『第9地区』 変態を繰り返す映画

 【ネタバレ注意】

 『第9地区』の原型となった6分間の短編『Alive in Joburg』は、言葉遊びから始まっているのだろう。
 南アフリカの人々にインタビューしてalien(外国人)に対する不満を語らせ、人々がジンバブエからの移民を口汚く罵る言葉に、alien(異星人)の映像を被せるのは、毒っ気まんてんのギャグである。

 『第9地区』ではそれを長編化し、alienから書類へのサインを貰うという、気の利いた要素を付け加えた。
 現実世界でも、移民等を強制的に移住させようとしたら大騒動になるだろうが、ここでのalienは異星人である。はたしてalienに南アフリカの法を適用できるのか。alienが何をしたらサインとして扱えるのか、それは法的に有効なのか。
 このあと、皮肉たっぷりで奇想天外なSF的展開が待っていると期待させる。

 ところが、alienからサインを貰うという、特異なミッションはうやむやになってしまい、映画は途中から変身譚になる。
 それはカフカの『変身』のような不条理劇であり、ギャグである。
 変身した主人公を巡って、周囲の人々の人間性や不誠実が浮かび上がる。

 これはこれで深い掘り下げができるテーマなのだが、ここでまた映画は変身し、ライダーマンや『片腕マシンガール』のような「四肢の一つがスーパーウェポン」のアクション物になってしまう。
 しかも『リーサル・ウェポン』ばりのバディ映画である。

 とはいえ、アクションも充分に見応えがあって、あれよあれよという間に映画は終わってしまう。
 面白いことは面白いのだが、アクション映画やバディ映画なら他にいくらでもあるので、この映画ならではのモノを掘り下げないのはいささか残念だ。


 ただ、ニール・ブロムカンプ監督は、長編デビュー作に自身のありったけのものを注ぎ込んだわけだから、これからそれぞれの要素を発展・昇華させていくことができる。
 それはそれで楽しみである。


第9地区 [Blu-ray]第9地区』  [た行]
監督・脚本/ニール・ブロンカンプ  脚本/テリー・タッチェル
制作/ピーター・ジャクソン、キャロリン・カニンガム
出演/シャールト・コプリー デヴィッド・ジェームズ ジェイソン・コープ ヴァネッサ・ハイウッド
日本公開/2010年4月10日
ジャンル/[SF] [アクション] [ドラマ]
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【theme : 特撮・SF・ファンタジー映画
【genre : 映画

tag : ニール・ブロンカンプ ピーター・ジャクソン シャールト・コプリー

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