『恋するベーカリー』 10年前の亡霊

 【ネタバレ注意】

 それは2001年9月11日のことだった。世界を震撼させたアメリカ同時多発テロ事件の発生である。
 その事件がもたらした衝撃、悲しみ、怒り等は、当然のごとくアメリカ映画にも多くの影響を及ぼした。

 まずは、テロや爆破事件を想起させる作品の公開が見合わされ、まだ世界貿易センタービルがある頃に撮影した映画はそのままでは公開できなくなった。
 しばらくすると事件の実録映画が作られるようになり、やがて直接事件を描くことはなくなるものの、今日に至るまで何らかの形で映画作品に影を落とし続けている。

 近年増えてきたのは、最愛の人を失った悲しみから立ち直ることをテーマにした作品だ。
 2007年の『P.S.アイラヴユー』(日本公開は2008年)、2009年の『カールじいさんの空飛ぶ家』などが、その系譜に連なるだろう。
 いずれも、故人の思い出は大切だけれど、家に引きこもらずに新たな出会い・新たな人生へ踏み出すべきだと訴える。


 そして事件から10年近い時が流れて公開される『恋するベーカリー』は、むかし愛した人はあくまでむかしの人であり、今は違う人と違う人生を送るべきではないかと問う映画だ。

 メリル・ストリープ演じるジェーンは、女手一つで子どもを育て上げ、ベーカリーの経営も軌道に乗って、自分の生活を見つめ直す余裕も出てきた。
 そんなとき、10年前に別れた元夫のジェイクと偶然にも再会してしまう。
 2人の間にまだ愛はあるのか、恋愛感情は再燃するのか、よりを戻すことが彼女の幸せなのか…?


 『恋するベーカリー』はそんな問題を取り上げているが、体裁は大人のためのロマンティック・コメディである。

 面白いのは、コメディリリーフを担うのがスティーヴ・マーティンじゃなくてアレック・ボールドウィンであるところ。口八丁手八丁の弁護士を演じるアレック・ボールドウィンは、巨体を生かしたコミカルな動きで笑わせる。
 一方スティーヴ・マーティンは、真面目でお堅い建築家を演じ、いつ羽目を外すのかと観客の興味を引っ張り続ける。
 なかなか上手い配役である。


 『恋するベーカリー』で特筆すべきは、その音楽だ。
 ボサノヴァ調のオープニング曲から、劇中に流れるジャズ・ピアノ等、洒落た曲が目白押し。
 もちろんボサノヴァやジャズは、こんにち若者に受ける音楽ではない。
 本作は音楽面でも大人向けなのだ。


 『恋するベーカリー』には、テーマを判りやすく示唆するシーンが多い。
 遠くに目をやれば輝かしい世界の広がりが見えることや、ドシャ降りの雨は良いことが起こる兆しであるとか。
 だからこそ、雨に降られても微笑んでいられるのだ。


恋するベーカリー』  [か行]
監督・制作・脚本/ナンシー・マイヤーズ
出演/メリル・ストリープ スティーヴ・マーティン アレック・ボールドウィン ジョン・クラシンスキー ケイトリン・フィッツジェラルド ゾーイ・カザン ハンター・パリッシュ
日本公開/2010年2月19日
ジャンル/[ロマンス] [コメディ]

映画ブログ ブログパーツ

【theme : 恋愛映画・ロマンティックコメディ
【genre : 映画

tag : ナンシー・マイヤーズ メリル・ストリープ スティーヴ・マーティン アレック・ボールドウィン ジョン・クラシンスキー

最新の記事
記事への登場ランキング
クリックすると本ブログ内の関連記事に飛びます
カテゴリ: 「全記事一覧」以外はノイズが交じりますm(_ _)m
月別に表示
リンク
スポンサード リンク
キーワードで検索 (表示されない場合はもう一度試してください)
プロフィール

Author:ナドレック

よく読まれる記事
スポンサード リンク
コメントありがとう
トラックバックありがとう
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

これまでの訪問者数
携帯からアクセス (QRコード)
QRコード
RSSリンクの表示