『SUPER 8/スーパーエイト』 その意味するものは?

 1966年生まれのJ・J・エイブラムスにとって、1977年公開の『未知との遭遇』や1980年の『未知との遭遇 特別編』、そして1982年の『E.T.』を観ることは、胸躍る体験だったろう。
 そんな彼が、それらの作品の監督であるスティーヴン・スピルバーグの制作で、他ならぬスピルバーグへのトリビュート作品を撮るのだから、たまらなく嬉しいに違いない。
 『SUPER 8/スーパーエイト』の監督・脚本を務めるのはJ・J・エイブラムスだが、ストーリー作りはエイブラムスとスピルバーグの共同作業である。本作は、まさしく『未知との遭遇』や『E.T.』のエッセンスをスピルバーグ本人と一緒に甦らせた作品と云えるだろう。


 タイトルにもなったSuper-8(スーパーエイト)は、コダック社が開発した8ミリフィルムの規格である。
 1979年、ザ・ナックの『マイ・シャローナ』が大ヒットしていた頃を舞台に、8ミリカメラを駆使して映画作りにいそしむ少年たちは、あたかも映画小僧だったスピルバーグやエイブラムス自身を投影した姿である。
 彼らが出くわす事件は極めてスリリングで、極めて恐ろしく、極めて容赦がない。そこには、エイブラムス監督が少年時代に味わったであろう映画的興奮のありったけが込められているのだろう。

 物語の核となるのは少年たちであり、客層もティーンエイジャーを中心に幅広い層を狙っていると思われるが、エイブラムス監督は子供向けだからと手加減することは一切なく、この優れたジュブナイルを作り上げている。
 これまでにも、少年少女向けの映画は数多く作られてきた。しかしその割には、エンターテインメントとして成功している作品は意外に少ないのではないか。

 たとえば、本作よりもやや年下の客層に向けた作品ではあるが、先ごろ公開された『少年マイロの火星冒険記3D』は一つの例になるかもしれない。制作に1億5千万ドルも費やしながら、全世界での興行収入が3899万ドルにしかならなかったのだから、成功作とは云えないだろう。
 その原因は幾つかあろうが、この作品に観客を興醒めさせる要素があったのは確かである。なかなか面白い冒険譚なのに、全編に一貫するのは子供向けの教訓なのだ。ママに反抗してはいけないこと、ママの云いつけを守らなくてはいけないこと……ありがたい話ではあるが、子供たちにとっては映画館に来てまで聞かされたい話ではない。

 『少年マイロの火星冒険記3D』に限らない。少年少女向けの映画は、愛を説いたり、勇気を教えたり、無軌道を戒めたり――説教を垂れることが多いのだ。
 たぶん企画書には愛や勇気や倫理について書いてあるのだろう。そして企画書に基づいて出資している投資家が納得するように、それらを判りやすい形で見せなければならないのかもしれない。

 だが、振り返ってみれば、少年たちを主人公にした大ヒット作『E.T.』には、説教臭さはまったくなかった。もちろん、観客がさまざまな教訓を読み取ることは可能だが、登場人物の誰一人として説教臭いセリフを口にしなかった。
 だからこそヒットしたのだ。映画はしつけの道具ではないということだ。


 また、たとえ「お説教」はほどほどでも、子供に観せるという意識が作品を温くすることもある。過激な描写を避けようとするあまり、いきおい尖ったところがなくなって、全般的に温くなってしまいがちだ。
 しかし子供は辛辣だ。子供こそ辛辣なのだ。半端なシロモノは相手にされない。

 思えばスピルバーグこそ、子供を主要な登場人物に据えながら、教訓も垂れず、教育的配慮もせずに、エンターテインメントに徹したフィルムメーカーであった。その作品において、子供たちは大人の云うことを聞いたりしない。どうせ大人は、あれがダメ、これがダメというばかりだ。そんな大人たちを出し抜いてこそ、本当に大事なことに迫れるのだ。
 J・J・エイブラムスが目指すところは明らかである。そこには、教訓も教育的配慮もない。気取った思想も、高尚な文化もいらない。人間心理に深く切り込むこともない。

 子供を夢中にさせるには、本気で怖がらせ、本気でワクワクさせ、本気で楽しませなければならないのだ。そうでなければ、子供たちは本気で好きにはならない。
 そして、本気で怖がらせ、本気でワクワクさせ、本気で楽しませる作品は、もちろん大人が観ても本気で面白いのだ。


SUPER 8/スーパーエイト [DVD]SUPER 8/スーパーエイト』  [さ行]
監督・脚本・制作/J・J・エイブラムス  制作/スティーヴン・スピルバーグ
出演/ジョエル・コートニー エル・ファニング カイル・チャンドラー ライリー・グリフィス ライアン・リー ガブリエル・バッソ ザック・ミルズ ロン・エルダード
日本公開/2011年6月24日
ジャンル/[SF] [アドベンチャー] [サスペンス]
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【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画
【genre : 映画

tag : J・J・エイブラムス スティーヴン・スピルバーグ ジョエル・コートニー エル・ファニング カイル・チャンドラー ライリー・グリフィス ライアン・リー ガブリエル・バッソ ザック・ミルズ ロン・エルダード

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