『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』 実は40周年記念作!
『宇宙刑事ギャバン』が『特捜戦隊デカレンジャー』と世界観の整合を図っていたとは知らなかった。
ギャバンは銀河連邦警察の刑事だったはずなのに、『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』では一貫して宇宙警察の刑事と呼ばれ、デカレンジャーが所属する宇宙警察と同一組織であることが示唆される。
こうしてメタルヒーローシリーズとスーパー戦隊シリーズをクロスオーバーするための地ならしをした上で、ギャバンとゴーカイジャーの活躍を見せてくれるのが本作である。
それはハッとするような場面ではじまる。
帆船型宇宙船ゴーカイガレオンと超次元高速機ドルギランが、NEC本社ビルを挟んで繰り広げる空中戦の大迫力!
ギャバンの愛機ドルギランが30年ぶりに登場するだけでも感激なのに、いきなり激しい戦闘が交わされるのだから、掴みはOKである。
そもそも2012年にギャバンが復活するのは必然だ。
『宇宙刑事ギャバン』の放映開始は1982年、今からちょうど30年前である。「30年復活の法則」に基づけば、2012年はギャバンの年なのだ。
「30年復活の法則」とは私が勝手に名付けたものだが、名前なんか関係なく業界関係者はよくご存知のことだろう。これまでも多くの作品が30年目に復活してきた。その理由は以前の記事に譲るとして、ウルトラシリーズや仮面ライダーシリーズばかりでなく、遂に『宇宙刑事ギャバン』にはじまるメタルヒーローシリーズの復活するときがやってきたのは喜ばしい。
そして本作は『海賊戦隊ゴーカイジャー』の映画版であることから、ギャバンとゴーカイジャーの共通の敵として宇宙帝国ザンギャックが登場する。
けれどもそこに『宇宙刑事ギャバン』の敵・宇宙犯罪組織マクーの末裔を絡ませることで、敵味方とも両作品の要素を引き継いだものになっている。
特に嬉しいのは、戦闘の場がマクー空間であることだ。
マクー空間――それこそ『宇宙刑事ギャバン』の特徴であり、それまでの作品と一線を画す要因だった。番組を作る際に爆発シーン等をオフィス街や市街地で撮るわけにはいかないから、テレビを見ていると突然撮影場所が変わってしまうことがある。ギャバン以前の作品はそのことに何の説明もしていなかったが、あれは異空間への転移なのだと説明してみせたのが『宇宙刑事ギャバン』の画期的なところであった。
この着想は、『宇宙刑事ギャバン』が1982年の作品だから生まれたものだろう。
その前年、映画『フラッシュ・ゴードン』が公開され、色鮮やかな別世界が観客に強い印象を与えた。『フラッシュ・ゴードン』は、主人公たちが地球を後にし、極彩色の雲が渦巻く異世界に飛び込む冒険活劇だ。その空は普通ではあり得ないような色の雲で覆われ、不思議な形の星々が浮かんでいる。
そんな世界を楽しんだ観客は、一年後にはじまった『宇宙刑事ギャバン』に狂喜した。『フラッシュ・ゴードン』の異世界を模した景色が、マクー空間として広がっていたからだ。こんな世界を毎週見られるとは、なんと楽しいことだろう。
こうして『宇宙刑事ギャバン』はさまざまなSF映画のいいとこ取りをしながら、独自の世界を構築した。
『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』では、単に戦闘シーンのみならず、マクー空間が物語の主要な舞台となる。こんな展開はオリジナルの『宇宙刑事ギャバン』でもなかった。
本作の作り手は、マクー空間こそが『宇宙刑事ギャバン』の肝であることをよく理解し、その設定を存分に活かしているのだ。
また本作は、64分の上映時間の中に怒涛の如くアクションがつまっている。テンポ良く進む物語と、ダイナミックな戦いは、片時も飽きさせない。
その面白さはスタッフとキャスト一同の力によるものだが、なんといってもギャバン役の大葉健二さんの存在が大きいだろう。ウルトラシリーズにしろ仮面ライダーシリーズにしろ懐かしいヒーローがたびたび登場するものの、アクションはあくまで変身後にやるものだ。ところが大葉健二さんは、本作でみずから敵兵士を殴る、蹴る、そして頭上からジャンプする。当年とって56歳の大葉さんにここまでやられたら、他のスタッフ・キャストの意気も揚がろう。
大葉健二さんにとって2012年は、『宇宙刑事ギャバン』から30周年であるとともに、『人造人間キカイダー』(1972年)で華麗なスタントを披露してから40年という記念すべき年である。
それもあってか、本作は大葉健二さんの魅力を最大限に引き出してくれている。
なにしろ大葉健二さんが、一条寺烈ことギャバンだけにとどまらず、バトルケニアこと曙四郎、デンジブルーこと青梅大五郎と一人三役をこなしており、ファンにとっては夢の共演になっているのだ。
もちろん本作はアクションだけが売りではない。
ギャバンとキャプテン・マーベラスとの邂逅は、『宇宙刑事ギャバン』における父ボイサーとの再会を彷彿とさせて涙を誘う。
かつて父を捜した若者が、今は若者を教え導く男になっていることに、観客は30年の重みを感じるだろう。
『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』 [か行]
監督/中澤祥次郎
出演/大葉健二 佐野史郎 濱田龍臣 小澤亮太 山田裕貴 市道真央 清水一希 小池唯 池田純矢
日本公開/2011年1月21日
ジャンル/[スーパーヒーロー] [アクション]
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こうしてメタルヒーローシリーズとスーパー戦隊シリーズをクロスオーバーするための地ならしをした上で、ギャバンとゴーカイジャーの活躍を見せてくれるのが本作である。
それはハッとするような場面ではじまる。
帆船型宇宙船ゴーカイガレオンと超次元高速機ドルギランが、NEC本社ビルを挟んで繰り広げる空中戦の大迫力!
