『9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』は人形ではない

 訂正である。
 『9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』は副題に「人形」と書かれているが、9<ナイン>は人形ではない。
 その体は麻布を裁縫して作られており、腹はジッパーでふさがれているものの、科学者が開発する過程で電気仕掛けの機器を埋め込んでいる様子から判るように、これはロボットと呼ぶべきである。

 もちろん、ロボットという言葉の持つイメージ――すなわち鉄の塊であるとか、ギクシャクした動きとか、冷たくて無表情というイメージからは程遠く、不思議な温もりのある小人たちは、人形と呼ぶに相応しい。
 個性的な9人の「人形」たちは、いずれも愛らしい存在だ。

 それにしても、なんと嬉しい80分だろう。
 「絵」として完成された画面を観るのは、それだけで楽しい。
 いささか古風な街の崩れかけた建物は、くすんだ色に覆われている。
 不思議な現象が起こるときには、緑の光が飛び交う。
 そして、恐るべきマシーンの、真っ赤に光る眼。

 『アバター』の記事を書いたとき、イラストレーターでありデザイナーでもあるロジャー・ディーンについて触れたが、ロジャー・ディーン同様にアルバムジャケットを手掛けたアーチストにロドニー・マシューズがいる。
 ロドニー・マシューズの絵は、ロジャー・ディーンに比べると垢抜けておらず、テクニックの鮮やかさもないのだが、不思議な世界に引き込む独特の個性がある。
 『9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』を観ていて、私は何だかロドニー・マシューズの絵を思い出した。

 『アバター』はロジャー・ディーンの絵を再現した(かのような)映画だったが、『9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』とロドニー・マシューズの絵には、直接的な対応はない。オフィシャルサイトによれば、シェーン・アッカー監督が影響を受けた芸術家は、ズジスワフ・ベクシンスキーである。
 しかし私は、ロドニー・マシューズの画集を日がな一日眺めていても飽きないように、『9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』を観ていてまったく飽きることがなかった。


 シェーン・アッカー監督が語るところによれば、本作の制作は時間がなくてたいへんだったという。
 原型になった11分の短編のときは4年半かけてコツコツ作ったが、この長編では、まだ第1稿の脚本なのに制作のGOサインを出されてしまい、それから1年半で完成させなければならなくて絵コンテに費やす時間も短かったそうだ(『映画テレビ技術』 №693)。
 それゆえか、ストーリーはまだ練り込む余地があるかも知れない。

 しかし、優れた絵は見飽きることがない。
 ましてその絵が動いているのである。

 本作を観る者は、素晴らしい80分を堪能することだろう。


9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~ コレクターズ・エディション [Blu-ray]9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』  [な行]
監督・原案/シェーン・アッカー  制作/ティム・バートン
出演/イライジャ・ウッド ジェニファー・コネリー クリストファー・プラマー ジョン・C・ライリー クリスピン・グローヴァー マーティン・ランドー フレッド・タタショア
日本公開/2010年5月8日
ジャンル/[ファンタジー] [アドベンチャー] [SF]

映画ブログ ブログパーツ

【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画
【genre : 映画

tag : シェーン・アッカー ティム・バートン イライジャ・ウッド ジェニファー・コネリー クリストファー・プラマー マーティン・ランドー

最新の記事
記事への登場ランキング
クリックすると本ブログ内の関連記事に飛びます
カテゴリ: 「全記事一覧」以外はノイズが交じりますm(_ _)m
月別に表示
リンク
スポンサード リンク
キーワードで検索 (表示されない場合はもう一度試してください)
プロフィール

Author:ナドレック

よく読まれる記事
スポンサード リンク
コメントありがとう
トラックバックありがとう
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

これまでの訪問者数
携帯からアクセス (QRコード)
QRコード
RSSリンクの表示