『BRAVE HEARTS 海猿』 これではまだ完結できない

 『BRAVE HEARTS 海猿』は、続編制作を待ち望んだファンにとってこの上なく嬉しい作品だろう。前作『THE LAST MESSAGE 海猿』に足りないものが、ここにはあるからだ。

 2004年の映画一作目以降、テレビシリーズと二度の映画化を経て、主人公仙崎大輔は逞しくなっていった。回を重ねるごとに事件は大規模になり、映像は派手になり、スペクタクルは大掛かりになった。それは作品が長く続けばとうぜんのことではあるけれど、スケールが大きくなる一方で仙崎大輔の青春ドラマとしての要素は影をひそめ、仕事と私生活との葛藤や、バディである吉岡とのおちゃらけた掛け合い等は失われていった。
 映画三作目の『THE LAST MESSAGE 海猿』に至って、仙崎はすっかりスーパーマンと化し、その行動は必ず正しい結果をもたらす。
 このようにエスカレーションしたシリーズを前に、長年のファンは成長した仙崎にエールを贈りつつも、いささか寂しい思いをしていたのではないだろうか。

 ところが四作目となる『BRAVE HEARTS 海猿』では、もちろん仙崎がスケールの大きな災害に挑む話ではあるものの、久しぶりに吉岡とのバカっぷりを取り戻し、妻の環菜から「子供にバカが移る」とたしなめられる。所属も機動救難隊から特殊救難隊に変わり、隊の新人として先輩の叱責を受けたりする。
 これらのシーンは、テレビシリーズで仙崎が巡視船「ながれ」に配属されたばかりの頃を彷彿とさせて微笑ましい。ファンにとっては、単にシリーズの新作が公開されたというだけでなく、懐かしい仙崎に再会できたようで嬉しいだろう。


 テレビシリーズ『海猿 UMIZARU EVOLUTION』の頃の仙崎はまだまだ若輩者であり、仲村トオルさん演じる先輩潜水士・池澤真樹から指導される身だった。
 そして『BRAVE HEARTS 海猿』で池澤真樹に相当するのが、特殊救難隊の副隊長、伊原剛志さんが演じる嶋一彦だ。映画公開前に放映されたメイキング番組『この夏起こる海猿の奇跡スペシャル』において、羽住英一郎監督や伊原剛志さんは、嶋一彦というキャラクターが仙崎にとっての"壁"であると紹介している。
 壁というだけあって、嶋副隊長の考え方は仙崎大輔と真っ向から対立する。嶋副隊長は、これまで仙崎が人命救助のために無茶をして自分自身が要救助者になってしまったことを指摘し、「レスキューに必要なのはスキルと冷静な判断力だ」と諭す。

 私はこのアジェンダ設定に痺れた。
 過去の記事でも指摘したように、『海猿』シリーズは目の前の遭難者を救うためならどんな無茶でも規則破りでもいとわない。二次遭難や、被害が拡大するおそれには目をつぶり、現場の頑張りに頼りきりになる特徴がある。それはある意味、典型的な日本の組織だ。
 それでも、映画はどれも遭難者を救助してハッピーエンドになるのだが、これは本来主人公が抱えるべき葛藤から逃げているのだ。本当は、要救助者を救ったけれども二次遭難で犠牲を出すとか、二次遭難を引き起こした上に要救助者を救えないとか、そんなジレンマに立ち向かう辛さこそが描かれるべきだと思う。

 常々そう感じていた私は、冷静な判断を重視する嶋副隊長の登場に膝を打った。
 嶋と仙崎の関係は、たとえるならば『ナバロンの要塞』(1961年)のグレゴリー・ペックとデヴィッド・ニーヴンだ。デヴィッド・ニーヴンは目の前の怪我人を放っておけない優しい男だが、彼の云うとおりにしていたら、遠方にいる2,000人を助ける任務を遂行できない。そこで目の前の怪我人を見捨てようとするのがグレゴリー・ペックだ。『ナバロンの要塞』は、彼ら二人の対立を軸に進行する。
 あっちもこっちも全員助かるなんて奇跡は起きない中で、どのような決断を下すのが現実解なのか。その葛藤があるから『ナバロンの要塞』は今も語り継がれるのだ。

 そして嶋一彦と仙崎大輔も、異なる意見を代表している。
 先のメイキング番組等で羽住英一郎監督は、嶋と仙崎の対立を「正論どうしのぶつかり合い」と表現した。それは実のところ『ナバロンの要塞』が半世紀も前に取り上げたシチュエーションでしかないのだが、それでもこれまで『海猿』シリーズが避け続けてきた葛藤をどのように描くのか、私の期待は高まった。


 だが、嶋一彦は仙崎にとって本当の意味での"壁"ではなかった。
 それが壁なら乗り越えねばならない。乗り越えることで、壁に遮られていた光景が見えてくるはずだ。
 しかし嶋一彦は仙崎の前に立ち塞がることなく、いつしか仙崎にほだされてしまう。一緒になって規則を破り、無茶な救助活動をはじめるのだ。

 つまるところ本作の作り手が描きたかったのは、壁や葛藤ではなかったのだ。
 メイキング番組中で羽住英一郎監督は、本作のテーマが「絶対に諦めない勇敢な気持ち」であると語っている。
 「大勢の心の中に仙崎大輔がいるんだっていうテーマで、BRAVE HEARTS(勇者たち)――複数形にして――それを映画で表してみたかった。」
 「そういう思いがあれば、奇跡が起こるんじゃないか。」
 すなわち、崇高な使命を掲げて全力でことに当たれば、結果は(奇跡が起きて)後からついてくるというのである。

