『プチ・ニコラ』 何曜日に見るべきか?
『プチ・ニコラ』の公式サイトや映画情報のサイトを見ると、本作のストーリーが紹介されている。しかし、それらにはあまり意味がない。実のところ、本作にストーリーらしきものは、ない。
いや、それでは未見の人に誤解を与えるだろうから、「物語性を楽しむ映画ではない」と云い換えよう。
『プチ・ニコラ』、日本語に訳せば、ズバリ『ちびニコラちゃん』でしょう!
日曜日の夕方になると、ブルーマンデーの憂鬱から逃れるために、テレビのチャンネルをアニメに合わせてしまう人は多いだろう。
そこには古き良き昭和の匂いが漂い、一戸建てで3世代同居という今では珍しい生活が映し出される。直系3世代が暮らす世帯は、2005年の時点ですでに一般世帯の6.9%しかないのだから、大多数の視聴者にとってそんな暮らしは伝説の世界である。
日曜日の夕方のアニメでは、衝撃の事実が明かされることもないし、激動の時代が描かれるわけでもない。そんなことははなから誰も期待していない。テレビの前の視聴者は、ゆったりとした安心感を得たいだけなのだ。
そうこうしているうちに、まるちゃんと呼ばれた少女はいつのまにやらワカメになり、お爺さんのハゲ頭には毛が1本生えてくるのだが、視聴者にとってはさして気にすることではない。
この話には覚えがあるなぁ、なんてデジャビュ満々でも構わない。覚えがある方が、ノスタルジーに浸りやすいというものである。
ローラン・ティラール監督は、『ちびまる子ちゃん』について、もとい『サザエさん』について、もとい『プチ・ニコラ』について、次のように語っている。
---
実際によく読むと、失業、犯罪、離婚は全く存在せず、社会は安定し、全てが丸く収まっています。理想的な社会です。本当は50年代にも、そして現在においてもそんな理想社会は」実在しないのですから、「プチ・ニコラ」がおとぎ話であるという原則に基づき、物語の舞台を過去の存在しない世界に設定しなくてはならなかったのです。
(略)
私たちは物語の設定を、(略)「プチ・ニコラ」が生まれた1958年前後にすることにしたのです。
---
(原文ママ)
『プチ・ニコラ』の世界は、カウンターカルチャーの勃興前であり、まだ性の解放も叫ばれておらず、ティラール監督が云うところの「理想的な社会」である。
それが本当に理想的な社会かどうかは判らないが、少なくともニコラ少年の目にはそう見える。
時代は少々異なるが、『ちびまる子ちゃん』も同様だろう。
『ちびまる子ちゃん』は、作者であるさくらももこ氏が、小学校3年生のころを回想した作品である(少なくとも連載当初は、少女時代を回想したエッセイだった)。まる子は1965年生まれだから、作品は1974~1975年ごろの設定だ。
60年代の変革の波を経験した後とはいえ、まだ映画『結婚しない女』は公開されておらず、まる子の母はニコラの母と同様に運転免許を持たない専業主婦である。
もちろん、ローラン・ティラール監督自身が認めるように、50~60年代のフランスにも、70年代の日本にも、理想社会なんて実在しない。
まる子がヒデキに夢中だったころ、日本はテロリスト輩出国家であり、日本赤軍が世界各地で事件を起こしていた。隣の韓国では、親に捨てられた子供が養子として他国に引き取られていた。
現代でも、カウンターカルチャーを禁止し、性の解放とはほど遠い国があるが、それで理想的な社会を維持できてるかは判らない。
しかし、世の中の動きはともかくとして、ニコラやまるちゃんのこじんまりとした世界は平和だった。
教室でいつも立たされてる子が、珍しく先生に褒められようものなら大事件だった。
友だちとの悪だくみは、ちっともうまくいかないが、気にすることはない。次の作戦を企む時間はたっぷりあった。
これがまさか月曜日の前のいっときだなんて、あのころは想像もしなかった。
多くの人も同じだろう。
もちろん時代が変われば遊び方も変わる。いまでは住宅街の近くに空き地なんてないけれど、その代わりにみんなでDSを持ち寄れば、仮想世界の平原に集うことができる。それは空き地で遊ぶのと変わらない。
ただし、いずれ日曜日の夕方は終わる。気がつくと、そこは月曜日だ。
だからこそ、こうして日曜日の夕方を思い出すと、ほのかな郷愁とともに楽しさがよみがえるのだ。
それは、おとぎ話なのかもしれないが。
『プチ・ニコラ』 [は行]
監督・脚本・台詞/ローラン・ティラール 脚本/グレゴワール・ヴィニュロン
台詞/グレゴワール・ヴィニュロン、アラン・シャバ 原作/ルネ・ゴシニ、ジャン=ジャック・サンペ
出演/マキシム・ゴダール ヴァレリー・ルメルシェ カド・メラッド サンドリーヌ・キベルラン フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン ミシェル・デュショーソワ
日本公開/2010年10月9日
ジャンル/[コメディ] [ファミリー]
いや、それでは未見の人に誤解を与えるだろうから、「物語性を楽しむ映画ではない」と云い換えよう。
『プチ・ニコラ』、日本語に訳せば、ズバリ『ちびニコラちゃん』でしょう!
