『HK 変態仮面』 なぜそれを被るのか?

 なぜヒーローは仮面を被るのか?

 『ダークナイト ライジング』では、バットマンがそのことに何度も言及した。仮面を被るのは、そうすることで素性を隠し、自分と自分が愛する者の身に危険が及ばないようにするためだ。
 たしかに、かつてのヒーローはそのために覆面をした。
 新撰組と戦う『鞍馬天狗』(1924年~)は身の安全を図るために素性を隠さねばならなかったし、『快傑ゾロ』(1919年)も普段はバカ者の振りをしなければならなかった。
 素性がバレてもヒーローを続けるには、『ロビン・フッド』のように森の奥深くに隠れ住まねばならなかった。

 だが、これは庶民のヒーローが反体制的な位置づけだったり、義賊だったりしたときのこと。
 治安維持、現状維持を目的とするヒーローは、必ずしも素性を隠す必要はない。
 それでも『まぼろし探偵』のように、親に心配かけまいと覆面をするヒーローもいたが、素性を隠す必要がないのに仮面をつけたヒーローの代表格といえば、何と云っても『仮面ライダー』(1971年~)だろう。
 本郷猛が仮面ライダーであることは、彼を改造したショッカーも、立花レーシングクラブの面々も先刻承知している。にもかかわらず彼が仮面を被るのは、それが改造人間としてのパワーを発揮できる形態だからだ。仮面を被るという行為が、視聴者の変身願望を満たすのである。
 『宇宙刑事ギャバン』(1982年)に至ってはコンバットスーツを着用しているだけで、着用前も後もギャバンはギャバンだ(一応、日本人を相手にするときは一条寺烈という偽名を用いていたが)。

 ところが、仮面ヒーローの系譜に新たな要素を付け加えたのが『HK 変態仮面』だ。
 主人公・色丞狂介(しきじょう きょうすけ)は、使用済みパンティを被ることで変態仮面に変身する。他ならぬパンティを被る動機は説明するまでもない。
 被りたいから被る!
 この単純明快な事実を直視するヒーローが、変態仮面なのだ。
 もっとも、本作はたくさんの言い訳を用意している。最初にパンティを被ったのはマスクと間違えたからだとか、パンティを被らないとパワーを発揮できないとか、あの手この手で正当化している。
 しかし、パンティを被ると興奮するという現実だけは、取り繕いようがない。

 思えば、ひと公演で十数万人を動員する人気劇団の新感線も、初期にはパンティを被っていた。
 東京公演第二弾の『宇宙防衛軍ヒデマロ3』では、いのうえひでのりさん演じるヒデマロが、事故現場でパンティをあさっているときに一人の少女を救出する。少女は、パンティを被るヒデマロを「紫のパンティの人」と呼んで慕い続ける。
 これがパンティでなくバラだったら、事故現場に落ちていたりはしないから、ヒデマロがあさりに来ることはなく、少女を救うこともなかったろう。まこと、パンティを被る男だからこそ、彼はヒーローたり得たのだ。

 色丞狂介も、それがパンティだから被りたい。被らねばならない。その気持ちは観客にも伝わってくる。
 だが、世間にはパンティを被ることを変態視する風潮がある。狂介とて、それは判っている。
 仮面を被りたい、だが被ってはいけない。
 仮面のヒーローは数々あれど、仮面を被ることそのものが葛藤の中心をなすヒーローがこれまでにいただろうか。
 マスクをパンティに置き換える、たったそれだけのことで、本作はヒーロー物の本質に切り込むことに成功したのだ。

 観客は『HK 変態仮面』を観終えたとき、ヒーローが仮面を被るのは身の安全を図るためでも、パワーアップするためでもなく、ただ被りたいから被るのだと理解するだろう。
 その欲求に共感するだろう。

 『ふたたび swing me again』の好青年役で映画初主演を飾りながら、一転して変態を演じきった鈴木亮平さんと、変態仮面を上回る変態ぶりを披露した安田顕さんに、惜しみない拍手を送りたい。


HK/変態仮面 アブノーマル・パック(仮)[DVD]HK 変態仮面』  [は行]
監督・脚本/福田雄一  脚本協力/小栗旬
出演/鈴木亮平 清水富美加 ムロツヨシ 安田顕 片瀬那奈 佐藤二朗 池田成志 塚本高史 大東駿介 岡田義徳
日本公開/2013年4月6日
ジャンル/[アクション] [コメディ] [ヒーロー]
ブログパーツ このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

【theme : 特撮・戦隊・ヒーロー
【genre : 映画

tag : 福田雄一 小栗旬 鈴木亮平 清水富美加 ムロツヨシ 安田顕 片瀬那奈 佐藤二朗 池田成志 塚本高史

最新の記事
記事への登場ランキング
クリックすると本ブログ内の関連記事に飛びます
カテゴリ: 「全記事一覧」以外はノイズが交じりますm(_ _)m
月別に表示
リンク
スポンサード リンク
キーワードで検索 (表示されない場合はもう一度試してください)
プロフィール

Author:ナドレック

よく読まれる記事
スポンサード リンク
コメントありがとう
トラックバックありがとう
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

これまでの訪問者数
携帯からアクセス (QRコード)
QRコード
RSSリンクの表示