『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』はヴァイキングの国の出来事か?

 ベストセラーになった蛇蔵&海野凪子著『日本人の知らない日本語』に、スウェーデンから来た留学生のエピソードがある。
 彼女が日本に行くと云ったら、周囲から「そんな野蛮な国に行ったら危ないよ」「武士に斬られたりしたらどうするの!!」と猛反対されたとか。
 彼女は、日本に来たら馬でなくクルマが走っていてビックリしたそうである。

 いかに日本が知られていないかを示すエピソードだが、では、日本ではスウェーデンのことをどれだけ知っているだろうか。
 スウェーデンを舞台にした『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』を観れば、スウェーデンの様子をうかがい知ることができる。
 そこには何ら日本と変わらない生活と問題がある。


 本作が取り上げるのは、パワハラ、セクハラ、虐待である。

 『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』は、40年前の令嬢失踪事件の謎を追う物語なのだが、もっとも重要なシーンは事件とは無関係なところにある。
 映画の前半、主要登場人物の女性が強烈なパワハラ、セクハラに見舞われる。ストーリーを追うだけだと、なぜこのエピソードが挿入されるのか判りにくいが、前半にこのパワハラ、セクハラシーンがあるからこそ、作品の照準の先にあるものがくっきりと見えてくる。
 そしてパワハラ、セクハラの被害を描くことで、観客は彼女の思考や感情、能力を理解し、その後の彼女の行動に共感できるのだ。

 弱者に対する虐待は、万国共通の問題だ。
 家庭で、職場で、地域で、権力や暴力で優位にある者は、弱者を蹂躙している。
 ここにこの映画の今日性と普遍性がある。


 細かなことでは、日本との違いもある
 劇中、半世紀も前の帳簿を調べようとする場面があるが、日本ではこうはいかない。
 日本では、取引に関する帳簿や取引証憑書類の法定保存年限は7年しかない。法定保存年限を超えて保存することは、スペースや倉庫代のムダであるから、コスト意識のある企業は7年を経過したら速やかに廃棄している。
 だから、主人公が半世紀前の帳簿を調べようと事もなげに云うのにはビックリした。
 本作では、帳簿の他にも古い資料がザクザク出てきて、スウェーデン人の物持ちの良さに驚く。

 公文書等の管理に関する法律ですら、2009年にようやく成立したわが国とは大違いである。


 いささか残念なのは、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』という邦題に何の意味もないことだ。

 「ミレニアム」とは主人公のジャーナリストが発行す雑誌の名前。雑誌は本筋に関係しない。
 そして映画には、「ドラゴンの刺青をした女」も登場するが、その刺青に重要な意味はない。
 邦題には頭を悩ますところだろうが、この邦題は英語版の2つの題("Millennium: Part 1 - Men Who Hate Women"、"The Girl with the Dragon Tattoo")を組み合わせただけだ。
 原題の "Män som hatar kvinnor(女性を憎む男たち)"が、華はないながら作品の内容を良く表しているだけに残念である。

 もちろん配給会社としては、評判を呼んだ原作小説の訳題をそのまま利用したかったのだろう。
 2作目の『ミレニアム2 火と戯れる女』と3作目の『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』も、小説と同じ邦題で公開されるはずだ。

[*]2011年、同じ原作から『ドラゴン・タトゥーの女』として改めて映画化された。その記事についてはこちらを参照されたい。


ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』  [ま行]
監督/ニールス・アルデン・オプレヴ  原作/スティーグ・ラーソン
出演/ミカエル・ニクヴィスト ノオミ・ラパス スヴェン=ベルティル・タウベ レナ・エンドレ
日本公開/2010年1月16日
ジャンル/[ミステリー] [サスペンス]
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【theme : サスペンス・ミステリー
【genre : 映画

tag : ニールス・アルデン・オプレヴ ミカエル・ニクヴィスト ノオミ・ラパス

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