『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』 4作目にして遂に映画化!

 ピクサー壊滅を阻止せよ!
 『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、ピクサーで痛快アニメ『Mr.インクレディブル』等を放ってきたブラッド・バード監督初の実写作品だ。
 そのためか、今回のミッションはピクサー本社へのミサイル攻撃を防ぐことである。

 だからといって、ピクサーのあるサンフランシスコ界隈が舞台になるわけではない。これまでのシリーズ作品に負けず劣らず、主人公イーサン・ハントは世界を股に駆けて活躍する。
 とうぜんのことながら、本作は全世界での大ヒットを狙った映画だ。観客の取りこぼしは許されない。『ソルト』のように特定の国を悪者扱いしたら、その国での公開や観客動員は望めないだろう。それでもいいという映画もあろうが、本作は違う。
 そこに登場する国々を見れば、映画の作り手の熟慮を感じることだろう。

 本作でイーサン・ハントの活躍の場となるのは、ロシアの首都モスクワ、インド最大の都市ムンバイ、アラブ首長国連邦のドバイである。
 いわゆるBRICsのうち、前作の中国に続いて今度はロシアとインドを舞台にしている。BRICsの四ヶ国(とりあえず南アを含めないとして)だけで世界人口の45%を占めるのだから、世界市場を睨めばとうぜんの選択だろう。
 ましてや、インドは中国と並んで有史以来の大国である。過去2000年の歴史のうち直近の200年を除けばずっとインドと中国のGDPの合計は世界GDPの5割を超えていた。再びインドと中国が世界の二強に戻ろうとする中で、世界市場を考える作り手たちが彼の国を取り上げないわけがない。

 さらにイスラム圏の代表としては、国際金融センター発展指数がイスラム圏トップのドバイを取り上げている。
 もちろんドバイには2011年現在で世界一高い超高層ビル「ブルジュ・ハリーファ」があることから、二作目で観客の度肝を抜いたフリークライミングの場面を超える大迫力の映像を撮影する意図もあろう。


 こうして現在注目されている各国を作品に取り込んだ本作は、ストーリーにしろアクションにしろ練りに練られて飽きさせない。
 私はアクション映画が好きなつもりなのだが、実はアクション映画を観ていると結構ウトウトしてしまう。
 それは、アクションシーンになるとストーリー進行が止まることが多いからだ。主役と敵役が殴り合いや撃ち合いを始めれば、まさか主役が敗北するはずはないから、先はもう見えてしまう。すると途端に映画への興味が薄れてしまうのだ。
 しかし『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、趣向を凝らしたアクションと、アクションの進展そのものがストーリーの進行に密接にかかわることで、観客の緊張を維持し続ける。やはりタイムリミットが迫る中で進行する物語は、緊迫感があって良い。


 そして本作には、シリーズ四作目にして初めてともいえる要素がある。

 副題の Ghost Protocol を直訳すれば、さしずめ「幽霊規約」とでもなろうか。劇中では政府がIMF (Impossible Mission Force)の存在を認めない(幽霊と見なす)取り決めを指しているが、同時にこれは主人公らの「魂の作法(ghost protocol)」に従った行動も意味していよう。
 魂の作法――それはチームメンバー同士の信頼であり、チームワークだ。
 これこそ、従来の『ミッション:インポッシブル』シリーズには見られなかったものであり、往年のテレビドラマ『スパイ大作戦』(1966~1973年)が持っていた大事なものである。

 思えば、映画化第一作『ミッション:インポッシブル』は、テレビドラマ『スパイ大作戦』の映画化と称しながら、『スパイ大作戦』へのアンチテーゼだった。
 メンバー各人が得意技を持つ専門家ではあるものの、当局からの支援が一切ない中で、孤立無援のメンバーたちがチームワークだけを頼りに難題を解決するのが『スパイ大作戦』らしさだった。なのに映画化第一作は、たとえ同じチームといえども信用できないスパイの非情さを描き出した。その意外さが第一作の面白さになったとはいえ、テレビ版の出演者たちが映画に批判的な態度を示したのはもっともである。

 続く二作目、三作目は、トム・クルーズ演じるイーサン・ハント個人の活躍に重きを置きすぎていた。『スパイ大作戦』は一人の「主人公」が活躍するのではなく、チームメンバー全員でドラマを引っ張るはずなのに。
 だから二作目、三作目はアクション映画としては面白いものの、チームプレーで魅せる『スパイ大作戦』らしくはなかった。

 それに対して本作は、イーサン・ハント個人の生活や情感を極力排するとともに、ゴースト・プロトコルの発動によってチームを孤立無援の状態に置くことで、オリジナルの『スパイ大作戦』を髣髴とさせるものになった。
 そして映画は、徹頭徹尾ひとつのチームを大切にし、メンバーを信頼する。
 チームワークがあってこそ不可能を可能にする『スパイ大作戦』は、本作にして遂に映画化されたといえよう!


 なお、ジェレミー・レナー演じるウィリアム・ブラントは、トム・クルーズが本シリーズを離れたときの後任を務めるべく造形されたキャラクターだそうだ。
 シリーズはまだまだ続くだろう。次の舞台はブラジルだ。


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監督/ブラッド・バード  制作/トム・クルーズ、J・J・エイブラムス、ブライアン・バーク
出演/トム・クルーズ ジェレミー・レナー サイモン・ペッグ ポーラ・パットン ミカエル・ニクヴィスト ウラジミール・マシコフ ジョシュ・ホロウェイ アニル・カプール レア・セドゥー
日本公開/2011年12月16日
ジャンル/[アクション] [サスペンス]
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【theme : アクション映画
【genre : 映画

tag : ブラッド・バード J・J・エイブラムス トム・クルーズ ジェレミー・レナー サイモン・ペッグ ポーラ・パットン ミカエル・ニクヴィスト ウラジミール・マシコフ ジョシュ・ホロウェイ アニル・カプール

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