『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』 万人に薦めたい

Mission: Impossible - Fallout (Music from the Motion Picture) その面白さに満足した上、万人に自信をもって薦められる映画は滅多にない。
 だから、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』のような作品に出会うとたいへん嬉しい。

 147分の長丁場にもかかわらず、本作は観客の目を釘付けにして離さない。
 作り手たちは、主人公イーサン・ハントを次から次へと危機的状況へ突き落す。任務遂行中の思わぬ事故や、敵味方の計算外の行動、恐るべき奸計と巧妙な罠。まったくもって脱出は不可能(impossible)と思われるこれらの状況を、イーサン・ハントと彼の仲間たちがいかにして突破するかが本作の見どころだ。

 派手なアクションが売り物の本シリーズだが、他のアクション映画と一線を画すのは、アクション以上に緻密な計略やどんでん返しの連続が知的興奮をもたらすからに他ならない。あるときは原作のテレビシリーズ『スパイ大作戦』(1966年~)のような知略機略で難局を打開し、またあるときは息もつかせぬ壮絶なアクションで観客を圧倒する。そのサスペンスとアクションのさじ加減が堪らない。

 その上、前作『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』で古典的なパターンを踏襲したクリストファー・マッカリー監督は、本作で再び監督・脚本に就任すると、またも温故知新というべき古典的なネタを披露してくれた。
 厳重に警護された護送車の襲撃とか(1971年の『ルパン三世』第1テレビシリーズの第6話「雨の午後はヤバイゼ」等を思い出す)、仕掛けられた爆弾の配線を切って爆発を食い止めるとか(1974年の『ジャガーノート』以来の伝統)、懐かしいネタが続出だ。
 フランスのせせこましい道を疾走するカーチェイスは、アンリ・ヴェルヌイユ監督のフレンチ・アクション『華麗なる大泥棒』(1971年)あたりを思わせる。そういえば、『華麗なる大泥棒』をはじめ数多くのアクション映画に主演したジャン=ポール・ベルモンドも、トム・クルーズと同じくスタントマンに頼らず、アクションをみずからこなすのを売りにしていた。


 今回残念だったのは、ジェレミー・レナー演じるウィリアム・ブラントが登場しないことだ。アベンジャーズシリーズスケジュールと競合して出演できなかったのだが、実はジェレミー・レナーの登場シーンは三日もあれば撮影できたかもしれなかった。クリストファー・マッカリー監督は、映画冒頭のプルトニウム引き渡しのシーンで、ブラントを死なせるつもりだったのだ。仲間の一人を死なせれば、怒りに燃えるイーサン・ハントの復讐劇として映画を盛り上げ易いと考えたのかもしれない。
 だが、ジェレミー・レナーが「三日分のギャラをもらってブッ飛ばされに行くなんてご免だ」と断ったために、この案は没になった。ありがとうジェレミー・レナー。

 もともと『スパイ大作戦』は、固定のメンバーで回すドラマではなく、そのときどきのミッションに応じた最適なエキスパートが集まって作戦を遂行する作品だったから、ブラントが一回くらい休んでもおかしくはない。イーサン・ハントの元ネタであろう、マーティン・ランドーが演じた変装の名人ローラン・ハンドも、はじめの頃はレギュラーメンバーではなかった(そもそも『スパイ大作戦』のメンバーは政府機関の所属ではなく、本業を別に持つ民間人で、ミッションのために都度招かれた人々だった)。

映画 ミッション インポッシブル フォールアウト 映画 ポスター 42x30cm ヴァネッサ・カービー [並行輸入品] ブラントの代わりといっては何だが、本作には興味深い人物が加わっている。劇場版第一作『ミッション:インポッシブル』に登場した武器商人マックスの娘、ホワイト・ウィドウだ。
 ヴァネッサ・レッドグレーヴが演じたマックスは、第一作でイーサン・ハントにCIAの極秘情報を盗ませようとした張本人である。本作でもイーサン・ハントは、ヴァネッサ・カービー演じるホワイト・ウィドウのせいで無茶な作戦を実行する破目になる。劇中でホワイト・ウィドウとマックスの間柄を匂わせるのは、ホワイト・ウィドウが口にした亡き母に関するスピーチくらいだが、こんな風にシリーズを通して人間関係が広がっていくのは面白い。