日曜日の夕方になると、ブルーマンデーの憂鬱から逃れるために、テレビのチャンネルをアニメに合わせてしまう人は多いだろう。
そこには古き良き昭和の匂いが漂い、一戸建てで3世代同居という今では珍しい生活が映し出される。直系3世代が暮らす世帯は、2005年の時点ですでに一般世帯の6.9%しかないのだから、大多数の視聴者にとってそんな暮らしは伝説の世界である。
日曜日の夕方のアニメでは、衝撃の事実が明かされることもないし、激動の時代が描かれるわけでもない。そんなことははなから誰も期待していない。テレビの前の視聴者は、ゆったりとした安心感を得たいだけなのだ。
そうこうしているうちに、まるちゃんと呼ばれた少女はいつのまにやらワカメになり、お爺さんのハゲ頭には毛が1本生えてくるのだが、視聴者にとってはさして気にすることではない。
この話には覚えがあるなぁ、なんてデジャビュ満々でも構わない。覚えがある方が、ノスタルジーに浸りやすいというものである。
ローラン・ティラール監督は、『ちびまる子ちゃん』について、もとい『サザエさん』について、もとい『プチ・ニコラ』について、次のように語っている。
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実際によく読むと、失業、犯罪、離婚は全く存在せず、社会は安定し、全てが丸く収まっています。理想的な社会です。本当は50年代にも、そして現在においてもそんな理想社会は」実在しないのですから、「プチ・ニコラ」がおとぎ話であるという原則に基づき、物語の舞台を過去の存在しない世界に設定しなくてはならなかったのです。
(略)
私たちは物語の設定を、(略)「プチ・ニコラ」が生まれた1958年前後にすることにしたのです。
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(原文ママ)
『プチ・ニコラ』の世界は、カウンターカルチャーの勃興前であり、まだ性の解放も叫ばれておらず、ティラール監督が云うところの「理想的な社会」である。
それが本当に理想的な社会かどうかは判らないが、少なくともニコラ少年の目にはそう見える。
時代は少々異なるが、『ちびまる子ちゃん』も同様だろう。
『ちびまる子ちゃん』は、作者であるさくらももこ氏が、小学校3年生のころを回想した作品である(少なくとも連載当初は、少女時代を回想したエッセイだった)。まる子は1965年生まれだから、作品は1974~1975年ごろの設定だ。
60年代の変革の波を経験した後とはいえ、まだ映画『結婚しない女』は公開されておらず、まる子の母はニコラの母と同様に運転免許を持たない専業主婦である。
もちろん、ローラン・ティラール監督自身が認めるように、50~60年代のフランスにも、70年代の日本にも、理想社会なんて実在しない。
まる子がヒデキに夢中だったころ、日本はテロリスト輩出国家であり、日本赤軍が世界各地で事件を起こしていた。隣の韓国では、親に捨てられた子供が養子として他国に引き取られていた。
現代でも、カウンターカルチャーを禁止し、性の解放とはほど遠い国があるが、それで理想的な社会を維持できてるかは判らない。
しかし、世の中の動きはともかくとして、ニコラやまるちゃんのこじんまりとした世界は平和だった。
教室でいつも立たされてる子が、珍しく先生に褒められようものなら大事件だった。
友だちとの悪だくみは、ちっともうまくいかないが、気にすることはない。次の作戦を企む時間はたっぷりあった。
これがまさか月曜日の前のいっときだなんて、あのころは想像もしなかった。
多くの人も同じだろう。
もちろん時代が変われば遊び方も変わる。いまでは住宅街の近くに空き地なんてないけれど、その代わりにみんなでDSを持ち寄れば、仮想世界の平原に集うことができる。それは空き地で遊ぶのと変わらない。
ただし、いずれ日曜日の夕方は終わる。気がつくと、そこは月曜日だ。
