『ちょんまげぷりん』の仕事術

 【ネタバレ注意】

 『ちょんまげぷりん』では、仕事が上手くいって、職場で評価されるにはどうすれば良いかが、判りやすく示される。

 シングルマザーのひろ子は、仕事と子育てで苦労が絶えない。
 子供のお迎えのためには17時に仕事を上がらなくてはならないのに、上司も部下も嫌味たらたらである。
 ところが、突然現れた安兵衛が、家事も育児も引き受けてくれたことで、ひろ子は仕事に集中でき、リーダーを任されるに至る。お迎えの時間を気にしなくて良いので、気持ちに余裕もできたし、トラブルがあれば何時まででもとことん付き合うひろ子に、部下の態度も一変する。

 一方、ケーキ作りの才能を認められた安兵衛も、家にほとんど帰れないほど仕事に打ち込むことで、主任に昇進するまでになる。


 この映画を観ながら、Interop Tokyo 2009 での夏野剛氏とひろゆき氏の対談を思い出した。その中で、ひろゆき氏の語ったことが印象深かったのである。
 対談が、夏野剛氏の出演したNHKの討論番組に及んだときである。テレビについて語るその番組で、夏野氏の意見は参加者の賛同を得られなかったらしい。
 そこで、ひろゆき氏が「夜の9時から家でテレビ見てる人って、どうなんでしょうね。」と云いだした。
 「9時からテレビを見るためには、だいたい7時前には会社を出なくちゃいけないでしょ。でも仕事できる人は9時ぐらいまではやってますよね。みなさん、どう思います?」
 ひろゆき氏はそう云って、客席を眺めた。
 いかにもベンチャー企業の経営陣らしい意見である。
 
 「モーレツ社員」という言葉は、表面上は死語と化しているが、実態はモーレツでないと仕事での成功はおぼつかないということか。
 近年は、日本の沈没に比べて韓国企業の躍進が目覚しいことから、韓国人の働き方に注目が集まっている。ここでも注目されるのはモーレツぶりだ。
 日立製作所出身で、サムスン電子の常務も務めた吉川良三氏は語る。
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 サムスンでは目標を達成しないといけないので、感覚的に土日がない。そういう風土が本当にすごい。年俸制なので、休日出勤には手当てがつきませんがそれでも働く。
(略)
 普通なら1日8時間労働で考えるのですが、サムスンには午前2時、3時まで働いてもへっちゃらな社員がたくさんいる。「どうしてここまでサムスンの人は働くのか」「土日の感覚があるのか」と本当に驚きました。
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 日立製作所にも、午前2時、3時まで働く人や土日の感覚がない人はいるだろうに、それでも驚くと云うのだから、サムスンのモーレツぶりはたいしたものなのだろう。
 日本人がワーク・ライフ・バランスなどと云っているあいだに、韓国をはじめとした新興国に抜き去られるのかも知れない。


 しかし、そんな生き方でいいのだろうか、と一石を投じるのが、この作品である。
 ひろ子の息子・友也は、ひろ子にとっても安兵衛にとっても、かけがえのない存在のはずなのだが、ひろ子も安兵衛も仕事に打ち込んだら、友也はいったいどうなるのか。


 『ちょんまげぷりん』の原作者・荒木源氏は、長年にわたり主夫であった。小説家になるために朝日新聞の記者を辞したそうだ。
 「同僚のカミさんが記者を続けたいと言うので、稼ぐのは任せ、自分は家事で応分の負担を、と理詰めで考えた結果」という。

 公式サイトによれば、「ギター侍」に引っ掛けて、みずからを「主夫侍」と呼んだところから、この小説のアイデアが浮かんだとか。
 会社員の経験も、主夫の経験もある荒木源氏だからこその物語だろう。

 もっとも、そこには、奥様が朝日新聞記者という高給取りで、一家を支えられるという前提もあろうが。


 映画『ちょんまげぷりん』は、仕事と家庭にどう折り合いをつけるのか、明確な結論を出してはいない。
 こればかりは、個々人が見出していかなくてはならない問題である。

 ただ、経営者が「早く帰る人は仕事ができない」という考え方ではやるせない。


 とりあえず私は、映画館を出るとプリンを買って、家族への土産にした。
 映画の話をしながら食べれば、いっそううまいだろうと思って。


ちょんまげぷりん [DVD]ちょんまげぷりん』  [た行]
監督・脚本/中村義洋
出演/錦戸亮 ともさかりえ 今野浩喜 佐藤仁美 鈴木福 忽那汐里 堀部圭亮 中村有志 井上順
日本公開/2010年7月31日
ジャンル/[ドラマ] [コメディ]

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tag : 中村義洋 錦戸亮 ともさかりえ 忽那汐里

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