『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』 晴れた日は映画を観よう

 「晴れた日は映画館へ行こう」というのは、『ホタルノヒカリ』の主人公・雨宮蛍が、ユナイテッド・シネマ浦和のオープンのために考えた惹句である。

 天気の良い週末、別になんの予定があるわけでもなく、特に急いでやることもない。せっかくだから今日は一緒に映画でも観て、おいしいものを食べようか。
 そんなときの「映画」とは、「映画を観る」という行為の目的物ではなく、「おいしいものを食べる」までの時間をつぶす前座だ。
 いや、時間をつぶすというよりも、時間を共有することに意味がある。映画館の座席に並んでスクリーンに向かうということが、自宅でテレビを見るよりはそこそこ非日常で、旅支度をして旅行するよりは日常で、ちょうど手頃な外出先なのだ。

 そんな気分のカップルが映画館へ行くならば、『冷たい熱帯魚』の破壊エネルギーを浴びたり、『白いリボン』の重さを受け止めちゃダメだ。

 そういうときこそ、『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』の出番である。
 なんたって『たのしい旅行』だから、晴れた日に合うことは保証されている。それも「楽しい」じゃなくて「たのしい」だ。お気楽で、のんびりしていること間違いなしである。
 子供を一緒に連れていくのもいい。「大」とか「木」とか、子供でも読める漢字が安心感を醸し出している。
 映画の後の食事の際は、できればテーブル席に差し向かいに座るのではなく、カウンター席に並んで座るのがいい。
 同じ方を向いて、同じ言葉を繰り返すと、人は共感と安堵を覚えるということは、私たちが小津映画から学んだことだ。

 そうして、一緒に映画を観て、一緒に食事をして、一緒に家へ帰る。また楽しからずや。


 『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』は、そういう映画である。
 新婚なんて云っても、4年も同棲していたので、もはやラブラブではない。そんな夫と妻が、同じところを歩き、同じものを見て、何気ない会話をやりとりする。
 地獄の一本道を歩くときは振り返っちゃいけないというお約束のルールまであり、夫婦は否応なしに同じ方を向きながら旅することになる。
 『たのしい旅行』に嘘偽りはなく、『新婚』さんが『地獄』を巡る。タイトルそのまんまの内容を、観客は楽しめば良い。

 気になる地獄の構造は、ダンテの『神曲』地獄篇と同様である。
 入口こそ、地獄の門ではなくて汚れたバスタブから進入するが、地獄の内外で上下が逆さになっているところなど、『神曲』でルシファーが地獄には顔を出しているのに煉獄山には足を出している構図を思い出す。
 夫婦が漏斗状の穴を延々と降りて行くのは、ウェルギリウスに導かれたダンテが地獄を抜けて天国を目指す様に似ている。

 ということは、あの穴の先にあるのは天国界なのか。
 なーんだ、それはここじゃないか。


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監督/本田隆一  原作・脚本/前田司郎
出演/竹野内豊 水川あさみ 樹木希林 片桐はいり 荒川良々 橋本愛 でんでん 山里亮太 柄本明
日本公開/2011年5月14日
ジャンル/[コメディ]
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【genre : 映画

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