『シネマパラダイス★ピョンヤン』 北朝鮮・映画大国の素顔
![シネマパラダイス★ピョンヤン [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/81z1rH7T7TL._SL160_.jpg)
俳優になるためピョンヤン演劇映画大学に通うキム・ウンボムは、芸術的な朝鮮の映画について語った。
彼が俳優を目指すのは、人気者になりたいからでも、大衆を喜ばせたいからでもない。将軍様の喜びに奉仕する。それが俳優の務めなのだ。
『シネマパラダイス★ピョンヤン』は実に興味深い映画である。
これはシンガポールのドキュメンタリー作家ジェイムス・ロンとリン・リーが、金正日(キム・ジョンイル)存命中の2009年から2010年にかけて、映画大国北朝鮮を取材してまとめたものだ。
キム・ジョンイルは大の映画好きだった。
日本映画では『男はつらいよ』シリーズが好きだったという。東宝からゴジラシリーズのスタッフを招いて怪獣映画『プルガサリ』を制作したことは、日本の特撮ファンにもよく知られている。
そんなキム・ジョンイル――将軍様のご威光の下、北朝鮮の映画産業は大きく発展した。
『シネマパラダイス★ピョンヤン』は、朝鮮芸術映画撮影所やピョンヤン演劇映画大学への取材を通して、北朝鮮における映画の歴史や現在の映画界の姿を見せてくれる。
そこには私たち日本の観客の興味をかき立てるものが幾つもある。
一つは、ピョンヤンの街並みや人々の日常等、何らニュースバリューのない(それだけに通常は報道されない)市井の様子が活写されていることだ。きれいなアパート、広い道路、お洒落にいそしむ女子大生。日本ではあまり知ることのない普通の生活がそこにはある。
太ることを気にする女子大生は、朝食の目玉焼きの白身だけを食べて黄身を残す。外国から来た撮影スタッフがカメラを回しているというのに、唇にご飯粒を付けたまま食事しているのが微笑ましい。
脱北者が歩んだ過酷な人生も北朝鮮の姿なら、リビングのソファーで干し柿をつまんでいる女子大生の暮らしもまた北朝鮮の姿だろう。
二つ目は、映画制作のバックステージが見られることだ。
一般の観客にとって、普段は知ることのないバックステージを扱った映画はそれだけでも興味深い。『ドリームガールズ』や『8 1/2(はっか にぶんのいち)』等、バックステージ物の名作も数多い。
その上、本作が映し出すのは知られざる北朝鮮映画界のバックステージだ。またとない面白い題材である。
このパートでは、北朝鮮のベテラン監督ピョ・グァン氏がホストを務めてくれる。
ピョ監督が案内する朝鮮芸術映画撮影所の広大なオープンセットは圧巻だ。そこには1950年代の南朝鮮(韓国)や60年代の日本や30年代の中国の街並み等が揃っている。西洋の街まであり、ピョ監督は「外国にロケに行く必要がない」と胸を張る。
日本にも東映太秦映画村や庄内映画村のように時代劇のオープンセットを構えた施設はあるが、映画の舞台になりそうな国々の街並みをみんな揃えたこの撮影所には驚かされる。
『シネマパラダイス★ピョンヤン』には、ピョ・グァン監督の映画制作の様子も収められている。
先軍政治50周年記念作に取り組むピョ監督は、朝鮮人民軍の兵士たちをエキストラに動員し、大日本帝国の支配に屈して朝鮮軍が解体される場面を演出する。[*]
「日本軍への怒りを見せろ!」
ピョ監督は集まった数百人の兵士に指導する。
だが、急にそんなことを云われても若い兵士たちに演技なんてできやしない。ニコニコしながらでくの坊のように突っ立っているだけの若者が可愛い。
「軍がなくなるんだぞ。怒れ! 泣け! お前たち、軍人だろう!」
激昂して怒鳴り散らす監督と、照れ笑いがやめられない兵士たちとのギャップには、こちらもつい笑ってしまう。
三つ目は、ピョンヤン演劇映画大学で映画制作を学ぶ青年たちの生き様だ。
本作は特に二人の学生に焦点を当てる。父が映画監督、母が国民的女優で、自身も俳優になるべく邁進しているキム・ウンボムと、科学者の父の反対を押し切って俳優を目指すリ・ユンミだ。
二人は裕福な家庭に育ち、恵まれた環境にあるけれど、俳優としての才能の有無は別問題だ。キム・ウンボムの演技は酷評され、リ・ユンミはダンスのレッスンに苦労している。
そんな彼らの姿を追った本作は、清々しくもほろ苦い青春映画になっている。
キム・ウンボムもリ・ユンミも、外国からの取材の対象に選ばれるだけあって優等生だ。
ここでの「優等生」とは、学校の成績が優秀ということではない。取材に対して模範解答ができる「いい子」なのだ。
