして、彼らの信仰の根幹を揺るがしかねない発言である。

 そして何よりおかしみを感じさせるのが、主人公メルヴィルだろう。
 彼はかつて役者志望だった。こんにちのメルヴィルは、役者になれなかった挫折の結果でしかないのだ。そんな彼は、新法王に選ばれて全カトリック教会の統治者となったものの、実は懸命に聖職者を演じてきただけなのかもしれない。
 しかも彼は、法王として信者たちの前に立つことはできないのに、紛れ込んだ劇団で俳優の代役を務めようと申し出る。本当にやりたいことはできるのだ。
 その上、街の教会に入り込むと、神父の説教に耳を傾けたりもする。
 他ならぬ法王が!一介の神父の話に耳を傾ける!
 なんとも愉快な場面である。

 本作にはそんなエピソードが連なるけれど、決してカトリックを批判したり愚弄したりするものではない。
 コンクラーヴェの会場を抜け出したまま当てもなくさまようメルヴィルも、メルヴィルが戻らないので時間潰しに興じる枢機卿たちも、愛すべき人たちとして描かれている。彼らは観客をゲラゲラ笑わせたりはしないが、どうにも憎めない人物なのだ。


 そして最後にメルヴィルがたどり着く結論は、映画としては異色である。
 彼は最後にちゃんと認識するのだ。自分は法王を務めるには力不足だと。とても自分にはできないと。
 その結末に、多くの観客は呆気にとられるに違いない。
 みんなから選ばれた上での大役を投げ出してしまうメルヴィルは、いったいどう見えるだろうか。いい加減な人間だと思うだろうか? 軽蔑すべきか?

 そうかもしれない。
 そうかもしれないが、一方でメルヴィルに癒される人もいるのではないだろうか。

 見渡せば、私たちの周りには人を鼓舞する作品が溢れている。
 曰く、努力すれば報われる。諦めなければ夢は叶う。頑張ろう、前向きにいこう。
 それはそれで素晴らしいメッセージだ。そういう作品に勇気づけられる人もいるだろう。与えられた大役を果たそうと頑張る人もいるだろう。前向きな主人公に感動したり、立派な生き様に憧れたりもするだろう。

 けれどもそういう映画ばかりだったら、夢を持ち続けられなかった人はどれを観れば良いのだろう。役割を果たせなかったと自分を責めている人は、どうすれば良いのだろう。挫折した人や、頑張れなかった人は、「頑張れ」「必ず良いことがある」という映画を観て楽しいだろうか。

 人によっては、前向きなメッセージが眩し過ぎることもあるだろう。そんな人には、こともあろうに法王がその座を投げ出す本作が、実は癒しになるのではないか。
 なんといっても法王なのだから。彼は人々が悩んだとき、困ったときに相談する聖職者の中でも最高位の人であり、11億の信徒の精神的指導者なのだ。その彼ですら、できないものはできないのである。自分には無理だと云って、役割を降りてしまうのだ。
 いわんや、市井の私たちが頑張れないからといって、責任を果たせないからといって、これ以上自分を責める必要があるだろうか。

 『ローマの休日』のアン王女は立派だった。休日は休日として楽しみながら、ときが来れば自分の職務に戻っていった。
 誰だって立派に振る舞いたい、振る舞わなければならないと思っている。
 けれども、みんながみんなアン王女のようにできるわけではない。
 アン王女だって、職務を投げ出したままの方が幸せだったかもしれないのだ。


 『ローマ法王の休日』のメルヴィルは、情けなく見えるかもしれない。
 彼の結論に腹を立てる人がいるかもしれない。
 だが一方ではこの映画を観て、自分にのしかかっていた重しが取れたように感じる人もいよう。かすかな安堵を覚える人もいよう。
 そんな映画があってもいいのではないだろうか。


