『東京公園』『インモータルズ -神々の戦い-』『friends もののけ島のナキ』『50/50 フィフテ ィ・フィフティ』 ベスト・オブ・ベスト アワード2011

 ムービープラスとユナイテッド・シネマとau one 映画 が共同で実施しているベスト・オブ・ベスト アワード2011
 その4部門に投票したので、内容を紹介する。

 投票に当たっては、例によって当ブログで未紹介の作品であることを心掛けた。
 すなわち、ぜひ取り上げたい作品であったにもかかわらず、ブログ記事をまとめるには至らなかったことを、ここに懺悔する次第である。
 また、対象は2011年に日本で公開された作品に限られることから、私が観たのは2011年ながら、2010年に封切られていた作品(『堀川中立売』等)は対象外となる。


ベスト・ムービー(作品)

東京公園 [DVD] 東京公園

 光の織り成す陰影が美しい映画であった。
 『東京公園』の題材は、タイトルが示すように「公園」である。映画にするのに、およそこんなに難しい題材はないだろう。
 公園のシーンなんて、普通に考えたら間抜けである。それは公園というものが、平和や安らぎや暇つぶしを示唆するからだ。午後の緩やかな陽射しの中、芝生が広がる公園で男二人が激論する情景なんて、間抜けなものにしかならないだろう。世の中には激論するに相応しい場所がいくらでもあるはずだ。
 ところが本作は、その間抜けなシーンを撮ることに挑んでいる。これを間抜けに見せないのだから、青山真治監督恐るべし。

 そして映画は、午後の陽射しや夜の街灯、室内の照明等、フレーム内に光源を配することで明暗を印象付け、コントロールされた色調と相まって、目に楽しい2時間を紡ぎだす。

 映画のフレームに収まるものを徹底的にコントロールした監督といえば、小津安二郎が筆頭に挙げられよう。本作も、まるで小津安二郎風のショットが愉快である。
 二人の人物が並んで座り、同じタイミングでグラスを傾けるところ、はたまた二人の会話を正面での切り返しで構成するところ等、小津映画でお馴染みのものであり、懐かしさと楽しさで愉快になった。

 あえて本作の欠点を挙げれば、主人公がカッコ良すぎる上に、なぜか周囲が美女ばかりなので、リアリティが損なわれてるように思われる。しかし、それとて小津安二郎監督が美男美女を配したがることを髣髴とさせる。


 原作者の小路幸也氏によれば、『東京公園』はキャロル・リード監督の『フォロー・ミー』にオマージュを捧げたものだとか。
 しかし、ほとんど三人の登場人物だけで進行する『フォロー・ミー』に比べて、本作はカメラマン志望の主人公と、彼を取り巻く人々との関係がドラマを成す。複数のドラマに共通するのは観察者としての主人公のみであり、登場人物の多くは互いに面識すらもない。
 それはあたかも、公園を散策する人々と、それを目にする私たちのようである。

東京公園』 [た行]
監督・脚本・音楽/青山真治  脚本/内田雅章、合田典彦
音楽/山田勲生
出演/三浦春馬 榮倉奈々 小西真奈美 井川遥 高橋洋 染谷将太 長野里美 小林隆 宇梶剛士
日本公開/2011年6月18日
ジャンル/[青春] [ドラマ] [ロマンス]


ベスト・ディレクター(監督)

インモータルズ -神々の戦い-(ターセム・シン、ミッキー・ローク出演) [DVD] ターセム・シン・ダンドワール (『インモータルズ -神々の戦い-』)

 映画にどんな魅力を感じるかは人それぞれだろう。
 岡田斗司夫氏は映画を構成する三要素として「映像」「物語」「テーマ」を挙げているという。これら三拍子がそろうことを重視するなら、『インモータルズ -神々の戦い-』は失格だ。

 しかし私は、映画では映像が最重要だと考えている。
 もちろん物語やテーマが充実するにこしたことはないが、それらについては文学等の他の媒体が充実しており、誕生から1世紀ちょっとの映画は今のところ後塵を拝している。もしも現代にフリードリヒ・ニーチェやロマン・ロランが存命だったとして、『ツァラトゥストラかく語りき』も『ジャン・クリストフ』もやはり文章で表現したことだろう。
 とはいえ、五感のうちで人間が大きく依存しているのは視覚である。
 その視覚に訴える映像を主な要素とするのは映画の強みだ。しかも絵画や写真と違って動きを見せられるし、さらに音響を付けて聴覚も刺激できる。これこそ映画の最大の優位点であり、映画の作り手が活かすべきものだろう。[*]

 その意味で、本作は映画ならではの魅力に満ちている。
 遠近感を強調した構図、迫力あるアクション、カッコ良さを最大限に考慮した絵作りに、観る者は心躍らされる。
 映像にここまでこだわってくれれば、他に何がいるだろうか。

 昨年もカメラワークの見事さから『サヨナライツカ』のイ・ジェハンをベスト・ディレクターに推したが、本年も同じ理由からターセム・シン・ダンドワール監督をベスト・ディレクターに挙げたい。


 ところで、本作をはじめとして古代ギリシャ及びギリシャ神話に材をとった作品が近年目に付く。
 これは、長いあいだ分裂状態だった西洋世界が欧州連合(EU)という形でローマ帝国の版図を復元しようとする時代に、西洋文明の原点を強調し、アイデンティティーを強化する動きにも見える。
 ユーラシア大陸の東端にいる私たちには単なる娯楽作品だが、当の西洋人には一段深い「テーマ」があるのではないだろうか。

