『義兄弟 SECRET REUNION』 題材は山ほどある?

 「僕は人見知りな性格だけど、ガンホさんには本心をぶつけることが出来る。僕たちも、『義兄弟』になれたと思います」
 そう語るのは、『義兄弟 SECRET REUNION』でソン・ガンホとともに主役を演じたカン・ドンウォンである。
 日本では、「義兄弟」なんて言葉はヤクザ映画でももう聞かないが、韓国では男同士の「義兄弟」の関係はとても強いという。

 たしかに劇中の、親を敬う儀式など日本では見慣れないものもあるが、それを男二人が一緒になってやることに「義兄弟」的な絆の強さが示されているのだろう。


 それにしても、この映画の面白さには驚くばかりである。
 アクション、コメディ、サスペンス、そして社会派ドラマとしての要素が存分に盛り込まれ、どれもこれもが楽しませてくれる。

 なによりも上手いのは、シチュエーションの設定の仕方である。
 自分は相手の正体を見抜いている。しかし相手は自分の正体に気付いてはいまい。そう考えた男同士が、相手の腹を探り合い、付け狙う。
 それはサスペンスを盛り上げるとともに、ときに滑稽に、『フォロー・ミー』のような微笑ましさすら漂わせる。

 サスペンスと微笑ましさを同時に盛り上げるなんて、通常はあり得ないのだが、それを成し遂げてしまうのが本作の凄さである。
 そこには脚本の妙と、監督の腕と、ソン・ガンホとカン・ドンウォンという俳優の類まれなる演技がある。
 そんなことを考えながら本作を観ていると、ソン・ガンホの四角い顔が、なんだか名優トポルに似てくるから不思議である。


 そして本作を、後味の良いものにしている理由の一つは、北朝鮮を決して悪く描いてはいないことだ。
 時代背景として朝鮮半島の南北分断を見据えてはいるものの、カン・ドンウォン演じる北朝鮮出身者の方が、ソン・ガンホ演じる韓国人よりも人格者であるなど、その位置付けは慎重に考慮されている。
 そして過度に社会性を強調するでもなく、悲劇にもっていくでもなく、あくまでエンターテインメントとしてのカタルシスを重視する。

 単なる娯楽作といってしまえばそれまでだが、朝鮮戦争はいまだ休戦状態で終結していないことを鑑みれば、南北分断を娯楽の範囲で扱うことこそ度量の広さを示しているといえよう。


 もっともそこには、日本と韓国との北朝鮮に対する温度差があるかも知れない。
 北朝鮮に関しては、韓国よりも日本の方が敏感で、マスコミで取り上げる量も豊富だという。
 その分、日本は北朝鮮についておっかなびっくりで、娯楽作の対象とするなんてとんでもないと思っているのではないか。

 香川照之さんは、本作について次のようにコメントしている。
---
南北の問題が常に色濃く横たわる韓国。この国には、映画になる題材が山ほどある。
---

 たしかにそうかもしれないが、では日本には映画になる題材がないかといえば、そんなはずはない。
 日本映画が北朝鮮を取り上げてはいけないわけではない。
 そして、日本の隣に広がる樺太という所属未定地も、映画には取り上げられることがない。
 また、日中戦争も娯楽作で取り上げられることは少ない。
 これらの題材は、日本では手が出しにくいと思われているだろうし、もしも取り上げても極めて真面目な、社会性を押し出した作品になるだろう。ましてや娯楽作にするなんて、おそろしく難しいに違いない。

 香港映画では、日本への原爆投下に大喜びする作品なんぞも撮られているが、そんな扱い方ではなく、『義兄弟 SECRET REUNION』のように他国のことを慎重に考慮した娯楽作も作れると思うのだけれど、それは「映画になる題材」ではないのだろうか。


義兄弟~SECRET REUNION~ [DVD]義兄弟 SECRET REUNION』  [か行]
監督・脚本/チャン・フン  脚本/キム・ジュホ、チェ・クァンヨン
原案/チャン・ミンソク
出演/ソン・ガンホ カン・ドンウォン チョン・グクァン
日本公開/2010年10月30日
ジャンル/[サスペンス] [ドラマ]
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【theme : 韓国映画
【genre : 映画

tag : チャン・フン ソン・ガンホ カン・ドンウォン

⇒comment

No title

はじめまして。
日本にも題材としての地域問題があり得るはず。卓見だと思います。懸念されるように、仮に作成されても、恐ろしくまじめか、お涙頂戴ものか、薄っぺらな理念噴出か、ぐらいにとどまり、観客にエンタテイメントして楽しませつつ観客が自分でその問題を考えるように仕向けるという底意のひとつを忍ばせた作りとする、なんてことは、現状の粗製濫造日本映画の現状を見るにつけ、不可能だと思ったりします。

予告編もなかなか見せてくれますね。やはりまだまだ勢いのある韓国映画。観に行こうと決めました。

Re: No title

アフリカ2131さん、コメントありがとうございます。
本作は、エンターテインメントの中に時代と社会をしっかり描いて、全方位的な成功作だと思います。
日本映画にも頑張って欲しいですね。

