『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』のリアリティ

 机の下に常備している寝袋。
 それが映し出されたとき、この映画が綿密な取材に基づいた極めて写実的な作品であることが判った。

 本作の舞台、その名も"黒井システム株式会社"は、社長以下8名からなるごく普通のソフト開発会社である。
 おかしな人物も妙な慣習もなく、ソフト業界なら一般的な描写が普通に続く。
 各エピソードにはいささか厳しいところもあるが、会社勤めとはこういうものだ。
 ただ、原作では3年間の出来事を、半年間に圧縮してテンポを上げている。

 かつてテレビドラマ『働きマン』にチャンネルを合わせたときは、あまりにぬるい仕事の描写に見るのをやめてしまったが、この映画は会社勤めの人が見ても違和感がない。

 ただリアルなだけではない。
 デスマとかIT業界のピラミッド構造といった、業界外の人には馴染みのないことを、判りやすく説明しているのも本作の功績だ。
 そもそも、デスマがきちんと映像化されるのは初めてではないだろうか。

 本作は多分にコメディタッチではあるが、3Kどころか42Kと云われるIT業界は危機感を強めねばならないだろう。
 本作の公開により、IT業界のイメージは毀損するおそれがある。
 しかし真実を知らしめることは重要だ。
 他の業界だって五十歩百歩だろう。


 本作はあくまでフィクションなのでデフォルメしているところもある。
 リーダーやら井出やらが、やたら元気でハイテンションなのは、映画ならではの演出だ。ソフト開発会社では、みんなもっとくたびれているのではないか。

 また、本当にきつい職場であれば、並行していくつもの納期を抱えているので、みんなで打ち上げに行けるはずもない。
 だから本作を観て「うちの職場はこんなものではない」と感じる人もいるだろう。
 しかし本作の目的は苦労自慢ではない。


 面白いのは、最悪のデスマを生み出しているのが、社長でもリーダーでもなく、客の云うことを呑んでしまう若造だということだ。
 そうなのだ。
 本作についてウィキペディアには「現代の蟹工船と称される。」などと書かれているが、仕事の現場は「可哀相な労働者」と「搾取する使用者」という対立項では表せない。

 本作のこのような視点が、共感を呼ぶところである。


 名ゼリフも満載だ。

 「定時なんてもんはな、都市伝説だ!!バカッ!」

 「ソルジャー、ゲーット」

 「オレ、変わりたかったんだよ!」


 ネットの掲示板の書き込みから生まれた本作だから、『電車男』のようにネットごしに応援する人々を登場させることもできたはずだ。
 けれども、映画はあえて家族と職場の人々だけで構成している。
 それは本作が、リアルな人間関係を重視しているからだ。

 公式サイトに佐藤祐市監督の言葉がある。
---
この映画の主人公・マ男は、元ニートのひきこもりという孤独な状況から、会社という嫌でも他人と関わらなくてはならない世界に飛び込みます。そこは本人にとって酷くつらく理不尽な環境でしたが、彼はその環境に耐え、人と関わることで、自らの人生を一歩前進させる結論を出しました。
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 本作は、日々がんばって仕事する人々への応援歌であり、「オレだけじゃないんだ」とホッとする場でもある。


ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない [DVD]ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』  [は行]
監督/佐藤祐市
出演/小池徹平 マイコ 田辺誠一 品川祐 池田鉄洋 田中圭 中村靖日 千葉雅子 森本レオ
日本公開/2009年11月21日
ジャンル/[ドラマ]

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【genre : 映画

tag : 佐藤祐市 小池徹平 マイコ 田辺誠一 品川祐

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