『犬を飼うということ ~スカイと我が家の180日~』 ガンダムを思わせる必見作!

 当ブログでは珍しいことなのだが、第2話を放映したばかりのテレビドラマ『犬を飼うということ ~スカイと我が家の180日~』を取り上げよう。
 これは、犬を飼っている人のみならず、犬を飼おうとしている人や、犬は絶対に飼わない・飼わせないという人にも、きっと気付きや学ぶものがある、必見のドラマである。

 当ブログでテレビシリーズを取り上げるのは、すでに完結しているか、シリーズがかなり進行して作り手のメッセージが明確になってからにしている。そうしなければ、作品について語れないと思うからだ。
 しかし、『犬を飼うということ ~スカイと我が家の180日~』には、第1話を見た時点で感服していた。そして第2話を見た今、あまりにも良質なので、この作品を取り上げずにはいられなくなった。


 世は空前のペットブームと云われて久しい。子供(15歳未満)の数を犬猫の数が大きく上回っている現代では、各家庭に犬や猫がいるのは何ら珍しいことではない。集合住宅でもペットの飼育を許可するのは当たり前、認めなければ資産価値が落ちてしまう世の中である。
 それもあってか、犬や猫を題材にした映画やテレビドラマは多い。
 本作の本木克英監督も2008年に『犬と私の10の約束』を撮っているし、脚本の寺田敏雄氏はテレビドラマ『盲導犬クイールの一生』(2003年)や『ディロン 運命の犬』(2006年)とその続編(2006年)、続々編(2008年)を書いている。

 しかし、私は思っていた。
 盲導犬やセラピー犬の物語もいいけれど、そもそも一般家庭にとっては犬がいるだけで大事件のはずだと。

 何しろ、食事をしたり、排泄したり、遊んだり暴れたりする存在が、ある日もう一人(一頭)増えるのだ。
 人間用の家具や雑貨、人間に便利な間取りは、犬にとってはまったく違う意味を持つ。人間にとってスリッパは足に履くものだが、犬にとっては振り回して遊ぶ物かもしれない。人間にとって木製の椅子は座るためのものだろうが、犬にとっては歯が痒いときにかじるためのものかもしれない。仔犬がいたら、床にスリッパは置けないし、家具の配置替えだって必要だろう。
 外出が長引いたら、人間は外食して済ませることもできるが、家に犬が待っているなら帰って食事させなければならない。
 だから、犬が家にやってきたら、生活の仕方も、家のあり様も、犬中心に変えなければならない。
 人間とは違う生き物を家族に迎えるのは、そういうことだ。

 したがって、『まほろ駅前多田便利軒』のように、何の準備もなくチワワを預かったり、アパートで飼い始めたりするのは困難だ。本来、犬を飼うには「犬の飼い主検定試験」に合格するくらいの知識が必要なはずなのだから。
 いや、現実には衝動買いや成り行きで飼い始めることもあるかもしれない。
 そして、やっぱり面倒見切れないとなると、『犬と猫と人間と』で描かれるような悲しい事態が起こるのだろう。
 現代の日本では、犬や猫(イエネコ)はほぼ完全に人間がコントロールしている生き物である。その善し悪しはともかく、人間の関知しないところで、野生の状態で生きるということはまずない。そのため、その生死も人間の行動の結果である。
 2009年度に殺処分された犬猫の数は、犬65,956匹、猫173,300匹、計239,256匹にも上るが、彼らは野生の状態で捕獲されたわけではない。この膨大な数は、人間が持ち込んだり、手放したりした結果なのだ。


 『犬を飼うということ ~スカイと我が家の180日~』が素晴らしいのは、「ペットと暮らす」という平凡でありながら当事者には大事件であることを、可愛さでごまかしたりせずに、等身大に描いている点だ。
 「犬の排泄はどうしたらいいの?」
 「保険に入っていない犬を病院で診てもらったらどういうことになるの?」
 そんな基本的な部分から、犬のことを何も知らない家族の目を通して、きちんと描いている。

 ファンタジー風味のドラマ『マルモのおきて』では、見知らぬ犬を部屋に1日中いさせながら何の苦労も生じていないが、多くの家庭にペットがいてその苦労を知っている現在、苦労のないことがファンタジーである。
 食事や排泄等に気を使わなければ犬を飼えないことを示した『犬を飼うということ ~』は、たとえて云えば、ロボットアニメの歴史の中で『機動戦士ガンダム』がロボットに整備が必要なことを示した衝撃に似ている[*]。


 そしてまた気付かされるのは、人間が犬や猫をほぼ完全にコントロールしている以上、犬や猫に関連して発生するトラブルは人間が原因だということだ。人間の配慮不足や躾不足が、近隣住民との軋轢の元となる。その点について、本作はかなり手厳しい。
 主人公一家が面倒を見る犬・スカイツリーちゃんは、完璧に躾けられた子だ。決して無駄吠えしないし、そそうもしない。
 犬を飼うことに反対する人は、しばしば「うるさいから」「汚れるから」といったことを理由に挙げるが、このドラマは、それらは犬のせいではなくて、静かにさせない、きれいにさせない人間が悪いことを示唆している。
 もちろん、そんなに完璧には躾けられなくて悩んでいる飼い主も多いだろうけど、いずれにしろ諸々の問題は犬のトラブルではなく人間のトラブルなのである。

