『サマーウォーズ』の法律違反

 【ネタバレ注意】

 『サマーウォーズ』の登場人物を見ていると、コンプライアンス上、ハラハラすることが多い。

 陸上自衛隊の陣内理一(じんのうち りいち)は隊の装備品を窃盗するし、陣内太助(じんのうち たすけ)はみずから営む陣内電気店の棚卸資産(大学納品前のコンピュータ)を横領してしまう。

 だが劇中では描かれていないものの、陣内理一は装備品を持ち出すに当たり迅速に許可を得ていた可能性はある。
 また、納品前のコンピュータも特段の故障が生じておらず原状回復できれば、大学に事情を話して改めて納品させてもらえる可能性はある(あのような規模のコンピュータは、すでに工場出荷前に検証等のためにさんざん動かしていることも考えられ、太助の行為はその延長上ということで収められるかも知れない)。


 陣内侘助(じんのうち わびすけ)が開発したラブマシーンは社会に大混乱を巻き起こすが、侘助自身が述べているようにラブマシーンに反社会活動を指示しておらず、OZでの活動に関与していないのであれば、彼の罪ではない。
 もっとも、充分な実証実験を終えていないラブマシーンの活動を追跡すべく努力しなかったこと、社会の混乱の原因がラブマシーンであることを察した段階で事態収拾のための行動を起こさなかったことについて、責めを負う可能性はある。

 とはいえ最終的には健二や佳主馬に協力して問題を解決していることから、その責めもかなりのていど相殺されるだろう。


 しかしここに、私的目的のために法を破り、酌量の余地のない人物がいる。

 上田市役所に勤務する陣内理香(じんのうち りか)である。


 陣内理香は、親戚の娘の交際相手について知るために、市役所の住民基本データを内緒で検索し、小磯健二の身元を調べている。
 このような行為は、住民基本台帳法30条の34(本人確認情報の利用及び提供の制限)に反している。
 したがって地方公務員法29条に定める懲戒処分の対象となる。

 また陣内理香は、検索で知りえた情報に基づき、「ただのサラリーマンの息子じゃない! しかも高校生よ! 17歳!」と叫んでいる。
 これは住民基本台帳法42条で刑罰の対象としている、秘密を漏らす行為に当たる可能性がある。

 地方公務員法29条に定める懲戒処分が下されれば、最悪のばあい免職となる。また住民基本台帳法42条の刑罰は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金である。


 上田市勤務の陣内理香が東京在住の健二のデータを得るには、住民基本台帳ネットワークシステムを悪用したと考えられる。その実行可能性はともかく、公務員による住民基本台帳ネットワークシステムの悪用となれば、マスコミ各紙が大騒ぎするのは間違いない。

 いやはや陣内理香はたいへんなことをしでかしたものだ。


 映画『サマーウォーズ』に、悪い人間は登場しない。
 しかし陣内理香は、重い処分を免れないだろう。

 もちろん、実際の公務員諸氏は上の各法を熟知しているので、このような違法行為に及ぶことはない(そもそも住民基本台帳ネットワークシステムでは、高校生であることや父の職業は判らないし)


サマーウォーズ [Blu-ray]サマーウォーズ』  [さ行]
監督/細田守  脚本/奥寺佐渡子  キャラクターデザイン/貞本義行
出演/神木隆之介 桜庭ななみ 谷村美月 永井一郎 富司純子
日本公開/2009年8月1日
ジャンル/[SF] [アドベンチャー] [青春]
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【theme : サマーウォーズ
【genre : 映画

tag : 細田守 神木隆之介 桜庭ななみ 谷村美月

『サマーウォーズ』つながり

 「つながり」こそが、ボクらの武器。

 映画『サマーウォーズ』のコピーである。

 そしてこの春、「きっと、つながる」というコピーで公開された映画があった。
 『フィッシュストーリー』。

 『フィッシュストーリー』が時代を超えた"つながり"を描くのに対し、『サマーウォーズ』は血縁という古くからの"つながり"と、黒電話と手紙という懐かしい"つながり"と、ネット上の仮想空間という今どきの"つながり"を描いて、人間の属する集団や予定調和的な世界が変わらず存在することを教えてくれる。


 本作について細田守監督は次のように語る。
---
-田舎VSネットという対比がすごいですね。

「“デジタル”と“親戚”ですからね。この対比はなかなかないと思いますよ。
ふたつに共通しているのは、どちらも実は結構身近で誰もが恩恵を受けているものだってことです。

『私ネットが好きです』って言わない人でも必ず携帯電話もってて、必ずメールもやってる。同時に、家族や親戚がいない人もひとりもいないんです。いなかったらその人、生まれないんですから。僕らの日常から忘れがちだったり、特別な分野のようですが、みんな共通して両方をもっている。

身近にいるんだけど忘れがちな価値みたいなものをふたつ対比させて、そのなかでおもしろいアクション映画ができたらなと、それが発想のもとです。」

  -週刊アスキー 2009年04月07日
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 「個人的体験が大きいと思います。その一つが結婚。何が面白いって、結婚した途端に親戚の数が倍になる。しかも、相手の親戚はとても仲が良くて、家族観がひっくり返った。もう一つ、海外の映画祭に行ってみると、世界の映像作家の多くは家族を通して、その時々の世界を描こうとしていた。じゃあ自分ならどう考えるかなという所から始まったのかもしれない。」

 「世界で起きている問題は煎じ詰めれば家族の中にあり、家族という存在を敷衍したのが世界ではないか。何とか、そういう見方にしたい意図はあります。」

  -讀賣新聞 映画「サマーウォーズ」対談 細田守監督×村上隆氏 2009年7月29日-
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 『フィッシュストーリー』、『サマーウォーズ』と、"つながり"を描いた作品があいついで公開されるのは偶然ではない。

 思えば島田荘司の短編『糸ノコとジグザグ』ではラジオのDJが"つながり"の結節点だったが、時代が流れ、舞台が仮想空間に移っても、人が"つながり"を求め、つながっていくことに変わりはない。


 けれども現実は、コーエン兄弟が描く世界、たとえば『バーン・アフター・リーディング』のような予定不調和な世界なのかもしれない。偶然の出来事に人は振り回され、人のつながりは裏目に出ることの連続だ。
 そうかもしれない。

 でも、いいじゃないか。これはフィクションなんだから。
 そして、既存の中間集団を失いつつある我々は、新たな"つながり"を模索しなければならないのだから。


サマーウォーズ スタンダード・エディション [Blu-ray]サマーウォーズ』  [さ行]
監督/細田守  脚本/奥寺佐渡子  キャラクターデザイン/貞本義行
出演/神木隆之介 桜庭ななみ 谷村美月 永井一郎 富司純子
日本公開/2009年8月1日
ジャンル/[SF] [アドベンチャー] [青春]
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