深作欣二と犬喰い

 2009年11月1日、新文芸座の中原早苗(深作早苗)&深作欣二特集上映において、澤井信一郎監督、深作健太監督、山根貞男氏によるトークショーがあった。

 澤井信一郎監督は『人斬り与太 狂犬三兄弟』で深作欣二監督の助監督を務めており、深作健太監督は『時雨の記』で澤井信一郎監督の助監督を、『おもちゃ』で深作欣二監督の助監督を務めている。

 まず山根貞男氏が、特集上映のタイトル「映画夫婦渡世(とせい)」というネーミングのうまさについて感想を述べた後、澤井信一郎監督から深作欣二監督の思い出が語られた。

 以下、記憶を頼りに書いているので、不正確なところがあれば、ご容赦願いたい。

               

 「それまでの映画は、たとえば錦之助さんが刀で切ると、切って刀を持ったままの錦之助さんをカメラは写す。
 しかしサクさん(深作欣二監督)は、切られた方をカメラで追うんです。菅原文太が川谷拓三を殴ったとすると、菅原文太を映すのではなく、殴られた川谷拓三のイタタタッというところをカメラで追う。そしてカメラが菅原文太に戻ると、菅原文太はもう次の誰かを殴っている。
 殴った人間は、違う方向から襲いかかってくる次のヤツに体を向けなければならないけど、その時間は無駄なんです。だから、殴った菅原文太にカメラを据えないサクさんの取り方はたいへん合理的なんです。」

 「最近の監督は、構図を決めたらカットは2、3カットだけで、決めた構図の中で動かしていて、たいへん演劇的な、映画らしくない作り方です。
 サクさんはカットが短いんです。ロングは3秒くらいしかなくて、すぐに人物のアップになって迫るところが、サクさんの人懐こいところだと思います。」

 「隙間があるのを嫌う人で、『火宅の人』でも畳が見えない。
 布団やら炊飯器やら何やらが転がって、畳がまったく見えないようなところで壇一雄が書いている。
 とにかく画面に隙間があると、何かで埋めてしまうんです。」


 「サクさんは受け取った脚本をそのまま撮るということはなくて、一回自分の頭の中を通して、自分のフィルタを通してから撮っていたと思います。」

 「脚本が良くないと普通は脚本を直すけど、サクさんは良くない脚本を受け入れて、普通はできないことなんだけど、撮り方で良くしてみせた。」


 ところで深作健太監督は、小学生のときに父・深作欣二監督に『ワイルドバンチ』を観せられたそうだ。

 澤井信一郎監督によれば、深作欣二監督は『ワイルドバンチ』風に撮ろうとしたことがあるという。
 「『ワイルドバンチ』のスローモーションのアクションを見て、あれをやろうということになった。それで実際にやってみたんだけど、フィルムを繋いでみるとうまくいってなかったので、ほとんど削ってしまったんだ。」


 深作健太監督は、山根貞男氏から母・中原早苗さんについて意見を求められ、「父についてはこれまでいろいろ訊かれましたが、母について話すのは今日がはじめてです。母はまだいるので、話しにくいです。」とおっしゃって、会場の笑いを誘っていた。

               

 特集上映では『狼と豚と人間』(1964年)と『仁義なき戦い』シリーズ全5作を観たのだが、私が強い印象を受けたのは、手ブレいっぱいのアクションシーンでも広島弁の応酬でもなく、実は犬を食べるところだった。
 『狼と豚と人間』では若者たちが鍋にするために嬉々として野良犬を追いかけ回し、『仁義なき戦い 広島死闘篇』では犬肉を食べて犬に吠えられる。

 1966年の新聞には学生が野良犬のスキ焼きパーティーを開いた記事があるそうだし、都内には犬鍋を出す店もあるそうだから、現代の日本でも犬を食べた人は案外多いのかも知れない。
 しかし、映画のエピソードになるのは珍しいだろう。

 『犬と猫と人間と』に登場した前川医師はこう云った。
 「世の中が平和で、豊かでなければ、動物の愛護なんて気持ちにはならないんですよ。」

 深作映画の世界は、犬を食べ物としか見ないほど貧しくすさんでいるということか。


[人物] 深作欣二
仁義なき戦い』 (日本公開/1973年1月13日)          [さ行]
仁義なき戦い 広島死闘篇』 (日本公開/1973年4月28日)
仁義なき戦い 代理戦争』 (日本公開/1973年9月25日)
仁義なき戦い 頂上作戦』 (日本公開/1974年1月15日)
仁義なき戦い 完結篇]』 (日本公開/1974年6月29日)
監督/深作欣二  脚本/笠原和夫(1~4作目)、高田宏治(5作目)
撮影/吉田貞次  音楽/津島利章
出演/菅原文太 北大路欣也 松方弘樹 梅宮辰夫 千葉真一 梶芽衣子 小林旭 渡瀬恒彦 田中邦衛 金子信雄
ジャンル/[ドラマ] [アクション]

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tag : 深作欣二 澤井信一郎 深作健太

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