『ハロー!?ゴースト』 今世紀ベストワンの呼び声

 今世紀に入ってから観た映画の中で、これこそがベストワン! との評判を耳にして、なかば騙されるつもりで映画館へ足を運んだ。

 私は常々、西洋の作品よりも東洋――少なくとも東アジアの作品の方が、日本人には馴染むと思っている。
 日本人は開国以来1世紀半にわたり西洋の文物を取り込むべく努めてきたが、政教分離が板についてない私たちには、政教分離を巡る葛藤に彩られた西洋の作品がピンと来ない。そもそも東洋人と西洋人(日本人と米国人ではない)では世界の捉え方が違うという。
 だから日本人は(無意識のうちに)苦労しながら西洋の作品に接してきたのだが、ふと東洋の作品を手にしてみたら、まったく苦労せずに馴染むことができた。そこで、日頃からアメリカニズムを咀嚼しようと背伸びしているビジネスパーソンではなく、素直に面白いものを受け入れられる中高年のオバサマたちが先駆けとなって、東アジアの作品になだれを打った。
 というのが、近年の韓流ブームではないかと睨んでいる。

 だから、韓国映画というだけでも日本人には馴染みやすいだろうと、少々期待しながら『ハロー!?ゴースト』の上映に臨んだ。
 ところが、なんだかこの映画、グダグダなのである。
 本作は脚本家としてキャリアを積んできたキム・ヨンタクの初監督作品だ。はじめてだから仕方がないのかもしれないが、キム・ギドク監督のように映画美の極致を感じさせてくれることもなければ、ポン・ジュノ監督のように才気にみなぎった作品でもない。カン・ジェギュ監督のようなダイナミズムもなければ、カン・ヒョンチョル監督のようなテンポの良さも感じられない。
 正直なところ、「え~、これがベストワン!?」といぶかしみながらの鑑賞だった。

 けれども映画を観終えたとき、私は心に決めていた。
 これは絶賛しなければならない。一人でも多くの人に観てもらわなければならない。私は口コミでこの映画を知ったのだから、次は私が評判を広める番だ。


 とはいえ、『ハロー!?ゴースト』を評判にするのは難しい。
 一般的には、作品の作り手は多くの人に見てもらうために、受け手を引っかけるフックをたくさん用意する。いろいろな要素を作品に散りばめて、観客がどこかに興味を持つように仕向けるのだ。
 けれども本作には、これといったフックがない。あまりにもシンプルで、紹介できる引っかかりがない。さりとてシンプル極まりない内容に触れると、どうあがいてもネタバレになってしまう。
 いくらネタバレをおそれない当ブログでも、本作ほど白紙で見るべき作品であれば、さすがに内容に触れるわけにはいかない。本作は、何も知らずに観に行くのが最良なのだ。

 ネタばらしにならずに紹介できることといえば、せいぜい劇中で、韓国の大人気アニメ『テコンV』を見られることくらいだろうか。
 脚本も手がけたキム・ヨンタク監督は、「大笑いしながら、今生きていることへの幸せを感じることができるコメディを作りたい!」との思いで取り組んだそうだが、それほど大笑いはしないだろう。
 本作はただひたすらに、いい映画なのだ。これ以上ないほどの良作である。


 いささか気になったのは、場内で見かけた二人連れ、三人連れの女性客だ。
 上映後に笑顔で会話する彼女たちを見て、タフだなぁと感心した。
 『ハロー!?ゴースト』を観たら、誰しも涙でグチョグチョになり、感極まって言葉も出ないと思うのだが、彼女たちは楽しそうに喋っていた。はたして彼女たちは何回目の鑑賞なのだろうか。
 ともかく、この映画を一緒に観る人がいて、鑑賞後に本作について語り合えるなんて素晴らしいことである。


ハロー!?ゴースト [DVD]ハロー!?ゴースト』  [は行]
監督・脚本/キム・ヨンタク
出演/チャ・テヒョン コ・チャンソク チャン・ヨンナム イ・ムンス チョン・ボグン カン・イェウォン
日本公開/2012年6月9日
ジャンル/[コメディ] [ロマンス] [ファンタジー]
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tag : キム・ヨンタク チャ・テヒョン コ・チャンソク チャン・ヨンナム イ・ムンス チョン・ボグン カン・イェウォン

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