ローマ法王の休日 [DVD]ローマ法王の休日』  [ら行]
監督・制作・原案・脚本/ナンニ・モレッティ
原案・脚本/フランチェスコ・ピッコロ、フェデリカ・ポントレモーリ
出演/ミシェル・ピッコリ イエルジー・スチュエル レナート・スカルパ ナンニ・モレッティ マルゲリータ・ブイ フランコ・グラツィオージ カミーロ・ミッリ ダリオ・カンタレッリ ロベルト・ノービレ ジャンルカ・ゴビ
日本公開/2012年7月21日
ジャンル/[コメディ] [ドラマ]
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【theme : ヨーロッパ映画
【genre : 映画

tag : ナンニ・モレッティ ミシェル・ピッコリ イエルジー・スチュエル レナート・スカルパ マルゲリータ・ブイ フランコ・グラツィオージ カミーロ・ミッリ ダリオ・カンタレッリ ロベルト・ノービレ ジャンルカ・ゴビ

⇒comment

No title

自分を解放する、神の手にゆだねる、ということでしょうから、あまた多くのリベラルな行動派の共感を呼ぶところ、だと私はそう思います。
映画的カタルシスに乏しいのですが、私もこの映画にはある一定の評価をしてあげたいとそう感じています(世間での評判が必ずしもよくないだけに)。
思えばイタリアは生きているそのプロセスを礼賛できる国。その一つだと思えば何のことはなくてこれもアリ、でしょうね。

その出した結論がどうであれ。

誘導的なサブリミナルな広告文句を出し続け、その姿勢を疑う姿勢が映画を見るがわに無いという構造。その土台、礎石の上で映画興行があるとすれば(かってで妄想的な仮説)ループは途切れるのか途切れないのか、多少の興味はありますが。

こんにちは。

いやあ、素晴らしいレビューですね。

>夢を持ち続けられなかった人はどれを観れば良いのだろう。
役割を果たせなかったと自分を責めている人は、どうすれば良いのだろう。
挫折した人や、頑張れなかった人は、
「頑張れ」「必ず良いことがある」という映画を観て楽しいだろうか。

人によっては、前向きなメッセージが眩し過ぎることもあるだろう。
そんな人には、こともあろうに法王がその座を投げ出す本作が、
実は癒しになるのではないか。


この映画の持つ価値を改めて教えられた気がしました。
こういう映画、あってもいい…
というか、もっと生まれてしかるべき、
そう思います。

Re: No title

魚虎555さん、こんにちは。

>自分を解放する

そこは本作の肝ですね! おっしゃるとおりです。
Yahoo!映画の投票によれば、本作は2.74点です。高い評価ではありません。
シネコンでファミリーやカップル向けに興行している映画じゃなくても、カタルシスがないと受けないのですね。目に見えたカタルシスがないからこそ、この映画は素晴らしいと思うのですが。

Re: 法律的な死刑と、道徳的な私刑。果たしてどちらが本当に苦痛なのか?

プチ不眠症さん、こんにちは。
「法律的に裁けないなら、道徳的に裁いてやる」って、意味が判らないですね。まるで世の中には法律と道徳と別々のものがあるかのようです。
世の中には人の数だけ考え方がありますから、過激な考えも温厚な考えもあります。それらの意見に耳を傾け、過去の事例等も考え合わせ、過剰な文言を避けて取りまとめれば、法律の文章に落ち着くのではないでしょうか。
もしも法律が人々の思いと乖離しているのであれば、それは怠慢により適時適切な見直しが行われていないということなので、働きかける先は議員や行政機関ですね。
もちろん文章にすべてを盛り込むことは不可能ですし、裁判官が必要十分な働きを見せるとは限らない。人々の私刑願望と争うべきは、その点なのでしょう。

ところで『罪と罰』には答えが描かれていませんか? 晴れ晴れとしたハッピーエンドだったような気が。

Re: こんにちは。

えいさん、コメントありがとうございます。
この映画を観て、改めて映画の間口の広さを感じました。
観終わったときは呆気にとられたのですが、劇場を出て歩きながら、ジワジワと愉快な気持ちが湧いてきました。こんな映画はなかなかないですね。

No title

・・・・・・・・・・ />初めまして、(^-^*)/コンチャ!

