『サロゲート』に流されてしまう私たち

 『サロゲート』の作り手は、『アバター』というタイトルをジェームズ・キャメロンに押さえられてさぞかし悔しかったに違いない。
 もちろん、SURROGATES(代理、代行者)というタイトルも、そのものズバリで悪くはない。
 しかし、本作のサロゲートは、こんにち我々がアバターで仮想世界を練り歩くことの延長線上にある。

 本作は、人間の行動のすべてをロボットが代行するというSFだが、描かれているのは実のところ face to face での接触が減り、ネット経由のコミュニケーションが主体となりつつある我々の生活である。
 携帯電話を持ち歩いても話なんかしないでメールを送る。返事もメールで返ってくるので、またメールで返信する。
 いちいち会って話したりせずに、SNSやTwitterで盛り上がる。
 職場でも、学校でも、家庭でも、要件をメールで済ませることのなんと多いことか。
 『サロゲート』が皮肉交じりに描くのは、我々の日常生活そのものである。ネカマ(匿名性を利用して、女性を装った男性)だって登場する。

 ブルース・ウィリス演じる主人公は、ずいぶん長いこと生身の妻を見ていない。
 これとそっくりなシチュエーションが、『電車男』にもあった。
 隣り合った部屋にいるのに会うことのない夫婦が、ネットの掲示板を使ってのみコミュニケーションする。『サロゲート』を観て、『電車男』を思い出した人も多いのではないだろうか。

 オフィシャルサイトにジョナサン・モストウ監督の言葉がある。
 「身体的接触がどんどん希少になっていく世界で、愛の観念はその意味を失われてしまうのではないだろうか?それがこのストーリーを通して私たちが探求しようとしたテーマです。」


 本作では、全人類のほとんどが日常生活をサロゲートに代行させており、自分自身は部屋から一歩も出ない。
 そんな人々を、本作は批判的に描いている。

 しかしもう遅い。
 大多数がサロゲートを利用するのは、その方が便利だからだ。我々が暮らす現実社会と同様に。
 多くの人は、face to face で会ったり、肉声で話をするよりも、ネットでやりとりする方が気楽だと考えている。携帯電話がテレビ通話の機能を備えて久しいが、そんなものを使いたい人は滅多にいない。
 人は、他人に面と向かわずともコミュニケーションを取る方法を手に入れて、ためらわずに面と向かうことを放棄した。
 それが良いかどうかはともかく、この流れはもう止められない。
 本当のところ、私たちは他人と接触したくないのだ。濃密にかかわるのも、かかわられるのもイヤなのだ。

 本作は、そんな人々の生活を皮肉たっぷりに誇張してみせる。

 もしも本当にサロゲートが実用化されて、部屋から一歩も出なくて済むのなら……映画どおり誰にも顔を会わせない世界になるだろう。


サロゲート/ブルーレイ(本編DVD付) [Blu-ray]サロゲート』  [さ行]
監督/ジョナサン・モストウ
出演/ブルース・ウィリス ラダ・ミッチェル ロザムンド・パイク ボリス・コジョー ジェームズ・フランシス・ギンティ ジェームズ・クロムウェル
日本公開/2010年1月22日
ジャンル/[SF] [サスペンス]
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【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画
【genre : 映画

tag : ジョナサン・モストウ ブルース・ウィリス ラダ・ミッチェル ロザムンド・パイク

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