『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』 温故知新とはこのことだ

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション ブルーレイ+DVDセット(2枚組) [Blu-ray] チャッチャッチャーラッ、チャッチャッチャーラッ…
 劇場から出る多くの人がテーマ曲を口ずさんでいた。みんな大満足で、この音楽を口にせずにはいられなかったのだろう。

 シリーズも五作目になれば息切れしたり変質したりするものだが、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の面白さはどうだ。毎回監督を替え、趣向を変えながら、イーサン・ハント(トム・クルーズ)を中心とするエキスパートたちのスパイアクションという大枠は踏み外さない。タイトルどおり不可能と思われる状況で任務を遂行する痛快さは本作でも健在だ。

 前作『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』はシリーズの原点であるテレビドラマ『スパイ大作戦』らしさをはじめて打ち出し、徹頭徹尾チームワークを強調した作品だった。
 ところが本作はまたも趣向を変え、エキスパートのチームワークよりも友情と仲間意識を前面に押し出した。サイモン・ペッグ演じるベンジー・ダンは、任務のためではなくイーサンとの友情から行動する。イーサンも大きな陰謀を阻止するのではなく、ベンジーを助けるために体を張る。

 映画の中盤まではイーサンとベンジー二人の活躍が中心で、ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)はイーサンを「ダチ」と呼ぶわりになかなか現場に出てこないし、トム・クルーズが本シリーズを離れたときの後任として造形されたウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)も後方支援に回ってしまい、たいして見せ場がない。
 どうしたことかと疑問が湧くが、謎の女イルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)の位置づけを考えればクリストファー・マッカリー監督の思いが察せられる。篤い友情で結ばれた二人の男に美女一人が絡むのは、1967年のフランス映画『冒険者たち』に連なるパターンだ。
 『冒険者たち』はパイロットのマヌーと自動車技師ローランの二人に彫刻家の美女レティシアが加わって宝探しをする話である。プログレ・ハード・ロック・バンドNOVELAの中心メンバー平山照継氏がこの映画が大好きで、ヒロインにちなんだ楽曲『レティシア』をデビュー・アルバムに収めたことでご存知の方もいるだろう。

 同じパターンは1969年のアメリカ映画『明日に向って撃て!』にも見てとれる。ここでは列車強盗のブッチとサンダンスに美女エッタを加えた強盗稼業が描かれる。男を裏切る謎の女といえば、1965年のイタリア映画『黄金の七人』の情婦ジョルジアを挙げる人もいるだろう。
 日本でこれらの流れを汲む作品といえば、1971年に放映されたテレビアニメ『ルパン三世』の初期エピソードが思い浮かぶ。後年は仲の良いファミリーのようになってしまったルパンたちだが、当初はルパン三世と相棒次元大介の二人に謎の女・峰不二子が絡み、ときに不二子に翻弄された。その展開は、本作のイーサン、ベンジーのコンビがイルサに手を焼く様子によく似ている。近年の『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』でも、男二人と美女一人のパターンの復活が試みられている。
 きっとクリストファー・マッカリー監督は60年代、70年代の冒険映画や犯罪映画に多くを学んだのだろう。

 アカデミー賞に輝く脚本家でもあるクリストファー・マッカリーは、『ワルキューレ』『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』といった数々のトム・クルーズ主演作に脚本を提供してきた。とりわけ『アウトロー』(2012年)は、本作同様クリストファー・マッカリー自身が監督・脚本を務めた上、トム・クルーズの主演のみならず、音楽やプロダクションデザイン等も本作と同じ布陣で臨んだ作品だ(どちらも製作会社はスカイダンス・プロダクションズやトム・クルーズのTCプロダクションズだし)。

 この『アウトロー』がまた懐かしい味わいの映画だった。何台ものクルマを本当に空から降らせたり、クルマを踏み潰しながら驀進する戦車とカーチェイスを繰り広げたりとド派手なアクション映画が続々公開される昨今にあって、『アウトロー』のカーチェイスでは追う者のクルマと追われる者のクルマの一台ずつしか出てこない。しかも周りのクルマはクラッシュすらしない。クライマックスは雨の中、一対一で素手で殴り合うだけの、とても地味な映画だった。まるで1968年の『ブリット』や1971年の『ダーティハリー』の頃のようだ。いや、『ダーティハリー』の方がよほど派手なアクションだった。

 2010年代においては古風ともいえる『アウトロー』を監督したクリストファー・マッカリーが、次にメガホンをとったのが『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』なのである。『アウトロー』は6千万ドルの制作費に対して全世界興行収入が2億1834万ドルという微妙な成績だったが、トム・クルーズはクリストファー・マッカリーの仕事が気に入ったのだろう。
 本作のプロデューサーたちは前作の監督ブラッド・バードに続投して欲しかったのだが、バードは『トゥモローランド』を撮るために本作のオファーを断った(シリーズ物よりオリジナル作品を優先するブラッド・バードは、『トゥモローランド』のために『スター・ウォーズ エピソードVII/フォースの覚醒』の監督も断っている)。代わりの監督にクリストファー・マッカリーを推したのがトム・クルーズだ。
 そして完成した『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』は、二転三転する練りに練られたストーリーで楽しませつつ、『冒険者たち』のようなクラシックな趣も呈している。ショーン・ハリス演じる悪党ソロモン・レーンが眼鏡に短髪で、日本酒を飲みながら鮨を食べているのは、『冒険者たち』で主人公を冷たくあしらう眼鏡の日本人・京橋を模したんじゃないかと思うほどだ。密会の場所に木の葉が黄色く染まった墓地を選ぶのも、何やら既視感を覚える。

 同時に、このシリーズ特有の絶句するほどのアクションも満載だ。
 これはシリーズ三作目に監督・脚本で参加し、その後プロデューサーを務めているJ・J・エイブラムスの影響もあるかもしれない(J・J・エイブラムスのバッド・ロボット・プロダクションズも本作の製作会社に名を連ねている)。
 クリストファー・マッカリーが持ち込んだクラシックなスタイルと、J・J・エイブラムス以来のシャープな作風。それを両立させたことが、本作をシリーズの中でも特に優れたスパイスリラーに仕上げている。
 温故知新とはこのことである。


ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション ブルーレイ+DVDセット(2枚組) [Blu-ray]ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』  [ま行]
監督・脚本/クリストファー・マッカリー
出演/トム・クルーズ ジェレミー・レナー サイモン・ペッグ レベッカ・ファーガソン ヴィング・レイムス ショーン・ハリス アレック・ボールドウィン
日本公開/2015年8月7日
ジャンル/[アクション] [サスペンス] [アドベンチャー]
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【theme : アクション映画
【genre : 映画

tag : クリストファー・マッカリー トム・クルーズ ジェレミー・レナー サイモン・ペッグ レベッカ・ファーガソン ヴィング・レイムス ショーン・ハリス アレック・ボールドウィン

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