『アバター』 ロジャー・ディーンの驚異の世界

 【ネタバレ注意】

 この日が来ると誰が想像し得ただろう。
 ロジャー・ディーンの流麗なイラストレーションの世界が、映像になって動いている!

 空に浮かぶ島々やアーチ状の岩、夜光植物がほんのりと光る風景と色合い、空を地を跋扈する異形の獣たち。まさに画集やアルバム・ジャケットで親しんだロジャー・ディーンの世界が、劇場のスクリーンいっぱいに広がっている!
 『アバター』は、最初に構想してから実に14年も経つという。この映像を見れば、長いあいだ技術の進歩を待った甲斐があったといえよう。

 ロジャー・ディーンの作品に酷似していることについて、RogerDean.comでは「世間様は見逃さないぞ」と息巻いているが、似ていると指摘するのはやっぱり褒め言葉だ。
 70~80年代にロジャー・ディーンのイラストを見て、これに似た映像ができるとは誰も思わなかっただろう。ようやく映画の技術が人間のイマジネーションに近づいたのだ。

 これほど徹底的にロケを排し、地球にはあり得ない異世界を創造した映画は、『フラッシュ・ゴードン』以来ではないだろうか。
 もちろん、『フラッシュ・ゴードン』が大金をかけてセットを組んだのに対して、本作は60%を占めるCGIの力が大きい。

 ただ、14年の歳月はネタを陳腐化させるにも充分な時間である。

 『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』のように初期の構想そのままに作る方法もあるが、『アバター』はどうなのだろう。
 世界に張り巡らされたネットワークに神経組織を接続するサイバーパンクなイメージや、ガイア理論を実践するかのような星は、旬のネタとは云いがたい。
 しかし、「SFは絵だねぇ」と野田大元帥がおっしゃるとおり、圧倒的なインパクトをもって迫る情景は、有無を言わさぬ力強さに溢れている。


 そしてネタの鮮度よりも大事なことは、本作にはSFらしい視座の転換があることだ。

 SF的なガジェットが登場する作品はたくさんある。超能力やサイボーグやタイムトラベル等々。
 しかし多くの場合、それらのガジェットは「ちょっと変わった味付け」でしかない。

 それに対し『アバター』には、地球人が化身(アバター)を通して異世界の一員となり、異世界側から地球人を見つめ直すことにより改めて地球人の姿を知る、という視座の転換がある。
 これはジェームズ・キャメロンの目指す「映画を楽しみながらも、自然界とのかかわり、人間同士の関わり方について、人々を多少なりと考えさせるようなものを製作したい。」という点と密接にかかわっており、普遍性のあるものだ。

 それに、この作品を他の方法、たとえば「ネイティブ・アメリカンにまじった白人」として描こうとすれば、国や人種によって受け止め方が大きく異なるおそれがあるし、制作者の意図どおりのストーリーにするのは歴史を捏造することになりかねない。
 それではジェームズ・キャメロンの想いは遂げられない。


 判りやすく視座を転換するために、化身(アバター)を媒介(地球人とナヴィの媒介ではなく、観客と作り手の媒介)にするのはなかなか良いアイデアである。

 さらに映画『アバター』では、主人公のアバターがトルーク・マクトとなって異世界パンドラを救うために活躍する。
 この点で本作のアバターとは、仮想世界に関連したIT用語としての「アバター(avatar)」よりも、神の化身の「アヴァターラ(Avatāra)」に近いと云えよう。

 でも、そこにはあまり深入りせずに、アクションとアドベンチャーをしっかり描く。
 それでこそジェームズ・キャメロンなのだ!


アバター ブルーレイ版エクステンデッド・エディション(本編3種収録)(初回生産限定3枚組) [Blu-ray]アバター』  [あ行]
監督・製作・製作総指揮・脚本・編集/ジェームズ・キャメロン
出演/サム・ワーシントン ゾーイ・サルダナ シガーニー・ウィーヴァー スティーヴン・ラング CCH・パウンダー
日本公開/2009年12月23日
ジャンル/[SF] [アドベンチャー] [アクション]
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【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画
【genre : 映画

tag : ジェームズ・キャメロン サム・ワーシントン シガーニー・ウィーヴァー CCH・パウンダー

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