それがキム・ウンボムの「将軍様に喜びを捧げる俳優になりたい」という言葉であり、「資本主義国の映画は金儲けのためにあります。でも我が国は違います」という説明だろう。
彼らが語る内容は多くの日本人の考え方とは異なるものの、穏やかに「模範解答」を口にする様からは素直さが感じられる。
そして、模範解答を口にする若者たちや、国策映画を撮る監督を見ているうちに、この世界が日本人に既視感を覚えさせるものであることに気付く。
公式サイトによれば、ジェイムス・ロンとリン・リーが撮影したすべての映像はその日のうちに検閲局に提出しなければならなかったという。本作のポスターに「当局検閲済」と書かれているのは洒落じゃない。だから『シネマパラダイス★ピョンヤン』の完成には相当な苦労があったはずだが、検閲という行為すらも日本人には既視感がある。
なぜなら、かつて日本もこういう国だったからだ。
與那覇潤氏は『中国化する日本』において北朝鮮のことを次のように説明している。
---
北朝鮮のあの特異な体制というのは、李朝の儒教原理主義的な王権や檀君神話があったところに、帝国時代の日本の天皇制や国体論、戦時下の総力戦体制や軍国主義、独立後はソヴィエト=ロシアのスターリニズムや共産中国の毛沢東主義……といった、近代の北東アジア全域からさまざまな経路で流れ込んだイデオロギーのアマルガム(ごった煮)です。
よくもまあここまでダメなものばかり摂取したなあとも思いますが、これは笑いごとではなくて、ある意味で政治と思想は中国様式、経済と社会は日本様式という形で戦時期に実をつけた昭和日本のブロン(良いとこどりを狙ったはずが悪いとこどりになってしまうこと:引用者註)が、当時植民地だったかの地域でだけその後も育ち続けたとみることもできる――国体護持のためには餓死をも辞さず、という「あの戦争」を支えた日本人が、あの地域にだけはまだ残っているのだと思えば、かの国の一見非合理な行動様式も理解がつこうというものです。
---
検閲、国策映画、皇民化教育……大日本帝国で行われたこれらのことが、形を変えて彼の地に受け継がれている。――『シネマパラダイス★ピョンヤン』を観ていると、そんなことを強く感じる。
映画に登場するリ・ユンミの父は人民服を着ていた。こんにちの日本人の目には、無地で飾り気のない人民服が個性も自由もない生活の象徴のように映る。だが、かつて日本人も人民服にそっくりな国民服を着ていた時代があった。そもそも人民服を考案したのは大日本帝国陸軍の佐々木到一であり、そのルーツは日本の学生服や大日本帝国陸軍の軍服だったという。
地理的にはとても近い国、朝鮮民主主義人民共和国――そこはまるで大日本帝国が滅亡しなかったパラレルワールドのようで、彼の国と日本との文化的・歴史的な近さあるいは遠さにめまいがしそうだった。
2014年1月25日、早稲田大学大隈記念講堂での試写会の後に、野中章弘氏と鄭茂憲(チョン・ムホン)氏のトークショーが行われた。
野中章弘氏はジャーナリスト集団アジアプレス・インターナショナルの代表を務めるとともに、早稲田大学政治経済学術院、ジャーナリズム大学院で教授職に就くジャーナリストだ。
チョン・ムホン氏は朝鮮新報社の記者である。朝鮮新報社はピョンヤンに支局を開設し、自社記者を常駐させる日本で唯一の報道機関だ(共同通信社も支局を開設しているが、自社記者の常駐ではないという)。チョン氏もここ2年間の半分以上をピョンヤンで過ごしたそうだ。
朝鮮事情に詳しいチョン氏の話はたいへん興味深かった。特に印象的なことを以下に記す。
・『シネマパラダイス★ピョンヤン』にはリ・ユンミの朝食の風景が収められているが、これはかなり異例なこと。女子大生が朝、化粧をして、朝食をとってるところに外国の撮影スタッフを入れるとは珍しい。
・リ・ユンミの家庭はかなり裕福だと思われる。家にピアノがある家庭は、そうは見ない。
・朝鮮は芸術についてはとてもシビアだ。優秀でなければ幹部の子でも排除される。現在のトップ歌手は一般家庭の出である。本作には芸術に携わる人々の素の部分が撮られている。
・朝鮮と日本では映画の概念が異なる。朝鮮の映画は社会啓蒙の手段。娯楽の側面もあるが、それ以上に社会啓蒙の面が大きい。
チョン・ムホン氏はいくつもの写真をスクリーンに映しながら最近のピョンヤンについても説明してくださった。
きれいに整備された高層マンション群の写真には目をみはる。マンションの中には45階建てのものもあるという。近年は電力事情も改善されてきたそうで、マンション群の夜景も美しい。