No title

こんにちは。観てまいりました。今回のソン・ガンホの演技は抑えられた感が強く、その分カン・ドンウォンの筋を通した生き様を押し出しているようにも思えました。一方、個人のミッションや生き様はむしろ背景であり、主役は銃撃戦、肉弾バトルにあり、と捕えることも可能かと。
狭い階段での戦いは定番ですが、それゆえアクションの迫力が増しているようですね。もうこれぐらい派手にかつ痛みが感じられるアクションでないと私たち観客が満足しないからでしょうね。作るほうも大変だと思います。
ベトナム戦争への派兵もある韓国ですから、エピソードをいくつか本筋に織り交ぜて無理なく出してくるんですね。この点も観ていて感心しました。
また、経済発展を遂げても老街、中国で言えば胡同のような古い町並みを見つけられる韓国は、ある意味、時代性を描く際に有利なのかなと思います。日本は、もうどこいっても工業化されていて風景一緒ですから(笑

どうもありがとうございました。

ナドレックさん
『義兄弟』のトラックバック賜りましてありがとうございます。
わたしの映画仲間はこの義兄弟という題名を観て敬遠しました…。(笑)

DVD化されましたらまた観ます!その前にスクリーンで観ておいて良かったです。

スクリーン越しの拳銃?発砲は怖いです~。(ToT)


Re: No title

アフリカ2131さん、こんにちは。
本作、面白いですよね!
南北分断や脱北者の問題を押さえつつ、がっつりエンターテインメントとして見せてくれます。大規模な爆発シーンや、高速道路の逆走もないのに、オジサンが背筋を伸ばしてバイクにまたがってるだけでこれほどワクワクさせるとはたいしたものですe-257
小気味よく殴られる雑魚たちにも、楽しませてもらいました。

Re: どうもありがとうございました。

愛知女子さん、こんにちは。
私もこの題名には引きましたe-257
観てしまえば納得の題名ですが、集客には貢献しそうもないですね。ヘンに片仮名を使うよりはいいですが…。

ありがとうございました!

中途半端なトラックバックでお騒がせ致しました
mamittiと申します。
わざわざコメントを頂きありがとうございました。
いつもしないことをしてしまい、何か間違えてしまったようです・・・
申し訳ありませんでした。

題名やあらすじを観て男の人が観る映画かと思いましたが
そんなことはなく、背景は重いものの、人間同士の心の通い合いが
素敵な映画でした。

またお邪魔させていただきたいと思います。
ありがとうございました。

Re: ありがとうございました!

mamittiさん、コメントありがとうございます。
FC2ブログはときどき怪しい動きをするので、そのせいかも知れません。
おそらくFC2同士ならでは現象かと思います。
本作は、題名でいささか損をしているように思います。なんだか仁侠映画みたいですからね。

また、いつでもトラックバックをお送りください。
よろしくお願い致します。

No title

ああ、面白かった。

さて、北朝鮮を仮想敵にした日本の娯楽映画は割と難しそう。日本で北朝鮮の工作員が破壊工作を行なう事にリアリティがないですからねえ。それが祖国の利益になるって絵を書きづらい。「在日朝鮮人に抗議されても困る」みたいなベースがあるのかも。

Re: No title

ふじき78さん、こんにちは。
いろんなパターンが考えられると思うんですよね。
破壊工作をする映画でなくても、たとえば、北朝鮮との貿易拡大(あるいは援助)のロビー活動をするためにやってきた主人公が、意に反して日本人と対立する破目になってしまうとか。あるいは日本人と協力してヤクザと戦うとか。あくまでたとえなので、それでヒットするかというと別ですけど。
最近、バンド物とか難病物の邦画ばかり観ている気がします。それらが二番煎じ、三番煎じを狙った企画なのかというと、監督のインタビューを読むと「この映画を実現するために○年かかりました」という苦労話があったりして。なにもわざわざレッドオーシャンに飛び込まなくてもいいと思うんですけどね…。

韓国映画の面白さ

なにから始まったのかなあ・・・と振り返ると、「シュリ」からですかね。
その前からも南北問題を描いた作品はあったのかもしれませんが、こういうテーマが市民権をえて、どんどんと描かれるようになったのは、あれからではないかと思います。
ほとんどが悲劇的な希望の見えない終わり方をするのに対して、これには新鮮味がありました・・と言うより、ちょっと甘いかなと。
なもんで、濃い政治的なもの。。ではなく、娯楽の面が強いのかなっと。
それにしちゃ面白く、それでいて濃く見れたのは、役者の力でしょうね。
ガンホさんは、神の領域ですんで、何も言うことないですが、あたしのカンちゃんで~す。
あ~、幸せでしたv-10

Re: 韓国映画の面白さ

sakuraiさん、こんにちは!
本作は、題材が題材なので暗く重く進むのかと思いきや、実に面白い映画でした。確かに甘すぎな気もしますけど、たまにはこういう展開もいいのでしょう。

> ガンホさんは、神の領域ですんで

口をあけてクチャクチャ音を立てながら飯を食っても許されるのって、この人くらいしかいないのでは:-)
Secret

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