だからこそ、こうして日曜日の夕方を思い出すと、ほのかな郷愁とともに楽しさがよみがえるのだ。
それは、おとぎ話なのかもしれないが。
![プチ・ニコラ [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51UTuljE1ZL._SL160_.jpg)
監督・脚本・台詞/ローラン・ティラール 脚本/グレゴワール・ヴィニュロン
台詞/グレゴワール・ヴィニュロン、アラン・シャバ 原作/ルネ・ゴシニ、ジャン=ジャック・サンペ
出演/マキシム・ゴダール ヴァレリー・ルメルシェ カド・メラッド サンドリーヌ・キベルラン フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン ミシェル・デュショーソワ
日本公開/2010年10月9日
ジャンル/[コメディ] [ファミリー]

⇒comment
日曜日に観てきました。(#^.^#)
何だかホッとするなぁ~と、思いいながら観ました。
なるほど!ニコラは、私と同い年だったんですね。(>_<;)
トラバ、送らせて頂きました。
なるほど!ニコラは、私と同い年だったんですね。(>_<;)
トラバ、送らせて頂きました。
Re: 日曜日に観てきました。(#^.^#)
ほし★ママさん、コメントありがとうございます。
ニコラと同い年でしたか!
するとテレビアニメの『サザエさん』が始まったときにはもう大きかったんですね:-)
おっしゃるとおり、本作はダラダラした感じでホッとしました。
ニコラと同い年でしたか!
するとテレビアニメの『サザエさん』が始まったときにはもう大きかったんですね:-)
おっしゃるとおり、本作はダラダラした感じでホッとしました。
日曜の夕方って
無性にさびしくなりましたよ。
カツオ君のイガクリ頭を眺めながら、あぁあ、明日は学校かア・・・・と、裏寂しくなることを痛感する時間。
なもんで、「サザエさん」は、面白い。。ではなく、もうすぐ現実だよ!と教えてくれるベルのようなもん。
あたし的には、日曜の夕方は、「シャボン玉ホリデー」でしたかねえ。
カツオ君のイガクリ頭を眺めながら、あぁあ、明日は学校かア・・・・と、裏寂しくなることを痛感する時間。
なもんで、「サザエさん」は、面白い。。ではなく、もうすぐ現実だよ!と教えてくれるベルのようなもん。
あたし的には、日曜の夕方は、「シャボン玉ホリデー」でしたかねえ。
Re: 日曜の夕方って
sakuraiさん、コメントありがとうございます。
日曜の夕方はブルーですね。『サザエさん』が始まると気分が落ち込みます。それだけに、現実をブッ飛ばすような強烈な作品を観たかった。
ところが先日、実写ドラマの『サザエさん』をチラッと見たら、意外や楽しめました。日曜の夕方に関係ない方が、素直に見られるのかも:-)
日曜の夕方はブルーですね。『サザエさん』が始まると気分が落ち込みます。それだけに、現実をブッ飛ばすような強烈な作品を観たかった。
ところが先日、実写ドラマの『サザエさん』をチラッと見たら、意外や楽しめました。日曜の夕方に関係ない方が、素直に見られるのかも:-)
No title
ユニットが三人組の「ぶっち・ニコラ」と四人組の「ミニコラ」の話に分かれるらしい。
Re: No title
ふじき78さん、こんにちは。
手取りが少ないと、事務所を訴えて分裂騒ぎかと思った。
手取りが少ないと、事務所を訴えて分裂騒ぎかと思った。
⇒trackback
トラックバックの反映にはしばらく時間がかかります。ご容赦ください。「プチ・ニコラ」
「Le petit Nicolas」…aka「Little Nicholas」 2009 フランス
ニコラにマキシム・ゴダール。
ママに「モンテーニュ通りのカフェ/2006」「輝ける女たち/2006」のヴァレリー・ルメルシェ。
パパに「コーラス/2004」「幸せはシャンソニア劇場から/2008」のカド・メ...