 たしかに人命救助はこの上なく崇高な使命である。救助される人は誰だって、レスキュー要員に絶対に諦めないでもらいたい。
 それだけに、そこには「動機オーライ主義」が入り込みやすいだろう。與那覇潤氏は自著『中国化する日本』において、中国から伝わった陽明学が日本にもたらした「動機オーライ主義」を次のように説明している。
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動機オーライとはもちろん「結果オーライ」の対義語で、「おわりよければすべてよし」ではなく「はじめよければあとはどうなってもよし」、純粋にピュアな気持ちで考えて「(略)こっちが正しい!」と心の芯から感じ入ったのであれば、(略)自分の行為がもちらす帰結についても一切考慮することなく突っ走ってよい、結果は必ずついてくるはずだ(略)というような発想のことです。
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 そして動機重視で結果を考えない行動が、幕末においては幕府が倒れるという予想外の結果を引き起こし、昭和においては勝算のない開戦を引き起こしたという。
 今でも私たちはひとたび動機の純粋さに共感すると、冷静に計算して水を差す人を排除する傾向がないだろうか。

 『海猿』シリーズの登場人物が「絶対助かります」「必ず助けます」「絶対に幸せにする」と断言できるのも、その動機が純粋であり、自分の行為がもちらす帰結についていちいち考慮していないからかもしれない。
 「絶対」とか「必ず」なんて言葉は、現実社会では滅多に口にしないものだ。大人は世の中に「絶対」なんてものはないことを知っているから、そういう言葉を口にしない。
 けれども本作は奇跡を信じるドラマだから、加えて危難に陥った人を勇気づける物語だから、「絶対助かる」と断言してみせる。

 その言葉を聞いて勇気を奮い起こす人もいるだろうし、諦めずに助かる人もいるだろう。
 だから、救助の現場で飛び交う言葉としては、それを否定するものではない。

 しかし、私がテレビシリーズ『海猿 UMIZARU EVOLUTION』で好きなエピソードは、こういうセリフを否定するものだった。
 テレビシリーズの第一話、難破船に閉じ込められた船長と船員を発見した池澤は、船員を助けてくれと頼む船長に「判りません。約束はできません」と冷たく云い放つ。しかし「絶対に諦めない」仙崎は、船長を安心させてやりたくて「彼は絶対助けます。僕が約束します。あなたも絶対に助けますから」と断言する。
 その結果、何が起こったか。
 なんと船長は死んでしまうのだ。
 船長は事故を起こしたことに責任を感じ、船員のことを気づかっていた。だから気持ちが張り詰めて、海の中でも耐えていた。だが、仙崎の熱意に触れて安心した途端に、緊張の糸が切れて溺れてしまうのだ。

 なにごとも、熱意を持って当たれば良いとは限らない。状況を計算し、冷静な判断に基いて行動するのが、一人でも多くの人を救う道だ。
 未熟だった仙崎は、池澤というベテランからそのことを学んだはずだ。

 けれどもその後の映画の仙崎は、池澤の教えを忘れたかのようである。
 本作における嶋副隊長の登場は、仙崎にも私たちにも、今一度そのことを思い出させるキッカケになり得たのだが、作り手の奇跡を望む気持ちは、嶋ならではのアジェンダを押し流した。


 それでも本作には、嶋副隊長の印象的なセリフがある。
 「今回は動ける者から救助する。通常は動けない者から救助するが、今回は動ける者から救助しないと間に合わない。」
 海上着水した飛行機は20分もすれば沈んでしまうので、救助作業は時間との勝負だ。動けない者を助けようと時間をかけていたら、助かる者も助からなくなってしまう。だから嶋副隊長のセリフは、場合によっては動けない者を見捨てざるを得ないことを意味している。

 誰だって部下にこんな指示は出したくない。けれど、一人でも多くの人を救うために、嶋はあえて部下に指示するのだ。
 このときの嶋が抱える葛藤を共有していない仙崎には、こんな指示は出せない。

 仙崎がこの葛藤に正面から向き合うまで、『海猿』シリーズは終えられない。


[付記]
 テレビシリーズ『海猿 UMIZARU EVOLUTION』第一話の記述について正確でない部分を改めた。ご指摘に感謝。(2012.8.30)

BRAVE HEARTS 海猿 サウンドトラックBRAVE HEARTS 海猿』  [は行]
監督/羽住英一郎  脚本/福田靖
出演/伊藤英明 加藤あい 佐藤隆太 伊原剛志 時任三郎 仲里依紗 三浦翔平 平山浩行
日本公開/2012年7月13日
ジャンル/[アクション] [サスペンス] [ドラマ]
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【theme : 日本映画
【genre : 映画

tag : 羽住英一郎 福田靖 伊藤英明 加藤あい 佐藤隆太 伊原剛志 時任三郎 仲里依紗 三浦翔平 平山浩行

⇒comment

No title

これは仙崎病が蔓延してしまう恐怖映画で、もっとも感染してほしくない嶋隊長すら感染してしまい、ラストには国全体が感染して拍手喝采して涙する。そういうスペクタクル映画だったんですよね。

そう、考えるとラストの昼の公園は患者がうろうろしているゾンビのスーパーマーケットのようで、甚だ不気味な光景でありましょう。

私は単純に嶋は嶋でいてもらってもドラマは成立すると思ってたので、嶋が仙崎になっちゃったのは残念だった。葛藤を最後に持ってくるのは話としてキツイんで、中盤に持ってきてたけど、あれが「葛藤タイム終了」みたいにあっさり終わって後を引かなかったのが問題なんでしょうね。

