『ライアーゲーム』の違法な結論

 本作の主人公・神崎直(かんざき なお)は、ライアーゲームの参加者たちに、社会的には違法と思われることをそそのかす。
 シーズン2を放映中の『LIAR GAME』は、その神崎直と、適法な行為を貫こうとする者たちのせめぎ合いを描いたドラマである。

 正直者の神崎直は、誰の云うこともすぐに信じる。
 彼女がライアーゲーム(嘘つきのゲーム)に巻き込まれることから物語は始まる。

 ゲームのプレイヤーたちは、勝者となって事務局の用意した賞金を獲得するために、騙し合い抜け駆けしようとする。
 それに対して神崎直は、みんなで協力するよう呼び掛ける。事務局の術中に陥らず、誰も敗者とならないように、手を組むことを勧めるのだ。


 この図式を単純化してみよう。
 金を持っている者A、Aの呼び掛けに応じて集まったB、Cら多数の者。集まった中で金を手にするのはただ1人。B、Cらは金のために知恵を絞り、競争相手に手の内を知られないように策を練る…。

 お判りだろう、Aは発注者、B、Cらは入札者、勝者とは落札者と同じである。
 では、協力を呼び掛ける神崎直は?
 こういう者を、世間では談合の仲介役と呼び、刑罰の対象とする。
 神崎直のやっていることは、世の中では許されないのだ。

 神崎直は、ゲームの事務局を闘う相手と見据え、金をプレイヤー同士で分け合うように、事務局の手元に残る金が少なくなるように努力する。
 入札において安い応札額を競うのではなく、談合して順番に落札者となり、発注者の持ち金をきっちりいただくのと同じことだ。

 では、それは悪いことだろうか?


 かつて東京地検特捜部等で活躍した郷原信郎氏は、制度が不合理だから談合が生まれるのだと説く。
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 工事発注先の業者選定において価格だけではなく品質・技術の要素もバランス良く評価すること、発注官庁側が算定した価格は絶対的なものではなく、入札の結果によってはそれを上回る金額での落札も認めること、これらは国際的には常識だ。

 しかし、日本では長らく、入札価格が最低だった業者が自動的に落札し、予定価格を1円でも上回る落札は認めないという制度で公共調達が行われてきた。それは、もともと工事の発注にはなじまない制度であるうえに、工事が複雑化、多様化するにつれて、発注実態とのギャップが一層大きくなっていった。その中でも公共工事の発注を行わなければならないとすると、制度外の「非公式な行為」が、そのギャップを埋める機能を果たすことになる。それが、業者間の話し合いで受注者を決める受注調整、つまり談合の恒常化だった。それによって品質・技術の面での評価が行われ、受注業者の信頼性が担保されることで、入札における価格だけの競争という制度の不合理性がカバーされてきた。
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 談合は、過当競争によって品質や技術が犠牲になるほど消耗することを避けるためには必要だったというわけだ。

 同様に神崎直は、ゲームのルールさえ守れば何を犠牲にしても構わないというライアーゲームに抵抗し、話し合うことを繰り返し説く。


 『LIAR GAME』のプレイヤーのひとり葛城リョウは、次のように説明した。
 人間とは、助け合うことをDNAレベルで備えた生き物であると。
 そして葛城リョウは、それを見返りを求める偽善であるとした。

 しかし「偽善」と呼ぶのは適切ではない。
 人が、自分に多少の損があっても誰かを助けるのは、助ける行為そのものが喜びだからだということが、脳科学の研究で判ってきた。

 人間はお互いに助け合ったからこそ、猛獣よりも弱く、馬などより遅いのに生き残れた。猛獣が生まれついて牙を持ち、馬が生まれついて俊敏なように、人間は生まれついて助け合う生き物なのだ。
 だから助け合うことを「悪」とはいえない。人間はそうせずにはいられないのだから。

 目の前に入札という試練があったら、話し合って参加者みんなが利益を得るように努める。
 これは人間として自然なことなのである。


 もちろん、談合を禁止するにはわけがある。
 高田直芳氏の記事を引用しよう。
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右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線

問題は,カルテルや談合です。
(略)
これによって生まれるマーケット全体の機会損失(三角形FHK)は,到底容認されるものではありません。そのために,独占禁止法で処罰の対象となるわけです。なお,カルテルの主犯格企業への課徴金を重くし,違法行為を自主申告した企業の課徴金を軽減するのは,ゲーム理論で有名な「囚人のジレンマ」の効果を狙ったものです。
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 話し合いの参加者だけを考えたら、談合という手段もアリかも知れない。
 しかし世の中の直接間接の関係者がすべて話し合いに参加するのは不可能だから、どこかに損する人が出てくる。
 たとえ参加できたとしても、話し合いで全員が必ず得するように結論を出すのは不可能だ。
 だから、参加者だけで話し合う談合は違法とせざるを得ない。

 神崎直が見落としているのは、事務局とてプレイヤーの1人だということだ。事務局だけ損させれば良いわけではない。

 視聴者が神崎直の行動にいくら共感しようとも、実社会で同様のことをしたら違法行為になってしまう。
 ましてや実社会では発注者も話し合いにかかわると、官製談合としてますます非難を浴びる。

 高田直芳氏が、ゲーム理論の「囚人のジレンマ」の効果を狙っていると紹介した課徴金減免制度は、話し合いの仲間を裏切って、自分だけ得することをそそのかす制度だ。
 まさにライアーゲームの事務局が仕掛けているのと同じこと。
 神崎直を裏切る福永は、ドラマでは油断ならない人物だが、実社会なら法令遵守に努める者と評価されるのである。
 

 それでも人間は、自然の摂理に従ったら、話し合わずには、談合せずにはいられないのだ。

 合法・非合法の判断と、生き物としての在り方に由来する善悪とが食い違うとき、いずれの行動をとるべきなのか。
 我々は固唾をのんで神崎直の行動を見つめている。


ライアーゲーム DVD BOXLIAR GAME』  [テレビ]
演出/松山博昭、大木綾子、佐々木詳太 植田泰史 長瀬国博
出演/戸田恵梨香 松田翔太 鈴木浩介 吉瀬美智子 渡辺いっけい 菊地凛子
日本公開/Season1 2007年 4月14日~2007年6月23日
     Season2 2009年11月10日~2010年1月19日
ジャンル/[サスペンス] [ミステリー]
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【theme : ライアーゲーム
【genre : テレビ・ラジオ

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