『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』に欠けているもの

 【ネタバレ注意】

 『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』の記事に、Max-Tさんより『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』に関するコメントをいただいた。
 コメント欄に返事を書いていたのだが、いささか長文になってしまったので別の記事として取り上げることにした。
 以下は、Max-Tさんのコメントへの返信として書いたものである。

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 Max-Tさん、コメントありがとうございます。

 時間があれば『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』も観てやってください。興行成績第1位を驀進する『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』に比べて『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』は初登場6位と淋しい成績です。
 たしかに『猿の惑星:創世記』の猿アクションは刺激的で、ヒットするのも判らないではありません。
 ただ、私としては『猿の惑星:創世記』の感想は複雑です。
 まず私は世評に比べて1968年の第一作をあまり評価していません。故中島梓氏も書いていたことですが、猿たちが英語を喋っているのにテイラーはここがどこだか判らなかったんかい!というラストのガッカリ感が大きいからです(^^;

 とはいえ、時間的な円環構造を持ったシリーズ物という類まれなる構成はたいへん面白く、その点は高く評価しています。つまり私は、円環構造を前面に打ち出した三作目、四作目を重視しているのです(一般的には三作目以降の評価はがた落ちのようですが)。それぞれ単体で観て面白いかどうかは別にして、三作目と四作目があるからこそ、奇抜なシリーズを構成できたのだと思います。


 さて『猿の惑星:創世記』についてですが、人間に育てられたシーザーが、長じて人間に反逆する様を描いた作品なので、位置づけとしては四作目の『猿の惑星・征服』(1972年)に相当するかと思います。
 そして『猿の惑星・征服』の特徴といえば、制作当時の時代背景を色濃くにじませていることが挙げられます。すなわち、『猿の惑星・征服』において人間から虐げられる猿たちの姿は、現実の黒人差別を重ね合わせており、人間に反旗を翻す猿たちはブラックパワーの象徴でした。
 このように社会的・政治的メッセージ色の強い四作目をベースにしながら今の時代に新作を作るとしたら、はたしてどのような主張を打ち出すのか。私の興味はもっぱらその点でした。

 ところが映画の序盤で、シーザー及びその母猿が持つ、他の猿と異なる特徴が紹介されて驚きました。他の猿よりも賢い母猿とシーザーを特徴づけるのは、緑色の目だというのです。
 緑の目は白人の特徴です。劇中、高い知能を有するシーザーの目が何度もアップになりますが、そこで映し出されるのはまぎれもなく白人の目です。
 シーザーがゴリラやオランウータン等さまざまな種類の猿を糾合してそのリーダーに収まる様子は、あたかも白人が異人種を従えてリーダーとなるかのようです。
 ましてや、登場する黒人が悪者扱いで、それほど悪いことをしたわけでもないのに、("白人"に率いられた)猿たちに殺されてしまうなんて、60~70年代だったら暴動の引き金にもなろうかというところです。

 もちろん、シーザーの目が白人の目そのものなのは、シーザー役のアンディ・サーキスが白人だからであり、目の演技を忠実に反映させるためなのでしょう。でも、現在の技術をもってすれば、目の色もコントロールできたと思うのです。
 少なくとも、目の色の違いが、他者より知的であることを示すなど、今どきこんな表現を採用するとは驚きです。
 それは、シーザーと同じような目の色のルパート・ワイアット監督にとっては、とても自然な発想だったのかもしれません。客席を埋める白人の観客も、違和感無くシーザーに感情移入するかもしれません。
 しかし、『猿の惑星・征服』が人種差別問題を扱ったSF映画だと思っていた私には、シーザーの「白人の目」が気になって仕方ありませんでした。
 別に映画に社会的・政治的メッセージなんてなくてもいいのでしょうが、どうにも2010年代にこの作品を世に送り出すことの意義が読み取れませんでした。

 オフィシャルサイトによれば、ワイアット監督は本作について「後戻りできないところまで到達してしまった僕らの文明について描いている」「自ら破滅を招く"人類への警鐘"」と語っています。そういう映画は50年代以降たくさん作られてきたので、どれをリメイクしても監督の考えは描けるでしょうが、『猿の惑星・征服』は違うだろうと思うのです。

 だから、『猿の惑星:創世記』がとてもテンポ良くまとまった娯楽作品であり、とりわけ樹上の移動シーンなど猿らしさを生かした演出に特筆すべきものがあることを認めながらも、今ひとつこの作品が腹に落ちないのです。

 そんなこんなでブログには取り上げていませんでした。


 ところで、実のところ私は『猿の惑星』シリーズ以上に、円谷プロ制作のテレビドラマ『SFドラマ 猿の軍団』(1974年)の方が好きでした。放映当時は『宇宙戦艦ヤマト』の裏番組だったのでご覧になっていないでしょうが(私は『猿の軍団』を見ていたので『宇宙戦艦ヤマト』には再放送で燃えました)、小松左京、豊田有恒、田中光二の3氏が原作者に名を連ねるだけあって、当時珍しい本格的なSFドラマでした。
 『猿の惑星:創世記』では、攻撃的なチンパンジーに本来は温和なゴリラが同調してしまうなど、彼らの生態を考えるといささか疑問を感じるところがありますが、『猿の軍団』は猿たちの特徴に応じた派閥が形成されて政治ドラマ風の色合いもあり、子供向け番組にしてはずいぶんと意欲的な内容だったと記憶しています。

 『猿の惑星:創世記』のヒットを受けて、円谷プロが『猿の軍団:創世記』なんて作ってくれれば嬉しいのですが:-)


猿の惑星:創世記(ジェネシス) [DVD]猿の惑星:創世記(ジェネシス)』  [さ行]
監督/ルパート・ワイアット
出演/ジェームズ・フランコ フリーダ・ピント ジョン・リスゴー ブライアン・コックス トム・フェルトン アンディ・サーキス
日本公開/2011年10月7日
ジャンル/[SF] [アクション] [サスペンス]
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【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画
【genre : 映画

tag : ルパート・ワイアット ジェームズ・フランコ フリーダ・ピント ジョン・リスゴー ブライアン・コックス トム・フェルトン アンディ・サーキス

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