No title

以下ながいです。このシリーズ、どうしても駄目なのです。すいません。

わかります、わかりますが、この国でそういうリーダーはありえないという思いがあるので、このシリーズを観に行けば100万円あげるといわれても観に行くことが無いと思っています。観たら多分その迫力に拍手をするとともに悲しくなってしまうから。
もうひとつの観に行かない理由は、TVとセットで映画を作る慣行。これが傑作を生まない素地を作っているようですね。
大ヒットしたお風呂の映画(未見です)よりもスパルタカスかシャーロック(BBC, TVドラマ)を娯楽として評価しているから。

へんてこなことがたくさん既に起こっている今の世の中で、小さい集団の義と使命に着目した内容をあまり見ても仕方ないと思っているから。個人と状況ということでは「ウインターボーン」とか「GIジェーン」「キリマンジャロの雪」などとは比較できないのではないかと。「ポセイドン」とも比較できないかも。

神との対話、神に与えられたこの土地を守っていく(ガーディアン)民としていつもそのことを考えている人たちが作る映画、と、陽明学や朱子学のような巨大な隣国の政治攻防またはそれからスピンオフした思想が染み付いている民が作る映画では、比較しても意味が無いのですが、かつて、それでも世界から評価された(小津、黒澤)。イスラム圏の興隆も評価される。

民族性を保持しつつ普遍性があるということ。それが今の日本映画にはかけらも無いのかもしれません。スクールウオーズがかろうじて面白かったのは、ネット社会の描写(と私は思いました。田舎での大家族とか彼らが一致団結する様は売りになるのか心配です)。

海上保安庁の人たちは喜んでおられるでしょうが、この描き方に不安も感じておられるのかもしれません。

以上、否定的なコメントばかりで申し訳ありません。娯楽柵なら最後まではじけるのがいいのではと思うのですが、そうやって道徳的な内容を押し込むのはちょっとなあ‥‥です。

それと、人命救助という誰も否定はもちろん批判もコメントも出来ないことを堂々とテーマにしてしまいそこに葛藤する使命を帯びた集団。これってずるい。批判できないじゃん、(ということです)。

Re: ここで一句。

プチ不眠症さん、こんにちは。
マイナスかけるマイナスがプラスになることを先生に質問するとビンタされたのですか?
それは国民性というより、先生の虫のいどころが悪かったのでは…。

日本人には「答えのないことに耐える強さ」が欠けているというご指摘は、なるほどそうかも知れません。
日本では長きにわたって身分制度が存在し、被支配層は自分たちで思考を巡らす必要がありませんでした。一揆という"デモ"で自分たちの要求を突きつければ、あとは武士が施策を考えて実施するのを待つだけです。
「答えのないこと」に耐えるためには、自分たちで考えて、答えはないことを認識しなければなりませんが、別の人たちに考えさせて答えを待つだけの身分では、答えがないときは、答えを出せない人を非難すれば良い。

これはあながち悪いことではなく、自分たちで答えを出さなければ、正誤が定まらず、勝敗が決することもないので、自分たちの誰の面子も潰れません。和を重視するなら、これは大事なことです。
ただ、答えを出して行動しなければならないときには、命取りになりかねませんが。

ところでプチ不眠症さんが書いてくださった「カネを出し――」は、五七五七七なので俳句ではなく短歌ですね:-)

Re: No title

ふじき78さん、こんにちは。
潜水病ならぬ仙崎病ですね:-D
そうなんですよ。嶋は嶋でいてもらって良いのに、嶋も仙崎化して「思いは一つ」にする必要があったのか。

私は海猿シリーズが好きですけど、国全体が仙崎病に感染して拍手喝采するのはちょっと怖いです。
崇高な動機のために現場の一人一人が命を投げ打ち、みんなもそれを称賛し、待ち焦がれる。それは裏を返せば、任務に失敗し、おめおめ生きて帰る者への非難になりかねません。
そんな気持ちが、第二次世界大戦での特攻やバンザイ突撃に繋がったのではないでしょうか。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51789174.html

崇高な動機のためには規則を破ってでも、命を投げ打ち突き進む。これを海猿シリーズの「お約束」として受け入れる空気に接すると、私たちは先の大戦を清算できていないのだと感じます。

Re: No title

以下ながいコメントの方、こんにちは。
私は100万円もらえるなら、好きじゃない映画でも観ます:-) 『未来元年・破壊都市』だって我慢して観ます。

また私は、テレビとセットで映画を作ることに必ずしも否定的ではありません。
テレビだろうと何だろうと、映画産業を活性化させ、客の足を映画館へ運ばせるものは大歓迎です。
それに、映画制作へのテレビ局の関与が多い今日、テレビ局の関与と映画の良し悪しがそれほど関係するでしょうか。
当ブログで取り上げた映画を例にすると、『沈まぬ太陽』にはテレビ局は関与してませんが、『わが母の記』はCBC(中部日本放送株式会社)によるテレビドラマとの連動企画です。けれども『沈まぬ太陽』も『わが母の記』も、私は面白いと思いました。

映画とテレビの関係については、こちらの記事でも述べているので、よければご覧ください。
http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-105.html