Re: No title

未記入さん、こんにちは。
今後もよろしくお願いしますね。

素敵なレビューをありがとうございました♪

初めまして。山形市在住のシズコと申します。この映画、面白そうだなあと思いながら、私の住む山形ではまもなく上映終了なので、かなり鑑賞熱は高まっていながらも、月末の金欠で(苦笑)迷いながらオールシネマからこちらのブログに寄らせていただきました。ナドレックさんの解説、とても解り易く温かみが溢れていて、読ませていただいてほっこり気持ちがあたたかくなりました。ありがとうございます(^-^)v なかなか人間味に溢れた映画のようですね。私はヴァチカンには8年前旅行で訪れて、その時のローマ法王はヨハネ・パウロ二世でした。ちょうど謁見日と重なり、私たち旅行者は見学は後回しにされましたが、私がクリスチャンであるということもあって、サンピエトロに入ったときは涙が溢れました。翌日のテレビ新聞は、一面が法王の謁見を報道し、いかにヴァチカン、そしてイタリアでのローマ法王の存在の大きいかを、肌で感じてきました。それにしてもこの法王様を演じるミシェル・ピッコリさんという俳優さんはキュートですね♪多分、今週か来週中に映画館に足を運んで観たいと思います。素敵なレビューを拝読させて頂きありがとうございました。しかし!イタリアのバレーボール熱が「アタックナンバー1」とは驚きです!(爆)楽しいですね♪なかなか興味深いお話をたくさんありがとうございました。グラッツィエ!(^-^)/

Re: 素敵なレビューをありがとうございました♪

シズコさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
本作は必ずしも娯楽性に富んでいるわけではないので、誰もが楽しめるとは云えません。ただ、こんな映画もあっていいと思うんですね。
ナンニ・モレッティ監督は奇をてらったわけではなく、深い考察に基いてこの映画を撮ったのだと思います。
あまり受けはよくないらしい本作ですが、興味を持っていただけて嬉しいです。

うーん。。。

分かる、よーく分かります。
がんばれなかった人に対する癒しになるというのもよーくわかる。
きっと、この世に生きてる人の大部分が分かるはずだと思う。
でも、その中でもがいてがんばって、報われなくても踏ん張ってるんですよね。
あなたが踏ん張れないで、どうする!
休日で、ゆっくり休んだ後には、また月曜日、学校にいく、仕事に行く、法王さまになる!
となってほしかった!という勝手な願望ですかね。
是非最後まで、法王さまを演じきっていただきたかったと思いました。

観ました!(^-^)v

ナドレックさん、こんにちは。シズコです。今日観て来ました♪山形市は一日は「映画の日」でオール1000円なんです。今日を外していつ観る!?と、風邪気味の躰を押して行って来ました。最後のエンディングには「え!?これで終わっちゃうの!?」って思ったけど、これ、私のように欝を持っている人が見たら、とてもよくわかる映画だなあと思いました。実際見てて、法王様に選ばれたメルヴィルおじいちゃんの気持ち、よくわかりましたもの♪ナドレックさんが書いておられるとおり「だが一方ではこの映画を観て、自分にのしかかっていた重しが取れたように感じる人もいよう。かすかな安堵を覚える人もいよう。そんな映画があってもいいのではないだろうか。」私も安堵感を覚えた一人です。ヴァチカンを脱走してからのメルヴィル法王が街を彷徨う姿は、彼の生真面目さと孤独感を肌で感じましたし、「わかる~わかる~」の連続でした。 きっとこの方は法王を辞退するだろうなとも想像できました。ただ、最後の終わり方があまりにもぶつぎれで唐突な感じは私も否めませんでした。法王を辞めるといったメルヴィルを、周りの枢機卿はともかく、脱走に一役噛んでいたヴァチカン報道官が「辞任」を受け入れる・・・とか、ハートワーミングなエンディングにして欲しかったなあという気は致します。けれど、メルヴィルは勇気がある人ですよね?「法王を続けます」  と慣例に従い、自分の気持ちを偽る方がずっと楽ですもの(そのあとがきついでしょうが・・・)「私には無理です。私は皆さんを導くより、私こそが導かれるべき人間です。私のために祈ってください」法王就任後最初で最後の演説であろうこのメッセージでこの台詞!なんと正直なんでしょう!同じクリスチャンの私はジーンと来ました。 なんと素直なメルヴィルさん・・・。そしてこのメルヴィル演じたミシェル・ピッコリさん!本当にキュート!ピッコリさんの微笑を見ているだけでもなんかこの映画の元が取れた気がしました。(笑)病気中に庭を散策して、戸惑う傭兵のスイス兵に小さく手を振るところなんか笑っちゃいました。とにかくキュート! 私はイタリア語は全く駄目なのですが、ひとつだけわかりました。法王様(サンティエタ)と言う言葉だけ聞き取れました。枢機卿たちのバレーボールのシーンも笑えました。この監督兼精神科医の、ナンニ・モレッティさん、なかなか芸達者な方ですね。 リーグ戦にしたり、地域別に分けたりと、思わず「ぶぶぶっ!」と噴出してしまいました。       この映画はやはり好みが分かれるでしょうね・・・でも、私は観て良かったです。最初のお葬式のシーン(やっぱり ヨハネ・パウロ二世のだったか!)から、コンクラーヴェに臨む枢機卿たちが祈りを唱えながら部屋に入っていくシーンは、衣装の豪華さに圧倒されました。 ヴァチカンロケではないと聞き、余計驚きました!しかし、全体を通して感じたのは、なんと Popeという仕事はプレッシャーなのでしょう? メルヴィルさんと共に、就任の挨拶に行く時観衆の多さに私までキンチョーしてしまいました。(苦笑) ・・・いやはや・・・  いろんなことを考えさせられ、笑った映画でした。法王様の代わりをなさった、スイス傭兵の方の演技も面白かったですね。 所詮ヴァチカンも人間の集まりなんだな~とつくづくしみじみ思わされ、なんか良い意味でほっとしました。  観て来て良かったです。ナドレックさんのおかげです。感謝のご挨拶がてら、長々と感想を書かせて頂きました。 ありがとうございました。   モルト・グラッツィエ。                                  