 


 さて、物語が進行するにつれて、どんどん限界を超えた解決不能な状況に陥ってしまいながら、それでも任務を遂行しようとする主人公の奮闘は、まさにミッション:インポッシブル(不可能作戦)の名に相応しい。
 だが、何をもって「不可能な状況」と見るかは、主人公の特性に大きく左右されるだろう。主人公の知力・体力・技能等に応じて、可能か不可能かの境目は変わるはずだ。

 たとえば、『トータル・リコール』(1990年)における囚われの主人公が脱出するシークエンスは、とても印象的だった。
 アーノルド・シュワルツェネッガー演じる主人公は、椅子に手足を固定され、完全に体の自由を奪われていた。状況を打開しようにも、主人公には秘密兵器もなければ特殊能力もない。この場に駆け付けてくれる仲間もいない。まさに絶体絶命の大ピンチ、脱出は不可能と思われた。
 ところが、シュワルツェネッガーは「ウガーッ!」と力むと、なんと手足の拘束具をブチブチと引きちぎって、立ち上がってしまうのだ。頭脳プレーもなければ、テクニックもなんにもない。ただ力任せにちぎるだけ。
 筋骨隆々のシュワルツェネッガーならではの、彼にしかできない脱出方法だった。それだけシュワルツェネッガーの筋肉には、観客の反論を許さない説得力があったのだ。現在これができるのは、ドウェイン・ジョンソンくらいだろう。
 かように、何が可能で何が不可能かは、主人公(と演じる俳優)の特性によって変わってくる。

 では、トム・クルーズ演じるイーサン・ハントにとっての不可能な状況とは、いったい何か。
 25,000フィート(7,620メートル)もの高さの飛行機から飛び降りる高高度降下低高度開傘か(トム・クルーズはこのスタントを一年かけて練習した)、ビルからビルへ飛び移りながらの追跡か(このときトムはビルにぶち当たって足首を骨折し、七週間撮影に戻れなかった)、ヘリコプターを強奪しての襲撃か(ヘリコプターを操縦するため、トムは2,000時間の飛行訓練を行った)。
 いずれも、とてつもなく危険で遂行不能としか思えないことばかりだが、あえて云うなら、イーサン・ハントでなくてもアクション映画の主人公なら直面したかもしれない状況だ。


【映画パンフレット】ミッション:インポッシブル/フォールアウト Mission: Impossible - Fallout 本作のイーサンをもっとも苦しめ、彼を特徴づける過酷な状況。それは倫理感、道徳感とのせめぎ合いであろう。
 激しい銃撃戦や肉弾戦を繰り広げる本作では、敵味方ともに死傷者が出る。その中で、イーサンが暴力の矛先を誰に向けて誰に向けないのか。その悩ましい選択が彼を苦しめる。
 容疑者を拷問すればたやすく真相に近づけそうなとき、主人公がアッサリ拷問する映画もある。手っ取り早い方法だが、それだと観客は安易な暴力シーンを見せられるだけだ。拷問せずに真相を得ようとすれば、途端に難度が高くなる。だが、そこに挑むのが「ミッション:インポッシブル」シリーズだ。

 映画によっては、本当に相手を殺して良いかどうか深く考えずに、とっとと殺してしまう作品もある。『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(2013年)では、ニューヨーク市警察の刑事がロシアに行って敵対する相手を殺しまくった。ニューヨーク市警察の刑事だろうが何だろうが、ロシアでは一旅行者でしかないのだから、ロシア当局に捕まってしかるべきだが、彼は自首もせずに帰国してしまう。
 『エクスペンダブルズ』(2010年)では、米国の傭兵たちが他国に行って現地の兵士を殺しまくった。たとえ兵士たちに命令している黒幕が腹黒いヤツだとしても、個々の兵士は職務に忠実に働いているだけなのに、傭兵たちはお構いなしに外国兵を殺していた。

 ハリウッド映画は、規範意識や因果応報といった点についてよく考えて作られていると思う。殺される人間はあらかじめ何かしら悪いところが描かれていたり、善いことをした人間はなにがしかの救いを得たりするように作られている。けれども、ここに挙げたように逸脱した作品も少なくない。こういう作品の場合、観客は、派手なアクションを見せるためには仕方ないのだろうと割り切って付き合うことになる。それはつまり、割り切れる人間だけで楽しむ作品になってしまうということだ。

