『友だちのうちはどこ?』に見る子供の壊し方

 【ネタバレ注意】

 大人はひどく残酷だ。
 『友だちのうちはどこ?』にも、残酷な大人たちが登場する。
 なかでもひどいのは、アッバス・キアロスタミ監督だろう。子供を泣かせて、その模様をフィルムに収めて公開しているのだから。
 『友だちのうちはどこ?』を観れば、登場する子供たちが本当に困って、本当に泣いていることが判る。「迫真の演技」なんてものじゃない。本当に泣いている子供以上に胸を打つものはない。
 ひどい演出術ではあるものの、スクリーンに見とれて称賛している私たちもひどい大人である。でも、子供たちの表情に嘘がないからこそ、この映画には見とれてしまう。


 劇中に登場する大人たちは、とくに悪い人でもなければ、とくにひどいことをするわけでもない。どこにでもいる典型的な大人たちだ。
 彼らは子供の云い分を聞かない。彼らは子供に自分の意見を押し付け、従わせることを躾だと考えている。彼らはときに暴力を辞さない。彼らの云うことはしばしば間違っており、導かれるまま付いて行っても問題は解決しない。

 子供は、知識量では大人に劣るかもしれない。しかし、子供なりにものごとを考え、道理に外れまいとしている。
 それは決して軽んじられるべきではないのだが、大人たちは、発言しているのが子供だというだけで取り合わない。

 本作で、主人公の少年が遭遇するのは、大人たちへの失望だ。
 大人に正直に話しても埒が明かないことによる失望。誤解したまま、正そうとしないことへの失望。古い知識に囚われてしまい、正しく行動できないことへの失望。
 結局、大人たちはよってたかって少年の邪魔しかできない。正直に振る舞い、良いことをしようとする少年の力にはなれない。
 本作は、友だちの家を捜すというシンプルな物語を通して、少年を惑わせ、困らせ、疲れさせるばかりの大人たちの姿を描き出す。


 風が吹いて、少年の目の前で部屋の戸が開くシーンは象徴的だ。戸の外には暗い闇が広がり、その暗黒の中に大人がいる。
 このとき少年は悟ってしまうのだ。
 大人たちが暗愚であることを。正直に問題を知らせても理解できず、大人の云う通りにしても事態は解決しないことを。自分がいくら正直にしても、正しい行動を心がけても、ただ暗闇に呑まれるだけであることを。
 そして少年は学ぶ。大人には本当のことを伝えなくて良いということを。大人の云うことなんか、まともに聞かなくて良いということを。

 少年は嘘を吐き、大人を騙すことで事態を収拾する。
 少年は普通の大人になるだろう。人の云うことを聞かず、自分の意見を押し付け、ときには人を騙しながらずるく立ち回る。そんな普通の大人になるだろう。
 そう仕向けたのは、他ならぬ周りの大人たちなのだ。
 それを世の中では成長と呼ぶのだ。
 残念ながら。


友だちのうちはどこ? [DVD]友だちのうちはどこ?』  [た行]
監督・脚本/アッバス・キアロスタミ
出演/ババク・アハマッドプール アハマッド・アハマッドプール ゴダバクシュ・デファイエ イラン・オタリ
日本公開/1993年10月23日
ジャンル/[ドラマ]
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【genre : 映画

tag : アッバス・キアロスタミ ババク・アハマッドプール アハマッド・アハマッドプール ゴダバクシュ・デファイエ イラン・オタリ

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