『HACHI 約束の犬』の約束は?

 パーカー・ウィルソン教授を演じたリチャード・ギアは、「忠犬ハチ公」に違和感を覚えたという。

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 日本人にはなじみ深い忠犬の物語だが、ギアは「教授とハチの関係は、忠義心という尺度だけでは測りきれない関係」と語る。

 来日中、インタビューに答えるたびに違和感を感じたのも、ハチ公が「主人を待っている犬」と考えられていることだった。

 「私たちアメリカ人は、人間が犬の主人であるという意識がない。心から信じ合っている友人どうしという関係で、主人と従者という階級的なとらえかたを決してしないんだ」

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 2009年7月17日 読売新聞夕刊

 本作の原題は『Hachiko: A Dog's Story』。
 松竹としてはタイトルに"約束"の文字を入れることで、前年に興行収入15.2億円を稼いだ『犬と私の10の約束』にあやかりたかったのだろう(2008年に松竹が配給した映画では、『おくりびと』『母べえ』に次いで第3位だった)。

 しかしハチは約束などしていない。
 約束したからではなく、大好きな教授に会いたいというただそれだけで、毎日駅で待ち続けるのだ。
 その無償の愛に、観客は涙する。


 ギアは続けて語る。
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 シナリオを手にしたのは3年前。「読み返すたびに、涙が出た」と振り返る一方で、「俳優中心の映画でなく、あくまで犬中心の映画にしなければと思った」。だから「俳優としてかかわるだけでなく、プロデューサーの役目も果たすべき」と大役を買って出た。
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 『八月の狂詩曲』等で日本でもお馴染みのリチャード・ギアも、愛犬家同士であるラッセ・ハルストレム監督も、犬中心の映画のなんたるかが判っている。

 映画はしばしば犬の目線で進行する。
 観客が感情移入するのは、教授でも妻でもなく、犬のハチである。

 世の中には犬小屋をあてがわれ庭で飼われる犬がいる。
 家族みんなが家の中にいるのに、自分だけ家に入れてもらえない。その不安と寂しさを描いた映画が、これまでにあっただろうか。
 ハチの目線で見上げる窓の明かりが、教授ですら窺い知れないハチの心根を伝えて、観客は胸をしめつけられる。


 オフィシャルサイトによれば、『HACHI 約束の犬』を企画したプロデューサー、ヴィッキー・シゲクニ・ウォンの会社は、ハチドッグ・プロダクションズという名だそうだ。
 プロデューサーをはじめ、リチャード・ギア、ラッセ・ハルストレム監督ら、作り手みんなが犬を愛していることが伝わってくる。

 教授の死後、妻ケイト(ジョーン・アレン)は、孫にハチと教授との出会いを訊かれて答える。
 「ハチが、おじいちゃんを見つけたのよ。」

 そうだ。
 出会いに際して、我々はこちらをじっと見つめる仔犬に気がつく。
 我々は仔犬に気づいたつもりでいる。しかし、仔犬が我々を見つけたのである。


HACHI 約束の犬』  [は行]
監督/ラッセ・ハルストレム
出演/リチャード・ギア ジョーン・アレン ケイリー=ヒロユキ・タガワ エリック・アヴァリ
日本公開/2009年8月8日
ジャンル/[ドラマ] [犬]

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tag : ラッセ・ハルストレム リチャード・ギア

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