『なくもんか』 寄せては返す不幸の波

 劇中、徹子が激怒するシーンがある。
 大きな不幸を背負ってきた人間に対してである。
 なぜか。

 それは、不幸を背負っているからだ。


 『なくもんか』では、人生の一大事である結婚や子供を持つことについては、とてもアッサリと扱っている。
 たびたび訪れる人の死についても、アッサリと済ませている。

 対して『なくもんか』で描かれるのは、日々の生活に降りかかる不幸である。
 40年間大切にしてきた秘伝のタレを台無しにされたり、信頼を築いていると思っていた人たちから不信の目で見られたり、絶対に知られたくない秘密がバレてしまったり。
 主人公・山ちゃんにいくつもの不幸が訪れる。

 しかしそれぞれの不幸はさして尾を引くこともなく、次のシーンでは明るく振る舞う山ちゃんがいる。大騒ぎのわりには全然たいしたことなかったみたいに。

 本当はたいしたことなのだ。
 数十年にわたる努力が無駄だったり、人々の冷たさを知ってしまったり、秘密を暴かれてしまったり、どれも大きな精神的ダメージを受けておかしくないことなのだ。
 でも、山ちゃんは不幸の一つひとつを笑顔で弾き返し、不幸を成長させない。不幸を背負いこまない。


 それは、不器用ながら私たちが日々実践していることでもある。実践しようとしていることである。

 だから、不幸を溜めにためて成長させてきた祐介に、不幸であることを認めてしまっている祐介に、徹子は激怒したのである。


 本作はクライマックスに向けて盛り上がっていく物語ではない。
 一応、クライマックスはあるのだが、そこは実は重要ではない。寄せては返す波のように絶えることない不幸に見舞われながら、日々を笑顔で過ごす山ちゃんの姿が本作の見せ場であり、"なくもんか"と言い聞かせながら日々を送る私たちへのエールでもある。


 ホームドラマである本作では、血の繋がっている親子や血の繋がっていない親子、子供と暮らさない親や他人の子を育てる親、会ったことのない本当の兄弟やいつも一緒にいるニセの兄弟等々、さまざまな家族が交叉する。
 でも幸せになれるのは?

 ウソでもいいから笑顔で暮らす人なのだ。


なくもんか [Blu-ray]なくもんか』  [な行]
監督/水田伸生  脚本/宮藤官九郎
出演/阿部サダヲ 瑛太 竹内結子 塚本高史 皆川猿時 いしだあゆみ
日本公開/2009年11月14日
ジャンル/[ドラマ] [コメディ]
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【theme : 日本映画
【genre : 映画

tag : 水田伸生 宮藤官九郎 阿部サダヲ 瑛太 竹内結子 塚本高史

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