ところで、一つ前のコメント( http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-346.html#comment2420 )にも書きましたように、私は昔も今も日本人はあまり変わっていないように思います。
例に挙げられた小津、黒澤は、外国映画――特にアメリカ映画に強い影響を受けた人たちですね。彼らは時代劇を撮っても日本文化を撮っても、普遍的な人間性を掘り下げていました。だからこそ他国の人々にも受け入れられたわけで、世界に通用するか否かは作家次第だと思います。

何はともあれ、海猿シリーズのように大ヒット間違いなしの作品は、多様な考え方の余地を残しておいてほしいものです。各国でダイバーシティーに取り組んでいるご時世ですから。

あ、スクールウオーズと書かれているのは、『サマーウォーズ』のことですね。

No title

「多様な考え方の余地を残しておいてほしい」

まったく同感です。ただそれはそのシリーズが好きだからこそのご発言であり、その映画のテーマ自体をすきでもなんでもない人間にはあまり響きません(同感していますが)。やっぱり全体主義っぽいのは好きじゃないんです。あしからず。観ればスカッとするのかもしれませんが、それでも背中を向けたい意固地な私です(笑)。

さて、のだめ、についてのお考えを拝見して尤もとおもいます。要は、質だとは思いますが。まあそれはともかく、米国も英国もTVシリーズと映画は連動していることがありますし、俳優も両方を行き来している人もおられますしね。ただ単に私は日本の今のTVドラマは見ないし、それを基にした映画にも食指が動かない、ということです。

普遍性を目指してせめて、アジア映画祭(そういう名前でしたか?香港でやってますが)で賞をたくさん撮ってみろ、と、思ったりはします。ただそれも個人の感想ですから、その点を議論する気はありません。それともし、既に日本映画は毎年のようにたくさん賞を撮っているというのであれば、私のまったくの勉強不足であり、申し訳ありません。

日本のTVどらま「おしん」は途上国での受け入れられ方がすごかったですが、それもおしんが生きた時代と途上国での生活や社会の共通性を、途上国の人たちが見出して笑い涙したからだと聞いています。

また、先の大戦どころか、明治の清算も済んでない(済ませるつもりは毛頭無い)のかなとは思っておりますが。。。まあそういうものだと、このごろはそう思うようにしております。

それでは、お返事ありがとうございました。

Re: No title

長いコメントさん、こんにちは。

>明治の清算も済んでない(済ませるつもりは毛頭無い)

そうですね。
時間が経ってしまったので、昔の歴史としていったん突き放してから切り込むしかないのかもしれません。

長いコメントさんの「全体主義っぽい」と捉える感覚は大事だと思います。
私たちの中に蔓延する「全体主義との親和性」に、私たちはあまりに無頓着ですね。

私は『海猿』のテレビシリーズが好きなのですが、テレビでは派手な事件がないかわりに、異なる意見が激しくぶつかり合いました。その人間ドラマとしての掘り下げが好きだったのです(あくまでテレビ視聴者向けの娯楽の範囲内ではありますが)。
映画版は、テレビシリーズの登場人物と再会できるイベントのようなものなので、テレビシリーズを見てない人に力んで勧めるつもりはありません。

そもそもテレビについては、私も以前はまったく見ていなかったので、お気持ちは判ります。
(そんな私がテレビドラマを見るようになったキッカケについては、こちら↓
 http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-7.html )

賞については、私は外国での邦画の受賞状況は存じません。
映画に限りませんが、賞は受けるよりも授与する方が重要だと思います。スウェーデン人はノーベル賞を獲ることに一生懸命になったりしませんし、フランス人もカンヌでパルムドールを獲ることに血眼になったりしません。彼らは、すでに世界中の人々に賞を与える立場を確立しているのですから。
ですから私は、邦画が外国で賞を獲るよりも、日本の映画祭等で優れた作品に適切な賞を与えることに関心があります。
もちろんそのためには、世界中が賞を貰いに来るように、自分たちが精進しなければならないのですが。

No title

>仙崎がこの葛藤に正面から向き合う
そんな日は来るのでしょうか。
「奇跡」が起こり続けている限り難しい気がしますが…
 
なぁ~んて言いながら、真っ先に洗脳されて
「絶対、大丈夫」と、祈りながら観てしまう私です。
 
テレビと連動してる映画は、やっぱり動員がすごくて
大きな箱に、満員の老若男女揃って涙を流してる~
こう言う雰囲気って、私は大好きです。

Re: No title

ほし★ママ。さん、こんにちは。

> >仙崎がこの葛藤に正面から向き合う
> そんな日は来るのでしょうか。

手厳しいですね:D おそらくそんな日は来ないでしょう。
原作は読んでいないのですが、ほし★ママ。さんのブログで、原作は奇跡のオンパレードではないと知りました。原作者のスタンスは、テレビ・映画のスタッフとは異なるのですね。

>大きな箱に、満員の老若男女揃って涙を流してる~

私もそういうのは好きです。
前作、前々作には私も滂沱の涙でした(本作では、飛行機の構造からオチを察してしまいましたが)。

特に本作は、夏休み映画の座を『踊る大捜査線』シリーズから奪い取っての公開ですので、フジテレビからは前作を上回るヒットを至上命令とされているはずです。そのため作り手は、必ずや老若男女を満足させ、大動員を図るべしと考えているでしょう。
必ず最後は勝利する、という"物語"は大衆に受けが良い。売れるのはそういう"物語"です。そしてそういう"物語"は、それを求める大衆と、大衆の喜ぶものを与えようとするメディアとの共犯関係が生むのでしょう。

