『冬の小鳥』 少女の鳥はハトより小さい

 【ネタバレ注意】

 「『冬の小鳥』は、私が過ごしたカトリック系の児童養護施設での体験に着想しています。」
 監督・脚本のウニー・ルコントは、こう述べている。彼女は本作の主人公と同様に、1966年に韓国に生まれ、9歳の時に養父母に引き取られた。
 公式サイトのウニー・ルコントの言葉によれば、ほとんどの部分は創作だそうだが、やはり監督の実人生と重ね合わせずにはいられない。幼いウニー・ルコントを引き取ったのは、フランスの牧師の家庭だったそうだ。

 韓国では、朝鮮戦争で多くの子供が孤児になった歴史もあり、海外の家庭と養子縁組される子供が少なくない。
 だから『冬の小鳥』のように、少女が児童養護施設で暮らし、やがて欧米の家庭に引き取られる物語は、必ずしもウニー・ルコントだけのものではないのだろう。


 本作の主人公ジニは、親に捨てられ、児童養護施設で暮らすことにたいへんなショックを受ける。彼女は、この現実をなかなか受け入れることができない。とうぜんのことだ。

 その彼女が、自分の立場を思い知るのは、教会で神父の話を聞いたときだろう。
 彼女が暮らす施設はカトリック系なので、子供たちは礼拝に出席する。そこで神父が、十字架に磔にされたイエスが「父はなぜ私を見捨てられたのか」と叫んだと語るのである。
 ジニは、「父に見捨てられた私」ということに、イエスと自分の共通点を見出す。


 この作品は、韓国がアジア屈指のキリスト教国であることが前提となろう。
 韓国は、社会全体としては儒教の影響が強いものの、人口の20%をプロテスタント、7.4%をカトリックが占め、仏教徒を抜いてキリスト教徒が最も多い。
 そのため、『渇き』の主人公が神父だったように、キリスト教の要素が映画にも反映される。

 『冬の小鳥』は、ジニの気持ちの変遷を綴っていくのだが、それはイエスの生涯に重ね合わされる。
 この映画のクライマックスは、友人スッキの裏切りでも、イェシン姉さんの悲劇でもない。
 ジニの死と復活である。

 十字架に磔にされたイエスは、「父はなぜ私を見捨てられたのか」と叫んだ。
 やがてイエスは死ぬが、三日でよみがえり、天にむかって昇っていく。
 一方、ジニは小鳥の墓の十字架のあった場所に横たわり、土に埋もれる。これがジニの死だ。彼女はここで一度死ぬのだ。

 そして土を払いのけ、身を起こす。これがジニの復活だ。
 死と復活を経て、はじめてジニは笑顔を取り戻す。
 そしてジニは、飛行機でフランスの牧師の家庭に向かうが、これはイエスの昇天である。
 ジニはイエスと同じ生涯をたどったのだ。

 韓国の観客だけでなく、キリスト教徒が圧倒的に多いフランスの観客も、そしてもちろん牧師一家だったウニー・ルコントの家族も、この映画がいかに感謝のメッセージに満ちているかを感じとるだろう。


 人はときに信仰に救われるのだ。


冬の小鳥 [DVD]冬の小鳥』  [は行]
監督・脚本/ウニー・ルコント
出演/キム・セロン パク・ドヨン コ・アソン パク・ミョンシン ソル・ギョング ムン・ソングン
日本公開/2010年10月9日
ジャンル/[ドラマ]
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【theme : 洋画
【genre : 映画

tag : ウニー・ルコント キム・セロン パク・ドヨン コ・アソン ソル・ギョング

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