『SP 野望篇』 イイクニ作ろう官房長官

 この映画を観るのなら、とうぜん場所はここしかない。
 ユナイテッド・シネマ豊洲の10番スクリーン。
 日本最大級のスクリーンサイズを誇るこの劇場は、テレビドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』の第1話で、岡田准一さん演じる主人公が最初にテロリストと対決した場所だ。
 岡田准一さんが格闘した通路に立つと、そのまま作品世界に繋がっているように感じる。


 テレビドラマの劇場版である『SP 野望篇』は、劇場公開だからといって大風呂敷を広げることなく、テレビの続きをきっちりと描いている。
 それは、作り手たちの自信の表れだろう。

 そもそも民放テレビは、CM枠を売る商売である。商品すなわちCM枠のお客様は視聴者ではない。スポンサーだ。
 ただし、CMだけを放映したのでは耳目を集められないので、CMの合間にドラマやニュースを挟んで、CMの商品価値を高めている。CMに耳目を集めるためなら、合間のドラマやニュースはどうでもいいのだ。スポンサーのイメージを傷つけさえしなければ、低俗だろうが反感を持たれようが、視聴者を引きつけるほどCMが高く売れる。

 それに対して、映画のお客様は観客だ。テレビ番組とは、金を払う人が違う。観客に喜ばれてこそ、興行収入は伸びる。
 判り切ったことだが、映画とテレビとではビジネスモデルがまったく異なるのだ。

 にもかかわらず、テレビと同様の、テレビの延長線上でしかない作品を劇場公開するとはどういうことか。
 劇場版だからといって、多数の豪華ゲストが出てくることもなければ、職域を超えた大事件に巻き込まれるわけでもない。
 作り手たちが、この作品はテレビでも映画でも通用すると自信を持っていなければ、到底できることではない。

 「SPは警護するのみ、犯人逮捕が任務ではない。」
 そう云われてしまうSPたちは、要人の身代わりに銃撃されるばかりで、その活躍はおそろしく地味だ。それを面白いテレビドラマに仕立て上げた作り手たちの手腕は、この劇場版でもいかんなく発揮されている。

               

 所轄の刑事を描いた『踊る大捜査線』に比べると、本作はコメディ色がほとんどない。国家のあり方を問いながら、謀略と裏切りに満ちた物語は、終始シリアスに展開する。
 しかし、そんな中にも、作り手たちの洒落っ気は窺える。
 本作から登場した与党幹事長の伊達國雄は、香川照之さん演じる曲者政治家だ。自分本位の彼のクルマのナンバーは「920」。"クニオ"である。あぁ、ホントに自分が可愛いんだ。

 そして、やはり本作で初登場の官房長官。最初は彼がどんな人物なのか判らない。とはいえ、なにやら小賢しいような、いっぱしの野心を抱いているような登場の仕方である。
 ところが作り手たちは、実は官房長官が良い人であるというサインを早々に送り出す。なにしろ、官房長官のクルマのナンバーは「1192」(イイクニ)なのだ。彼は国のために働く男で、体を張るSPたちに心から感謝する人物だ。
 かように、作り手たちは、画面の隅々にまで気を配って、観客とコミュニケーションを取っている。
 
 その細かな作り込みに敬意を表して、ここでは本作を宣材用のタイトル『SP 野望篇』と表記する次第である。

 テレビシリーズが物語の「起」「承」であったとすれば、本作は「転」に当たる。続く「結」が待ち遠しい。


SP THE MOTION PICTURE 野望篇【通常版】 [Blu-ray]SP 野望篇』  [あ行]
監督/波多野貴文  原案・脚本/金城一紀
出演/岡田准一 真木よう子 香川照之 松尾諭 神尾佑 堤真一 野間口徹 丸山智己 堀部圭亮 螢雪次朗 山本圭
日本公開/2010年10月30日
ジャンル/[サスペンス] [アクション]
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【theme : 「SP」THE MOTION PICTURE
【genre : 映画

tag : 波多野貴文 金城一紀 岡田准一 真木よう子 香川照之 松尾諭 神尾佑 堤真一 螢雪次朗 高橋努

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