『ミックマック』は特攻野郎の一家だ!

 傑作『さんかく』の中に、「『アメリ』みたいでしょ」というセリフがあった。
 『アメリ』みたい……すなわち、不法侵入や物品への干渉等の犯罪を、秘密裏に行うことだ。

 その『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督が、犯罪行為をスケールアップさせたのが『ミックマック』である。
 公式サイトによれば、ミックマックとはイタズラという意味だそうで、まさしく本作は仮想ファミリーを結成した一団が、違法なイタズラを実行する物語だ。

 ジュネ監督は本作について、「『白雪姫と七人のこびと』、復讐、武器商人。長い間、頭の中にあった三つのテーマが、一つになった(略)二つの武器製造会社に、互いにつぶし合いをさせるというのは、黒沢明監督『用心棒』へのオマージュ」と語る。

 私は当初この作品を、社会のはみ出し者たちが、営利目的の非道な組織に立ち向かう話なのかと思っていた。
 しかし、そういう構造ではあるものの、主人公たちは「はみ出し者」という言葉から感じるようなうらぶれた雰囲気とはかけ離れていた。
 一人ひとりが、他者には真似のできない特殊能力を持っており、一団となって戦ったら、強いのなんの。
 それはたとえば、『少年探偵団』(BD7)が、体当たりの名人や物真似の名人の子供たちで構成されているのと同様である。
 そして『ミックマック』では、彼らはお母さん役とか娘役を分担して、仮想的な家族を結成する。ノリとしては、『あばしり一家』に近いのだ。
 基本はギャグで、くだらないイタズラを仕掛けるだけなんだけど、それがことごとく成功するものだから、なんだか彼らが最強の戦闘集団に見えてくる。


 ここまで考えて、最近よく似た映画を観たことを思い出した。

 『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』である。
 軍隊では、はみ出し気味の連中だが、それぞれが変装の名人とか、女たらしのエキスパートとか(^^;、ちょっと普通じゃない特殊能力を持っており、彼らが一団となってくだらない作戦を仕掛ける映画だった。

 そのくだらなさといったら抜群で、向かい側のビルから銃撃されても絶対に当たらないことを前提にビルの壁を駆け下りたり、3D映画で車両が飛び出して見えるシーンに合わせて車両を突っ込んだりと、作戦意図や成功確率を考え出したら脳がとろけそうなほどであった。

 しかも、通常のアクション映画なら、まず作戦計画を説明するシーンがあり、次に作戦の実行を描くことで、計画どおりにことが運ぶか観客に固唾を飲ませるのが常套手段だろうが、この作品では計画を説明するシーンと実行するシーンとがフラッシュバックで同時に進行する。
 同時ということは、作戦を実行するシーンに説明が付いているようなものである。観客は何も考える必要がない。
 すべての作戦は計画どおりに進み、観客が固唾を飲むこともない。

 テレビシリーズの『特攻野郎Aチーム』のファンによれば、この映画は、AチームファンがAチームファンに向けて作ったものだそうだが、テレビシリーズを見てない私にはそこのところは判らなかった。
 ただ、これは脳みそカラッポにして、バカバカしい作戦を楽しむ映画だな、と思った。
 小梶勝男氏も、「この作品がすごいのは、見ているうちに、自然に頭が空っぽになっていくことだ。」と評している。


 ところが、『ミックマック』を観て、考えを改めた。
 『ミックマック』も、作戦の説明はない。
 そのイタズラのバカバカしさが魅力なので、事前に言葉で説明しては無粋なだけだ。
 そして、常識的に考えれば失敗して当然の作戦が、成功してしまうからこそ爽快感を得る。

 『ミックマック』を観ることで、『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』もイタズラを描いていたのだと思い当たった。
 並ぶ者のない特殊能力を持っていると思い込んでいる男の子たちが、それぞれの役割を決めて、大人にはバカバカしいとしか思えない作戦を一生懸命に楽しんでいる。
 『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』が、くだらなくも楽しいのは、そんな子供ごころを刺激するからなのだ。

 『ミックマック』も同様だ。
 残念ながら、同じくイタズラを描いていても、『アメリ』のようにロマンチックでもなければ、成長物語でもないのだが、『ミックマック』の主人公たちのアジトが、空き地に作った秘密基地に見えてくれば、この映画は成功だ。

 自称○○の名人たちが、威張りくさった大人をギャフンと云わせる。
 決して、ギャフンと云わせる以上のことはしない。
 それがミックマック(イタズラ)なのである。


ミックマック [Blu-ray]ミックマック』  [ま行]
監督・制作・脚本/ジャン=ピエール・ジュネ  脚本/ギョーム・ローラン
出演/ダニー・ブーン アンドレ・デュソリエ オマール・シー ドミニク・ピノン ジュリー・フェリエ ニコラ・マリエ ヨランド・モロー ジャン=ピエール・マリエール ミシェル・クレマデ マリー=ジュリー・ボー
日本公開/2010年9月4日
ジャンル/[コメディ] [犯罪]
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【theme : ヨーロッパ映画
【genre : 映画

tag : ジャン=ピエール・ジュネ

⇒comment

No title

こんちは。
ラストのクライマックスに向けて、みんな自分の持ち技がフィーチャーされるような話の作り方をしてくれたら、もっと気持ち良くなったのになあ。もう本当に印象だけで、細かい話を覚えてないんだけど、『ロスト・チルドレン』のクライマックスはそんな作りだった様に思う。

Re: No title

ふじき78さん、コメントありがとうございます。
あれこれ盛り込んだ要素を、きれいに整理できてはいなかったかもしれませんね。
キャラクターたちの持ち味を活かしきったとはいえないし。
「7人」という人数ありきで作ってしまったきらいはあるかもしれません。

No title

いつ見ても、何見ても、この人は、自分の好きなアイテムをたっぷり使い、こうしてみたい!と思ったことを、とことんやってみせる。それを一切ぶれずに作る!と言うのが心情で、中身の重要さは、二の次のように感じます。
そこがまた好きなんですがね。
「ロストチルドレン」は、壮大でしたね、そういや。
あたしは、超マニアックな「デリカテッセン」と、結構なカタルシスをもらった「ロング・エンゲージメント」が好きですわ。

Re: No title

sakuraiさん、こんちには。
「中身の重要さは、二の次」に笑ってしまいました。
たしかにそうですね。本作も平和の問題、武器製造業者の問題を含んでいて、大手軍需産業と旧植民地を抱えるフランスならではの取り上げ方もあるはずなのに、出来上がったものは「なんだこりゃ」って感じですからね。
一方でリュック・ベッソンが映画を産業として確立させようと奮闘しているのに、対極ですね:-)

トムとジェリー

なんかあのドミノみたいな仕掛けが多かったかな?

フランスの武器産業を批判したのかな?

フランス作品のカメラワークというか
センスには関心する

ヨランドモローもいい味出してます
日本では主役でキャスティング
されることは無いだろうな

Re: トムとジェリー

すわっと優優さん、こんにちは。
軍需産業を批判する意図もあるでしょうが、批判というより「おちょくり」ですね。
誰しも心の中に他人をおちょくりたいという願望があるでしょう。そこを痛快に描いてましたね。
Secret

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