プチ・ニコラ/マキシム・ゴダール、ヴァレリー・ルメルシェ
1960年代の初頭からフランスにて国民的に愛され続けてきているマンガ絵本「プチ・ニコラ」を『モリエール 恋こそ喜劇』のローラン・ティラール監督が実写映画化したハートフル・コメディーです。その原作のことをよく知りませんが、名前は存じてましたしイラストにも見覚
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フランスの国民的絵本「プチ・ニコラ」を実写映画化。60年代のフランスを舞台にニコラとその友達たちが巻き起こす大騒動を描いたキッズコメディだ。監督・脚本は『モリエール 恋こそ喜劇』のローラン・ティラールが務める。主人公ニコラには本作が長編デビュー作となる...
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原作の「Le Petit Nicolas」は学生の頃、「楽しみながら勉強できる本」として何冊か読み、「Au piquet!(オー・ピケ)=立ってなさい!」という表現を覚えました。
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『プチニコラ』。。。 ※ネタバレ有
2009年:フランス映画、ローラン・ティラール監督&脚本、ルネ・ゴシニ、ジャン=ジャック・サンペ原作、グレゴワール・ヴィニェロン脚本、マキシム・ゴダール、ヴァレリー・ルメルシェ、カド・メラッド出演。
「プチ・ニコラ」
フランスで50年以上愛され続けている国民的絵本。 日本でいったら「サザエさん」的存在なんでしょねw 笑いのセンスもとってもサザエさん的w 爆笑とまではいかなかったけど、微笑ましくて 時にちょっぴり毒もあって(シュールとまではいかない) 最後はベタだけど平和で...
プチ・ニコラ Le Petit Nicholas~子供は神様からの贈り物~
赤いチョッキの男の子、彼の名前はニコラ9歳。小学5年生のわんぱく少年。
パパとママが大好きで、天真爛漫だけどちょっと寂しがりや。
怒られることもしばしばだけど、毎日が楽しいことばかりで溢れていた。
学校に行けば、気の
「プチ・ニコラ」
〔2009年/フランス〕 フランスで50年も愛されている絵本、「プチ・ニコラ」の映画化。 日本で言えば、「ちびまる子ちゃん」や「サザエさん」といった感じで、 知らない人はいないそうだ。 優しい両親と楽しいクラスメートと幸せな日々を送っている、 フランスの小学生、...
映画『プチ・ニコラ』劇場鑑賞。
予告は、一回だけ観た記憶はありましたが 特に鑑賞の予定はしていませんでした。 でも、のびたさんのレビューを読ませてもらっ
プチ・ニコラ
ちょっぴり、たっぷり楽しませていただきました
『プチ・ニコラ』『地下鉄のザジ』をキネカ大森2で観て、子供と睡魔には勝てない男ふじき☆☆☆☆,☆☆
◆『プチ・ニコラ』
五つ星評価で【☆☆☆☆かーいー。ほっこり。】
おフランスの子供が活躍する新聞4コマみたいな世界。
汚えよ。
何が汚えって、フランスの子供って
何 ...
プチ・ニコラ
フランスで50年以上愛され続けている国民的絵本「プチ・ニコラ」を、 『モリエール 恋こそ喜劇』のローラン・ティラール監督が実写映画化した ハートフル・コメディー。 両親の会話を立ち聞きして、弟が生まれたら自分は捨てられると思い込んだ 少年が巻き起こす騒動を描…
ニコランボーズ
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プチ・ニコラ (Le petit Nicolas)
監督 ローラン・ティラール 主演 マキシム・ゴダール 2009年 フランス/ベルギー映画 91分 コメディ 採点★★★★ 如何せん末っ子なもんで、“お兄ちゃんになる”ってのがどんな感じなのかさっぱり分からない私。じゃぁ、ウチの子供らはどんな感じなんだろうと見て…