スーパーマーケットに溢れる商品の多くは中国製だという。
「朝鮮にとって日本は政治的には遠い国ですが、日本製品への信頼感は強い。中国は政治的には近い国ですが、中国製品は信用されていません。朝鮮の人はメイドインジャパンのものを欲しいと云います。
朝鮮には60年代の帰国事業で日本から帰った人もいますから、心理的に日本に近い。日本との国交を正常化させたいと思っているはずです。
けれども朝鮮が日本でどう思われているかは知っています。自分たちの国を良く見せたいと思っているので、話を聞いても建て前的になることはあります。
取材では模範的な回答をしようとしますし、取材側もあえてそういう受け答えをピックアップしているところがあると思います。」
ピョンヤンの日常を知る上でも、映画作りの裏側を見る上でも、『シネマパラダイス★ピョンヤン』は実に興味深い作品だ。
原題に嘘偽りなし。
これぞ『The Great North Korean Picture Show』だ!
[*] この場面が具体的に何を題材にしたものなのか本作には説明がないが、1907年のハーグ密使事件を受けた大韓帝国軍(約7,700人)の解散のことだろうか。
![シネマパラダイス★ピョンヤン [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/81z1rH7T7TL._SL160_.jpg)
監督・撮影・編集/ジェイムス・レオン 監督・プロデューサー/リン・リー
出演/リ・ユンミ キム・ウンボム ピョ・グァン
日本公開/2014年3月8日
ジャンル/[ドキュメンタリー]

【theme : ドキュメンタリー映画】
【genre : 映画】
『ジャッジ!』が問う日本人のあり方

しかもそれだけにとどまらず、なかなか教訓に富んでいる。
『ジャッジ!』の主人公は、広告代理店で働きながらも、モテない、仕事できない、うだつが上がらない青年・太田喜一郎だ。
ある日突然、サンタモニカで開催される広告祭の審査員を上司に振られた彼は、世界中から選ばれたトップクリエイターに交じってCMの審査をする破目になる。しかも、お得意様が作った三流CMを入賞させよ、との密命を帯びて。
ところが審査員たるクリエイターたちは、誰も彼も自分の作品を入賞させようと工作ばかりしている。騙し合いと裏取引が蔓延する審査会で、ろくに英語も話せない太田がどう立ち回るかが本作の見どころだ。
脚本の澤本嘉光氏はCMプランナーであり、監督の永井聡(ながい あきら)氏はCMディレクターとして知られている。そのCMで国内外の多くの賞を受けるとともに、広告祭の審査員も務めてきた人物だから、本作をつくるのにこれ以上の適任者はいないだろう。
その澤本嘉光氏は、抱腹絶倒の工作が蔓延する本作を「真実50%、フィクション70%」と語り、永井聡監督は「オーバーに描いているが、描かれていることの8、9割は事実だと思う」と述べている。
ここから見えてくるのは華やかそうな国際広告祭の舞台裏だが、もちろんそれだけで観客を最後まで引っ張るわけではない。
永井聡監督が「広告マンっていうと、ちゃらちゃらしたイメージがあるけど、実際には、映画の主人公のように日の当たらない仕事を地味にこなしている人たちが結構いる」と語るように、太田の日の当たらなさは半端ではない。彼が提案するCMのアイデアはすべてボツ、プレゼンは必ず失敗、チームメンバーからはチームにいることさえ忘れられ、豊川悦司さん演じる上司の無茶な指令に悩まされる日々を過ごしている。
映画に注目を集めるには、業界のちゃらちゃらしたイメージを強調し、ギョーカイ物として売り込む方法もあったろう。
しかし本作は、随所に笑いを散りばめながら、上司に翻弄され、クライアントに翻弄され、同僚に差をつけられる惨めさを描くことで、サラリーマンの普遍的な悲哀を醸し出している。そこがまず観客の共感を集めるだろう。
さらに、国際会議に参加せざるを得ない主人公を見て、身につまされる人もいるはずだ。
広告祭の審査員を経験する人は希だろうが、英語を公用語とする日本企業もある昨今、外国人と仕事をともにする機会も増え、会議が英語で行われることも少なくないだろう。
なんとか会議を乗り切ろうと、付け焼刃の英語で悪戦苦闘する主人公は、過去の、あるいは未来の自分かもしれない。
幸い広告祭の審査は電話会議ではないので、太田はオタクグッズを配ったりジェスチャーを駆使したりして、どうにか審査員たちとコミュニケーションを図っていく。