 殺すか殺されるかの大事件を扱っているから、本作のイーサンとて何人もの悪人を殺さねばならない。
 それでも、死闘を演じる前に「殺すしかないのか、本当に他の手段はないのか」を考えていると思しき「間」が入るのが本作の特徴だ。たとえば敵のヘリコプターに乗り込んだイーサンは、機内の敵を見つめて一瞬動きが止まる。他のアクション映画だったら、アクションの流れを止めてしまうこのような「間」は極力省くものだ。
 本作のイーサン・ハントは、悪人でない限り誰も傷つけない。暴力を避け、犠牲を最小限にするための知恵を惜しまない。
 そういう人間だから、他者が犠牲になるのを避けようとするあまり、ときに自分の首を絞めてしまうことになるのだが、観客は彼がこの難局をどう切り抜けるのかいよいよもって興味をそそられる。倫理的に正しいことをしようとする努力が、作品の面白さを増している。
 倫理的、道徳的に高いレベルで納得できて、しかもその切り抜け方が面白い。だから、本作は万人に薦められるのだ。


映画 ミッション インポッシブル フォールアウト 映画 ポスター 42x30cm トム クルーズ [並行輸入品] ただし、そんなイーサンの姿勢が夢物語であろうことは、映画の作り手たちも知っている。

 不可能と思えることを遂行しようとするイーサンに、CIA特殊活動部隊のウォーカーは「無謀すぎる!(Hope is not a strategy!)」と云って反対する。
 「Hope is not a strategy.(希望は戦略ではない。)」という言葉は、アメリカンフットボールのコーチ、ヴィンス・ロンバルディが云ったとされる他、米上院軍事委員会でヒラリー・クリントン上院議員が口にしたり、ビジネス書の題名にも使われたりするなど、スポーツや軍事やビジネス等の幅広い分野において、ちゃんとした戦略を練らずに行動する人を戒める言葉として知られている。
 この言葉を投げかけられるイーサンは、米国社会では思慮不足で愚かしいと見なされることだろう。

 だが、思慮深いはずの人々が現実に行うことが、善いこととは限らない。
 米上院情報特別委員会は、CIAがおぞましい拷問を行っていたことを明らかにした(CIAは「拷問」ではなく「強化尋問技術(enhanced interrogation techniques)」と呼ぶそうだが)。同委員会の調査によれば、いくら拷問しても効果的な結果は何も生んでいなかったにもかかわらずだ。
 米軍や米民間軍事会社は、戦闘員と非戦闘員との区別すらうやむやなまま、イラクやパキスタン等の人々を「テロリスト」又は「テロリストの仲間」として殺してきた。シリアでは「誤爆」を繰り返し、多くの犠牲者を出してきた。
 そして米国では、市民を守るべき警察官によって多くの人が殺されている罪もないのに射殺され、怪我を負わされている。
 思慮深く、戦略的であるべき人の行動がこれだ。この始末だ。

 何とか暴力は避けよう、犠牲を最小限にするために知恵を絞ろう、一人でも多くの人を助けよう。そのために最後の最後までベストを尽くす。イーサン・ハントが示すのは、そういう姿勢だ。
 彼は現代アメリカの、いや全世界の人々にとっての、行動規範になるだろう。
 目の前のたった一人も、ここにはいない世界各地の人々も、等しく大切に思い、守ろうとする。そんなイーサン・ハントの姿を通して作り手たちが訴えたかったもの。それこそが、いま世界が必要としているものなのだ。


Mission: Impossible - Fallout (Music from the Motion Picture)ミッション:インポッシブル/フォールアウト』  [ま行]
監督・制作・脚本/クリストファー・マッカリー
出演/トム・クルーズ ヘンリー・カヴィル ヴィング・レイムス サイモン・ペッグ レベッカ・ファーガソン ミシェル・モナハン アンジェラ・バセット アレック・ボールドウィン ヴァネッサ・カービー ショーン・ハリス
日本公開/2018年8月3日
ジャンル/[アクション] [サスペンス] [アドベンチャー]
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【theme : アクション映画
【genre : 映画

tag : クリストファー・マッカリー トム・クルーズ ヘンリー・カヴィル ヴィング・レイムス サイモン・ペッグ レベッカ・ファーガソン ミシェル・モナハン アンジェラ・バセット アレック・ボールドウィン ヴァネッサ・カービー ショーン・ハリス