一面、メディアが数字を伸ばそうと大衆の喜ぶものばかり生み出すことには、怖さも感じます。
以前の記事( http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-291.html )で紹介したように、1931年の満州事変を機に新聞の発行部数はウナギ登りになりました。
新聞は日本が勝った勝ったと書き続け、国民の戦意を煽りました。当時の発行部数の驚異的な伸びは、多くの読者がそれを読みたがったことを示しています。

もちろん、フィクションである映画と、新聞報道とは別物です。
しかし私たちは、ソレはソレ、コレはコレなんて感情を切り替えられるでしょうか。そんな器用な生き物でしょうか。映画を観るのも、報道に接するのも、同じ人間です。映画に期待することは、そのまま現実の出来事にも期待してしまうのではないでしょうか。

1941年、総力戦研究所は日米開戦すれば日本必敗との報告を提出しましたが、当時の東條陸相は「戦といふものは、計画通りにいかない。意外裡な事が勝利に繋がっていく。」と述べて、「奇跡」に期待する気持ちを吐露しました。
開戦の結果は総力戦研究所の予想通りに推移するのですが、戦況が思わしくなくなると、人々も「奇跡」を待ち望みました。
人々が待望した「奇跡」――それは「神風」と呼ばれました。

No title

以前からヤマト関係のトピックを見ていたのですが、今回初めて書き込ませて頂きます。

このトピックを見ていて、同じような「レスキュー」を扱いながら「全力を以ってしても助けられない命がある」という現実を正面から描いたアニメ作品、「よみがえる空」を思い出しました。
主人公はF転(戦闘機パイロットからヘリパイに転科)で航空救難団に来た青年でしたが、初っ端から「全ての命を救える訳ではない」という現実を突きつけられていました。
その中でも印象に残っていたのが、ヘリへ戻ってきた時に遺体袋が積まれて(当然中身が入っている)いる事に気付いてたじろいだ瞬間、ベテランメディックの「要救助者です!」という強い言葉でした。
全体として若干暗めの作品で、深夜枠と言うこともあって非常にマイナーな作品でしたが、「救助」という仕事に対して非常に真摯に描いた傑作だと思っています。

主人公が頑張る>奇跡が起こる>ハッピーエンド。
一話で終わる物語であればそれで良いかもしれませんが、「救助」という仕事(任務)をしている以上、それが続く事は決してありません。
「海猿」という作品は本当の意味で「救助」を描いているとは個人的には首肯しかねます。
……乱筆乱文、申し訳ありません。

あまりにも、単純すぎるように思う。

こんにちは。
カリメン2号です。

ドラマなどで当たった作品は、すぐに映画にするご時世で、その例にもれない作品だと感じました。
悪いとは思わないが、映画は続編が出ることによって、次回作のハードルは高くなるのです。
前作よりも良いものをという思いと、観客の作品を見る目が肥えていくからです。
今回の『BRAVE HEARTS 海猿』は、カリメン2号にとってはテレビドラマの域を出ていないと感じられました。
映画だけで言わせていただければ、前作を含めた3部作で完結させて置くべきだったたと思います。
おそらく今回の映画は、東日本大震災の影響を受けて、制作されたものだと感じました。
ただ、内容はほとんど無く、映像のスケールのみが際立った作品でした。
映画の海猿シリーズは、必ず主人公の仙崎が要救助者(遭難者)になるのである。
ハッキリ言って、今まで生きてこれたのが不思議な状態だと言えるのです。
海上保安官としては、NGだと言わざるおえないと思います。
また、物語として仙崎の葛藤があまりにも弱いのです。
困難に立ち向かうのは良いが、本当に正しいのかという疑問を抱かない仙崎に、冷やかな思いを感じた。

Re: No title

大隈さん、コメントありがとうございます。
ヤマト関係の記事を読んでいただいていたとは嬉しいです。

私は『海猿』の原作マンガを読んでいないのですが、原作を紹介している記事等によれば、原作は全員救えるような話ではないそうです。おそらくは「救助」という仕事を真摯に描いた作品なのでしょう。
ご紹介いただいた『よみがえる空』も、オリジナル作品でありながら「全ての命を救える訳ではない」という現実を突きつけるとは、作り手の覚悟が窺われますね。

本作の作り手も、それは判っているはずです。本作にしろ前作にしろ、冒頭では要救助者を救えないエピソードが描かれていますし。
ではなぜメインとなるストーリーでは全員救出のハッピーエンドになってしまうかといえば、観客が望むからでしょうね。映画二作目も三作目も、超大ヒットを記録しました。四作目である本作も、大ヒット邁進中です。観客の支持を集めているのは間違いないです。
それはとりもなおさず、多くの人が奇跡を望んでいるということでしょう。「救助」という仕事を真摯に見つめるよりも、あり得ないようなハッピーエンドに酔いたいのでしょう。そして大衆芸能たる映画が観客の望むものを提供するのは、ある意味とうぜんのことではあります。

ここで気になるのは、「主人公が頑張る>奇跡が起こる>ハッピーエンド」というサイクルに対して、観客が「あり得ない」「現実的ではない」と感じて離反してはいないことです。
このサイクルの繰り返しを歓迎する心持は、裏を返せば「失敗を許さない」「奇跡的なことを当たり前のように要求する」「ハッピーエンド以外の事態は想定しない」ことに繋がりかねません。
それはなんだか怖い世の中ですね……。