 このように、本作は「犬を飼うということ」の細部まで目が配られていて、犬猫が子供よりも多い時代に即した作品だ。


 そして本作が巧いのは、犬にまつわる問題を人間社会に投影し、犬への興味の有無に関係なく、誰もが共感したり、問題意識を抱けるエピソードに昇華させていることだ。
 殺処分されそうな犬を助けようとする話では、会社を辞めさせられるロートルの問題に重ね合わせ、登場人物に「彼だけ助ければいいのか!?」という一番痛いセリフを叫ばせている。
 ペット禁止の団地で犬を飼おうとする話では、子供の盗みに重ね合わせて、ルールとは何かを考えさせる。
 それを、教条的にならず、テンポの良いホームドラマとして見せているので、犬に興味のない人でも、この家族の今後に目が離せないだろう。

 本作の主人公の行きつけのバーの名は「CrossRoad」。主人公はここでいつも物想いに耽っている。
 なかなか意味深長なネーミングである。


 また、本作の楽しさの一つは、配役の妙だ。
 錦戸亮さんと水川あさみさんは、小学生の両親を演じるには若すぎるのではないかと思ったが、不器用な夫と口うるさい妻がなかなか似合っている。
 芸達者な吹越満さん、杉本哲太さん、泉谷しげるさんらも要所々々を押さえて流石である。

 そして何より、スカイツリー役のポメラニアンがかわいい!
 あぁ、やっぱり結論はそこか!


[*]主要キャラクターとして整備士が登場するロボットアニメとしては、『惑星ロボ ダンガードA』の先例がある。


犬を飼うということ ~スカイと我が家の180日~ Blu-ray BOX犬を飼うということ ~スカイと我が家の180日~』  [テレビ]
監督/本木克英、遠藤光貴、橋伸之、木内麻由美  脚本/寺田敏雄
出演/錦戸亮 水川あさみ 田口淳之介 吹越満 杉本哲太 泉谷しげる 久家心 山崎竜太郎 武田航平 鹿沼憂妃 森脇英理子
放映日/2011年4月15日~6月10日
ジャンル/[ドラマ] [犬]
ブログパーツ このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録
関連記事

【theme : 犬を飼うということ
【genre : テレビ・ラジオ

tag : 本木克英 錦戸亮 水川あさみ 田口淳之介 吹越満 杉本哲太 泉谷しげる 久家心 山崎竜太郎 武田航平

⇒comment

No title

私も亮チャン大好きです♪

一緒に応援しましょーー

Re: No title

はちみつさん、コメントありがとうございます。
錦戸亮さんは、『ちょんまげぷりん』に続いての本作で、主演づいていますね。
毎週楽しみです。

同感!

自分も、このドラマの1、2話を観て、「これはっ!」と、思いました。
そして、ナドレックさんの評論を読んで、まさに! このドラマを観て自分の感じたこと、思ったこと、感銘を受けたことが明瞭なる文章で語られていて、とても嬉しく思いました!
そうなんですよね、淡々としたドラマのようであり、実はとてもチャレンジングなことをしているんですよね、この作品は。
そういうことが多くの人に受け止めてもらえればいいなと思いつつ、毎週、見守ってゆきたい作品です。
それにしても、ガンダムを引き合いに出されたこと、気持ちよく一本取られた! って感じです。
今後も是非、この『犬を飼うということ』の評論、続けてください! 楽しみです!

Re: 同感!

エリオットさん、コメントありがとうございます。
そうそう、チャレンジングなんですよね。殺処分施設の職員が登場したり、処分のプロセスが説明されたりと、テレビでは取り上げにくいことから目をそらさないのは驚きです。たぶん、これまで犬に関する映画やドラマを作ってきたスタッフが、「かわいい」「感動」だけでは済まない現実に、きちんと取り組みたいと考えたのではないでしょうか。
今後のドラマの展開がとても興味深いですね。
Secret

⇒trackback

  トラックバックの反映にはしばらく時間がかかります。ご容赦ください。


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

犬を飼うということ~スカイと我が家の180日~

犬を飼うということ~スカイと我が家の180日~ 金曜 23:15 テレビ朝日 2011年4月15日~  【キャスト】 錦戸亮、水川あさみ、田口淳之介、久家心、山崎竜太郎、武田航平、吹越満、杉本哲太、泉谷しげる ほか 【スタッフ】 脚本:寺田敏雄 音楽:沢田完...
最新の記事
記事への登場ランキング
クリックすると本ブログ内の関連記事に飛びます
カテゴリ: 「全記事一覧」以外はノイズが交じりますm(_ _)m
月別に表示
リンク
スポンサード リンク
キーワードで検索 (表示されない場合はもう一度試してください)
プロフィール

Author:ナドレック

よく読まれる記事
スポンサード リンク
コメントありがとう
トラックバックありがとう
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

これまでの訪問者数
携帯からアクセス (QRコード)
QRコード
RSSリンクの表示