『ゴールデンスランバー』 片目を開けて眠れるか?

 " きっと、つながる " というコピーのもと『フィッシュストーリー』が公開され、『サマーウォーズ』では " 「つながり」こそが、ボクらの武器。 " というコピーが踊った。
 そして『ゴールデンスランバー』で、堺雅人さんが演じる青柳雅春は云う。

 「俺にとって残っている武器は、人を信頼することくらいなんだ。」


 『フィッシュストーリー』が大好きな私は、本作を首を長くして待っていた。
 監督、脚本、撮影、音楽、原作と、『フィッシュストーリー』と同じ陣容で取り組んだ本作は、期待にたがわぬ面白さだ。

 劇中、青柳はビートルズの"Golden Slumbers"を「黄金のまどろみ」と説明して眠りに落ちる。
 誰に嵌められたのかも判らず逃亡を続ける青柳にとって、眠るのは覚悟がいる。眠っているあいだに、誰に何をされるか知れないのだから。
 だから、あなたが誰かの前でまどろむことができるなら、その誰かは貴重な人だ。その誰かが与えてくれるまどろみは、あなたにとって黄金にも等しい。

 本作とは関係ないが、『夏への扉』にこんな一節がある。
 「まったく人間を信用しないでなにかやるとすれば、山の中の洞窟にでも住んで眠るときにも片目をあけていなければならなくなる。」
 どんな人でも、いつかは他人を信頼し、両の目を閉じなければならないのだ。
 
 『フィッシュストーリー』や『重力ピエロ』と同様に、『ゴールデンスランバー』も人と人との繋がりや信頼が主人公を支え、未来を切り開いていく。
 映画館を出るとき、あなたも爽快感に包まれることだろう。


 ただし、原作では早い段階で事件から20年後の視点が描かれるのに対し、映画はあくまで時系列に展開する。だから、着地点を知った上で事件をたどる原作に比べると、映画の観客は翻弄されるかも知れない。
 中村義洋監督は、公式サイトで脚本作りの苦労を語っている。
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情報量が本当に多い原作なので、どこを使ってどこを落とすかという取捨選択は本当に難しかったです。それを2時間なりの映画にする解決策として、青柳が見たり聞いたりしたものだけを描こうと思いました。大作感を出すために警察側の最新鋭の作戦本部や黒幕たちの会話を描写する方法がありますが、それをやったらダメな気がしたので、青柳側に立って脚本を書きました。
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 青柳のシンプルな逃亡劇となった本作は、舞台を仙台に限定したこととあいまって、巨大な鬼ごっこのような楽しさも備えている。


 そして、なんといっても驚きなのが濱田岳(はまだ がく)さん。
 テレビドラマでも映画でも、弱気で冴えない男といえば濱田岳、というイメージが強いが、本作ではカッコイイ役を颯爽と演じている!
 『今度は愛妻家』のダメダメぶりとは正反対である。
 主役の堺雅人さんをはじめ、実に素晴らしいキャスティングのなかで、1番唸らされたのが濱田岳さんである。
 他の役者さんでは怖くなりそうな役どころを、濱田岳さんが中和してくれたお陰で、作品の爽快感が保たれている。


ゴールデンスランバー [Blu-ray]ゴールデンスランバー』  [か行]
監督・脚本/中村義洋  脚本/林民夫、鈴木謙一  原作/伊坂幸太郎  音楽/斉藤和義
出演/堺雅人 竹内結子 吉岡秀隆 劇団ひとり 柄本明 濱田岳 渋川清彦 貫地谷しほり 相武紗季 永島敏行 香川照之
日本公開/2010年1月30日
ジャンル/[サスペンス] [ミステリー]
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