Re: あまりにも、単純すぎるように思う。

カリメン2号さん、こんにちは。
このシリーズはもともと映画とテレビのメディアミックスとして企画されたもので、次のような"三部作"として構成されていました。

 映画一作目:潜水士を目指す仙崎の青春ドラマ
 テレビシリーズ:救助の現場で鍛えられる仙崎の成長物語
 映画二作目:シリーズの掉尾を飾る大スペクタクルと、恋愛成就を並行に描く大団円

当初の予定どおりにここで終わらせれば、良くできた"三部作"としてまとまったと思います。
ところが、映画二作目が興収71億円の超大ヒットになったことから、シリーズが続行されるわけですね。しかも、青春ドラマたる映画一作目が興収17.4億円でしかなかったのに(それだって立派な成績ですが)、映画二作目はジブリのアニメに迫る成績を記録したので(2006年の興収成績では『ゲド戦記』の76.5億円に次いで二位)、スペクタクル路線こそ成功の鍵と認識されるわけです。
そのため映画三作目、四作目は、おっしゃるように映像のスケールに力が入れられることになりますね。そして作り手の狙いどおり、観客の支持を得て超大ヒットの連発になります。

受け手にとって、テレビ視聴は日常生活の一部ですが、(親しい人と)映画を観るのは一種のイベントなのでしょう(映画鑑賞も年間100本以上になると日常でしかありませんが)。
おそらくテレビシリーズにあったような主人公の葛藤は、イベント向きではないのでしょうね。
ただ、本作の題材が人命とか行政を扱うものであるだけに、イベントムービーで終わって欲しくないと思うのです。

Re:Re: あまりにも、単純すぎるように思う。

ナドレックさん、こんにちは。
カリメン2号です。

実に惜しいと思います。
あれは、三部作で終わらせておくべきだったと、カリメン2号も思います。
引き際を間違えた作品は、酷評の的になってしまう。
三作が良かった分、四作目があまりにの良くないと感じます。
本当に、ただのイベントムービーと化してしまったのは、残念です。

Re: Re:Re: あまりにも、単純すぎるように思う。

カリメン2号さん、こんにちは。
続けるのもいいと思うんですよ、支持する観客がいるのですから。
内容も突然変化したわけではなく、相変わらずだと思います。
ただ、回を増すごとに内容が先鋭化され、多様性が置き去りにされているような気がします。テレビや映画等の映像メディアは、受け手の思考を停止させるほどのインパクトを持っていますから、受け手も作り手も気をつけなきゃいけませんね。

作品としてのお約束

ナドレック様

ハッピーエンドをいわゆる「お約束」として扱うには、余りにも救助モノはその内容が重過ぎるのだと思います。
これが例えば時代劇のような勧善懲悪作品であれば問題ありませんが、内容が内容だけに回を重ねるごとに薄っぺらくなっていかざるを得ないでしょう。
何しろ「主人公が救難現場に行けば皆助かる」という事になってしまうのですから。
前述させて頂きました「よみがえる空」では間接的とは言え、主人公の行動によって人命が失われた事も描かれています(それも最初の任務で!)。
絵柄がいわゆるアニメ絵よりはリアリティのあるもので、深夜放送の上自衛隊物と一般的にはあまり売れる要素が多いとは言えない作品でしたが、そういった負の部分を真面目に描いたという点は大きく評価されるべきだと思います。
お時間がありましたら是非一度(1~3話の第一部だけでも)ご覧頂ければ、と。
乱筆乱文、失礼致しました。

Re: 作品としてのお約束

大隈さん、こんにちは。

> ハッピーエンドをいわゆる「お約束」として扱うには、余りにも救助モノはその内容が重過ぎるのだと思います。

そうなんでしょうね。私は時代劇の勧善懲悪も好きではありませんけど(^^;

『よみがえる空』は面白そうですね。たしかにリアルな絵柄の自衛隊物では売れそうな気がしません。しかし、そのような取り組みをするところに、作り手の心意気があるのでしょう。
機会があれば見てみたいと思います。

No title

はじめまして。
「BRAVE HEARTS 海猿」に出演?した巡視船の画像を検索していてこちらにたどり着いた変わり者です。

私のスタンスとしては、ドラマ(娯楽)はドラマ、現実は現実と割り切って海猿シリーズを楽しみにしているので、仙崎大輔の奇跡の救助劇は、「水戸黄門」における「天下の御紋」登場シーンのような「お約束」と受け止めています。(「時代劇の勧善懲悪」に反応してしまいました。」
ここでコメントする方々が、作り話の世界と現実の世界とをきちんと分けて論じられる方ばかりであるといいですね。

それはそうと、他の記事も何本か拝読しましたが、とても興味深く思いました。これからバックナンバーを読ませていただきます。

テレビシリーズについて

初めまして!やっと本日映画館に行くことができます。いろんな見方があるでしょうが、あくまでも映画であることを念頭に置いて、現実はそんなにうまくいかないぞ!といつも通り突っ込みつつ、単純に楽しめたらと思っています。
ところで、好きなエピソードとして池澤と仙崎が要救助者を助けるシーンを挙げていらっしゃいますが、死んでしまうのは後に助けようとしていた船長ですね。先に助けた若い船員は助かります。そのあとの下りは正しいです。今回の映画のためにドラマ含めて全作通しで観たので間違いないです(笑)
では行ってきます!