Re: うーん。。。

sakuraiさん、こんにちは。
おっしゃるとおり、踏ん張ることは大事ですね。あっさり降りることを容認してたら、世の中が成り立ちません。
だからこそ、踏ん張る映画は世の中にこと欠きませんし、そんな映画を多くの人が称賛します。映画館に行けばいつでもそういう映画を観られます。
それはそれでいいと思うのです。
でも、たまにはこんな映画があってもいいのではないでしょうか。

本作のミソは、それが法王であることと、コンクラーヴェという選出システムにあると思います。
これがみずから立候補して選ばれた大統領や首相であったら大変です。それらの当選者が「やっぱり無理です」と云い出したら非難轟々、政治は大混乱するでしょう。けれども政教分離が進んでいる西洋において、「政」の方は特段問題がない中で「教」の方の法王が「無理です」と述べたとしても、人々の実生活に大きな影響が出るわけではありません。
しかも法王はみずから立候補したり、選挙運動をするわけではなく、枢機卿の匿名投票により(偶然)選ばれます。本人の意思とは関係ないわけで、ここが同じように知名度の高い他の役職とは異なる点でしょう。

政教分離とはちょっと違いますが、日本は権力と権威が分離した国ですね。
最高権力者と思われている内閣総理大臣が短期間で政権を投げ出そうものなら、口を極めて罵られます。多少の功績があっても、そんなことはそっちのけで罵倒されます(とっとと降りた方がいい人もいましたが)。
けれど、もしも日本で最高の権威、すなわち皇位を継承する者が「無理です」と口にしたら、はたして内閣総理大臣と同じように批難されるのか。そんなことを考えてみるのも面白いですね。

とはいえ、sakuraiさんが日々接している生徒さんには、大役にも積極的に挑んでもらいたいものです。若いうちは踏ん張りも学ばなければ;-p

Re: 観ました!(^-^)v

シズコさん、こんにちは。
返事が遅くなってすみません。
唐突な終わり方には賛否両論あるでしょうね。
ただ、以前の記事↓で書いたことですが、余韻を残した幕引きには、観客をクールダウンさせる狙いがあるそうです。
http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-155.html
逆にいえば、クライマックスを盛り上げない本作は、クールダウンさせる必要がないのかもしれません。