けれど、本作でもっとも注目すべきは、会議で太田が主張する内容だ。
どの審査員も自分の作品を高得点にするためにあの手この手を繰り出す中、太田だけは何の工作もしようとしない。お得意様のCMを入賞させろと命じられたものの、正直者の太田には出来の悪いCMをアピールすることができないのだ。
いや、CMの出来は関係ない。審査員たるものが公平な審査をせずに特定の作品を推すなんて、彼には許せないことだった。
だから太田は審査の場でも、利害にとらわれず良い作品に投票しようとみんなに呼びかける。
彼の主張はいかにも青臭い。
映画はバカ正直な太田のキャラクターをしっかり描き込んでいるので、彼がこんな主張をするのは観客にも理解できる。
だが、海千山千の審査員たちにこんな意見が通じるだろうか。正直だけが取り柄の太田なんか、会議では無視されるだけではないか。「自分の作ったCMに賞を取らせる戦争」を繰り広げている審査員たちの中にあって、他人の作品に感心したり、他社のCMを応援する太田は、非現実的なほど甘ちゃんなのではあるまいか。
ところが、歴史学者の加藤陽子氏は「交渉ごとは、正直にやっていれば最後には引き合う」と述べている。
1919年、第一次世界大戦の戦後処理を話し合うため、パリ講和会議が開かれた。この会議に日本からは西園寺公望(さいおんじ きんもち)元首相、牧野伸顕(まきの のぶあき)元外相らが参加したが、列強諸国を前にした彼らの交渉は日本国内で評判が悪く、「米国に言われるままだった」「中国に甘すぎる」とさんざんに批判された。
しかし、加藤陽子氏によれば、会議の議事録等を調べると、当時の国内での批判とは違う光景が見えてくるという。
---
牧野や西園寺が一生懸命、大国の中で発言しているのを、議事録とかから読んでみますと、日本側が「正しい」主張をしているときには、当時の大国、米・仏・英の三巨頭、ウィルソンやクレマンソーやロイド・ジョージが同意し、味方をしてくれていた。
(略)
やっぱり誰が見ても、正しいこと、これは条約として認められているんだということ…グレーゾーンは別ですけれども、それを論じたときには、やはり支持し、助けてくれる。
(略)
我々はよく「プロパガンダが下手だったから日本は外交で負けた、上手な国が外交の土壇場で勝った」と負け惜しみもあって言いますね。だったら「プロパガンダ、宣伝でも勝てばいいでしょう」と言いたい。
宣伝で勝つにはどうするか。正しいことを、後世の人が読んでも恥ずかしくないようなことを、わかりやすく説明することだと。ちゃんとしたことを言っていれば、必ず味方に付いてくれる人がいます。それは、歴史を通して学ぶことができる、そう思うんですね。
まして米国とか、自国に自信満々の大国というのは「アンダードッグ」につくという言い方があって、負けている側に付くわけですよ。
(略)
だから、「あいつはいいことを言っているのに、何か会議の雰囲気にのまれて、じっとだまって屈辱に耐えているな」というときなど、やっぱり誰かが見て手を貸そうとしてくれているんですね。これはおそらく日本の外交官が、いろいろなところで感じてきたことだと思います。
(略)
1対1だと、無理や無茶が通ることも多いでしょう。でも多対1となったときには、正しいことは引き合うという例を歴史から学んでおく。あとは、正直に説明する。条文上、解釈が分かれそうなグレーゾーンだったらグレーゾーンに入った途端、「ここはグレーだけれど」と正直に説明する、武力やお金で押し切るのじゃなくて。
---
この加藤陽子氏の発言を受けて、山岡淳一郎氏は「1対1だと力の関係そのものになりがちだけど、多国間になると関係が複雑になりすぎて、相互信頼のための根本的なルールに立ち返らざるを得なくなる、ということかもしれませんね」とまとめている。「「正しいこと」「正直に」というのは、「自分にとって正しい」「自分にとって正直に」とは、違うことなんでしょうね。むしろ相手とこちらの「正しさ」の落ち着き所を探る、というか、その大前提を築くねばり強さが必要なのか」と。
『ジャッジ!』を観れば、まさしく「あいつはいいことを言っているのに、何か会議の雰囲気にのまれて、じっとだまって屈辱に耐えているな」という場面で、誰かが手を貸していることに気付くだろう。ブラジル人審査員カルロスや、カナダ人審査員ピーター・ベルや、審査委員長ジャック・クルーガーのここぞというときの行動には、観客誰しもグッと来るに違いない。
これは、いくつもの世界の広告祭で審査員を経験してきた澤本氏だからこそ紡げる物語だ。
突然サンタモニカに放り出された太田は、実は二重のアウェーに苦しんでいる。
