『カラフル』 行き先はどこでもいいのか?

 【ネタバレ注意】

 『カラフル』のエンディングで、THE BLUE HEARTS の名曲『青空』のカバーが流れる。
 その歌詞には、こんな一節がある。

  運転手さん そのバスに
  僕も乗っけて くれないか
  行き先なら どこでもいい

 エンディングを聴きながら、映画のシーンの数々が思い出された。
 特にこの一節は、『青空』という曲と映画『カラフル』がもっともシンクロするところだろう。

 劇中でコバヤシマコトである「ぼく」が、クラスメートと玉川電鉄の跡をたどるシークエンスがある。
 マコトは、玉川電鉄には興味ないし、砧線の跡を歩くつもりもなかったが、そのときのマコトには行き先なんかどこでもよかった。
 一緒に歩くことが大事だった。

 将来の進路だって、マコトとしてはどこでもいいのだ。
 どこに行くかではなく、誰かが乗っているバスに、マコトも一緒に乗りたいのだ。
 それだけなのだ。
 それが叶うだけで、生きていける。


 『青空』は、アパルトヘイト(人種隔離政策)を取り上げた曲だという。
 アパルトヘイト下では、黒人は白人とバスに同乗できなかったのだ。

 しかし人間は、白いだけでも黒いだけでもない。
 外見も内面もカラフルなのだ。
 『青空』は、映画『カラフル』のエンディングを飾るのに相応しい曲である。


 本作は、サンライズ社長の内田健二氏が仕掛けたそうだ。
 原作者・森絵都氏の本が好きで全部読んでいる内田健二氏は、原恵一監督なら小説『カラフル』を優れたアニメ映画にできると確信したのだろう。
 その原恵一監督がシナリオを依頼したのは、ベテランの丸尾みほ氏である。

 実は私が『カラフル』を観に行ったのは、シナリオが丸尾みほ氏だからだ。
 『カラフル』は、タイトルに相反して地味なエピソードが続くのに、丸尾みほ氏はそこから緊張感あるドラマを紡ぎ出す。

 徹頭徹尾、地味なエピソードは、ハッピーエンドのハードルが低い。
 何を食べたとか、何を着たとか、私たちの日常ではそんなことがハッピーなのだ。
 ところが、その低いハードルを越えるのが、いかに難しいかを、この作品は丹念に描き出す。

 原恵一監督は語る。
---
 昔自分が観て感動した映画は、きれいな答えなんか出てない映画だったような気がするんです。いつの間にか、白黒つけるとか、善悪ハッキリとか、そういう方向に作品のつくり方が流れてきたような気がするんですよね。
(略)
 だから、みんながハッピーで終わるような映画って、結局どっか無理があるつくりをしてるんじゃないかなって思うんですよね。嘘くさいというかね。それを僕はあんまり真剣につくれないな。

 「それだけじゃないでしょう」っていう思いはありますよね。
---

 物語の行き先も、カラフルということか。
 それは、必ずしも華やかなわけではないが、それが私たちの物語なのだ。


カラフル 【通常版】 [Blu-ray]カラフル』  [か行]
監督/原恵一  脚本/丸尾みほ  原作/森絵都
出演/冨澤風斗 宮崎あおい 南明奈 まいける 入江甚儀 中尾明慶 麻生久美子 高橋克実
日本公開/2010年8月21日
ジャンル/[ドラマ] [ファンタジー]

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