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』 温故知新とはこのことだ

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション ブルーレイ+DVDセット(2枚組) [Blu-ray] チャッチャッチャーラッ、チャッチャッチャーラッ…
 劇場から出る多くの人がテーマ曲を口ずさんでいた。みんな大満足で、この音楽を口にせずにはいられなかったのだろう。

 シリーズも五作目になれば息切れしたり変質したりするものだが、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の面白さはどうだ。毎回監督を替え、趣向を変えながら、イーサン・ハント(トム・クルーズ)を中心とするエキスパートたちのスパイアクションという大枠は踏み外さない。タイトルどおり不可能と思われる状況で任務を遂行する痛快さは本作でも健在だ。

 前作『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』はシリーズの原点であるテレビドラマ『スパイ大作戦』らしさをはじめて打ち出し、徹頭徹尾チームワークを強調した作品だった。
 ところが本作はまたも趣向を変え、エキスパートのチームワークよりも友情と仲間意識を前面に押し出した。サイモン・ペッグ演じるベンジー・ダンは、任務のためではなくイーサンとの友情から行動する。イーサンも大きな陰謀を阻止するのではなく、ベンジーを助けるために体を張る。

 映画の中盤まではイーサンとベンジー二人の活躍が中心で、ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)はイーサンを「ダチ」と呼ぶわりになかなか現場に出てこないし、トム・クルーズが本シリーズを離れたときの後任として造形されたウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)も後方支援に回ってしまい、たいして見せ場がない。
 どうしたことかと疑問が湧くが、謎の女イルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)の位置づけを考えればクリストファー・マッカリー監督の思いが察せられる。篤い友情で結ばれた二人の男に美女一人が絡むのは、1967年のフランス映画『冒険者たち』に連なるパターンだ。
 『冒険者たち』はパイロットのマヌーと自動車技師ローランの二人に彫刻家の美女レティシアが加わって宝探しをする話である。プログレ・ハード・ロック・バンドNOVELAの中心メンバー平山照継氏がこの映画が大好きで、ヒロインにちなんだ楽曲『レティシア』をデビュー・アルバムに収めたことでご存知の方もいるだろう。

 同じパターンは1969年のアメリカ映画『明日に向って撃て!』にも見てとれる。ここでは列車強盗のブッチとサンダンスに美女エッタを加えた強盗稼業が描かれる。男を裏切る謎の女といえば、1965年のイタリア映画『黄金の七人』の情婦ジョルジアを挙げる人もいるだろう。
 日本でこれらの流れを汲む作品といえば、1971年に放映されたテレビアニメ『ルパン三世』の初期エピソードが思い浮かぶ。後年は仲の良いファミリーのようになってしまったルパンたちだが、当初はルパン三世と相棒次元大介の二人に謎の女・峰不二子が絡み、ときに不二子に翻弄された。その展開は、本作のイーサン、ベンジーのコンビがイルサに手を焼く様子によく似ている。近年の『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』でも、男二人と美女一人のパターンの復活が試みられている。
 きっとクリストファー・マッカリー監督は60年代、70年代の冒険映画や犯罪映画に多くを学んだのだろう。

 アカデミー賞に輝く脚本家でもあるクリストファー・マッカリーは、『ワルキューレ』『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』といった数々のトム・クルーズ主演作に脚本を提供してきた。とりわけ『アウトロー』(2012年)は、本作同様クリストファー・マッカリー自身が監督・脚本を務めた上、トム・クルーズの主演のみならず、音楽やプロダクションデザイン等も本作と同じ布陣で臨んだ作品だ(どちらも製作会社はスカイダンス・プロダクションズやトム・クルーズのTCプロダクションズだし)。

 この『アウトロー』がまた懐かしい味わいの映画だった。何台ものクルマを本当に空から降らせたり、クルマを踏み潰しながら驀進する戦車とカーチェイスを繰り広げたりとド派手なアクション映画が続々公開される昨今にあって、『アウトロー』のカーチェイスでは追う者のクルマと追われる者のクルマの一台ずつしか出てこない。しかも周りのクルマはクラッシュすらしない。クライマックスは雨の中、一対一で素手で殴り合うだけの、とても地味な映画だった。まるで1968年の『ブリット』や1971年の『ダーティハリー』の頃のようだ。いや、『ダーティハリー』の方がよほど派手なアクションだった。