青森の出身で、気を抜くと方言に戻ってしまう太田にとって、友だちのいない東京がすでにアウェーだ。
英語が苦手なのにサンタモニカの審査会に出るのは、それに輪をかけてアウェーである。
だが、考えてみれば、東京に飛び出して仕事ができているのだから、サンタモニカだって恐れることはない。知らない人たちに囲まれて、言葉を交わすのもひと苦労。そんなことはもう経験済みじゃないか。
本作は、グローバル化に直面して戸惑っている日本人に向けて、一足先に国際的に活躍するクリエイターから送られたエールなのだ。

監督/永井聡
出演/妻夫木聡 北川景子 リリー・フランキー 鈴木京香 豊川悦司 荒川良々 玉山鉄二 玄理 田中要次 風間杜夫 でんでん 浜野謙太 伊藤歩 加瀬亮 木村祐一 あがた森魚 松本伊代 ジェームズ・バーンズ
日本公開/2014年1月11日
ジャンル/[コメディ]

外国映画部門への投票 日本インターネット映画大賞 2013年度
私は映画に点数や順番を付けたりしない。そのため、日本インターネット映画大賞への投票のお誘いを受けて、どうしたものかと考えた。
だが、点数でも順番でもなく、応援したい作品はあったので、微力ながら投票を通じてこれらの作品の知名度アップに貢献したいと思う。応援したい作品とは、ファンになった作品と云い替えてもいい。
優れた作品、面白い作品はたくさんあるが、応援したい気持ちの強さは、必ずしも優秀さ面白さと一致するわけではない。だから、もっと優れた作品があるのに、と思われることは百も承知である。それどころか、ヒット作やすでに高評価を得ている作品に比べると、そうでない作品にはより一層応援したいバイアスがかかることもある。
各作品についてはリンク先の記事をご覧いただきたい。
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『 外国映画用投票テンプレートに従って投票します 』
【作品賞(各10点)】
「パシフィック・リム」
「テッド」
「リンカーン」
【監督賞】
[ラージクマール・ヒラニ] (作品名「きっと、うまくいく」)
【主演男優賞】
[セス・マクファーレン] (作品名「テッド」)
【主演女優賞】
[デボラ・フランソワ] (作品名「タイピスト!」)
【助演男優賞】
[サム・J・ジョーンズ] (作品名「テッド」)
【助演女優賞】
[菊地凛子] (作品名「パシフィック・リム」「47RONIN」)
【ニューフェイスブレイク賞】
[TAO] (作品名「ウルヴァリン:SAMURAI」)
【音楽賞】
「ジャンゴ 繋がれざる者」
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「かぐや姫の物語」 9点
「風立ちぬ」 7点
「映画クレヨンしんちゃん バカうまっ! B級グルメサバイバル!!」 7点
「宇宙戦艦ヤマト2199 第七章 そして艦は行く」 7点
【監督賞】
[高畑勲] (作品名「かぐや姫の物語」)
【主演男優賞】
[高良健吾] (作品名「横道世之介」「かぐや姫の物語」)
【主演女優賞】
[貫地谷しほり] (作品名「くちづけ」)
【助演男優賞】
[リリー・フランキー] (作品名「そして父になる」「凶悪」)
【助演女優賞】
[吉高由里子] (作品名「横道世之介」「真夏の方程式」)
【ニューフェイスブレイク賞】
[三吉彩花] (作品名「旅立ちの島唄~十五の春~」「グッモーエビアン!」)
【音楽賞】
「かぐや姫の物語」
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[高良健吾] (作品名「横道世之介」「かぐや姫の物語」)
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[貫地谷しほり] (作品名「くちづけ」)
【助演男優賞】
[リリー・フランキー] (作品名「そして父になる」「凶悪」)
【助演女優賞】
[吉高由里子] (作品名「横道世之介」「真夏の方程式」)
【ニューフェイスブレイク賞】
[三吉彩花] (作品名「旅立ちの島唄~十五の春~」「グッモーエビアン!」)
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「かぐや姫の物語」
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『トリック劇場版 ラストステージ』 霊能力者の正体とは?

