『ザ・スピリット』2.64点で面白いか?

 「みんなの意見」は案外正しいという考え方がある。

 だからというわけではないが、観る映画を選ぶのにネット上のレビューを参考にすることがある。
 多くのサイトで、映画に対するコメントの書き込みと、評点の集計機能を用意している。
 それを眺めて、あまり観る気はなくても5点満点で4点以上なら観てみようとか、時間の関係で1本しか観られないときは3点未満の作品は後回しにしようとか、逆に点が低い作品は早々に打ち切られるかもしれないので早めに観ようか、などと考える。

 ちなみに今年公開の映画でいうと、mixiのレビューでは7月20日現在『グラン・トリノ』に1,358人がコメントしており、評点の平均は4.47点だ。『DRAGONBALL EVOLUTION』には572人がコメントしており、平均2.06点である。
 Yahoo!映画のユーザーレビューでは、7月20日現在『グラン・トリノ』に1,326人がコメントしており、評点の平均は4.55点だ。『DRAGONBALL EVOLUTION』には1,381人がコメントしており、平均1.78点である。

 年間800本といわれる日本公開映画をすべて観るわけにもいかないし、かつてシティロード誌の星取表を参考にしたのと同じことである。

 しかし、論理的な検討を経ても「みんなの意見」が常に正しいとは限らないのだから、映画のように個人の嗜好に依存するものに至っては、所詮だいたいの参考でしかない。


 『ザ・スピリット』も、「みんな」は面白くないだろうと思われる1本。
 mixiのレビューでは76人の平均が2.64点、Yahoo!映画のユーザーレビューでは77人の平均が2.82点、他のサイトでも総じて点が低い。

 この映画、エンドクレジットにフランク・ミラーの手によるストーリーボードが次々と映し出される。
 エンドクレジットが始まるや席を立つ人がいたが、フランク・ミラーのストーリーボードを見ずして帰るくらいなら、そもそもこの映画は観ない方がいい。

 マンガを映画化した作品は星の数ほどあるけれど、それらはマンガを題材にしているだけであくまで映画だ。どの監督も映画を作るつもりでいる。
 しかし本作は違う。
 マンガをスクリーンに焼き付けているのだ。

 映画的なノリに背を向け、映画的ビジュアルに背を向け、映画的興奮にも背を向け、マンガの構図、マンガの滑稽さ、マンガのコマを読み進むようなテンポを再現した、これぞフランク・ミラーの面目躍如。
 カラー印刷が当たり前のアメコミ界にあってモノトーンを好むフランク・ミラーが、そのスタイルをそのまんまスクリーンで表現している。

 この作品の評価の分かれ目は、2時間かけて動くマンガを楽しめるかどうかだろう。

 マンガをスクリーンに再現した映画の極致は大島渚監督の『忍者武芸帳』だろうが、さすがにマンガのコマをそのままスクリーンに映されたのでは「だったらマンガ本を読むわ」と思ってしまう。
 『ザ・スピリット』はマンガそのままなんだけど、大スクリーンのための映像をわざわざ作っているわけで、フランク・ミラーの絵を観るのが好きな人には最高のプレゼントである。


 今回、ウィル・アイズナーの作品を映画化したフランク・ミラーだが、自身の作品の映画化にはいささか厳しい。
 プログラム掲載のインタビューでは、次のように語っている。

 「僕は自分の作品をいじられることに嫌悪感があるので、『バットマン』や『デアデビル』関連の映画はあまり好きじゃない。その種の映画に対しては、意地悪な批評家になるね。客観的な視点では観られないのさ。」

 かつて石森章太郎(後の石ノ森章太郎)氏も、自作のアニメ化について「自分がもらっているのは原作料じゃなくて原作汚し料」と語っていた。
 ウィル・アイズナーが生きていたら、果たして映画『ザ・スピリット』になんと云ったことだろう。


 ところで、本作を観ながら、大胆な色使い(色を使わないことも色使いだ)や真面目そうでいて滑稽な展開などが、怪作『東京流れ者』に通じるなと考えていたら、劇場で買ったプログラムの解説文でみのわあつお氏がやはり『東京流れ者』に触れていた。
 まったく関係ないにもかかわらず、『ザ・スピリット』の解説で『東京流れ者』を説明してしまうのはさすが。

 もしかすると、『東京流れ者』を作った鈴木清順監督なら、本作を観て面白がるかも。


ザ・スピリット』  [さ行]
監督・脚本/フランク・ミラー
出演/ガブリエル・マクト サミュエル・L・ジャクソン エヴァ・メンデス スカーレット・ヨハンソン ジェイミー・キング サラ・ポールソン セイチェル・ガブリエル
日本公開/2009年6月6日
ジャンル/[アクション] [サスペンス] [犯罪]

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