『コララインとボタンの魔女』への挑戦的なアプローチ

 コラライン(Coraline)は、いつもキャロライン(Caroline)に間違えられてしまう女の子。
 人は誰しも承認欲求があるが、承認どころかコララインとして認識されない淋しさを抱えている。
 ある日コララインは、封印された小さなドアを見つける。ドアの向こうは、ボタンの目の人々が待ちうける別世界だった…。

 『コララインとボタンの魔女 3D』では、この奇妙な物語をCGでもなく手書きアニメでもなく人形アニメで描くことにより、不思議な映像が展開される。
 その質感、存在感は、現実に存在する物を撮影しているからこそ生み出されるものだ。布地の手触りが伝わってくる映像は、まだCGにはできないだろう。
 さらにデジタル3Dにすることにより、奥行きと立体感までが加わっている。

 岡田斗司夫氏は、映画の原点は見たことないものを見せることだと述べているが、まさしくこんな映像は見たことがない。


 『コララインとボタンの魔女 3D』の公式サイトによれば、この映画が誕生したのは、原作者のニール・ゲイマンが『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の監督ヘンリー・セリックに原稿を送ったことがきっかけだとか。
 原作者にしてみれば、人形アニメは最適だと考えたのだろう。

 なにしろ、本作で鍵となるのは人形なのだ。
 主人公コララインのもとへ、コララインそっくりな人形が届くところから不思議な出来事が起こり始める。劇中、コララインはいつも人形を連れている。
 さらに、別世界で出会う目がボタンの人々は、魔女の人形である。魔女が作り、思い通りに操る人形にすぎないのだ。

 このように人形が重要な役割を担う作品だから、原作者が人形アニメにして欲しいと願っても不思議ではない。
 だって、目がボタンになっているなんて、人間が演じたら出来の悪いジョークにしかならないから。


 原稿を受け取ったヘンリー・セリック監督は、原稿を読んでさっそく映画化を申し入れる。
 だがセリックにとって、本作を人形アニメで描くのはとても挑戦的なことだったはずだ。

 なにしろ、人形を描かねばならないからだ。
 人形でできているコララインが、コララインそっくりな人形を抱いてる場面を想像してみれば良い。抱いているのも人形、抱かれているのも人形、なのに観客には人間が人形を抱いているように見せなければならない。
 目がボタンの人間や動物たちは、正体を暴くと人形である。とうぜん正体が暴かれるまでは人形に見えてはならない。
 人間が演じてくれれば簡単なことだが、人形に演じさせるのは、はなはだしく難しい。

 それを可能にしたのが、これまでのストップモーションアニメとは段違いに豊かな表情と自由自在な動きである。

 『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の主人公ジャックの表情が15通りだったのに対し、コララインの表情はなんと20万7336通りも作られたという。この膨大な数の表情を適切に取り替えることで、ストップモーションアニメ特有のギクシャクした感じがなくなり、フルCGに匹敵する滑らかさを実現している。
 通常、質感ではCGよりもストップモーションアニメが勝るが、動きの滑らかさではCGに分がある。ところが『コララインとボタンの魔女 3D』は、しばしばストップモーションアニメであることを忘れてしまう。それほどまでにコララインの動きは自然だ。

 ヘンリー・セリック監督の挑戦は成功した。
 コララインが人形を抱いている場面では、人形が人形を抱いてるなんて思わない。

 こうしてこの映画は、見たことないものを見せてくれたのである。


コララインとボタンの魔女 3D』  [か行]
監督・制作・脚本・プロダクションデザイン/ヘンリー・セリック
撮影/ピート・コザチク  コンセプトアート/上杉忠弘  原作/ニール・ゲイマン
出演/ダコタ・ファニング テリー・ハッチャー
日本語吹替版の出演/榮倉奈々 劇団ひとり 戸田恵子
日本公開/2010年2月19日
ジャンル/[ファンタジー] [ファミリー] [ホラー]

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