『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』を諦めきれない女たち

 的確にして残酷なタイトルだ。
 『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』は、「夢を諦めない男たち」ではなく、副題のとおり「諦めきれない男たち」を描いている。「諦めない男たち」なら強い意志や前向きさを感じるだろうが、「諦めきれない男たち」には未練がましさが漂っている。

 原題はいたってシンプルな「ANVIL! THE STORY OF ANVIL」。
 これは、30年間メタルバンドを続けて、いまだに「いつかビッグになる」と夢を見続けている男たちのドキュメンタリーだ。


 メタルバンド"アンヴィル"の中心は、ボーカル兼ギターのリップスと、ドラムのロブだ。
 ロブの姉は呆れ果てている。
 「もう終わってるのに、現実が見えてないのよ。30年もやってきて、演奏に集まるのは100人足らずよ。」

 リップスの兄たちも同様だ。
 「あいつは貧困を選んだ。」

 作中、他のインタビュイーは姉とか妻としか表記されないのに、学者と会計士の兄弟についてはわざわざ職業を明示している。つまり、リップスは堅い家庭に生まれ育ったので、兄弟同様の生き方をすれば社会的なステータスの高い高給取りになれたはずだとほのめかしている。
 会計士というのは、日本でこそ医師や弁護士ほどの知名度はないものの、BusinessWeek誌による大学生の理想の就職先調査において、Businessランキングの1位、3位、5位、6位を会計事務所が占めるほどの人気職種だ(ちなみに2位はグーグル、4位はウォルト・ディズニー)。
 これら兄弟と対比することで、バンドでは収入にならないリップスの境遇を際立たせている。

 まったく、リップスもロブも夢を諦めきれない男たちなのだが、ロブの妻も姉に対して反論する。
 「だって何が起こるか判らないし。」
 妻も自らの稼ぎで生計を支えながら、ロブがいつの日かロックで成功することを夢見ているのだ。
 リップスの妻も同様だ。インタビューに答えながら、これまでの日々とこれからのことを想ってポロポロ涙をこぼす彼女も、リップスと夢を共有している。

 たしかに男たちは夢を諦めきれないが、男だけで夢を追うことはできない。
 そこには、夢を諦めきれない女たちが一緒に歩んでいるのである。


アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』  [あ行]
監督/サーシャ・ガヴァシ
出演/スティーヴ・"リップス"・クドロー ロブ・ライナー
日本公開/2009年10月24日
ジャンル/[ドキュメンタリー] [音楽]

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tag : サーシャ・ガヴァシ

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