『ラストスタンド』 名ゼリフはこれだ!

 町の通りで対峙する悪漢たちと保安官。とうぜん保安官は多勢に無勢。
 それでも保安官は一歩も引かず、銃を構えて悪漢たちに立ち向かう。
 西部劇でお馴染みのこのシチュエーションを現代に再現する。その一点に注力した映画が、キム・ジウン監督の『ラストスタンド』だ。

 「使う筋肉と見せる筋肉は違う」と語ったのは高千穂遥氏だったろうか。
 まさしくアーノルド・シュワルツェネッガーは見せる筋肉の代表だった。『コナン・ザ・グレート』で披露した筋肉には、有無を云わさず圧倒する迫力があった。
 シュワルツェネッガーの映画で特に印象的なのが、ポール・バーホーベン監督の傑作『トータル・リコール』(1990年)のワンシーンだ。元々この映画はおとなしい会計士を主人公にしていたというから、『北北西に進路を取れ』のような知的なスリラーを目指していたのだろう。だが『北北西に進路を取れ』のケーリー・グラントとは180度印象の異なるシュワルツェネッガーが主演になると、出来上がったのは力づくのアクション映画だった。
 『トータル・リコール』で、敵に捕えられたシュワルツェネッガーが椅子に縛り付けられるシーンがある。この窮地からいったいどうやって逃れるのか。ケーリー・グラントのような主人公であったなら、知恵を絞り、敵との駆け引きからチャンスを見出だしたことだろう。ところがシュワルツェネッガーは、なんと拘束具を引きちぎり、すっくと立ち上がってしまうのだ。私の大好きなシーンである。
 この無茶苦茶な展開は、シュワルツェネッガーの筋肉あってのものだろう。見た目の筋肉に説得力があるから、観客もおかしいと思わない。

 『ラストスタンド』はシュワルツェネッガーが10年ぶりに主演に復帰した作品だが、観客の彼に対するイメージは昔のままだ。どんな無茶でも力で押しまくる、強い主人公が期待されたはずだ。
 けれども面白いことに、『ラストスタンド』の主人公はあまり強さを押し出さない。御年65歳のシュワルツェネッガーが演じるレイ・オーウェンズ保安官は、ロサンゼルスで悲惨な事件を経験し、引退同然で田舎町に引っ込んだ男である。
 そんな彼を、キム・ジウン監督はできる限り弱そうに演出する。映画の冒頭では、制服に身を包んだ立派な保安官ではなく、ラフな普段着で通りを歩く非番のオヤジとして登場させる。ファンの期待を損なわないように気をつけながらも、マッチョなスーパーヒーローに見えないように、くたびれた初老の保安官として描くのだ。

 シュワルツェネッガーも「ハリウッド復帰にあたって、僕は正しい企画と正しいチームを選択した」と語っている。
 超大作2本のオファーを蹴り、主演復帰作としてあえて田舎町の老保安官を選んだ理由として「レイは、弱い部分も持っている多面的なアクションヒーロー。こういう役は演じたことがなかったから、観客に興味を持ってもらえるんじゃないかと思った」と明かす。

 本作のシチュエーションは、たとえばハワード・ホークス監督の西部劇『リオ・ブラボー』あたりを彷彿とさせる。
 けれども『リオ・ブラボー』では、ジョン・ウェイン演じる無敵の保安官に加えて、いろいろハンデを抱えながらもやればできそうな仲間が集まった。
 他方『ラストスタンド』では、保安官が(シュワルツェネッガーにしては)くたびれてるだけでなく、彼をサポートする副保安官も弱そうなのばかり揃っている。実際、映画の前半は彼らの弱さを印象づけるシーンが続く。泥酔して投獄されたフランクなんて、『リオ・ブラボー』の酔っ払いの保安官補デュードよりもっとひどいということだろう。

 この弱者チームが、麻薬王とその手下たちを相手にするのだから、頼りないことこの上ない。
 でも、腰が引けてる副保安官に向かって、オーウェンズ保安官の告げるセリフがいかしてる。
 「バッジが泣くぞ。」
 これだ、これなのだ。西部劇や任侠映画に通じるこのセリフ、侠気が集約されたこの一言が、この作品の肝である。
 ここからは怒涛の展開だ。キム・ジウン監督は、ハリウッドのスタッフの協力を得て、現代版西部劇としても、アクション映画としても、存分に楽しませてくれる。

 今や西部劇そのものは滅多に作られなくなったけれど、この映画こそは西部劇の面白さを今に伝える最後の砦(ラストスタンド)なのである。


ラストスタンド Premium-Edition [数量限定生産・スチールケース仕様] [Blu-ray]ラストスタンド』  [ら行]
監督/キム・ジウン
出演/アーノルド・シュワルツェネッガー フォレスト・ウィッテカー ジョニー・ノックスヴィル ロドリゴ・サントロ ジェイミー・アレクサンダー ルイス・ガスマン ジェネシス・ロドリゲス エドゥアルド・ノリエガ クリスティアーナ・ルーカス ピーター・ストーメア ザック・ギルフォード
日本公開/2013年4月27日
ジャンル/[アクション]
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【theme : アクション映画
【genre : 映画

tag : キム・ジウン アーノルド・シュワルツェネッガー フォレスト・ウィッテカー ジョニー・ノックスヴィル ロドリゴ・サントロ ジェイミー・アレクサンダー ルイス・ガスマン ジェネシス・ロドリゲス エドゥアルド・ノリエガ クリスティアーナ・ルーカス

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