ギャバンの愛機ドルギランが30年ぶりに登場するだけでも感激なのに、いきなり激しい戦闘が交わされるのだから、掴みはOKである。
そもそも2012年にギャバンが復活するのは必然だ。
『宇宙刑事ギャバン』の放映開始は1982年、今からちょうど30年前である。「30年復活の法則」に基づけば、2012年はギャバンの年なのだ。
「30年復活の法則」とは私が勝手に名付けたものだが、名前なんか関係なく業界関係者はよくご存知のことだろう。これまでも多くの作品が30年目に復活してきた。その理由は以前の記事に譲るとして、ウルトラシリーズや仮面ライダーシリーズばかりでなく、遂に『宇宙刑事ギャバン』にはじまるメタルヒーローシリーズの復活するときがやってきたのは喜ばしい。
そして本作は『海賊戦隊ゴーカイジャー』の映画版であることから、ギャバンとゴーカイジャーの共通の敵として宇宙帝国ザンギャックが登場する。
けれどもそこに『宇宙刑事ギャバン』の敵・宇宙犯罪組織マクーの末裔を絡ませることで、敵味方とも両作品の要素を引き継いだものになっている。
特に嬉しいのは、戦闘の場がマクー空間であることだ。
マクー空間――それこそ『宇宙刑事ギャバン』の特徴であり、それまでの作品と一線を画す要因だった。番組を作る際に爆発シーン等をオフィス街や市街地で撮るわけにはいかないから、テレビを見ていると突然撮影場所が変わってしまうことがある。ギャバン以前の作品はそのことに何の説明もしていなかったが、あれは異空間への転移なのだと説明してみせたのが『宇宙刑事ギャバン』の画期的なところであった。
この着想は、『宇宙刑事ギャバン』が1982年の作品だから生まれたものだろう。
その前年、映画『フラッシュ・ゴードン』が公開され、色鮮やかな別世界が観客に強い印象を与えた。『フラッシュ・ゴードン』は、主人公たちが地球を後にし、極彩色の雲が渦巻く異世界に飛び込む冒険活劇だ。その空は普通ではあり得ないような色の雲で覆われ、不思議な形の星々が浮かんでいる。
そんな世界を楽しんだ観客は、一年後にはじまった『宇宙刑事ギャバン』に狂喜した。『フラッシュ・ゴードン』の異世界を模した景色が、マクー空間として広がっていたからだ。こんな世界を毎週見られるとは、なんと楽しいことだろう。
こうして『宇宙刑事ギャバン』はさまざまなSF映画のいいとこ取りをしながら、独自の世界を構築した。
『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』では、単に戦闘シーンのみならず、マクー空間が物語の主要な舞台となる。こんな展開はオリジナルの『宇宙刑事ギャバン』でもなかった。
本作の作り手は、マクー空間こそが『宇宙刑事ギャバン』の肝であることをよく理解し、その設定を存分に活かしているのだ。
また本作は、64分の上映時間の中に怒涛の如くアクションがつまっている。テンポ良く進む物語と、ダイナミックな戦いは、片時も飽きさせない。
その面白さはスタッフとキャスト一同の力によるものだが、なんといってもギャバン役の大葉健二さんの存在が大きいだろう。ウルトラシリーズにしろ仮面ライダーシリーズにしろ懐かしいヒーローがたびたび登場するものの、アクションはあくまで変身後にやるものだ。ところが大葉健二さんは、本作でみずから敵兵士を殴る、蹴る、そして頭上からジャンプする。当年とって56歳の大葉さんにここまでやられたら、他のスタッフ・キャストの意気も揚がろう。
大葉健二さんにとって2012年は、『宇宙刑事ギャバン』から30周年であるとともに、『人造人間キカイダー』(1972年)で華麗なスタントを披露してから40年という記念すべき年である。
それもあってか、本作は大葉健二さんの魅力を最大限に引き出してくれている。
なにしろ大葉健二さんが、一条寺烈ことギャバンだけにとどまらず、バトルケニアこと曙四郎、デンジブルーこと青梅大五郎と一人三役をこなしており、ファンにとっては夢の共演になっているのだ。
もちろん本作はアクションだけが売りではない。
ギャバンとキャプテン・マーベラスとの邂逅は、『宇宙刑事ギャバン』における父ボイサーとの再会を彷彿とさせて涙を誘う。
かつて父を捜した若者が、今は若者を教え導く男になっていることに、観客は30年の重みを感じるだろう。

監督/中澤祥次郎
出演/大葉健二 佐野史郎 濱田龍臣 小澤亮太 山田裕貴 市道真央 清水一希 小池唯 池田純矢
日本公開/2011年1月21日
ジャンル/[スーパーヒーロー] [アクション]


【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画】
【genre : 映画】