 2010年代においては古風ともいえる『アウトロー』を監督したクリストファー・マッカリーが、次にメガホンをとったのが『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』なのである。『アウトロー』は6千万ドルの制作費に対して全世界興行収入が2億1834万ドルという微妙な成績だったが、トム・クルーズはクリストファー・マッカリーの仕事が気に入ったのだろう。
 本作のプロデューサーたちは前作の監督ブラッド・バードに続投して欲しかったのだが、バードは『トゥモローランド』を撮るために本作のオファーを断った(シリーズ物よりオリジナル作品を優先するブラッド・バードは、『トゥモローランド』のために『スター・ウォーズ エピソードVII/フォースの覚醒』の監督も断っている)。代わりの監督にクリストファー・マッカリーを推したのがトム・クルーズだ。
 そして完成した『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』は、二転三転する練りに練られたストーリーで楽しませつつ、『冒険者たち』のようなクラシックな趣も呈している。ショーン・ハリス演じる悪党ソロモン・レーンが眼鏡に短髪で、日本酒を飲みながら鮨を食べているのは、『冒険者たち』で主人公を冷たくあしらう眼鏡の日本人・京橋を模したんじゃないかと思うほどだ。密会の場所に木の葉が黄色く染まった墓地を選ぶのも、何やら既視感を覚える。

 同時に、このシリーズ特有の絶句するほどのアクションも満載だ。
 これはシリーズ三作目に監督・脚本で参加し、その後プロデューサーを務めているJ・J・エイブラムスの影響もあるかもしれない(J・J・エイブラムスのバッド・ロボット・プロダクションズも本作の製作会社に名を連ねている)。
 クリストファー・マッカリーが持ち込んだクラシックなスタイルと、J・J・エイブラムス以来のシャープな作風。それを両立させたことが、本作をシリーズの中でも特に優れたスパイスリラーに仕上げている。
 温故知新とはこのことである。


ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション ブルーレイ+DVDセット(2枚組) [Blu-ray]ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』  [ま行]
監督・原案・脚本/クリストファー・マッカリー  原案/ドリュー・ピアース
出演/トム・クルーズ ジェレミー・レナー サイモン・ペッグ レベッカ・ファーガソン ヴィング・レイムス ショーン・ハリス アレック・ボールドウィン
日本公開/2015年8月7日
ジャンル/[アクション] [サスペンス] [アドベンチャー]
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【genre : 映画

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『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』 4作目にして遂に映画化!

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル ブルーレイ+DVDセット スチールブック仕様 (初回生産・取扱店限定)(デジタル・コピー付) [Blu-ray] ピクサー壊滅を阻止せよ!
 『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、ピクサーで痛快アニメ『Mr.インクレディブル』等を放ってきたブラッド・バード監督初の実写作品だ。
 そのためか、今回のミッションはピクサー本社へのミサイル攻撃を防ぐことである。

 だからといって、ピクサーのあるサンフランシスコ界隈が舞台になるわけではない。これまでのシリーズ作品に負けず劣らず、主人公イーサン・ハントは世界を股に駆けて活躍する。
 とうぜんのことながら、本作は全世界での大ヒットを狙った映画だ。観客の取りこぼしは許されない。『ソルト』のように特定の国を悪者扱いしたら、その国での公開や観客動員は望めないだろう。それでもいいという映画もあろうが、本作は違う。
 そこに登場する国々を見れば、映画の作り手の熟慮を感じることだろう。

 本作でイーサン・ハントの活躍の場となるのは、ロシアの首都モスクワ、インド最大の都市ムンバイ、アラブ首長国連邦のドバイである。
 いわゆるBRICsのうち、前作の中国に続いて今度はロシアとインドを舞台にしている。BRICsの四ヶ国(とりあえず南アを含めないとして)だけで世界人口の45%を占めるのだから、世界市場を睨めばとうぜんの選択だろう。
 ましてや、インドは中国と並んで有史以来の大国である。過去2000年の歴史のうち直近の200年を除けばずっとインドと中国のGDPの合計は世界GDPの5割を超えていた。再びインドと中国が世界の二強に戻ろうとする中で、世界市場を考える作り手たちが彼の国を取り上げないわけがない。