ともかく、本作を観て良かったとおっしゃっていただき嬉しいです。この映画を気に入った人は本当に少ないようなので。
風邪は大丈夫でしょうか。
急に冷え込んでおりますので、お体にお気をつけください。

No title

DVDを見終わった直後、「??!!」となってレビューサイトを検索したらここにたどり着きました。
ちょっともやもやがすっきりしたというか…タイトルは秀逸ですけど、そのせいでうっかりハッピーエンドを連想してしまいますよね。
こちらを読ませて頂き、少し溜飲が下がった思いです。
もちろん、映画自体はよかったと思っています。

Re: No title

あんなさん、コメントありがとうございます。
たしかにタイトルからはほのぼのハッピーエンドを連想しがちですね。
とはいえ、本編を観たときの落差がまた味わいかとも思います。
これもまた映画の楽しみ方の一つなのでしょう。

No title

初めまして。
DVDを借りて鑑賞したのですが、オチに納得できず、レビューを検索したところ、こちらのサイトにたどり着きました。
ハリウッド映画に馴染み切ってしまった私は、起承転結のない映画が苦手なのですが、ナドレックさんのような解釈の仕方ならば、この映画にも納得がいくのでしょうね。
もやもやが解消されました。ありがとうございます。

この映画が、映画批評家にとって低評価(らしい)のは、売り出し方を間違えたからでしょう。
私も、ローマの休日のパロディであるかのようなタイトルや、パッケージの明るい色合いから、ドタバタコメディを連想していました。
原題のニュアンスを理解して、笑いを期待せずに見ていたならば、自分のお気に入りの映画に仲間入りしていたのに…


すみません、この場を借りて感想を書かせていただきました。
ナドレックさんのレビュー、他の映画でも堪能させていただきますね。

Re: No title

さゆみんさん、コメントありがとうございます。
たしかにハリウッド映画のような伏線やオチを期待していると、ことごとく裏切られてしまいますね。
そこがこの映画のいいところだと思うのですが、配給会社のプロモーションだとそれが見えてこない。
評論家諸氏には、そんなところを掘り起こし、スポットを当てていただきたいものです。

拙い文章ですが、どうぞ他の記事もご笑覧ください。

No title

確かにそういった見方も可能でしょうけど
そういう映画なら、やはり高い評価にはならないのじゃないでしょうか

なぜならメルヴィルは、最後に誰かに許されたわけではないので


いくらか安易さを感じる映画です
子供らしい皮肉っぽさがあって、登場人物が都合よく動きすぎる
品のない部類のカトリック批判に終始する映画じゃないかという気もします


法王とは何か
この映画の中ではとてもエンターテイメント的な存在です
なぜ最後に信者たちはがっかりするのか
この信者たちは実は法王という権威を信奉しているのじゃないか
それは『何教』なんでしょうね


その手の反発からプロテスタントが生まれたかは詳しくありませんが
メルヴィルの行動は、ローマ法王の無謬性を否定してしまいました
もしかしたら神の無謬性をも

首相がすぐに交代する感覚で見てしまいがちですけど
こんなことやったらカトリックの土台は大変なことになる気がします

Re: No title

なるさん、コメントありがとうございます。
現実にこんなことがあったら大変ですね。だから映画にすると面白いのでしょう。
首相がすぐに交代しても、少なくとも日本では平凡すぎて映画のネタになりません:-p

なるさんがキリスト教をどのように考えていらっしゃるか存じませんが、映画一本で否定されるような無謬性を神は持ち合わせていないと思います。
創世記なんて神の失敗の記録ではないですか。エデンの園の運営に失敗するわ、人間たちが思い通りに育たなくて何度も滅ぼさなくてはならないわ。
やってることがおかしいんじゃないの、と人間に非難されると、お前なんかに何が判るとブチ切れるのがヨブ記です。
でも、神は超越者だからそれでもいいのです。無謬を期待する相手ではないし、人間の尺度で無謬かどうかを測るものでもない。たとえ神がこの映画を観たとしても、その心はピクリとも動かされないでしょう。と、私は解釈します。

