『ノウイング』に備えよ!

 【ネタバレ注意】

 エゼキエル書に登場した「神」は地球に来訪した宇宙人であるという説は、そのむかしエーリッヒ・フォン・デニケンが著書『未来の記憶』で唱えて有名になった。五島勉が『宇宙人 謎の遺産―彼らこそ地球文明の影の支配者だ』でも紹介している。

 主に1970年代だろうか、宗教的に解釈されている古代の出来事は、実は古代人から見た宇宙人の事跡なのだとする考えがはやり、そこから多くのSF作品も生まれた。

 この流行は、カウンターカルチャーの勃興があったればこそだろう。
 伝統的な宗教観が支配する社会では、神を宇宙人呼ばわりすることはできなかったはずだ。

 しかし、出版物ではできることも、映画となると難しい。

 かろうじて『2001年宇宙の旅』がそれらしき世界を描いたが、『幼年期の終わり』の映画化企画はポシャり、後に続く作品はなかなか生まれなかった。
 『スターゲイト』のようにエジプト神話に材をとるならまだしも、相応の制作費をかけて聖書をSFのネタにするなど、プロテスタントの国アメリカでは難しかったか。


 しかし、『ノウイング』をもって、遂にハリウッドがデニケン的な世界を取り上げた。

 ある意味で本作に良く似ている『サイン』が、プロテスタントと迎合することで成立していたのに対し、本作は同じようにプロテスタントに目配りしながらも、あくまで「神=宇宙人」という主張を貫きとおす。
 エゼキエルが見た「怪物」の登場するクライマックスから、少年と少女がリンゴの木の下で戯れるラストまでは、聖書をなぞるかのような展開だが、聖書に似せれば似せるほど、それが実は宇宙人なのだという本作は挑戦的だ。

 『ノウイング』は典型的な人類家畜テーマの作品といえる。
 同テーマでは、たとえば半村良氏のデビュー作『収穫』が思い浮かぶ。『収穫』では、宇宙人のメッセージを受けた全人類が宇宙船に乗り込むにもかかわらず、主人公はメッセージを受けられずに取り残されてしまう。
 メッセージを受け取るのが多数派か少数派か『ノウイング』との違いはあるものの、メッセージを受け取れる人間の方が宇宙人にとって「出来がいい」のは共通していて面白い。

 将来起こる災厄をテレパシーで伝えようとしてくれる設定も、SF好きにはお馴染みだろう。石ノ森章太郎が描こうとした『2012 009 conclusion GOD’S WAR―サイボーグ009完結編』なんて、そのまんまだ。

 このように『ノウイング』は、SF小説を読む人には決して斬新な内容ではないが、これを映画というビジュアルな媒体で提示し、宣伝費をかけ、全世界で公開するとは、なかなか野心作である。


 そういえば、アレックス・プロヤス監督はエジプトの出身。
 さては『スターゲイト』の意趣返しか
 アンチ宗教SFの代表作であるフィリップ・ホセ・ファーマーの『リバーワールド』も映像化したし!


 ところで…
 急に避難しろと云われてあわてないように、NICTの宇宙天気予報を見て太陽フレアに気をつけよう!


ノウイング [Blu-ray]ノウイング』  [な行]
監督/アレックス・プロヤス
出演/ニコラス・ケイジ ローズ・バーン チャンドラー・カンタベリー ララ・ロビンソン(二役)
日本公開/2009年7月10日
ジャンル/[SF] [サスペンス]
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【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画
【genre : 映画

tag : アレックス・プロヤス ニコラス・ケイジ

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おじゃまします

おじゃまします。私のブログにコメントを頂きありがとうございました。
遅くなってしまいましたが、私からこちらにもコメントを残させて下さいませ。
私のブログにも頂いたコメントへの返事を書かせていただきました。良かったらそちらも読みに来てくださいね。
では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。

Re: おじゃまします

 ピロEKさん、こんにちは。

 今から40年以上前に発表された人類家畜テーマの傑作に『サイボーグ009』天使編があります。
 そこでは、神話・伝承に出てくる姿に良く似た者たちが地上に降り立ち、こんなことを云います。