「われわれも、そしてきっと皆さんもモヤモヤしていたドラマのテーマ性の部分に、そろそろ決着をつけてもいいのではないかと思ったのです。」
山内章弘プロデューサーはこう語った。
「霊能力なんか信じないという人も、お正月には初詣でに行ったりはしますよね」
「われわれも『トリック』みたいな作品をやっていて何ですが(笑)、おはらいをやったりする。でも、それが人間だよね」
完結編となる『トリック劇場版 ラストステージ』は、「この世に霊能力というものはあるのか」「人はいったい霊能力をどうとらえているのか」というこのシリーズのテーマに、真正面から真摯に取り組んだ作品だ。
もちろんシリーズの常として、小ネタのオンパレードで楽しませてもくれる。
登場人物の背景には、ギャグをまぶした貼紙が所狭しと貼り出され、「貼紙禁止」の貼紙まである。
会話は相変わらず、
「死者!?」
「――五入。なんちゃって。」
というノリだ。
小ネタの数々で笑わせて、「このノリが『トリック』なんだな」と懐かさを覚えさせる本作は、主人公山田奈緒子と上田次郎の掛け合いが続くだけでも何だか満足できてしまう。
しかしながら驚くのは、そんな小ネタで相殺しなければならないほど、本作の霊能力への切り込みが至って真面目なことだ。
これまでも本シリーズはインチキ霊能力者の正体を暴き、霊能力なるものがトリックでしかないことを明らかにしてきた。一方で、霊能力の存在を完全には否定し切らず、もしかしたらどこかに霊能力者がいるのでは……という含みを持たせてきた。
観客誰しも、新作を観るたびにモヤモヤが残ったはずだ。
山内プロデューサーの云うとおり、本作はそこにきちんと決着をつけている。奇をてらわず、これまでの積み重ねを踏まえたその結論は、大いに説得力のあるものだ。
本作で山田奈緒子が対決するのは、ジャングルの奥地、秘境の部族から崇められる呪術師ボノイズンミだ。
未来を予知し、病気を治すことも、人を呪い殺すこともできるボノイズンミは、資源開発のために彼女の村を蹂躙する日本人を次々に抹殺していく。
この強敵に奈緒子と上田が挑むのだが、もちろんボノイズンミの呪術は霊能力ではない。
「なんだ、インチキじゃないか。」
ボノイズンミの見せた超常現象のカラクリを知った奈緒子は思わず口走る。
一見、霊能力のようであろうとも、そこには緻密な演出と計算があり、人間心理を突いたトリックが仕掛けられているのは毎度のことだ。
しかし、それだけでは説明できないもの、これまでモヤモヤさせられたものに切り込んでいるのが本作の特徴である。
呪術師ボノイズンミはたしかにトリックを弄し、演出を施していた。同時にそこには、本当に病気を治す力、人を殺す力も存在した。
それは西洋医学や西洋科学ではまだ知られていない薬剤だ。ジャングルの豊富な生物資源を源泉とし、代々の呪術師に伝えられてきた薬剤の中には、現代の西洋医学では及ばない効果が存在するという設定だ。
本作の背景には工業文明による環境破壊があり、西洋医学や西洋科学で説明できないものをバカにして切り捨てようとする危うさが描かれている。私たちの知る医学や科学が土着の伝承よりも優れているなんて決めつけるのは、とんでもない思い上がりなのだ。
もちろん、薬剤の効能を霊能力のように見せかける卑劣さを奈緒子が許すはずもなく、世にはびこるインチキ霊能力を糾弾する姿勢は本作にも貫かれている。
また、奈緒子やボノイズンミが予知夢を見ることについても合理的な説明がなされる。
彼らはこれから大爆発が起きて地域全体が滅亡することを夢で知る。
劇中では、地下に充満した可燃性ガスが起こす振動を、とりわけ敏感な知覚を持つ奈緒子やボノイズンミが無意識に察知していたのだろうと説明する。