公式サイト掲載のインタビューで、ナンニ・モレッティ監督は次のように語っています。
「かなり挑戦的な題材に見えると思うが、決して宗教批判をするつもりで作ったわけではないんだ。(略)宗教批判がしたいのであれば、近年カトリック教会でおこっている様々なスキャンダルなどを扱う手もある。しかし、そもそも私はカトリックを批判する気などない(略)実際、ヴァチカンからは何の干渉もなかったよ」

この映画は国民の圧倒的多数がカトリック教徒のイタリアで作られ、やはりカトリック教徒が多数を占めるフランスの第64回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に招かれました。しかもその後ナンニ・モレッティ監督は翌年の第65回カンヌ国際映画祭の審査員長に任命されています。
本作の興行成績が良いのもカトリック教徒が多い国ですね。イタリアが一番なのはとうぜんとして、二番以降はフランス、ドイツ、アルゼンチン、スペインと続きます(ドイツはカトリック教徒に次いでルター派も多い国ですけど)。
カトリック教徒、特にヨーロッパのカトリック教徒は、けっこうニヤニヤしながらこの映画を楽しんだんじゃないでしょうか。

ところで、「高い評価」とは何でしょう?
物事を評価するには評価軸が必要ですよね。この映画の評価の高低を測る軸は何なのでしょう?
この映画は、そういう軸の存在に疑問を投げかけているのではないでしょうか。

解説を読ませていただきました

さっきテレビで放送していて偶然見ました。

あらすじが分からないところがあったので、解説を読ませていただきました。
ありがとうございました。
とても分かりやすくてあたたかい解説ですね。

私の今の状況と被っていて
(と言っても、さすがにローマ法王ほどのプレッシャーではないですが笑)
とてもはっとさせられるストーリーでした。
悩みの答えが見つかった気がします。

そして、解説にありました通り、結末には驚きました!
瞬間、肩透かしを食らったような、自分の立ち位置に悩んだような。
でも、その後じわじわと体に馴染んでいくような不思議な感覚におそわれました。
深い作品でした。

偶然、面白い映画を観ることができて、
このブログに行き着いてよかったです。

Re: 解説を読ませていただきました

はなさん、コメントありがとうございます。
プレッシャーをはね返す映画はたくさんありますが、はね返さずに終わる映画は珍しいですね。
映画を観終わったとき唖然として、そして後から笑い出してしまいました。こんな終わりもアリなのかと。
まさに、じわじわと体に馴染んでいくような映画だと思います。

大ヒットする映画じゃありませんし、話題をさらう映画でもないでしょうが、私は今でもときどきこの映画のことを思い返します。
いつまでも、じわじわと効き続ける映画ですね。

そうです!
私も笑ってしまいました!
返信ありがとうございます、またブログ見に来ます~

Re: タイトルなし

>はなさん

今後もよろしくお願いしますe-257

No title

映画タイトルからして「ローマの休日」を連想して、そのような結末になるのだろうと勝手に想像して観たら、あら辞めちゃった。これはどういうこと?モヤモヤしてインタネットを探ったらこの解説にたどりつきました。なるほどそういうことなんですね。わかりました。ありがとうございました。

Re: No title

ラッチャラおじさんさん、コメントありがとうございます。
『ローマの休日』を示唆する邦題につられてしまいますね。なのに美人の王女は出ない(^^;
でもこの映画には、美人の王女に代わるこの映画なりの良さが感じられます。
Secret

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『ローマ法王の休日』---HABEMUS PAPAM---2011年(イタリア)監督:ナンニ・モレッティ出演:ミシェル・ピッコリ、イエルジー・スチュエル、ナンニ・モレッティマルゲリータ・ブイ ある日...

【映画】ローマ法王の休日

<ローマ法王の休日 を観ました> 責任感の重圧に、あなたは耐えられるか…? 原題:Habemus Papam 製作:2011年イタリア・フランス合作 人気ブログランキングへ 予告を見て、”

「ローマ法王の休日」 2011年 伊・仏 監督ナンニ・モレッティ

 「ローマの休日」ではなく「ローマ法王の休日」・・・ もっと軽い感じのコメディかと思ったら、そうでもなかったわ〜 HPはこちら  ローマ法王逝去を受け、各国の枢機卿がヴァ ...
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