『スカイライン-征服-』 1000万 対 50万!

 『奇跡』の中で、一本気な菓子職人を妻がたしなめる場面がある。
 「どこの世界に好きなものを作って売ってる人がいるんですか。」
 監督、脚本、編集と何役もこなし、プロデューサーとして他の監督に映画作りの場を提供してもいる是枝裕和監督が書いたセリフだけに、その言葉は切なく重い。

 漫画の神様と称された手塚治虫氏でさえ、好きなものばかり描くわけにはいかなかった。
 マンガの多さでギネス世界記録に認定されているほどの石ノ森章太郎氏でさえ、『サイボーグ009 神々との戦い』では読者の理解が得られず、打ち切らざるを得なかった。

 にもかかわらず、ここに好きなことを映画にした男たちがいる。コリン・ストラウスとグレッグ・ストラウスの兄弟である。
 彼らは自身が設立したスタジオHydraulxで『2012』『アバター』『アイアンマン2』等の視覚効果を手掛けており、遂にみずから制作に乗り出したのが『スカイライン-征服-』だ。
 監督・制作のストラウス兄弟だけではなく、脚本のジョシュア・コーズとリアム・オドネルもこれまでは視覚効果を担当してきた。両名とも劇映画の脚本家としては本作がデビュー作である。
 つまり本作は、特撮好きの男たちが特撮仲間と作った映画なのだ。

 自主映画にはありがちだが、自主映画を作る人は映画を作りたいからやっているのだが、特撮映画を自主制作する人は特撮をやりたいのだ。ストラウス兄弟はその延長上で『スカイライン-征服-』を作ってしまった。
 なにしろ制作費1050万ドルのうち、デジタル効果に1000万ドルを注ぎ込んでしまい、本編撮影には50万ドルしかかけていないのだ。あっぱれな徹底ぶりである。
 
 本作の惹句は、この作品の狙いをよく表している。
 「そこには、愛も英雄も存在しない」
 そのとおり、50万ドルしかかけていない本編部分には、愛も英雄も感動も悲しみも何にもない。セレブのパーティーシーンを織り交ぜたりしてリッチな感じを出そうとしているが、実のところ自宅マンションを撮影場所にして、数人の男女が逃げ惑う姿を収めただけだ。

 でも、視覚効果は凄い。米国で1000万ドルといったらかなり低予算だと思うが、それでここまでできるのかと驚くほどである。
 『インデペンデンス・デイ』のような迫り来る宇宙船や、戦闘機とのドッグファイト、『宇宙戦争』のような不気味に伸びてくる触手、『ゴジラ』シリーズのような大暴れする怪獣たち等々、嬉しい映像のオンパレードだ。
 怪獣のデザインが水陸両用モビルスーツのアッガイを彷彿とさせるのも、なんだか楽しい。


 これらをもってして、本作にオリジナリティがないとか、見たことのある映像だと云うのは筋違いだろう。
 自主制作で特撮映画を作る人は、目指す作品が念頭にある。『ゴジラ』シリーズが好きだから怪獣を撮るとか、『スター・ウォーズ』が好きだから宇宙戦を撮るとか、その作品と同じようなことをするのが目標なのだ。したがって、「『スター・ウォーズ』を思わせるね」というのは最高の褒め言葉である。
 本作も同様で、よくぞ1000万ドルで『インデペンデンス・デイ』や『宇宙戦争』のようなシーンを作れたものだと感心する(『インデペンデンス・デイ』の制作費は7500万ドル、『宇宙戦争』(2005年)の制作費は1億3200万ドル)。

 そもそも、創作活動は先人をフォローすることから始まるものである。誰もフォローしなかったら、そのジャンルは死に絶えてしまう。「タイムトラベルはH・G・ウェルズの独創だから他人が手を出すのは止めよう」なんて云ったら、すべての時間テーマのSFがなくなってしまう。
 『インデペンデンス・デイ』が面白かったなら(8億1740万ドルもの興行成績を残したのだから、世界中の人が面白いと感じたはずだ)、『インデペンデンス・デイ』をフォローした映画をドンドン作ればいいのだ。
 『ゴジラ』のヒットがあればこそ『ガメラ』が誕生したのだから、怪獣好きは『ゴジラ』や『ガメラ』をフォローした映画をドンドン作ればいいのだ。
 たくさんの追随者がいてこそ、ジャンルとして発展し、原点となった作品を上回る傑作が生まれようというものだ。


 『スカイライン-征服-』は、過去の傑作群の美味しいところを寄せ集めて再現した映画である。
 ショーケースに飾られた怪獣のフィギュアを鑑賞するように、視覚効果の出来を愛でる映画だ。
 特撮好きの男たちの愛が詰まったこの映画を、楽しもうではないか。


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監督・制作/ザ・ブラザーズ・ストラウス(コリン・ストラウス、グレッグ・ストラウス)
脚本/ジョシュア・コーズ  脚本・制作/リアム・オドネル
出演/エリック・バルフォー スコッティー・トンプソン ブリタニー・ダニエル デヴィッド・ザヤス ドナルド・フェイソン
日本公開/2011年6月18日
ジャンル/[SF] [アクション] [パニック]
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【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画
【genre : 映画

tag : ザ・ブラザーズ・ストラウス コリン・ストラウス グレッグ・ストラウス エリック・バルフォー スコッティー・トンプソン ブリタニー・ダニエル デヴィッド・ザヤス ドナルド・フェイソン

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