『エル・トポ』 美しい傑作

 【ネタバレ注意】

 菊池寛の『恩讐の彼方に』で知られる「青の洞門」を、舞台をメキシコに移して描いた傑作。
 前半、主人公の非道ぶりを描く部分は、エロ・グロ満載の幻想美で、その手触りは菊池寛というより国枝史郎の小説世界に近い。

 『恩讐の彼方に』の主人公市九郎は、真言宗の僧となるが、モデルである実在の僧・禅海は、曹洞宗である。
 しかし、アレハンドロ・ホドロフスキーがインタビューの中で公案禅(こうあんぜん)の影響を強調していることからすると、真言宗でも曹洞宗でもなく、禅問答を繰り返す臨済宗に近い考え方であろう。

 とはいえ、映画の主人公エル・トポは剃髪するのみで、特定の宗教に帰依するわけではない。
 そして映画のラスト、フリークス達が虐殺されるのを防げなかったエル・トポは、焼身供養(焼身自殺)するのである。


 映画公開は1970年だが、その7年前となる1963年、ベトナム政府の弾圧により、子ども7人と女性1人が殺されるという事件が起こる。その追弔会(ついちょうえ)のデモの中で、僧テック・ハン・ドクは焼身供養した。
 彼の遺書には、次のように書かれていたという。

 「私は発願した。自分の幻身を焼いて仏様に捧げる功徳によって、仏教が永続し、ベトナム全国の平和と国民の安楽が実現しますように、南無阿弥陀仏」

 しかし、ベトナム戦争は激しさを増し、1965年にはアメリカ軍による北爆が始まる。1970年、戦火はカンボジアにも広がっていた。


エル・トポエル・トポ』  [あ行]
監督・脚本・音楽・出演/アレハンドロ・ホドロフスキー
日本公開/1987年3月
ジャンル/[アート]
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【genre : 映画

tag : アレハンドロ・ホドロフスキー

はじめに -ネタバラシとは何か-

 お出でいただきありがとうございます。ナドレックです。
 ここでは映画の感想やレビューを綴ります。
 ときには、テレビドラマや小説、音楽などについても書いていきます。

 私は作品のネタバラシをするのもされるのも好みませんが、ときどきストーリーを忘れてしまって、レビューを読んでも意味の判らないことがあります。
 同様に感じる方もいらっしゃるでしょうから、ここではネタバラシをおそれずに書いていくつもりです。

 そうはいってもネタバラシやあらすじを中心にするわけではありませんが、各記事で取り上げる作品を未見の方はお気をつけください。

 なお「ネタバラシ」とは、2つの意味で使います。
 ・その作品のオチや核心部分を明示的に書いてしまうこと。
 ・その作品の元ネタはなんなのかを解題すること。

 まぁ、評論文や解説文ではなく感想文ですので、気軽にお付き合いください。


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