『ドラゴン・タトゥーの女』 スウェーデン版との違いはココだ!

 2009年制作の『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』との違いの数々に、ニヤリとする方もいるだろう。

 同じ原作に基づくので、デヴィッド・フィンチャー監督が2011年に放った『ドラゴン・タトゥーの女』とニールス・アルデン・オプレヴ監督によるスウェーデン版『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』には、ストーリーの違いはほとんどない。
 しかし、スウェーデン版に関する記事で述べたように、企業が数十年前の伝票を保管していることの違和感を米国人も感じたのだろう。米国版の映画では、保管されているのが伝票じゃなく新聞記事に変えられている。なるほど、新聞記事なら長期にわたって保管するのもしっくり来る。


 そして両作の最大の違いは、宗教への言及だ。
 米国版には、スウェーデン版では無視されていたミカエルの娘が登場し、敬虔なクリスチャンぶりを披露する。同時に、主人公ミカエルはキリスト教が好きではないことが示される。

 もちろん、聖書が事件の鍵となるからスウェーデン版でもキリスト教に触れないわけではない。
 しかし、それは謎ときの一環として触れるだけで、被害者がユダヤ人であることやナチスへの言及から、作品が主眼とするのはファシズム等の社会問題だと感じられた。特に女性蔑視やセクハラ、パワハラのような弱者に対する横暴を、社会全体の問題として取り上げる意図が伝わってきた。

 ところが、米国版では主人公とキリスト教との距離を描写することで、社会の背景に宗教が存在することを強調する。
 しばしば誤解されることがあるが、宗教はすべての人を普遍的に慈しむものではない。映画『アレクサンドリア』で、多神教、キリスト教、ユダヤ教を信仰する人々が互いに争う悲劇が描かれたように、信仰心と平和を愛する心には何の関係もない。

 人類は何万年も戦争を繰り返し、戦闘のための感情が遺伝的に備わっているという。とうぜんだろう。戦争に敗れた集団は滅びてしまうのだから、私たちはすべて戦争に勝ち抜いた者たちの子孫なのだ。
 そして同じ宗教を信仰することは、集団の結束を強め、他の集団との戦闘に打ち勝つための力となる。世界のどこでも、現存する人類は何らかの宗教を持っていることが、宗教を持つ集団の方が生き残れるという証明だろうか。
 本作が取り上げるように聖書に残酷な殺し方が書かれているのも、宗教が戦闘集団を統合するためのものだからかもしれない。集団の規律を守れない者、結束を乱す者は、戦争の際に邪魔になるから、これを排除(殺害)するのは大事な教えなのだろう。


 そして集団としての生き残り方は、スウェーデンと米国でも異なる。
 スウェーデンの戦略の中で特に有名なのはノーベル賞だ。スウェーデンは世界で最も権威ある賞の発信地として振る舞うことで、武力によらずとも国際社会に存在感を示している。
 対して欧州以上にキリスト教の影響が強い米国は、武力を誇示し、ときに武力を振るって存在感を示す。
 それを思えば、米国版の『ドラゴン・タトゥーの女』が、スウェーデン版以上に異民族殺害の背景に宗教を強調するのもむべなるかな。

 ミカエルの娘は深い信仰心を抱いた真面目な子だ。一方ミカエルは、大天使と同じ名を持ちながら宗教には懐疑的だ。
 二人の距離は縮まるのか。
 映画は安易に答えを示さない。


ドラゴン・タトゥーの女 (ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ主演) [DVD]ドラゴン・タトゥーの女』  [た行]
監督/デヴィッド・フィンチャー  原作/スティーグ・ラーソン
出演/ダニエル・クレイグ ルーニー・マーラ クリストファー・プラマー スティーヴン・バーコフ ステラン・スカルスガルド ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン ベンクトゥ・カールソン ロビン・ライト ゴラン・ヴィシュニック ジェラルディン・ジェームズ ジョエリー・リチャードソン
日本公開/2012年2月10日
ジャンル/[ミステリー] [サスペンス]
ブログパーツ このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

【theme : アメリカ映画
【genre : 映画

tag : デヴィッド・フィンチャー ダニエル・クレイグ ルーニー・マーラ クリストファー・プラマー スティーヴン・バーコフ ステラン・スカルスガルド ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン ベンクトゥ・カールソン ロビン・ライト ゴラン・ヴィシュニック

最新の記事
記事への登場ランキング
クリックすると本ブログ内の関連記事に飛びます
カテゴリ: 「全記事一覧」以外はノイズが交じりますm(_ _)m
月別に表示
リンク
スポンサード リンク
キーワードで検索 (表示されない場合はもう一度試してください)
プロフィール

Author:ナドレック

よく読まれる記事
スポンサード リンク
コメントありがとう
トラックバックありがとう
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

これまでの訪問者数
携帯からアクセス (QRコード)
QRコード
RSSリンクの表示