Re: No title

GAGAさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

>仙崎大輔の奇跡の救助劇は、「水戸黄門」における「天下の御紋」登場シーンのような「お約束」

まったくそのとおりだと思います。
『水戸黄門』は幕末以来の人気コンテンツで、印籠を取り出すお馴染みのテレビドラマだけでも42年以上の長きにわたり支持されました。
けれどもテレビドラマ『水戸黄門』における黄門一行の所業を見ると、それは違法行為・越権行為の塊です。それを支持した人々は、はたして黄門一行が「法の支配」に反していることを認識していたでしょうか。
そして現実社会における人々の要求が「法の支配」を逸脱しがちなのは、『水戸黄門』を支持した心根と全然関係ないのでしょうか。
そんなことを考えてみるのも面白いかと思います。

どうぞ、今後ともよろしくお願い致します。

Re: テレビシリーズについて

みっひ~さん、はじめまして。
ご指摘ありがとうございます。たしかに正確な記述ではなかったので本文を改めました。
テレビシリーズの該当箇所をもう一度見直したのですが、いやぁ、やっぱり面白いですね、テレビシリーズは。
もちろん映画もいいんですけど、海猿シリーズで一番好きなキャラクターは池澤なのです。復活しないかなぁ。

観てきました!

確認&本文修正ありがとうございます!
映画観てきました。
パロディ予告のおかげか、ほぼ満席でした。
感想はやはり、嶋の感情移入しない理由の説明(昔は仙崎みたいだったが判断ミスで事故を起こした、とか)が欲しかったですね。
また、仙崎と一緒に機長を助けることにしたシーンは、今までの海猿の危険な状況と比較すると、タンク背負ってるから大して危険とは思えなかったです。嶋の葛藤(それもアピール不足でしたが)の末に持ってくるにはちょっと弱いかなと感じました。
とはいえ、総合的には充分楽しめました☆ 二人のおしりも拝めて満足です(笑)

Re: 観てきました!

みっひ~さん、こんにちは。

> とはいえ、総合的には充分楽しめました☆ 二人のおしりも拝めて満足です(笑)

娯楽作としての徹底ぶりには敬服しますね。
やっぱり海猿シリーズはお尻が出なきゃいけません:-)

なるほど、嶋の感情移入しない理由の説明があれば、さらにクッキリした映画になったかも知れませんね。
また続編が作られるでしょうから、その際には嶋をもっと掘り下げてほしいものです。

No title

こんにちは。
前回の書き込みをしてから、いくつかの記事を読ませていただきました。(「大脱走」とか「ナバロンの要塞」が懐かしい!!)
さて、映画の「海猿」を、リアルの海上保安庁の皆さんはどう観ているのかが気になるのは、私だけでしょうか。
思えば、潜水士訓練生の遭難救助そのものを、教官の重大違反もろとも「訓練」として処理しちゃったり、状況が分からない事故船内で要救助者を抱えて素潜り移動することを本部が命じたり、ジャンボ機と共に沈んだ特救隊員の揚収(結果的には救出)のために本部が60mの深深度潜水を呼び掛け(さすがに命令はしなかった)たり……
もっとも、あまりリアルにこだわると、映画の世界では場がシラケかねないので、知名度を上げる手段の一つと割り切って協力しているのだろうとは思います。
けれど、昔のアメリカのTV映画「エアウルフ」では、撮影用に仕立てた実物のヘリコプターを航空ショーで飛ばしたら、平凡な飛びっぷりに観客ががっかりしたとか、やはりアメリカの「トップガン」(最近、監督の自殺で話題になってしまいました)では、戦闘機が空中戦で撃墜されるシーン(もちろん特撮)を観て「いったい何機壊したんだろうね。」と感心している観客がいたりで、映画の世界と現実の区別がつかない人もいるので、海保の知名度が上がる反面、現場の職員さんがイベント等で無用のストレスにさらされている、なんてことがなければよいのですが……

Re: No title

GAGAさん、こんにちは。
過去の記事までお読みくださりありがとうございます。
本当は古い映画もたくさん取り上げたいのですが、なかなか手が回りません。

> さて、映画の「海猿」を、リアルの海上保安庁の皆さんはどう観ているのかが気になるのは、私だけでしょうか。

そこ、気になりますね!
『海猿』シリーズを公開すると海上保安官の志望者が増えるそうですし、現職の方々も家族や知人の認知度が上がれば嬉しいでしょう。だから海上保安庁は映画に協力するのでしょうが、おっしゃるような弊害も考えられますね……。

はじめまして、楽しく読ませて頂きました。
何点か疑問がありましたので、質問させて頂きます。

> 熱意を持って当たれば良いとは限らない。

とおっしゃっていますが、嶋や池澤なる人物は人命救助に対して"熱意を持っていない"とお考えなのでしょうか?
熱意、意欲、使命感など言葉は何でもいいのですが、それらを備えている事が救助作業に従事する適性としては"必須条件"で、嶋や池澤なる人物も当然に熱意を持って当たっているのだと思いますが。

仙崎の未熟さとは熱意を全面に出す事ではなく、その熱意に能力が追い付いていなかった事だと思います。
相応の能力さえあればいかな大言壮語であっても、いかな判断を下そうとも問題は起こり得ないからです。
映画1、2とTV版は見ていませんが、察するに仙崎のそういった未熟さが悪い事態を招いていたのでしょう。

しかし、映画3、4でもそういった未熟さが発揮されていたのでしょうか?
"船長が溺死したエピソード"の「絶対助ける」と言う発言と映画3、4での似たような発言は"同じ意味"で発せられたのでしょうか?