これもまた理にかなった結論だろう。
人一倍鋭敏な感覚の持ち主がいたとして、彼らを適切に扱えなければ「霊能力者」として祭り上げることになりかねない。適切な呼び方がないから「霊能力」なんて言葉に飛びついてしまうけれど、そこには少し鋭敏な感覚を持て余している個人がいるだけなのかもしれない。
このように「ちょっと変わった人」を普通に遇することができないとしたら、それは本人の問題ではなく、社会の側が問われることではないだろうか。
本作からはそんな問題提起すらうかがわれる。
でも、現実にはそんな人はいないでしょ。と思われるかもしれない。
だが、科学の進歩は、人間の知られざる面を解明しつつある。
唐辛子の辛さを手で触れただけで感じとったり、目を閉じているのに色の違いを感じたりしたら、それは霊能力だろうか。本当にそんな人がいたら霊能力者扱いされるかもしれないが、近年、人間にはこれまで知られていた以上の知覚があるらしいことが判ってきた。表皮細胞は唐辛子の辛み成分であるカプサイシンに反応するし、皮膚の遺伝子配列の一部は眼の網膜と一緒であり、光の明暗を感じるタンパク質「ロドプシン」は表皮にも存在する。
ものを見るのは目の役割、味を感じるのは舌の役割、私たちはそう思い込んでいるが、どうやら体の器官は私たちが考えるほどきっちり役割分担しているわけではないらしい。
たしかに生物の発生を考えるとき、受精卵が分裂し、胚が分裂を繰り返していく過程で、外側の皮膚が窪んで神経になり、そこから脳や眼が作られていく。
傳田光洋氏は脳を持たないクラゲを例に出し、もともと表皮に判断システムを含むすべての働きが存在していたのではないかという。
であればこそ、傷ついた皮膚に赤い光を照射するとダメージからの回復が早くなり、青い光を当てると回復が遅くなるなんて「怪現象」も起こる。
音についても同様で、人間の可聴域はせいぜい2万ヘルツ程度までと云われるが、2万ヘルツ以上の音を人体に照射したら、耳を塞いでも被験者の生理状態に影響を及ぼした報告があるという。
山田奈緒子やボノイズンミも、意識の上では聞こえない音を、全身で感じ取っていたのかもしれない。
私たちはまだまだ人体のことすらよく判ってはいない。
そこに、正月には初詣でに行ったり、安全祈願や学業成就のお守りを買うような迷信深さが加わると、「霊能力者」を出現させてしまうのではないか。
完結編となる『トリック劇場版 ラストステージ』は、意外や感動作でもある。
例によって冒頭では、伝説の奇術師ハリー・フーディーニの逸話が紹介される。
彼は死の直前に「もしも死後の世界があるならば、一年後必ず連絡をする」と妻に云い残して死ぬ。一年後、妻は多くの霊能力者を集めてフーディーニからの連絡を待つが、結局なんの連絡もなかった。
映画の結末で、これがフーディーニの妻への思いやりであることが明らかになる。
フーディーニだって死後の世界があると思ったわけでも、ましてやそこから連絡が取れると思ったわけでもなかろう。
だが、フーディーニの言葉のおかげで、妻は一年間生きていくことができた。一年後に連絡がなかったとしても、そのときには妻もある程度気持ちの整理がついているはずだ。
それを見越したフーディーニの愛情が、この言葉には込められている。
映画のクライマックスで、咄嗟にフーディーニと同じ言葉を口にした奈緒子の気持ちを思うとき、そしてそれをバカ正直に信じた上田の気持ちを思うとき、観客は大きな感動に包まれることだろう。

監督/堤幸彦 脚本/蒔田光治
出演/仲間由紀恵 阿部寛 生瀬勝久 野際陽子 東山紀之 北村一輝 水原希子 中村育二 石丸謙二郎 池田鉄洋 吉田鋼太郎
日本公開/2014年1月11日
ジャンル/[コメディ] [ミステリー]