[*] 視覚と聴覚を刺激することには、少なからぬ危険も伴う。この点については別の機会に論じよう。

インモータルズ -神々の戦い-』 [あ行]
監督/ターセム・シン・ダンドワール
出演/ヘンリー・カヴィル ミッキー・ローク ジョン・ハート スティーヴン・ドーフ フリーダ・ピント イザベル・ルーカス ルーク・エヴァンス ケラン・ラッツ
日本公開/2011年11月11日
ジャンル/[アクション] [アドベンチャー] [ファンタジー]


ベスト・アクター(男優)

フレンズ もののけ島のナキ 豪華版【Blu-ray】 山寺宏一 (『friends もののけ島のナキ』)

 この部門はもう本当に激戦で、誰にしようか迷いに迷った。
 候補が多いということは、それだけブログに取り上げなかった作品がたくさんあるということだ。最後まで迷ったのは、松田龍平さん(『まほろ駅前多田便利軒』『探偵はBARにいる』)と染谷将太さん(『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』『アントキノイノチ』)なのだが、大晦日の晩に『friends もののけ島のナキ』を観てしまったために、大ベテランの山寺宏一さんを推すことにした。

 山寺宏一さんがベストのアクターだってことはいまさら私が述べるまでもないだろうが、この作品は山寺宏一さんの演じるグンジョーが肝であり、それゆえ作品への貢献も大きい。
 他の出演者の演技に対して、時に鋭く切り返し、時に軽妙に受け流す「脇役」としての彼がいたから、最後まで楽しめたといっても過言ではない。

 本音を云えば、この素晴らしい作品をネタばらしせずに語ることは不可能と思われ、でもなんとか語りたいので山寺宏一さんに登場願った次第だ。

 あえて作品に触れてしまうと、予告編を観て誰もが感じる「『モンスターズ・インク』もどきじゃないか」という点が、とんだフェイクなのだ。もどきだと思われることも計算づくの見事な構成だ。一本取られた。

friends もののけ島のナキ』 [は行]
監督・脚本/山崎貴  監督/八木竜一
出演/香取慎吾 山寺宏一 阿部サダヲ YOU 加藤清史郎 FROGMAN 新堂結菜
日本公開/2011年12月17日
ジャンル/[ファミリー] [ファンタジー]


ベスト・アクトレス(女優)

50/50 フィフティ・フィフティ [Blu-ray] アナ・ケンドリック (『50/50 フィフティ・フィフティ』)

 泣かせるのだ、セス・ローゲンが。
 番組制作の友人がガンだと知って、打ちひしがれるどころか「ガン体験を映画にして楽しんじゃおうぜ」なんて脚本執筆をそそのかすバカ友っぷり。挙句に友人同士で制作を引き受けて、映画にみずから出演もしてしまう。それがよりによってガンの友人を楽しませるバカ友の役だ。
 公式サイトで『50/50 フィフティ・フィフティ』制作の舞台裏を読むと、それだけでもう泣けてくる。

 映画の中のセス・ローゲンも、友人の前でバカばっかりやっているが、その実とても悩みながらガンの友人に接しているのが泣かせる。
 そうなのだ。たとえ不幸な人がいても、悲しみを分かち合ったり、一緒になってうなだれていてはダメなのだ。不幸な人の分までも明るく振る舞い、不幸を吹き飛ばすくらいでないとバランスが取れないのだ。

 ならばセス・ローゲンをベスト・アクターに選べば良さそうなものだが、ここはセラピストのキャサリンを演じたアナ・ケンドリック嬢の可愛らしさに1票を投じよう。

 役者としては、ブライス・ダラス・ハワードが演じた恋人レイチェル役の方がおいしいと思うのだ。レイチェルの、主人公を気づかっているような気づかっていないような態度、愛しているような愛してないような心情は、素直で判りやすいキャサリン役よりも演じ甲斐があるはずだ。

 それは『ガラスの仮面』の劇中劇「ふたりの王女」のようなものだ。温かな光の王女よりも、屈折した闇の王女の方が高評価を得られるのだ。
 にもかかわらずアナ・ケンドリックはキャサリン役を実に素直に演じ、可愛らしさを振りまいた。いくらコメディとはいえ、難病物の本作が、明るくお茶目な作品に昇華できたのは彼女のおかげであろう。

 ベスト・アクトレスには、『東京公園』で魅了された榮倉奈々さんも挙げたかったが、『東京公園』はベスト・ムービーにしたので、ここはアナ・ケンドリックを推すことにした。

50/50 フィフティ・フィフティ』 [は行]
監督/ジョナサン・レヴィン  脚本・制作総指揮/ウィル・ライザー
制作/エヴァン・ゴールドバーグ、セス・ローゲン、ベン・カーリン
出演/ジョセフ・ゴードン=レヴィット セス・ローゲン アナ・ケンドリック ブライス・ダラス・ハワード アンジェリカ・ヒューストン マット・フルーワー フィリップ・ベイカー・ホール サージ・ホード
日本公開/2011年12月1日
ジャンル/[ドラマ] [青春] [コメディ]

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【theme : 2011年映画感想
【genre : 映画

tag : 青山真治 ターセム・シン・ダンドワール 山崎貴 ジョナサン・レヴィン 山寺宏一 アナ・ケンドリック 三浦春馬 ヘンリー・カヴィル 香取慎吾 ジョセフ・ゴードン=レヴィット

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