『マチェーテ』 正義はどこだ?

 これがアメリカ映画であることが驚きである。
 『マチェーテ』の背景にあるのは移民問題だ。
 メキシコから米国に大量の不法移民が流れ込んでいる。彼らはあくまで不法な滞在者なのだから、取り締まる必要がある。映画には、ジェシカ・アルバ扮する捜査官が登場し、不法移民の組織を摘発しようとする。

 本作はアクション映画であり、襲いかかる悪漢を次から次へと倒すことが主眼であるから、不法移民の組織は敵役として申し分ない。
 ところがこの映画では、正義の所在は不法移民側ということになっている。
 当初は不法移民を捜査していたジェシカ・アルバも、やがて不法移民たちの側に立つ。
 そして、不法に入国した移民たちは、正統な米国市民による行き過ぎた移民対策に怒り、武器を取って立ち上がるのだ。


 やはり中南米から米国への不法移民を描いた『闇の列車、光の旅』では、米国は旅のゴールとして描かれた。観客はみんな、無事に米国にたどりつけることを願いながら映画を観た。
 だが『マチェーテ』では、米国に着いた不法移民を待ち受ける辛苦が焦点となる。
 本作がメキシコ映画だったらまだ判りやすいのだが、この内容をアメリカ映画で作ってしまうところに、本作のインパクトのすべてがある。

 日本に置き換えてみるといい。
 日本にやってきた移民たちが、組織ぐるみで不法移民を斡旋していたとしよう。彼らが武器を取って立ち上がり、移民を規制しようとする政治家や、国境警備を行う自警団を皆殺しにする映画なんて、日本で作れるだろうか。そんな企画を立てたところで、誰が資金を提供するだろうか。
 日本と米国では移民を取り巻く環境が異なるとはいえ、日本ではまったく不可能に思える企画である。

 たとえば、フランス人のリュック・ベッソンが作った『96時間』では、アルバニアからの移民を悪者として扱っていた。もちろん移民が全員悪党だなんて描き方ではないが、移民の側に抗弁の余地はなかった。
 映画作りに資金提供する人は、現在の世の中で金を持っている側なのだから、こうなるのは当然だ。

 そう考えると、メキシコからの移民が決起して米国人を襲う『マチェーテ』が、驚くべき企画であることは間違いない。
 監督のロバート・ロドリゲスはメキシコ系アメリカ人、主演のダニー・トレホは彼の従兄弟だ。
 なにはともあれ、メキシコ系アメリカ人がいればこそ、この映画は誕生したのだ。


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監督/イーサン・マニキス、ロバート・ロドリゲス  脚本/ロバート・ロドリゲス、アルヴァロ・ロドリゲス
出演/ダニー・トレホ ジェシカ・アルバ ロバート・デ・ニーロ スティーヴン・セガール ミシェル・ロドリゲス リンジー・ローハン
日本公開/2010年11月6日
ジャンル/[アクション] [エロティック]
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【theme : アメリカ映画
【genre : 映画

tag : イーサン・マニキス ロバート・ロドリゲス ダニー・トレホ ジェシカ・アルバ ロバート・デ・ニーロ スティーヴン・セガール ミシェル・ロドリゲス リンジー・ローハン

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