『ある日どこかで』観てほしい

 マンガ『ときめきトゥナイト』で、鈴世(りんぜ)となるみちゃんがデートする場面がある。そのときに観る映画が『ある日どこかで』だった。
 背景の看板に題名が描いてある、なんて扱いではなく、鑑賞後に2人は『ある日どこかで』について語り合う。だから『ときめきトゥナイト』を読むとき、『ある日どこかで』を未見の方は要注意である。

 1981年の公開当時はまったく話題にならず、客も入らず、早々に打ち切られてしまった映画だ。
 しかしこうして『ある日どこかで』を語り継ぐ人がいることで、今日でもDVDで観ることができる。
 サウンドトラックは日本でも発売され、たやすく入手できる。
 公開から21年を経て、2002年に原作小説も訳出された。

 この作品が、いかに多くの人に愛されているか判ろうというものだ。


 キネマ旬報1981年1月下旬号に、中子真治氏によるヤノット・シュワルツ監督へのインタビュー記事が載っている(この記事では監督の名をジャノウ・シュワークと表記している)。
 ここでの『ある日どこかで』の紹介の仕方が面白くて、繰り返し読んだものである。
 それは次の文章で始まる…。
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SF作家で脚本家のリチャード・マシスンの原作・脚本を、スーパーマン役の好青年俳優クリストファー・リーヴと「シンドバッド虎の目大冒険」や「宇宙空母ギャラクティカ」の美人女優ジェーン・セイモアの共演でもって、「燃える昆虫軍団」や「ジョーズ2」のジャノウ・シュワークが監督した映画、などと解説すると、もうすでに特殊な感情をいだいてしまう人が多いようで…。
しからば特撮なし、スタントなし、カー・チェイスなし、セックスなしの映画といいかえてみても、これまたつまらなさそうに聞こえる。
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 いやまったく、スタッフ及びキャストのそれまでの経歴からすると、時を越えた恋を描く『ある日どこかで』は唐突に感じられる。

 しかし、アクション映画やSF・ファンタジー映画でヒロインを務めてきてたジェーン・シーモアについて、ヤノット・シュワルツ監督はこう語っている。
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ジェーンは美しいが、その美しさを引き出したのはワシだ。(略)いままでジェーンをうまく使った監督は一人もいない。美人で静かな、という第一印象そのものの演技しか求めなかったからな。
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 たしかに『007/死ぬのは奴らだ』の占い師も『シンドバッド虎の目大冒険』のお姫様も、ジェーン・シーモアの役柄は清楚なだけでパッとしなかった。
 ところが『ある日どこかで』では心の強い素晴らしいヒロインになっている。
 女優の魅力・美しさを引き出すのは、監督の力量次第であることを痛感する。


 だが、ジェーン・シーモアも1人の役者以上の貢献を本作にもたらしている。

 本作は音楽が重要な要素を占めており、ラフマニノフの『パガニーニの主題による狂詩曲』やジョン・バリーの曲がなかったら、まったく印象が異なっていただろう。
 ところがIMDbによれば、本作は予算が限られており、007シリーズで有名なジョン・バリーのような大物作曲家には声をかけられなかったそうなのだ。
 しかし、ボンドガールでジョン・バリーの友人であるジェーン・シーモアが、ジョン・バリーの起用を監督に提案し、ジョン・バリーとも話をつけてくれたのだとか。

 ジョン・バリーの美しい旋律を聴くたびに、『ある日どこかで』を初めて観たときの感動が甦る。
 ジョン・バリーのいない『ある日どこかで』は考えられないが、彼の参画は危ういところだったのだ。


 偶然により人が集い、人と人との化学反応から、ときに思いもよらぬ傑作が生まれる。
 その稀有な例がここにある。


ある日どこかで 【ベスト・ライブラリー1500円:80年代特集】 [DVD]ある日どこかで』  [あ行]
監督/ヤノット・シュワルツ(Jeannot Szwarc: ジュノー・シュウォーク、ジャノウ・シュワーク) 原作・脚本/リチャード・マシスン
出演/クリストファー・リーヴ ジェーン・シーモア クリストファー・プラマー
日本公開/1981年1月3日
ジャンル/[ファンタジー] [ロマンス] [SF]
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