「お前たちの言う神がどんなものかは知らないが、もし……
 お前たちの造物主という意味でならその通りだ!
 お前たちを作ったのは我々なのだ!
 だが、収穫に来てみてがっかりした。
 あまりにも出来が悪い。
 だから初めからやり直すことにした。」


 先ごろ、宮崎県で口蹄疫がはやったとき、優秀な一部の種牛だけを避難させましたね。
 もしも残された牛が、病気が広まりつつあることを知ったなら、どう思うでしょうか。
 なんだか、『ノウイング』を思い出しました。

No title

劇場公開時にはパスしていたのですが、日曜洋画劇場で放映していたので、つい見てしまいました。
・ニコラスケイジは切羽詰りながら行動する役が本当に上手い、というか、どの作品もそればっかり。逆に捉えると、安心して観る事ができる。
・やっぱりお父さんが可愛そうで涙ぼろぼろ状態
・ダイアナ(助かることになる女の子のお母さん)を演じたローズ・バーンは、Xメンでの好演より、Bridesmaidsのコミカルな役が思い出されて(そもそもたれ目で愛嬌ある顔立ちだし)、どうも彼女の痛々しさや悲劇に集中して見られませんでした(笑)
・多様な宗教があり、また、天地創造と進化学でマジに対立する、そんな米国でこれを放映して大丈夫だったのか?という疑問
・とっても恐かった
・まじめに考えると、人の努力を否定する内容ですので、大変な時期にさしかかっている日本で今見たくないと思った。子供たちを連れて行く天からの使者は全く好きになれなかった。

以上ですが、福島以降でこれを今放映するのはTV局は何か意味をもたせているのか気になりました。地球滅亡は太陽からのフレアによる放射能ですから。

Re: No title

魚虎555さん、こんにちは。
私は本作を滅法面白いと思いました。

>天地創造と進化学でマジに対立する、そんな米国でこれを放映して大丈夫だったのか?

そうなんですよね。本作はなかなか挑戦的な作品だと思います。
ここを汲み取らないと、本作は意味をなしません。

おっしゃるとおり、人の努力を否定する内容であり、聖書のヨブ記にも通じるものがあります。
同時に、聖書の創世記において神は人間に「地を従わせよ。すべての生き物を治めよ。」と云っているにもかかわらず、本作では人間自身が治められる存在でしかないことが描かれ、人間の矮小さが強調されます。
これらについては、人間が平和を享受し、奢り高ぶっているようなときには警鐘になるでしょうが、たしかに大災害があった今年は辛いですね。

>福島以降でこれを今放映するのはTV局は何か意味をもたせているのか

本来はもっと早く放映してもおかしくないと思うので、震災に気を使って放映時期を遅らせていたのではないでしょうか。たまたま12月になったんだと思います。

主演しか演じきれない彼

ニコラスは主演以外はやらないらしい・・・

しかし毎回毎回間一髪で生き残るとか・・・
あまりにも強運すぎたのに最後は・・・・・

最終的に何人の人間が「召された」かは
不明ですが「近親交配」を避けるためには
アバウトですが1000名(500組)以上は必要なはずです
もちろん生存のためだから婆の方は不要(爺は何とか現役なら・)

若くても美人でなければ意味が無い
美人でも若くなければ意味が無い
byラ・ロフシュコー(私ではありません念のため)

Re: 主演しか演じきれない彼

すわっと 優優さん、こんにちは。
ラ・ロシュフコー公爵の『箴言集(しんげんしゅう)』ですね。
ニコラス・ケイジは主演以外はやらないんですか。それで仕事が続くのですからたいしたものです。

近親交配を避けるのは、病気で全滅しないように遺伝子の多様性を確保するためなので、致命的な病原体さえいなければ、最初の男女は少なくても良いかもしれません。ある程度の世代を経て突然変異が進行すれば、多様性が確保されて毒性の高い病原体に遭遇しても全滅は免れるかも。
「彼ら」はそういうことも考えて環境を用意しているでしょう。
Secret

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