『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』 ジョン・レノンが満たす条件は?

 【ネタバレ注意】

 偉人の伝記は、繰り返し発表される。
 ジョン・レノンを取り上げた映画はこれまでもあったし、これから先も作られるだろう。『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』もその一つだ。
 しかし、ザ・ビートルズのメンバーは4人いる。それなのに、なぜジョン・レノンばかりが取り上げられるのか。
 音楽の才能がずば抜けていた?
 若くして死んだから?

 理由はさまざまだろうが、ジョン・レノンが神話における英雄の要素の多くを満たしていることも見逃せない。
 以前の記事で紹介したように、世界の神話には「英雄の5つの条件」がある。これらとジョン・レノンの人生を比べてみよう。


 条件1 神と人間のあいだに生まれた子であること。

 さすがにこの条件は満たさない。
 これは神話伝承の時代の条件だ。


 条件2 捨て子であること。

 ジョンは、両親を知らずに育った。
 その生い立ちを描くのが本作である。


 条件3 辺境で成長すること。

 人口40万人以上のリヴァプールを辺境と呼ぶのは云い過ぎかもしれないが、少なくとも彼が育ったところはイギリスの中心であるロンドンから300km以上離れた地方都市である。


 条件4 怪物退治や戦場での超人的活躍といった華々しい武勲を立てること。

 華々しい武勲については云うまでもないだろう。
 数多くの大ヒット曲はもとより、その曲名を冠した小説や映画が今も作られるなど、音楽を超えて広い分野に影響を与えている。


 条件5 暴力的・劇的な死に方をすること。

 1980年12月8日、彼は凶弾に倒れた。


 かように、ジョン・レノンは4つの条件を満たしており、これは現実の人間が満たせる最大の数である。
 この映画にとどまらず、彼は伝説としてこれからも語り継がれていくだろう。


 一つ、『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』における映画的な巧さについて触れておきたい。
 それはメガネの使い方だ。

 映画の冒頭、ジョンが登校しようとすると、ミミ伯母さんが「メガネ!」と声をかける。
 近視であるにもかかわらずメガネを嫌がるジョンは、いつもメガネをせずに家を出ようとする。それを心配した伯母さんが、メガネをかけるように欠かさず声をかけるのだ。
 しかしジョンは、伯母さんの見えるところではメガネをかけるものの、家から遠ざかるとすぐに外してしまう。
 ジョンは言い付けなんか守らず、伯母さんを騙すことも気にしない悪ガキであることを、端的に示す場面である。

 映画では、繰り返し、ミミ伯母さんが「メガネ!」と声をかける。そのたびにジョンは家の前だけメガネをする。
 やがて映画は、ジョンの葛藤や悲しみを描き、ジョンが家を出る場面になる。
 そのときもジョンはメガネをしていなかった。昔のようにミミ伯母さんはメガネをするように声をかける。
 ジョンは、云われるままにメガネをかける。
 家を離れればすぐにメガネを外してしまうのだが、せめてミミ伯母さんの前では素直に云うとおりにして、伯母さんを安心させてあげたい。ジョンの優しさが伝わってくる場面である。

 98分という上映時間はアッという間だが、それでも一人の悪ガキが、優しさと憂いを秘めた大人に成長する様が、メガネを通してたしかに描かれている。


ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ コレクターズ・エディション [Blu-ray]ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』  [な行]
監督/サム・テイラー=ウッド  原作/ジュリア・ベアード
出演/アーロン・ジョンソン アンヌ=マリー・ダフ クリスティン・スコット・トーマス デヴィッド・スレルフォール デヴィッド・モリッシー トーマス・ブローディ・サングスター サム・ベル
日本公開/2010年11月5日
ジャンル/[ドラマ] [青春] [伝記]
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【theme : ヨーロッパ映画
【genre : 映画

tag : サム・テイラー=ウッド アーロン・ジョンソン アンヌ=マリー・ダフ クリスティン・スコット・トーマス

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