『96時間』を売る方法

 近頃、リュック・ベッソンとは相性が悪いと感じていた。

 『最後の戦い』(1983)を観たころは、これからの活躍を期待してワクワクした。
 『レオン』(1994)は面白かった。
 『フィフス・エレメント』(1997)はビジュアルな面が気に入ったのでDVDを買った…。

 しかし近年は、『アーサーとミニモイの不思議な国』(2006)をあまり楽しめず、製作・脚本を務めた『トランスポーター3 アンリミテッド』(2008)にもイマイチ乗れなかった。
 もうリュック・ベッソン絡みの作品を観るのはやめようか、と迷いつつ映画館へ足を運んだのが、やはり製作・脚本を務める『96時間』である。

 93分間を一気に駆け抜けるアクションに、手に汗握った。
 豪華なセットや大げさな破壊シーンがなくても、充分に面白い映画が作れるという好例である。
 建設現場でのカーチェイスなんて、アンリ・ヴェルヌイユ監督の『華麗なる大泥棒』を髣髴とさせるチープさで、フレンチ・アクションらしさ満点。


 このフランス映画は、パリを訪れた米国人が誘拐され、その父親が米国から乗り込んでくるという筋書きである。
 したがって、次のような特徴がある。
 ・パリを犯罪の巣窟として描いている。
 ・観客の目線は、米国人の父と共にある。

 世界市場(特に米国市場)を意識しての設定だろうが、日本人の制作で「日本はヤクザや腐敗役人の跋扈する怖いところで中国人(韓国人でもいいが)のヒーローが大活躍」なんて映画を作れるかと考えると、フランス人のしたたかさに恐れ入る。

 米国人をはじめとする観客は我がこととして映画に感情移入するだろうし、たとえ事件現場としてであってもフランス、パリを印象付けられる。
 映画という商品を海外に売り込む一方、海外から観光客を自国に呼び込むツールにもなるわけで、リュック・ベッソンは自国を犯罪の巣窟として描きながらなかなかの愛国者かも知れない(しかも悪党はフランス人じゃなくてアルバニアからの移民だし)。


 日本はいまだに「日本人が海外の観光地で大活躍」という、日本国内の観客(の海外への憧れ)を重視した映画作りをしている段階であり、産業や観光ツールとしての成熟はこれからである。

 『G.I.ジョー』では、作中で描かれた東京のヘンテコぶりが話題になった。
 しかし、『エイリアン』シリーズの日系企業(ウェイランド湯谷)あたりをピークにアメリカ映画における日本の存在が希薄になりつつある中、忍者修行の場は日本であることを忘れずにいてくれたことを感謝すべきだろう。

 本年、ジャッキー・チェンがイー・トンシン監督と組んで日本を舞台に『新宿インシデント』を作ったが、このような試みが日本の資本でも展開されることを期待したい。


96時間 [Blu-ray]96時間』  [か行]
監督/ピエール・モレル 製作/リュック・ベッソン 脚本/リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメン
出演/リーアム・ニーソン マギー・グレイス ファムケ・ヤンセン
日本公開/2009年8月22日
ジャンル/[アクション] [サスペンス]
ブログパーツ このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

【theme : アクション映画
【genre : 映画

tag : リュック・ベッソン ピエール・モレル リーアム・ニーソン

最新の記事
記事への登場ランキング
クリックすると本ブログ内の関連記事に飛びます
カテゴリ: 「全記事一覧」以外はノイズが交じりますm(_ _)m
月別に表示
リンク
スポンサード リンク
キーワードで検索 (表示されない場合はもう一度試してください)
プロフィール

Author:ナドレック

よく読まれる記事
スポンサード リンク
コメントありがとう
トラックバックありがとう
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

これまでの訪問者数
携帯からアクセス (QRコード)
QRコード
RSSリンクの表示