 さらにイスラム圏の代表としては、国際金融センター発展指数がイスラム圏トップのドバイを取り上げている。
 もちろんドバイには2011年現在で世界一高い超高層ビル「ブルジュ・ハリーファ」があることから、二作目で観客の度肝を抜いたフリークライミングの場面を超える大迫力の映像を撮影する意図もあろう。


 こうして現在注目されている各国を作品に取り込んだ本作は、ストーリーにしろアクションにしろ練りに練られて飽きさせない。
 私はアクション映画が好きなつもりなのだが、実はアクション映画を観ていると結構ウトウトしてしまう。
 それは、アクションシーンになるとストーリー進行が止まることが多いからだ。主役と敵役が殴り合いや撃ち合いを始めれば、まさか主役が敗北するはずはないから、先はもう見えてしまう。すると途端に映画への興味が薄れてしまうのだ。
 しかし『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、趣向を凝らしたアクションと、アクションの進展そのものがストーリーの進行に密接にかかわることで、観客の緊張を維持し続ける。やはりタイムリミットが迫る中で進行する物語は、緊迫感があって良い。


 そして本作には、シリーズ四作目にして初めてともいえる要素がある。

 副題の Ghost Protocol を直訳すれば、さしずめ「幽霊規約」とでもなろうか。劇中では政府がIMF (Impossible Mission Force)の存在を認めない(幽霊と見なす)取り決めを指しているが、同時にこれは主人公らの「魂の作法(ghost protocol)」に従った行動も意味していよう。
 魂の作法――それはチームメンバー同士の信頼であり、チームワークだ。
 これこそ、従来の『ミッション:インポッシブル』シリーズには見られなかったものであり、往年のテレビドラマ『スパイ大作戦』(1966~1973年)が持っていた大事なものである。

 思えば、映画化第一作『ミッション:インポッシブル』は、テレビドラマ『スパイ大作戦』の映画化と称しながら、『スパイ大作戦』へのアンチテーゼだった。
 メンバー各人が得意技を持つ専門家ではあるものの、当局からの支援が一切ない中で、孤立無援のメンバーたちがチームワークだけを頼りに難題を解決するのが『スパイ大作戦』らしさだった。なのに映画化第一作は、たとえ同じチームといえども信用できないスパイの非情さを描き出した。その意外さが第一作の面白さになったとはいえ、テレビ版の出演者たちが映画に批判的な態度を示したのはもっともである。

 続く二作目、三作目は、トム・クルーズ演じるイーサン・ハント個人の活躍に重きを置きすぎていた。『スパイ大作戦』は一人の「主人公」が活躍するのではなく、チームメンバー全員でドラマを引っ張るはずなのに。
 だから二作目、三作目はアクション映画としては面白いものの、チームプレーで魅せる『スパイ大作戦』らしくはなかった。

 それに対して本作は、イーサン・ハント個人の生活や情感を極力排するとともに、ゴースト・プロトコルの発動によってチームを孤立無援の状態に置くことで、オリジナルの『スパイ大作戦』を髣髴とさせるものになった。
 そして映画は、徹頭徹尾ひとつのチームを大切にし、メンバーを信頼する。
 チームワークがあってこそ不可能を可能にする『スパイ大作戦』は、本作にして遂に映画化されたといえよう!


 なお、ジェレミー・レナー演じるウィリアム・ブラントは、トム・クルーズが本シリーズを離れたときの後任を務めるべく造形されたキャラクターだそうだ。
 シリーズはまだまだ続くだろう。次の舞台はブラジルだ。


ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル ブルーレイ+DVDセット スチールブック仕様 (初回生産・取扱店限定)(デジタル・コピー付) [Blu-ray]ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』  [ま行]
監督/ブラッド・バード  制作/トム・クルーズ、J・J・エイブラムス、ブライアン・バーク
出演/トム・クルーズ ジェレミー・レナー サイモン・ペッグ ポーラ・パットン ミカエル・ニクヴィスト ウラジミール・マシコフ ジョシュ・ホロウェイ アニル・カプール レア・セドゥー
日本公開/2011年12月16日
ジャンル/[アクション] [サスペンス]
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【genre : 映画

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