"誰かを安心させる事"と"誰かを勇気付ける事"は似ているようでいて、実際には全く違います。安心させれば戦う力は失われますが、勇気付ければ戦う力は湧くものと思います。
映画3、4における「絶対〇〇」という発言は服部に対しても、吉岡に対しても、機長に対しても窮地を共に脱する力を与えるものであり、安堵感を与え力を削ぐものではなかったように思います。

映画3で恐怖感に耐え兼ね逃げ出した服部に対して、仙崎は「自分も怖い」と発言しています。「子供が生まれて潜水士の仕事に初めて恐怖を覚えた」とも発言しています。
仙崎は救助の現場の過酷さや自分が死んでしまう事に恐怖しているのです。仙崎の発言は他者だけでなく、そんな自分にも向けられているように思います。
勿論、熱意は持っているでしょうが映画3、4の発言は単なる熱意の発露とは到底思えません。

なので私には仙崎の発言が池澤なる人物の戒めと対立するものとは思えないのですがいかがでしょうか?

あと、嶋の「重傷者は後回し」という指示について、仙崎にはそういった指示は出せないとお考えのようですが果たしてそうでしょうか?

"全員を助ける"という至上命題を達成する為には迅速な救助作業が求められます。
嶋の指示と仙崎の命題は一見対立しているようでいて"多くの人間を助けたい"という共通の信念に基づくものです。
重傷者に時間を費やす事が全員を救出する上で弊害となる事には仙崎も気付くと思うのですが。
むしろ全員助けるつもりだからこそ抵抗なく重傷者を後回しにできる、とも考えられます。
実際、機長より副機長を先に助ける嶋の方針に反発する事なく従っていましたし。

それから嶋が仙崎にほだされてしまったとおっしゃっていましたが、それだけでは無いように思います。
嶋の仙崎に対する評価は「運だけの奴」と言っていたように、無謀無策、熱意だけで能力不足の輩というようなものだったのでしょう。

↓(↑かな?)でも述べさせて頂いた通り、能力さえ伴っていれば熱意は高いに越した事はありません。

仙崎は嶋を含め誰も導き出せなかった死中に活の一手を発案していますし、多くの場面で他者を奮い立たせ戦う力を与えています。
どちらも救助作業員としては希有な能力の現れです。
隊長は仙崎について"特別なもの"を持っているかも知れないと評し、嶋はそれを否定しました。
映画の最後に嶋が仙崎を認めたのはこの評価を覆した事に外なりません。
そこから察するに、嶋は自分とは別の"特別なもの"を持っている仙崎を認め、信頼し、賭けてみたのだと思います。

あれだけの使命感を持ち、他者をも奮い立たせ、誰も思い付かない発案をする仙崎です。
確かな能力さえ身につけさせれば、この上ない人材になるという上司としての目も仙崎に賭ける後押しになるのではないかとも思います。

他者を認める事と他者の熱意に当てられ迎合する事とは、また別の事のように思うのですがいかがでしょうか?

最後に海猿とはあまり関係のない話ですが、旧日本軍の特攻を美化し、華々しく散った勇者などと考えているのは一部の人間だけです。
大半の人間は、国や戦争の犠牲にされてしまった哀れむべき被害者と認知しています。正しく犠牲者です。

そして、映画海猿に投影されているのは、命懸けの救助活動に従事される事もある海上保安官や自衛官、消防士等の姿です。
強いられた、または仕向けられた自己犠牲によって命を落とす、または命を落とし兼ねない犠牲者ではありません。

死と対峙するという一点のみから混同してしまうのは一部の人間だけです。
映画海猿を見た人間が、強いられた、または仕向けられた自己犠牲を容認するようになってしまう事はありません。
犠牲者に涙する事はあっても、それを強いた国や戦争は憎しみと怒りの対象でしかないからです。
憎しみと怒りの対象を許容させ支持させる事など映画のような単発の、尚且つ取捨選択可能な媒体では不可能です。
ある概念を一変させるほどの影響力を持っているのは教育や宗教のように継続的で、ある種、隷属的な特殊な環境が整った場合のみです。

あと、これはどうでもいい事ですが、現実において"絶対"という事は有り得ないのでしょうか?
絶対は絶対に有り得ない事ですか?

恐らく合理的な人は"絶対"という言葉には関わらないのだと思います。
考え始めた途端に矛盾が発生してしまいますから。


それでは、長々と長々と失礼致しました。(_ _)

>通りすがりさん

通りすがりさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
ただ、せっかくいただいたコメントですが……困りましたね。

>>熱意を持って当たれば良いとは限らない。

と書いたら、

>"熱意を持っていない"とお考えなのでしょうか?

というコメントが返ってくるとは思いませんでした。
このコミュニケーションの断絶をいったいどうしたら良いのでょう?

コメントする前に本文をよく読んでいただければ幸いです。一度で判らなければ繰り返しお読みください。あわせてリンク先の記事も読んでくださると嬉しいです。
そして記事に書いてあることと書いてないこと(通りすがりさんが空想したこと)を区別していただけると、コミュニケーションを取る可能性が見えてくるのかなと思います。

でも、通りすがりさんが書いてらっしゃる質問については、ご自分で答えを見つけられるかもしれませんよ。

>絶対は絶対に有り得ない事ですか?
>
>恐らく合理的な人は"絶対"という言葉には関わらないのだと思います。
>考え始めた途端に矛盾が発生してしまいますから。

考えを巡らせれば矛盾の発生は避けられない、と通りすがりさんもお考えなんですよね。
であれば、 絶対に有り得ない事かどうかもおのずと答えが出るでしょう。

問題はその答えを直視できるかどうかではないでしょうか。
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